世界の“いま”を発見

ウズベキスタンで世界最深候補の洞窟を探検した

2017.03.04 SAT

 ウズベキスタンの奥地にあるバイスンタウ山脈は、政情不安もあって容易には近づけない地域だ。それでも「ダークスター」と、近くにある「フェスティバルナヤ」という二つの洞窟は、探検家を魅了してきた。

 ダークスターという名称は、1970年代の米国SF映画に由来する。その入り口は1984年にロシア人が発見していたが、実際に到達して洞窟探検を始めたのは英国の探検隊で、1990年のことだった。以来ダークスターは、百戦錬磨の洞窟探検家たちを引きつけている(二つの洞窟はつながっている可能性もある)。
ウズベキスタンの洞窟に挑んだ探検チームの一人、マーク・シノット。濡れた岩はすべりやすいが、下を流れる水は氷のように冷たく、落ちるわけにはいかない。(Robbie Shone/National Geographic)
ウズベキスタンの洞窟に挑んだ探検チームの一人、マーク・シノット。濡れた岩はすべりやすいが、下を流れる水は氷のように冷たく、落ちるわけにはいかない。(Robbie Shone/National Geographic)

世界最深の洞窟を求めて

 ダークスターの魅力は、登山家が高峰に感じる魅力と通じるものがある。違うのは一つだけ。世界最高峰はエベレストだとわかっているが、地下世界では新たな巨大洞窟がどこに隠れているかわからず、いくら探検してもきりがないという点だ。現時点で最深と確認されているのは、地下2197メートルまで続くジョージアのクルーベラ洞窟だが、未踏の領域が多いダークスターは、その記録を更新する筆頭候補だ。

 ゼーニャ・ツーリヒンは、ロシアの国立機関で魚類の品種改良の仕事をしているが、バイスンタウ山脈で洞窟探検に参加するのはこれが10回目で、真のライフワークはここダークスターだ。この洞窟の複雑な構造を、彼ほど理解している者はいない。

 ゼーニャがテントの一つに招いてくれた。中に入ると、数人のメンバーがダークスターの地図をのぞき込んでいる。探検ごとに新しく発見された通路が色分けされていた。ゼーニャは泥のついた指で曲がりくねった緑の線をたどり、ある地点を指さして、早口のロシア語でしゃべり始めた。前回の探検は、ここにある高さ37メートルの滝に行く手を阻まれた。まだ誰も登っていない滝だという。

巨大な滝を越え、新たな通路を発見

 ここでは昼夜の区別はない。探検も睡眠も食事も、太陽の動きに関係なく行われる。

 今回の探検に残された時間が少なくなったなか、ゼーニャと、意欲的な若いロシア人のアレクセイ・セレーギンだけは、もうひと頑張りして巨大な滝を登り、新しい通路を見つけたいと言って出かけていった。

 3日後、私たちの待つベースキャンプにゼーニャたちが戻ってきた。2人ともどろどろに汚れているが、新しい情報をたくさん持ち帰ってくれた。例の滝を登り、曲がりくねった狭い隙間に体をねじ入れて何時間も進んでみたが、ついに幅が25センチ弱になった。アレクセイは頭が引っかかってそれ以上入れない。次にゼーニャが挑戦した。肩をねじり、腹をへこませて体を押し込み、全身をよじりながら数センチずつ進んで、ついに急流がとどろく広い通路に出ることができた。

 これこそが、ゼーニャが20年以上探してきた通路なのだろうか。ダークスターが世界一深い「洞窟のエベレスト」であることが証明されるのか。ゼーニャは探検を続けて、その通路がどこまで続くのか確かめたかったが、あいにく時間切れとなった。

 ゼーニャたちの報告を聞いた隊員たちは、新発見の興奮で沸き立った。未知の領域に通じる新しい道が見つかる―これぞ洞窟探検の醍醐味だ。しかもそれは、地球の深部に次なる冒険が待っているという約束でもあった。

(ナショナル ジオグラフィック2017年3月号特集「ウズベキスタン 底知れない洞窟へ」より)

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