ビジネスパーソンインタビュー
順風満帆すぎて悔しいッ(?)ので、悩みを直撃してきました
53億調達、守安氏招へい…快進撃つづける24歳経営者「タイミー」小川嶺の“深い悩み”とは
新R25編集部
面接や履歴書も不要で即日入金される“スキマバイト”の領域で成長を続ける企業「タイミー」。
先日の守安功氏(元DeNA代表取締役社長)のCOO就任や、53億円の資金調達でも大きな話題となり、今もっとも注目を集めているスタートアップと言っても過言ではないでしょう。
タイミーCEOの小川嶺さんは、なんと1997年生まれの24歳。その手腕に、ベンチャー界隈が驚愕する若手経営者です。
しかし、等身大なやっかみを信条とする新R25は考えました。
若くしてこんなに順風満帆な小川さんも、何かに悩んでいてほしい…。リアルな悩みが聞いてみたい…。
そこで今回は、「小川さんが最近悩んでいて、人にきいてみたいこと」について、掘り下げてみました。
気鋭のスタートアップ経営者の、ほかでは見られない悩みが垣間見られますよ!!!
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
直撃してみたら、若き経営者ならではの悩みがやっぱりありました…
天野
ここのところのタイミーの快進撃はすごいですよね。超順調そうですが…何か悩みってないんですか?
小川さん
そうですね…いま順調と言われましたが、そんなにカンタンなわけはなく…
最近の大きな悩みのひとつは「ブランドづくり」です。タイミーというブランドを、どう世の中に位置付けていくか。
小川さん
とくに採用の領域では悩みが深くて…エンジニアさんを採用したあとに、たまに言われることがあるんですよ。
天野
なんですか?
小川さん
「入ってみたら、意外と大人っぽい会社だった」って。
あー…
天野
「若い会社」みたいなイメージなんですかね…ベンチャーベンチャーしているというか。
小川さん
そうですね。やっぱり社長である自分の印象が強く、「若社長」「学生起業」みたいなイメージがつきすぎてると思うんです。
ただ、実態はもうちょっと違うので、いかに学生イメージを剥がしてくかっていうのが大事だと思ってて。
持っていきたいブランディングの方向性を社内から定着させるために、オフィスの会議室にも名前をつけたんです。今いる会議室の名前は「Road(道)」。隣の部屋は「Water crew(水道)」なんですけど…
天野
共通点はなんだろう…
道という漢字が入っている。「僕らの進むべき道」的な…
自分で言ってて違うなと思いました
小川さん
僕らはタイミーを働くための「インフラ」にしたくて。それで、会議室にインフラにまつわる名前をつけてるんです。
天野
なるほど!インフラか…
小川さん
いまタイミーのユーザーさんは200万人。 “若い人のサービス”というフェーズからは変わってきている。
「働いてすぐお金をもらう」っていう単発バイトのサービスではあるんですけど、“すぐお金がほしい人が集まる”って認知だけではなく、副業で使っていただいたり、“スキマ時間の有効活用ツール”ととらえていただいたり…
小川さん
そんなふうに幅広い層が働く際に必要な「インフラ」にならなければいけないと。
蛇口をひねったら必ず水が出るように、タイミーを開いたときに必ず仕事があるとか、必ず人が来てくれるとか、その「必ず」をつくっていくという思想があるんです。
天野
すごいパブリックなものをつくってるという視点なんですね。
小川さん
そうなんです。たとえばシャンプーみたいに形のあるものとは違って、感覚的にしか触れられない“無形のブランド”。これは難しいなあと頭を悩ませているんですよね…
天野
そんな難問を、どういう人に聞いてみたいですか?
小川さん
うーん、メルカリの小泉文明さん。
メルカリも、数年前には“現金出品”とか問題になっていたところから、今の確固たるインフラとしての地位をつくっている。どういうブランディングをしたのかなと聞いてみたいですね。
※現金出品=多重債務者など、すぐ現金が必要な人のニーズに応えるかたちで、メルカリで現金が出品されるという事態が発生。現在では現金の出品は禁止されている
「退職ツイート」がいくつか…。またリアルな悩みが出てきてしまいました
天野
めちゃくちゃリアルな悩みを教えていただきましたね。
でも、まだまだ聞きたいなと思います。組織のフェーズが変わってるタイミングと言ってましたし、ほかにもあるんじゃないですか?
小川さん
これもけっこうリアルなんですけど(笑)、「長く働きたくなる組織のつくりかた」は経営者として悩んでるというか、ぜひ聞いてみたいなと思いますね。
天野
言っていいのか迷ってたんですが、小川さんのツイッターを見てたら、以前からのメンバーが「退職しますツイート」をしてるのをいくつか見かけまして…
小川さん
そうなんですよね。最近、創業メンバーに近い人が辞めるようなことがあって、そういう時期なのかなと…
彼らもタイミーのことは変わらず好きでいてくれていますし、スキルアップした彼らとまた一緒に働くことができればうれしいと思ってます。
ただ、会社が拡大するためには人がしっかり定着して、みんなが活躍するチームをちゃんとつくっていく必要があるのは間違いない。
天野
いま考えている解決策はあるんですか?
小川さん
解決策はですね…ないから聞いてみたいんですけど(笑)。
天野
なるほど(笑)。
小川さん、たぶんすごい正直な人だわ
天野
そういう悩みに答えてほしい人で言うと、やっぱり経営者になるんですか?
小川さん
経営者ですね。
以前、サイバーエージェントの藤田晋社長とお会いしたときに、「ボードメンバー(※上層部、主要メンバーの意)は優秀な人より『信頼できる人』がいい」って言われたことがあるんです。そういう言葉の真意とか、もっと聞いてみたいなと。
あとはSmartHRの宮田昇始さん。いま新しい会社や事業をつくってるけど、あれは社内転職を活発にして人材が留まってくれるようにする意図なのかな?とか。
天野
そういう意図で新規事業やるってことがあるんですね。
小川さん
組織を本気で考えてる経営者だったらあると思いますよ。
あとは、ビジョナルの南壮一郎さんとか。「ビズリーチ」をリリースしてから10年経って上場もしてて、以前からのメンバーがどれくらい残っているのかとか、やっぱり気になります(笑)。
若くしてこれだけ成功しちゃうと、鼻高々にならないの?
天野
小川さん、ご自身も実際にタイミーを使って働いているところをnoteに書いたりして発信されてるじゃないですか。これは“ブランドづくり”を考えてやってたりするんですか?
小川さん
いや、それはブランディングということではなく…経営者たるもの自社サービスを愛してなきゃいけないし、熟知してなきゃいけないと思うのがひとつ。
小川さん
もうひとつは、ワンクリックでモノが自宅に届く時代ですけど…裏でどういう方々がどういうふうに働いて届いてるの?っていう。
“世の中の裏表”を直で感じないと、自分がこういう会社をやれている“ありがたみ”を感じられていないんじゃないかと思うんです。
自分でピッキング・仕分けすることによって、いろいろと見えてくるものがあると思ってやってますね。
素晴らしすぎる理由だった
天野
24歳にしてこれだけの企業をつくっているのに、小川さんはいつもかなり謙虚な印象ですよね。
小川さん
それは祖父の影響が大きいですね。今はいろいろあって無くなってしまったのですが、祖父は、曾祖父がおこした牧場などの経営を間近で見ていて…
その経験からだと思うんですが、僕は幼いころから「常に謙虚であれ」「鼻の下を伸ばすな」と教わってました。
天野
でも、大きな資金調達もして急成長してると、どうしても調子に乗っちゃうときってありません?
小川さん
僕はたぶん、この程度で鼻高々になってる人がいたら、「その程度の人なんだな」「そこでもう終わっちゃうんだな」って思いますね。
なるほど、その程度の視座で質問していることがあぶりだされましたね
小川さん
謙虚と言ってもらえるのは、描いている理想から考えたら、いまの成長ではまったく遅いと思ってるからです。
今の成長がマックスだとはまったく思ってない。むしろ改善したいところばかりだから、謙虚で当然なんですよ。
天野
なるほど、視座の高さがあるからこそ…
小川さん
だって「働くためのインフラ」という理想からしたら、現状はまだまだですよね。もっとハングリーに、理想を追わなきゃって思ってます。
「こんなもんじゃない」と言わんばかりの小川さん。最後まで感服することしきりでした…
急成長しているスタートアップだからこそぶつかる「ブランディング」「職場環境」についての悩み…。予想以上に腹を割って暴露してくださった小川さん、ありがとうございました。
皆さんも、ユーザー視点から「ブランドイメージが向上したと思う企業・サービス」、さらに「長く働きたいと思う職場環境」について、ぜひ自身の意見・知見を発信してみてください!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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