世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

なぜスパコンは1位を目指すの?

2009.12.17 THU

理化学ドリル


【問1】日本最速のスーパー
コンピューターは世界で第何位?

A. 1位 B. 22位 C. 31位

【解説】 行政刷新会議による科学技術予算の仕分けで話題になった日本のスーパーコンピューター(スパコン)は、いったい、世界でどれくらいのレベルにあるのだろう?
日本最速のスパコンは海洋研究開発機構の地球シミュレータで、現在の世界ランクは31位だ。地球シミュレータは2002年から2004年まで世界一の速さを誇っていたが、危機感を募らせたアメリカが国をあげて支援に乗り出し、あっという間に追い抜かれてしまった。今や、アメリカのスパコンが世界ランクの上位10機種中8機を占める独占状態だ。韓国や中国も日本より上位に食い込んでおり、世界中でスパコンのし烈な競争が起きている。
スパコンは、今や、台風や竜巻の予報、新材料開発、新薬の研究、エンジンの設計など、様々な科学技術に欠かせない道具になっている。

【問2】家庭用ゲーム機PS3を何台つなぐと
スパコンと同等の性能になるか?

A.20台  B. 200台 C. 2000台

[正解] 問1:C 問2:C


竹内 薫 たけうち・かおる 1960年東京生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。マギール大学大学院博士課程修了(専攻は「超ひも理論」)。科学誌『Nature』などの翻訳も手がけるサイエンスライターであり、「湯川 薫」名義でミステリー作家としても活躍する。著書に『理系バカと文系バカ』(PHP新書)、『宇宙のかけら』(講談社)など多数

技術開発のメリットって、仕分けられるの?



驚くべきことだが、家庭用ゲーム機を2000台つなぐと、なんと世界最速のスパコン並みの計算速度を達成できる。これは冗談ではなく、アメリカ空軍は、これまでにも、336台のPS3を用いて、レーダー画像の処理や、脳のような働きをするスーパーコンピューティングの研究をしていたが、2009年11月には、さらに2200台のPS3を追加購入することを決定した。これだけの数のPS3をうまくつないで、ソフトウェアで制御してやると、ほぼ地球シミュレータと同等の性能を発揮する。ちなみに、気になる費用を比べてみると、地球シミュレータが500億円、二千数百台のPS3は1億円ちょっと、という計算になる。
ところで、長崎大学工学部の浜田剛助教は、スパコン分野のノーベル賞といわれる米電気電子学会の「ゴードン・ベル賞」(価格性能部門)を受賞した。なんと、市販の画像処理装置(GPU)を760個つないで、独自のソフトで制御した結果、地球シミュレータの性能を上回る速度を達成することに成功したのだ。かかった費用は3800万円だという。
今回、仕分けられてしまったスパコンは総工費1150億円だから、少なくとも「速度」だけを見ているかぎりは、もっと安価な方法が存在することがわかる。だとしたら、なぜ、巨額の費用を投じて世界各国がスパコン開発にしのぎを削っているのか? その理由は、今あるゲーム機や画像処理装置をつないでも出てこない、画期的な新技術や特許といった「波及効果」が見込まれるからなのだ。でも、その波及効果は、実際にスパコンをつくってみないとわからない。今回の事業仕分けにより、長期的な視野が必要とされる科学技術開発の難しさを、改めて実感させられた。

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