少子化を加速する不安要因

世界一の技術水準を誇る日本の産科医が減っているワケ

2006.10.19 THU

少子化対策関連で、明るいニュースが増えている。右肩下がりだった出生率が、06年度は6年ぶりに反転する見込みが高くなってきた。さらに、10月からは出産育児金が増額、支払い方式も変更し、出産時の持ち出しがほとんど必要なくなった。来年の予算では、少子化関連の対策費が、今年度よりも10%のアップを予定している。

これで少子化ストップ? と思いきや、子どもを産みたい女性にとって、無視することのできない「危機」が医療の世界を襲っている。産科医の減少だ。

日本産科婦人科学会が、全国の大学関連病院を対象に行なった調査によれば、03年4月から05年7月のおよそ2年で常勤産婦人科医は約8%の減少。出産を扱う病院数も約9%減った。

ある産科医は、「根本的な手を講じなければ、日本の産科は壊滅する」という。

「労働条件は医師のなかでも一、二を争う過酷さです。地方では常勤の産科医が一人しかいない病院もザラにあります。そういった産科医は、365日24時間病院に拘束されるんです」

労働条件の過酷さに加えて、訴訟リスクも高い。

「日本の出産時の死亡率は、医療技術の向上によって年々低くなり、現在では世界一の水準になりました。ところが、そのことが逆に『出産は危険じゃない』という意識を広め、ミスとはいえない事例まで医師の責任が問われてしまうようになったんです」

その結果、現役の勤務医のみならず、医師をめざす学生たちまでも、産科医を避けるようになってしまった。産科医空白地域は増える一方だ。

こうした産科の崩壊がさらに続けば、女性たちの出産意識にも影響を与えずにはいないはずだ。産科医減少のスパイラルを止める具体的な解決案は、いまだ見つかっていない。少子化対策のみならず医療制度全体をも揺るがすこの問題に、一刻も早い対策が待たれている。

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