爪切りや口笛…

あの「夜のタブー」その根拠は?

2014.08.19 TUE


何かと忙しい現代人は、爪を切るのもついつい夜になりがち。「どうせ迷信じゃん」とタカをくくっていると、もしかしたら、こんな目に遭ったりして… イラスト/BOOLAB.
「夜、爪を切ると早死にするぞ」…。子供のころ、両親や祖父母から、そんなふうに注意された人は多いのではないだろうか。爪切りのほかにも、口笛を吹くのもダメ、新品の靴を使うのもダメ、と、夜にやってはいけないことって何かと多い。これって、何か理由はあるのだろうか? 国立歴史民俗博物館の副館長、常光徹さんにお話を伺ってみた。

「いくつか理由はありますが、よくいわれるものとして、『悪霊が悪さをするから』という考えがあります。昔は多くの人が、悪霊や物の怪(もののけ)といった、目に見えない存在を信じていました。特に夜間は、それらが活発に活動する時間だと考えられていたんです。だから、口笛や大声などは、霊を刺激する行為として避けられていました。また、夜の爪切りが嫌われるのは、切った爪などの体の一部に悪霊がとりつくと、その本体にまで災いをおよぼすと考えられたため。ほかにも、爪の間から悪霊が入るという言い伝えもあります。特に、いちばん大きい親指は悪霊に狙われやすいと考えられ、地方によっては『夜に外出をする時は親指を隠せ』というタブーもあったそうです」

いつの世も幽霊が出るのは夜と相場が決まっているし、確かに納得できる話。ほかにはどんなものが?

「語呂合わせを理由とするものもあります。たとえば、塩は『死夜(しよ)』という言葉に通じるため、夜に買ったり使ったりしてはいけないとされていました。先ほどの爪切りも、『夜爪(よつめ)』が、『世を詰める』、つまり早死にに通じるので縁起が悪い、という見方もあったようです」

いろいろと理由はあるけれど、結局のところ、こういったタブーはすべて、単なる迷信や語呂合わせだったということか。

「いや、そうとも言い切れませんよ。江戸時代などは日が沈むと外は真っ暗で、家の明かりもロウソクだけ。昔は短刀で爪を削っていたので、薄灯りでは手元が狂ってケガをすることも多かったはず。また、大きな声や口笛も、密集した長屋や静かな村の中では、お隣さんの迷惑になったかもしれません。そういった無用なトラブルを避けるための生活の知恵、という側面もあるのではないでしょうか」

不思議な夜の言い伝えは、実は快適に暮らすための知恵でもあったようだ。むしろ、悪者にされた霊がかわいそう!?
(森石豊/Office Ti+)

※この記事は2010年09月に取材・掲載した記事です

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