壊れにくいタンパク質、音力発電etc.

「大学内ベンチャー」創業の最前線

2013.09.06 FRI


デザインの印象などを心理学・工学の見地から定量化するBBStoneデザイン心理学研究所。写真は、何をどれだけ見ているか、眼球運動をもとに分析する装置 画像提供/BBStoneデザイン心理学研究所
大学ならではのアカデミックな開発力を武器に起業する、「大学内ベンチャー」が注目されている。たとえば、東京大学本郷キャンパス内に拠点を構える「ユーグレナ」。ミドリムシからバイオ燃料や食品を生み出すという革新的な技術をもとに事業を展開し、昨年末には株式上場を果たすなど、成功を収めている。

同社が入居しているのは、東京大学内にある「アントレプレナープラザ」。研究開発に対応できるラボが充実し、ベンチャー企業をサポート。ユーグレナ以外にも、革新的な技術で注目を集める企業が入っている。

そのひとつ、「ゲノム創薬研究所」は、医薬品を開発するバイオ系ベンチャー企業。実験動物として、ほ乳動物の代わりにカイコを用いる方法を開発し、医薬品などの共同研究や受託研究を行っている。

また、同じ東京大学の共同研究スペースである「駒場オープンラボラトリー」に入居する「ペプチドリーム」も、学内ベンチャーの注目株。壊れにくく改良したタンパク質の特殊ペプチドを開発している。特殊ペプチドが薬に応用できれば、難病の特効薬にも成り得るという。高い技術力が評価され、国内外の大手製薬会社と契約を結ぶことにも成功。今年、東証マザーズへの上場も果たし、資本金約27億の企業へと成長している。

他大学にも、元気な学内ベンチャー企業は存在する。慶応義塾大学発の「音力発電」は、音の振動を使って発電する“音力発電”の研究をしていた速水浩平氏が、同大学修士課程1年時に、25歳で起業。音力発電以外にも、振動を生かした振動力発電や温度差発電など、今まで使われていなかったエネルギーに着目し、環境発電分野で存在感を発揮している。

一方、その大学出身ではない人が、大学の知財をもとに起業した例も。

千葉大学発ベンチャーである、「BBStoneデザイン心理学研究所」の社長、日比野好恵さんは、夫である千葉大学の日比野治雄教授の開発した、「デザインに対する人間の心理を科学的に裏付ける」という研究に注目し、大学に掛け合って知財の独占権を獲得。現在は科学的な裏付けを持ったデザインコンサルティングを武器に、銀行の店舗デザインのコンサルティングや、紙幣デザインの調査などを請け負っている。

どの企業も、設立にあたって大学側から資金的な援助はなかったというが、学内ベンチャーならではのメリットは他にあるようだ。「ゲノム創薬研究所」の関水信和財務本部長はこう語る。「大学内にあることで、教授らとの情報のやり取りもスムーズに行えます。またアントレプレナープラザでは、一般のラボでは扱えない病原性細菌が扱え、そのメリットは大きいです」

また、大学によっては経営面のサポートを実施するところもある。東京大学では、日頃から会社の起業に携わる会計士との相談会や、アントレプレナー道場と呼ばれる起業精神を鍛えるビジネスセミナーなどを開催。学生や教授のベンチャー起業を後押ししている。

様々な分野で成長を続ける学内ベンチャー。「知」を武器に、世界へ羽ばたく大企業へと変貌を遂げるのも、遠い未来ではなさそうだ。
(末吉陽子/やじろべえ)

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