世の中の「要するに」をクイズで学ぶ

ウナギショック!

2012.09.06 THU

理化学ドリル


年々稚魚の漁獲量が減少し、価格は高騰。アメリカでは絶滅危惧種としてワシントン条約の規制対象に含める検討までされている。それでも食べたいのがウナギ。人間だけでなく、アオサギもウナギが大好物?
写真提供:あゆたか/PIXTA
【問1】ニホンウナギの産卵場所は次のうちのどこか?

(A)奄美大島 
(B)瀬戸内海 
(C)マリアナ諸島沖

【問2】ニホンウナギの資源量は1970年と比べてどれくらいに減っているか?

(A)60%
(B)30%
(C)10%

【解説】アインシュタインが相対性理論を考えていたころ(1904年)、デンマークのヨハネス・シュミットは、地中海や北大西洋でレプトセファルス(個人的な愛称で「レプト君」と呼ばせてもらう)を採取しまくっていた。レプト君は孵化してエサを食べ始めたばかりのウナギの仔魚だ。膨大な調査の結果、シュミットは、「船の墓場」と呼ばれた北大西洋のサルガッソ海で、体長10mm以下の、孵化した直後のレプト君を発見。これにより、ヨーロッパのウナギの産卵場所がほぼ特定された。また、驚いたことに、アメリカ東海岸のウナギの産卵場所もサルガッソ海だった。日本や東アジアに棲息するニホンウナギの産卵場所は長い間謎だったが、「ウナギ博士」こと塚本勝巳さんらの調査によって、日本から数千km離れたマリアナ諸島西方海域と判明した。何も食べずに数千kmを泳ぎ切るウナギの体力は、まさに「精の塊」というにふさわしい。

[正解] 問1: C 問2:C


竹内 薫 たけうち・かおる 1960年東京生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。マギール大学大学院博士課程修了(専攻は「超ひも理論」)。科学誌『Nature』などの翻訳も手がけるサイエンスライターであり、SF的な小説も執筆する。著書に『理系バカと文系バカ』(PHP新書)、『宇宙のかけら』(講談社)など多数

ウナギの故郷は、地殻とともに遠ざかった?



約3000万年前、ニホンウナギの祖先は(現在の)マリアナ諸島西方海域で産卵して、比較的近かった(現在の)東アジアで成長したらしい。だが、フィリピン海プレートの動きにより、産卵場と成育場がどんどん離れてゆき、現在みたいに数千kmの長旅をするようになったといわれる。ウナギは太古の昔、ご近所を行ったり来たりしていただけなのに、地球環境の方が変動して、気がついたら超長旅を強いられてしまったわけだ。
ところで、日本人にとって欠かせない味覚のウナギは、近年、資源量の減少が著しい。ニホンウナギは1970年のピーク時の10%、アメリカウナギやヨーロッパウナギにいたっては、1%にまで激減している。このままでは絶滅危惧種に指定され、食べるなんてもってのほか、ということになりかねない。
ニホンウナギの減少については、いくつかの理由が考えられる。たとえば、エルニーニョ現象の影響で海水温が変化し、産卵場所がちょっとズレると、孵化したレプト君が東アジアに帰るための潮流に乗ることができなくなってしまう。また、うまく潮流に乗って日本にたどりついても、いざ、川を遡上しようとしたときに堰(せき)が「関所」となってウナギの幼魚を通さない、という問題も指摘されている。さらには、食通の間に自然産のウナギへの執着があるため、資源が減っているともいわれる。いずれにせよこのままではウナギがどんどん減ってしまうので、積極的な保護が必要になってきているようだ。
「食」として、これだけ身近な魚でありながら、まだまだ多くの謎に包まれたウナギの生態。最近、ウナギ博士による『ウナギ大回遊の謎』(塚本勝巳著、PHPサイエンスワールド新書)が出たので、秋の読書にオススメしたい。

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