情報社会と法律のビミョーな関係

第1回 ネットの書込みの著作権ってどうなの?

2008.12.24 WED

情報社会と法律のビミョーな関係


筆者自身もブログをやっているが、誰かがその内容を勝手に引用したという形跡はない。それはそれで寂しいのだが、始めてまだ3週間しかたってないから仕方ないか…

そもそも著作権って僕らの役に立ってるの?



ホームページやブログ、動画投稿サイト、ソーシャルネットサービスや掲示板、Q&Aサイトなど。ネット上には簡単に情報を発信できるサービスがたくさんある。しかし、簡単に発信できるからこそ、いろんな決まり事があいまいになりやすい。その最たるものが「著作権」だ。

でも、あんまり「著作権」を主張しすぎるとネットの世界が窮屈になる、という意見もある。そもそも「著作権法」というのは「著作物を創った人の権利を守るため」だけでなく「著作物を使いたい人が公正に利用するため」に創られたものでもある。つまり、情報を発信する側とそれを利用する側のバランスをとっている法律なのだ。

「極端ないい方ですが、ネット上に著作権という考え方がない世界を想定した場合、例えば動画投稿サイトにテレビ番組などが大々的に投稿されるようになっても誰も文句がいえない。こうなるとテレビに広告を出す意味がなくなりCMが減る。すると制作予算が下がり、番組の質が低下する。結局はユーザーの不利益にもつながるのです」

と話してくれたのは、デジタル関係の著作権に詳しい弁護士の中川達也さん。

例えば雑誌や新聞に載っているタレントの写真をコピーしてブログにアップしたい場合、写真の著作権はカメラマンや被写体であるタレントと契約している事務所などが持っているので、そこに許諾を得る必要がある。でもタレント本人にお願いして自分がカメラで撮影したものであれば著作権は自分。だからブログへのアップも写真という著作物の著作権に関しては問題ない。

でもその写真を使って何かしらの利益(平たくいうとお金)を得ようとした場合は、有名人の「パブリシティ権」を侵害する可能性があるので注意が必要だ。有名人の名前とか容姿っていうのは皆に知られているから、それ自体が商品みたいなもの。パブリシティ権ってこれを守る権利のことね。

あと、ブログとかを書いているとき、ネタ元として新聞記事とかを使うことがあると思うけど、文章を引用する場合もいくつか約束事がある。

著作権法では「引用」について定められており、一般的な解釈として「報道や批評、研究など、引用の目的が正当な範囲で行われるものなら引用として認められ、著作権者に許諾せずに利用することができる」とされている。

「新聞や雑誌の文章を引用するときは、自分の文章と引用する文章をはっきり分けること。それと『主従』の関係を明確にすることですね。つまり自分の文章がちょろっとで、その他のほとんどが引用文だったりするとよくありません。引用する文章の出典などの明示も大切です」(中川弁護士)

ブログにしても掲示板サイトにしても、面白い書き込みが増えるとアクセス数が上がる。すると「これってまとめて本にすれば売れるんじゃね?」なんて思ったりする人が出てくるかもしれない。

そんなとき、著者自身が行動するぶんにはOKだけど、他人がそれを利用してお金儲けをしたとなると話は違ってくる。

過去にそんな例はないか社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(以下ACCS)の中川文憲さんにお話をうかがった。

「2002年に起きた『ホテルジャンキーズ事件』というのがあります。ホテルジャンキーズクラブというホームページ上に、一般の閲覧者が自分の旅行体験談や利用したホテルの感想などを書き込む掲示板があり、そこに投稿された書き込みを無断で書籍に収録したという事件です」

裁判の結果、掲示板への書き込みは投稿者に著作権があることを認めるとの判断になり、書籍の著者と出版社に対し出版差し止めと投稿者に合計約110万円を支払うことを命じたという。

「これに対し、著者側は『インターネット上の掲示板への書き込みは数が膨大で、書き込んだ本人への連絡方法も不明の場合が多く、承諾を得ようとしても実際不可能だ。さらに、書き込み一つひとつは対価が得られないような程度の内容のものが大半なので、従来の著作物とは別の考え方をしてほしい』というような反論をしたのですが、認められませんでした」(ACCS中川さん)

何にしろ、誰かに文句をいわれるのは、やっぱり気分が悪い。でも最低限の決まりを守っていれば大丈夫。安全・快適なネット生活を目指す皆様、法律についても、ときどき考えてみることをおすすめしたいのである。
実は、これまでいかなるメディアにもコメントを出したことがないGo-Aheadさんと、今回は奇跡的な出会いがあって直接お話することができた。ちなみに奥さんとは現在仲良く暮らしているとのこと…

ネットへの書き込みが本になったときどんなメリットとデメリットがあるの?



ネット上の書き込みを勝手に書籍にしたことで、裁判になってしまった「ホテルジャンキーズ事件。でも、そうはならなかったケースもある。

2007年に放映された『今週妻が浮気します』というフジテレビのドラマを覚えているだろうか? 同名の小説をドラマ化したものだが、あれもネット上の書き込みから生まれた作品である。

ハンドルネームGo-Aheadさんが、とあるQ&Aサイトに「今週、妻が浮気します。夫としてどうすればいいでしょうか?」という相談を書き込んだ。そこから、相談者のせっぱ詰まった状況や真摯な態度に、数十人のネットユーザーが心を動かされ、多くのアドバイスや応援メッセージを書き込む状態となった。このやり取りが後に書籍化され、テレビドラマにまでなったのである。

そのGo-Aheadさんに書籍化されたときのお金のことについて聞いてみた。

「そういうのは一切ありませんでした。最初に印税関係はすべてサイト側に入ると言われましたが、気にしていませんでした。そもそもお金のために書いたものではないし。サイト上で相談して、多くの人が応えてくれた。ただそれだけです」

そんなGo-Aheadさんも、書籍化を聞いたときは、かなり迷ったとのこと。なにせ内容が妻の浮気だ。しかし、発行部数が数千部と聞いて、その程度ならあんまり人目に触れることもないだろう、とOKしたそうだ。ところが同書は発売してすぐに増刷を重ねることになった。

「5万部までは聞いているけど、それ以降は何冊刷られたか調べていません」

「お金儲けのために書いたものじゃない」と繰り返すGo-Aheadさん。でも、そんなに売れたのなら何かしらの支払いがあってもいいような気がするのだが。

「書籍の巻末に、僕自身があとがきを書いたのですが、サイト側から謝礼として3万円を支払うといわれたんです。お金の話が出たのはそれが初めてで、急に複雑な気持ちになって、断ったんです。すると、3万円が20万円になった(笑)。でも受け取りませんでしたけどね」(Go-Aheadさん)

その後『今週妻が浮気します』はテレビドラマにまでなるのだが、このときもドラマ化してもいいかどうかを聞かれただけだったらしい。

今後も著作権の主張はしないと話すGo-Aheadさん。でも、ひとつだけ心に引っかかっていることがある。それは「今週妻が」に関してお金の話など一切していない段階で、サイトの関係者から「あなたは投稿を繰り返した数十人の1人に過ぎないのですよ」と釘を刺すようなことをいわれたこと。さすがに「カチンときた」という。

ネット上の書き込みを書籍化したものであっても「ホテルジャンキー事件」と『今週妻が浮気します』とでは、ずいぶんと違う結末になった。必ずしも著作物の出版を許諾を得ることに、お金の支払いを伴うとは限らないのはGo-Aheadさんの件の通り。

どちらの件にも、それぞれの事情があって単純には比較できないが、きちんと相談した上で出版した、というところだけは明確に違うのだ。まあ、Go-Aheadさんの話を聞いていると、サイト側の対応もビミョーなところがある感じだけど。

これまで一般の人は情報を受け取るだけの立場だったが、インターネットはそれを根底からひっくり返した。つまり、すべてのユーザーが情報の「発信者」になる可能性があるのだ。Go-Aheadさんも、ある日突然「受け取る側」から「送り出す側」になった人。

これを読んでいるあなたも、いつそうなってもおかしくないよ。ということで「著作権」について知っておくことは、これからの時代、大切なことなのである。 実は筆者も、自分が書いた記事を
そのままある漫画のエピソードに使われた経験がある。

詐欺グループの手口を紹介する記事だったんだけど、
その事例をストーリーに反映させるのは別にいいとして、
中身のセリフとか状況を説明する文章が
丸ごと使われていたのである。

短いフレーズだったので「まぁいいや」と
見てみぬフリをしたけど、
ちょっと気に障ったことは確かだ。

何かしらのアプローチがあれば
「どうぞ使ってください」と気持ちよく言えるのに。

要は相手の出方なのである。

これをお読みのみなさま
「私も自分の文章(作品)を勝手に流用された」
みたいな経験はありませんか?

もしあったら、ぜひR25.jp編集部までお寄せください!

「おもしろネット著作権入門」みたいな本を作って金儲けしようぜ!
あれ? そうじゃない?

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