村おこしの経済学

第2回 “まさか利”担ぐか、金太郎

2009.06.19 FRI

村おこしの経済学


「ただ金太郎に絡めたダジャレで商品を作るのでは無意味。足柄ならではのモノにしたかった」という佐藤さん。地元産の牛肉をフル活用したカレーのほか、金太郎の息子・金平(きんぴら)にちなんでゴボウをあしらった『まさかりんとう』もまた、斬新な美味。今後の販路の拡大に期待したい

実在した可能性も…?「金太郎」の伝説



昔話の「桃太郎」といえば、犬・猿・キジを率いて鬼退治を果たした英雄。これは皆さん、よくご存じでしょう。じゃあ、「金太郎」は――?


思いがけず答えに窮してしまうのは筆者だけではないはず。考えてみれば、鉞(まさかり)を担ぐ姿はハッキリ思い浮かぶのに、何をどうした人物かと聞かれると、正直なところ熊と相撲を取ったことくらいしか記憶していない。いい機会なので、あらためて調べてみよう。


金太郎には実は、わりとリアルなモデルが存在するという。平安時代の武将、源頼光に仕えた坂田金時(さかたのきんとき)、その人だ。金太郎はその幼名で、気は優しくて力持ちを地で行く腕っぷしの強さは、足柄山界隈に広く鳴り響いていたとか。そんな金太郎が、やがて時の武将・頼光に召し抱えられたのをきっかけに、悪さを働く酒呑童子(しゅてんどうじ)を退治するなど多くの手柄を立てるようになったというのが昔話の全容だ。


実際は、そもそも坂田金時という人物が実在したかどうかは諸説あるようだが、こうした概略をつかんでおくだけでも、なんだか金太郎というキャラに血が通った感じがしないだろうか?
足柄牛100%に、ゴボウを加えた『まさカリーライス』。ゴボウとカレーの意外な相性の良さに唸らされることしきり。さすが、名門ホテルの総料理長の苦心作! ちなみにレトルトではなく、地元の飲食店で提供される商品であるため、通販などには今のところ未対応。レトルト版の製作も検討中とか
「健康で丈夫な子どもの象徴として全国的に知られる金太郎ですが、物語としては、たまたまこの地を通りかかった源頼光に認められたことから名を成した立身出世のお話。つまり金太郎は、人との出会いに恵まれた強運の持ち主でもあるんです」

そう語るのは、足柄エリアで昨秋立ち上がったNPO法人・金太郎プロジェクト推進委員会の理事長、佐藤修一さんだ。南足柄市をはじめとする周辺地域では今、金太郎をモチーフとした町おこしに本腰を入れるべく、一体となって様々な活動を行っている。

「プロジェクトの第一段階としては、金太郎がかつぐ鉞とその強運をかけて、まさかのご利益を受けられる『まさか利』神社の建立と、金太郎関連商品の展開を目指しています。商品化は順調で、すでに『まさカリーパン』『まさカリーライス』など5種類を販売中です」(佐藤さん)

単なるダジャレと思うなかれ。たとえば『まさカリーライス』は、名門・富士屋ホテルの総料理長がプロデュースを担当し、地元産の足柄牛を100%使用。さらに金太郎の息子である「金平」が「きんぴらごぼう」の語源になったことにちなみ、ゴボウを用いた独特のカレーに仕上げられている。

ほかにも、このカレーを使ったシチューパン『黄金のPOT』や『まさカリーうどん』、ゴボウを素材とした『まさかりんとう』などが、足柄地域内のおよそ30店舗で取り扱われている。足柄山にトレッキングに訪れた人々からの反響も上々とか。

こうした金太郎グルメを食せば、まさかの利を授かれるかも!?
南足柄市内に立つ、金太郎の時計塔。金太郎は地元のシンボルとしてしっかり根づいているのだ。ちなみに、この日はあいにくの悪天候で見づらいですが…、時計塔の背景には、金太郎が熊と相撲を取ったといわれる足柄山の稜線が見える。トレッキングスポットとして人気だ

1万羽のアヒルでレース!金太郎プロジェクト



昔話の「金太郎」の発祥地である神奈川県の足柄エリア。街を歩けば金太郎をかたどったオブジェや看板を随所に見ることができ、古くからこの地のシンボルとして親しまれてきたことがわかる。

気は優しくて力持ち――。熊と相撲を取ったり、鬼を従えた酒呑童子(しゅてんどうじ)を退治したりした金太郎が、今度は地元の経済振興にひと役買おうとしている。

「このあたりは大手メーカーの工場がある関係で、一時期は全国でも有数の裕福度を誇るエリアでした。しかしこの不況ですから、潤っていたのも今は昔。行政に委ねるばかりでなく、自分たちが危機意識を持って行動を起こさねばということで立ち上がったのが金太郎プロジェクトです」

そう語るのは、NPO法人・金太郎プロジェクト推進委員会の理事長、佐藤修一さんだ。同団体では企業や行政、市民ボランティアなどと連携し、「プロジェクトAX」と題して金太郎に絡めた様々な地域振興策を実施している。

「プロジェクトAXの第1弾として、『まさカリーパン』や『まさカリーライス』など、まさカリーシリーズを商品化しています。反響は大きく、昨年から今年にかけてテレビや新聞、雑誌に取り上げられる機会も増えました。観光客の皆さんにも少しずつ金太郎グッズは浸透しています」(佐藤さん)
今年の5月、酒匂川に1万羽も放たれたアヒルのおもちゃ。ニュースで映像を見た人も少なくないかもしれないが、川面が黄色く染まる姿は壮観だった。ちなみに「プロジェクトAX」のAXとはアックス、つまり金太郎が担ぐ鉞(まさかり)とかけた言葉。ここでもダジャレが利いている(笑)
金太郎プロジェクトの一環として、この5月に大きな話題を呼んだのが、酒匂川で開催された「金太郎ダックレース」だ。これは金太郎の前掛けを付けたアヒルのおもちゃを一斉に放流するもの。アヒルそれぞれには持ち主(つまり出場者)のナンバーが打たれ、ゴール一番乗りを競うのだ。1等ハワイ旅行、2等北海道旅行と賞品も豪華。来場者は1万人以上という盛況ぶりで、テレビのニュースでも大きく報じられた。

「この手のイベントとしては珍しく、自治体からの補助金を一切もらっていないのは大きな特徴でしょう。エントリー料としてアヒル1羽につき500円を設定するなど工夫して、すべて自前の予算で賄っています。想定外の反響に関係者も大喜びで、すでに来年の大会実施に向けて動き始めています」(同)

これまで、お隣の箱根や御殿場と比べると、どうしても観光地として影が薄かった足柄エリア。しかし、この地域はとにかく自然が豊かで、四季折々の草花が咲く。もともと足柄山にはトレッキング客が多く、名所として知られる最乗寺や夕日の滝、さらに最近では温泉施設も整えられるなど、ポテンシャルは抜群なのだ。

「そうした観光資源を有効に生かし、足柄をひとつの立派な観光地として成立させることが最終的な目標」と語る佐藤さん。まだまだ様々な手法を考えているというから、今後の取り組みにも要注目だ。 キャラクターを使った村おこしというと、ちょこちょこっとイラストをあしらった商品化など、いかにもお手軽な取り組みも目につきます。

しかし今回の金太郎プロジェクトは、「金太郎」という昔話の枠を飛び出し、大きな集客、メディア露出効果を挙げています。特筆すべきは「自治体の補助金に頼っていない」という点で、つまりは低予算でもアイデア次第でいろんな事業が考えられるという、良いお手本ではないでしょうか。

引き続き、皆さんからのメッセージも大募集! ユニークな村おこしの事例など、ご存じの情報をぜひ教えてくださいませ。

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