時代とともに変わる人気曲…

楽曲の変化と音域の重大な関係とは

2013.10.29 TUE


AMラジオなんかで昔のヒット曲を聴くと、今のヒット曲に比べて音が平坦な気がしませんか? いい換えると、高音がキンキン、低音がドンドンと響かなくて、なんだか耳に優しいというか。

時代ごとのヒット曲と「音域」には何か関係があるのかも?ということで、ポピュラー音楽の歴史に詳しい京都精華大学の安田昌弘准教授にお話を聞きました。

「歴史をさかのぼると、蓄音機のラッパに向かって吹き込んでいた時代には、高音域や低音域がハッキリと録音・再生できませんでした。そのため、レコードとして商品化される音楽には、中音域を主に使った楽曲が多かったんです」

昔はしっかり聴こえる中音域を生かした楽曲がレコードとして発売されていたんですね。

「録音用マイクロフォンが発達して、ステレオで高音から低音まで粒がそろって聴こえるようになってきたのが60年代ごろ。このころから、徐々にレコードでも生演奏に近い音域が出せるようになっていきました」

なるほど。今のように、高音や低音が強調され始めたのはいつごろですか?

「90年代にCDラジカセが普及したことが、『ドンシャリ』(ドン=低音と、シャリ=高音が強調された周波数特性)が興隆するひとつのきっかけです。ラジカセはスピーカーの口径が小さく高音部が聴こえやすいので、バランスを取るために低音部も重視されるようになったんです。同時に、ヒット曲の傾向がメロディ中心のものから、リズム重視のものに変化しました。EAST END×Yuriの『Da.Yo.Ne』(94年)や宇多田ヒカルの『Automatic/time will tell』(98年)などが好例ですね」

ヒット曲の変遷には、録音環境だけでなく聴取環境の影響もあると。ちなみに、最近では携帯音楽プレーヤーで音楽を聴く人も増えていますが、そのことで楽曲に変化はあったんでしょうか?

「音域・音質の面では、今のヒット曲も相変わらず『ドンシャリ』が重視されています。変化があったとすれば“音圧”の面。開放型のヘッドホンでは音が思うように耳に届かないことが多いため、“聴きどころ”の音圧を上げる傾向にあります。そうすると音の細かなニュアンスは埋もれてしまうので、生楽器による“音の表情”などが分かりにくくなっているかもしれませんね」

メロディや歌詞だけではなく、“音”に注意して、時代ごとのヒット曲を聴き比べてみると面白そうです。
(安藤大智/blueprint)

※この記事は2011年02月に取材・掲載した記事です

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