ビジネスパーソンインタビュー
ふつうの会社員が、税理士さんとかかわる機会ってなくない…!?
“カタい仕事”は大間違い!? 今、若手にとって税理士が「将来なりたい職業」として有力なワケ
新R25編集部
「税理士」は、若者にこそチャンスがある仕事。
…と言われると、意外な気がしませんか?
税理士さんとかかわる機会なんて皆無だし、実態がわからなさすぎて「なんかカタそう」というボヤッとしたイメージしかないのが正直なところ。
そんな筆者に「税理士はもっと身近で人間味あふれる仕事なんですよ!」と教えてくれたのが、日本税理士会連合会 広報部長の前川武政さん。
身近と言われても…税理士さんって、そもそもどんな仕事をしてるの? R25世代のビジネスパーソンが深くかかわる機会なんてあるの?
根掘り葉掘り聞いてみたところ…「若者にこそ税理士をオススメする理由」、そして「税理士という仕事の熱き“ドラマ”」を熱弁してくれました…!
〈聞き手=石川みく(新R25編集部)〉
「税理士=ベテランばかり」じゃない。若手にこそチャンスがある理由
前川さん
私が今日一番お伝えしたいのは、“将来なりたい職業”として税理士は非常におすすめであるというお話なんですよ。
石川
税理士って正直、若手ビジネスパーソンからするとかなり「遠い存在」だと思うのですが…
税理士になるとどんなメリットがあるんですか?
前川さん
たくさんありますが、まず「安定した収入」は外せないでしょう(笑)。
やっぱり稼げるんだ(下世話)
前川さん
というのも、税理士には「定年」がないんですよ。
資格さえ取れば一生税理士として働けるうえに、経験を積むほど右肩上がりで収入が増えるので…いわゆる一般企業にお勤めの方より、生涯年収は多いかもしれません。
石川
とはいえ、資格を取るのって大変なんですよね?
前川さん
働きながらでも取りやすいように「科目合格制」という仕組みを取っているので、みなさんが思っているほど過酷ではないんですよ。
石川
科目合格制…?
前川さん
全5科目を1科目ずつ受験できて、一度受かった科目は生涯「合格」扱いになります。
全科目を一気に受けなくていいので、働きながらでも取得しやすいと思います。
石川
ただ、税理士さんってベテランが多いイメージなんですが…
若手が活躍できるチャンスはあるんですか?
前川さん
むしろ、“若手の方にこそチャンスがある”と言えます。
税務の世界でもIT化が進んでいますし、なにより税法は毎年変わるので、毎年知識をアップデートしていく必要があるんです。
知らなかった
前川さん
税の知識もITの知識も、過去の経験だけではまかなえません。
むしろ、「変化に強い若手税理士のほうが相談しやすい」という声をお客さまからいただくことも多いので、ますますチャンスが広がっていくと思いますよ。
石川
ちなみに税理士さんって、どうやってキャリアアップするんですか?
前川さん
いろんな選択肢がありますよ。
独立したり、大手の税理士法人で経験を積んだり…私の場合は、開業からお手伝いをしていた企業の取締役を務めていたこともあります。
自分のキャリアを自由に選べるのも、税理士のメリットですね。
収入、働きがいだけじゃない。現役税理士が体験した「ドラマみたいな瞬間」
石川
そもそも税理士さんって、どんなお仕事をされてるんですか?
前川さん
一言で言うと、私たちは税にまつわる“唯一のプロ”。
税理士だけがかかわることを許された「独占業務」があるんですよ。
石川
独占…! 具体的にはどんな?
前川さん
税理士の独占業務はこの3つ。たとえば確定申告の書類は、本人以外では税理士しか作成してはいけないと定めてられています。
税理士の独占業務
① 税務書類の作成:税務署に提出する申告書などの作成
② 税務代理:納税者の代わりに税務署に税金の申告や申請
③ 税務相談:税金にまつわる相談
石川
すごそうな雰囲気は伝わるんですが…私のような一般会社員が、税理士さんとかかわる機会ってあるんですか?
前川さん
一番身近に感じていただけるのは、やはり「確定申告」ではないでしょうか。
会社員の方も、医療費がかさんだ場合や住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合は確定申告をする機会がありますよね。
前川さん
あとは「相続税」も、多くの方が頭を悩ませる問題です。
今は“終活”も流行っていますので、「子どもにどうお金を分配したら税金が減らせるの?」といった相談を受けることも多いですよ。
石川
でも、相談にはお金がかかりますよね?
前川さん
じつは無料で相談いただける機会もたくさんあるんですよ。
たとえば確定申告の時期に全国でおこなっている「無料相談会」。初心者の方でも最後まで申告を終えられるようにサポートしています。
石川
最後まで…手厚い!
前川さん
確定申告の時期以外にも、全国で無料税務相談をおこなっています。
「起業したい」「法人化したい」などのご相談はもちろん、「収入が増えたときの扶養控除への影響」といった“ちょっとしたお悩み”にもお答えできます。
石川
へぇ! 意外とフランクに相談できるんですね。
前川さん
もちろん!特に会社員の方は「税理士に相談しよう」という選択肢自体をお持ちでないかもしれませんが…どなたでもお気軽にご相談いただいていいんですよ。
税金のことで迷うことがあれば、「とりあえず聞いてみるか」くらいの気持ちでぜひ無料相談にいらしてください。
前川さん
ここで、ひとつお伝えしておきたいのが…
税理士というのは、みなさんの想像以上に人間味あふれるお仕事なんですよ。
お金のことって、相談できる人がかなり限られますよね。
石川
そうですね…友人には言いづらいかもしれません。
前川さん
だからこそ税理士は、お客さまがお金のことを気兼ねなく相談できる“唯一の存在”になりえるんです。
必然的に、家族かそれ以上の深いお付き合いをさせていただくこともたくさんあって。
前川さん
私自身の経験をお話しすると…長くお付き合いがあった、年配の経営者の方がいらっしゃったんですよ。
私のことを「お兄ちゃん」と呼んでかわいがってくれていたんですが、その方が病床に臥してしまって。
石川
ふむ…
前川さん
それでお見舞いに行ったら「お兄ちゃん、これ預かっといてくれへん?」って…手書きの遺言書を渡されたんです。
石川
え! いくら長い付き合いとはいえ、他人ですよね…!?
前川さん
私自身「いいのかな?」と思いつつ…責任を持ってお預かりして、ご遺族の相続の話し合いまで立ち会わせていただきました。
税理士のやりがいって、こういうことなんだと。これはすごい仕事だぞと思いましたね。
石川
ドラマみたいな話だ…税理士さんのドラマができたら流行るのでは…?
前川さん
そうなったらうれしいですね。本当はこういう話を2時間くらいできますから(笑)。
2時間聞きたいところですが…次行きましょう!
“税務のプロ”であると同時に、“コミュニケーションのプロ”でありたい
石川
正直、税理士さんってもっとシステマチックなお仕事なのかと思ってましたが…むしろ人間臭いというか…人生に寄り添うお仕事なんですね。
前川さん
そうなんです!
だからこそ、税理士がみなさんにとって“遠い存在”になってしまっているのが課題だなと思っていて。
私自身、子どもに「お父さんはなんのお仕事をしてるの?」と聞かれて「税理士だよ」って説明しても、キョトンとされてしまうのが悩みなんです(笑)。
がんばれお父さん…!
前川さん
もっともっと税理士を身近に感じていただくために、「その声に、税理士。」というキャッチフレーズで、さまざまな発信を増やしているところです。
たとえばこの「What's税理士」という動画では、税理士の実態ややりがいを詳しくお伝えしています。
YouTubeだけでなく、TwitterやInstagramを使った発信の準備もしているんですよ。
「AIに仕事を取られないの?」「税理士に向いている資質って?」など、“税理士のリアル”がわかりやすく解説されています
前川さん
先ほど言っていただいた「寄り添う」という言葉が、まさに税理士を表すのにぴったりだなと思います。
税金の計算だけなら、資格を持っていれば誰でもできます。将来的にはAIに取って代わられる可能性もないとは言えません。
でも、私たちが本領発揮するのはその先の「コミュニケーション」です。
前川さん
お客さまがわからないことを察知して、的確なアドバイスをする。税金や経営のことだけでなく、お客さま個人の人生にも寄り添って、深い深い信頼関係を築く。
税理士は“税務のプロ”であると同時に、“コミュニケーションのプロ”でありたいんです。
石川
アツい…! お話を伺って、純粋に楽しそうなお仕事だなって思えました。
前川さん
ありがとうございます(笑)。
日本で生きる以上、税金は切っても切りはなせません。少しでも不安や迷いがあれば、ぜひ気軽に頼っていただけるとうれしいです。
そして…税理士に「なりたい」と思ってくれた方! ぜひ、一緒に働きましょう!
税理士は、人生に寄り添う“コミュニケーションのプロ”。
正直、けっこうカタめな取材になるだろうな…と身構えていたのですが、予想に反しエモい話がうかがえて胸がいっぱいになってしまいました。
自分では解決できないトラブルが起きた際も、「税理士さんに相談しよう」という選択肢を持っているだけでも気が楽になるはず。
税金のことはわからないことだらけですが…頼れる税理士さんと深いコミュニケーションを取りながら、なんとか乗り切っていきましょう!
〈取材・文=石川みく(@newfang298)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)/構成=山田三奈(@l_okbj)撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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