冷凍技術の進化?食文化の変化?

昔は廃棄?トロが高級になった理由

2014.07.05 SAT


写真提供/APImages
ピンク色の身にうっすら入った白いサシ食べると甘い香気とともに舌の上でとけてゆく。マグロのトロといえば、もっとも人気のある寿司ネタだ。当然、値段もそれなりにはる。ところが信じられないことに、トロが普通に食べられだしたのは60年代からだという。なんと、それまでトロはほとんど捨てられていたようなのだ。な、なぜ、そんなもったいないことを!?

『日本一うまい魚のごはん』(中経出版)の著者として知られる築地マグロ仲卸「鈴与」の生田與克さんに聞いてみました。

「まず保存の問題があるわけよ。今は、魚を獲って冷凍してから販売店舗まで途切れなく低温に保つコールドチェーンという流通形態がある。だから、鮮度がいいなんて当たり前なの。これが確立してきたのが60年代後半ごろなんだ。それまでは、市場内で解凍してた。トロって脂身なんで一番傷みやすいだろ。人気もないし、売れなかったから市場で捨てちゃってたってわけ。そのなかから使えそうなのを拾って、10円寿司みたいな屋台で出してたんだ。だから、食べてたのは苦学生とか、お金のない人たちだよね。なにしろ安いから」

それが、なぜ高級食になったんですか。昔は人気もなかったとのことですが。

「日本人の味覚が変わったんだよ。基本的に和食ってサッパリ系だろ。脂の味は好まれなかったんだ。それが戦後になって食生活が洋風化してきて、だんだん需要が伸びてきた反面、本マグロが獲れなくなってきた。あとはマスコミの宣伝だよ。トロは脂が乗ってて美味いのに希少だってんで、すっかり高級食になっちまったんだね」(同)

そもそも江戸時代、マグロは一般的にシビと呼ばれ、「死日」につながるということで縁起の悪い下魚だったそうだ。それがいまや、本マグロのトロといえば最高級食材である。冷凍技術の進化のおかげで、どこでもトロが食べられるようになった。が、逆に値段は跳ね上がったわけで。何とも悩ましい話なのであった。

※この記事は2011年10月に取材・掲載した記事です

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