あのニオイのもとを探究せよ 第2回

焼けるニオイが食欲をそそるワケ

2015.05.12 TUE


肉、魚、米…いずれも焦げの香ばしいニオイが食欲をそそる。「焦げを楽しむことは、火をコントロールする楽しさでもあります」(坂井先生) 写真提供/PIXTA
嗅ぐだけでお腹がグーと鳴るような食欲をそそるニオイは色々あるけれど、なかでも強烈に惹きつけられるのは食材を焼くときのニオイだ。焼き網の上でジュージューと音を立てる肉の旨そうなニオイ、熱いフライパンの鍋肌に注いだ醤油のニオイ…。食材が少し焦げてきたときの香ばしいニオイを想像すると、恥ずかしながら若干ヨダレが垂れてくる。

でも、なぜ僕らはこういった「モノが焼けるニオイ」に食欲をそそられるのだろう?

「まず、ニオイ物質は温度と湿度が高いほど揮発しやすいという特性があるので、食材を加熱して温度が上がればニオイは大きく広がります。また、食材が焼けてくるとカラメルのような褐色物質が生じますが、これは糖やアミノ酸などを加熱すると生じる“メイラード反応”によるもの。この反応時に、アミノ酸の種類や加熱温度によって様々な香気成分が発生します。これに食欲をそそるニオイが多いんですよ」

と教えてくれたのは、ニオイの影響を研究している東北大学大学院の坂井信之准教授だ。基本的に「食欲をそそるニオイ」は経験によって学習されるもので、これまでに食べて美味しいと感じたものから個々人がそれぞれ学んでいくんだとか。また、同氏によるとモノが焼けるニオイのなかでも、特に焦げるニオイは人にとって特別だとか。

「我々ヒトの嗅覚は焦げるニオイに対して非常に敏感で、ごくわずかな焦げ臭も素早く検知できます。太古の昔から火を道具として使い、その危険性と隣合わせで生きてきたヒトの歴史が、嗅覚に遺伝子レベルで組み込まれているのかもしれませんね」

一歩間違えれば危険な火という道具をコントロールしてきた人類だからこそ、焼けるニオイには敏感に反応してしまうのか。食材が焼けるニオイを嗅ぎつつ焦げる寸前で火を止める絶妙なさじ加減は、本能に根ざした人類の叡智なのかも。
(呉 琢磨)

※この記事は2012年5月に取材・掲載した記事です

取材協力・関連リンク

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト