毛のフシギ探偵事務所

第12回 呪術・信仰と髪の毛の不思議な関係

2011.02.09 WED

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こちらはヴィクトリア女王時代に大流行したセンチメンタルジュエリーのひとつ。19世紀半ばになると、髪の毛だけで作ったブレスレットやブローチなども登場したそう 画像提供/穐葉アンティークジュウリー美術館

お坊さんはなぜ髪を剃っているの?



頭脳明晰や長寿を祈り、赤ちゃんの髪の毛で筆を作る「胎毛筆」や、毛髪を神仏にお供えして諸願成就を願う「髪供養」など、日本には髪を特別なものとして扱う風習がいくつかある。前出のように髪をげん担ぎで大事に扱う風習もあれば、呪いのわら人形など、まじないに使うケースも。

なぜ、日本人は信仰や呪術に髪を用いるのだろう? 髪の毛と信仰や呪術との関係について、ヘアラルト阪神理容美容専門学校の理事長、半田まゆみさんに伺った。

「日本では奈良時代から、髪の毛の“髪”は神様の“神”であり、髪の毛は神様に通じるものと考えられていました。そのため、髪の毛=生命力のシンボル、命の化身、として崇められており、願掛けや呪いといった様々な信仰や呪術に使われてきたのです。命の化身と捉えていたくらいですから、『髪は体の一部』という意識もかつては非常に強く、髪を切ることは指を切ることと同じような感覚だったんですよ」

「胎毛筆」や「髪供養」、呪いに使われる背景には、そういった考え方があったんですね。

「ただ、髪を崇める文化や風習は日本だけではないんですよ。例えば、ネイティブアメリカン。彼らの世界では“毛根が生きていたら、魂はまた甦る”という考えがあるほど、髪を尊いものだと捉えています。なので、彼らは身内が死んだり、抗議運動をする時など、何か大きな出来事がない限り、髪を切ることはありません。そして、スピリチュアルな髪は信頼している人にしか触らせないのです」

へぇ~!  「また、ヨーロッパには、亡くなった身内や大切な人の髪の毛をブレスレットやブローチにする『センチメンタルジュエリー』というアクセサリーがあります。ヨーロッパの人々も髪の毛には魂が宿っていると考えているのです。髪に魂が宿るといえば、ヒンドゥー教も同じ考え方で、サドゥーと呼ばれる修行者たちは髪を切らずに伸ばしているんですよ」

なるほど。では、同じ修行者でも、仏教のお坊さんが髪を剃るのはなぜなんですか?

「仏教では、髪は権力や精力の象徴であり、身体装飾をするのに最も適した場所という考えが強いからです。仏の道に入るには、権力や自由はもちろん、自分を飾りたいという欲望などを捨てなければいけません。それらを放棄するという意志を、髪を剃ることで表しているのです」

お坊さんの坊主頭にはそんな意味があったのか。ちなみに、もうひとつ宗教つながりでいうと、イスラム教の女性が髪を隠すのは、髪=性的なものと捉えられているため、髪を出すことは裸をさらけ出しているのと同じことだと考えられているのだそう。

いやぁ…髪と信仰がそこまで深く結びついているとは驚きました。命の化身、魂が宿る場所…どれもとっても神聖でおごそか。持って生まれた自分の髪を、これからは一層大切にしていきたいと思います。 毛のフシギについて探ってきた本企画は、今回で最終回となります。
今までありがとうございました。

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