科学研究一辺倒から脱却

宇宙基本法の成立で日本の宇宙利用はどう変わる?

2008.06.19 THU



写真提供/時事通信社
5月21日、与野党の激しい対立が続くねじれ国会の会期中、1つの法案が、やけにあっさりと両院を通過した。研究開発のみならず、産業振興、国家防衛も含めて宇宙開発を進めることを目的に、宇宙開発戦略本部の新設や担当大臣の任命、宇宙基本計画の策定などを定めた宇宙基本法である。熾烈な宇宙開発競争が進む現在、国際社会の潮流に乗り遅れまいとする政治家や関係者の焦りが同法を成立させたようなのだが、この法律は日本の宇宙利用にどんな変化をもたらすのだろうか。

「今回の法案では、国連宇宙条約の規定に倣って防衛目的の宇宙開発が『平和利用』の一部として認められています。そのためこれまで禁止されていたミサイル防衛用の早期警戒衛星保持や、防衛目的の衛星を開発・製造・保有することも可能となりました」(国際法・宇宙法に詳しい青木節子慶應大学教授)

同法案の審議にあたっては、当然のことながら、軍拡を懸念する声も挙がったが、「日本国憲法の平和主義の理念に則り」という文言を付加することで、集団的自衛権の行使となる宇宙利用などに一定の歯止めがかけられてもいる。さらに青木教授によれば、そもそも宇宙開発において民間利用と軍事利用を完全に分離することはできないのだそうだ。

「たとえば米国が世界に無償で提供するGPS衛星(測位航法衛星)信号は、米国のミサイルの精度を高めると同時に、世界中でカーナビの普及や高精度の地図作成に役立っています。宇宙の平和利用を非軍事と狭く解釈していては、宇宙産業を発展させることも困難なのです」(青木教授)

もはや宇宙を科学研究目的だけで語ることはできなくなったということだろうか。文部科学省などに分散していた管轄が内閣府の戦略本部に一元化されたのも象徴的だ。同法の成立は、時代の移り変わりと日本の宇宙開発の方針転換を如実に表しているといえるのかもしれない。


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