遺伝子操作で筋力増強

走っても疲れない太らない究極のマラソンマウスとは?

2004.09.30 THU

トレーニングをしなくてもほかのランナーをはるか後方に引き離して長時間力強く走り続けることができる――。遺伝子操作によって、こんな“究極のアスリート”が作り出されたという。といってもこれは「マラソンマウス」、つまりマウスを使った研究の話なのだが、それにしても凄いことには違いない。

なにしろ、米ソーク研究所などが学術誌『パブリック・ライブラリー・オブ・サイエンス・バイオロジー』電子版に発表した研究結果によると、研究チームは脂肪の燃焼を促進する働きがあるPPRPデルタ遺伝子を操作することで、通常のマウスに比べて2倍の距離を走り続けられるマウスを作り出すことに成功。走行器具上の実験では、トレーニングをしていない普通のマウスが約900mを走ったところで疲れ切ってしまったのに対し、遺伝子操作されたマウスは1800mを走り抜き、その持久時間も普通のマウスより1時間長い2時間半に及んだというのである。

しかもこの遺伝子操作が凄いのは、たんに疲れないだけじゃなく、脂肪燃焼に効果的な「遅筋」が発達するのでいくら食べても太らない身体になるということ。そのため研究チームのリーダー、ロナルド・エバンス博士も「肥満や糖尿病などの治療にも役立つ」と胸を張るのだが、ただ、マラソンマウスにも問題がないわけではない。

その問題というのは「遺伝子ドーピング」。そう、この研究を人間に悪用することによって、近い将来、超強力なスポーツ選手――「マラソン人間」が登場するのでは、と懸念されているのだ。そのうえ博士によると、遺伝子操作の検査は薬物検査よりはるかに難しいという。そうなったらおそらく、史上最多の失格選手を出したアネテ五輪どころの騒ぎじゃないだろうが、一方で、この遺伝子操作が車椅子利用者やエイズ、筋ジストロフィーといった病気を持つ人たちにとって朗報となるのも確かなのだ。画期的な研究とは、常に功罪が背中合わせなのかもしれない。

関連キーワード

注目記事ピックアップ

 

編集部ピックアップPR

ブレイクフォト