佐々木紀彦著『起業のすすめ さよなら、サラリーマン』より

佐々木紀彦が「人生をやり直せるなら、スタートアップ幹部5年→32歳で起業する」と語る理由

仕事
世の中を変えたい、何か面白いことをしたい

キャリアを重ねていくなかで、新しい挑戦に興味がある、このままじゃいけないと感じるビジネスパーソンは多いのではないでしょうか。

そんな方々に、NewsPicks創刊編集長の佐々木紀彦さんは「組織の内外で起業家として事業を立ち上げるべきです」と“起業”を提案。

著書『起業のすすめ さよなら、サラリーマン』では、起業には5つのキャリアコースがあるとつづっています。自分に合う起業タイプを知ることは、成功の可能性を高めていくんだそう。

5つのなかで一番起業の成功率が高いタイプとは…?
起業のすすめ

起業のすすめ

起業型キャリアの5つのタイプ

具体的に起業家になるにはどんなコースがあるのでしょうか?
起業型キャリアを5つのタイプに分けて紹介していきましょう。

(1)成長志向スタートアップ型
(2)プロフェッショナル独立型
(3)スモール&ミディアムビジネス型
(4)スタートアップ幹部型
(5)大企業イントレプレナー型

あなたのタイプを判定するために、最初に次の質問に答えてください。

Q1 アントレプレナーかイントレプレナーか。自ら会社を立ち上げたいか、組織の中で企業家になりたいか。

Q2 急激な成長を目指したいか? 株式上場を目標にしたいか?

Q3 個人で働くか?組織で働くか?
出典

『起業のすすめ さよなら、サラリーマン』

この3つの問いに答えれば、5つに分類できます。

まずQ1の答えが「アントレプレナー」で、Q2が「上場を目指す」の人は、「成長志向スタートアップ」です。

いわゆる、起業家のイメージにもっとも近いタイプです。自らの会社を急激に成長させるためにも、組織を作って、上場を目指すルートです。

Q1が「アントレプレナー」で、Q2は「上場を目指さない」の人は、個人で働くか、組織で働くかによって答えが変わります。

Q3が「個人」である人は、「プロフェッショナル独立」として仕事のプロとして生きる道が合っています。事務所などを作るとしても、数名くらいの人数で規模はいたずらに追わない形です。

Q3の回答が「組織」である人は、「スモール&ミディアムビジネス」がフィットします。

数人から数百人規模の会社を創って、安定的に稼げるモデル、急成長は目指さないまでも、安定的に成長させるモデルがいいでしょう。この場合、株式上場は目指しません。

イントレプレナーを目指す人は、Q2の回答によって道が変わります。

急成長かつ株式上場を目指す人は、未上場のスタートアップに入るのがベストですので、「スタートアップ幹部」になります。

できれば幹部メンバーとして、幹部でなければ初期メンバーとして入る形式です。スタートアップも発展段階により、求められる能力が異なります。

カオスの中で、ゼロからイチを創る醍醐味を味わえるのは、創業から3年以内くらいでしょう。創業期に近い方が、ストックオプションも多くもらえる可能性が高いため、金銭的なインセンティブも高まります。

大組織の中で大きなインパクトを出すことを重視する人は、「大企業イントレプレナー型」です。

ただし、大企業内での新規事業や子会社の経営となるため、株式上場を実現できる可能性は高くないでしょう。

そもそも新規事業の場合、上場という選択肢はほとんどありません。それに加えて、日本に例が多い親子上場(親会社と子会社がともに上場する)という形は、株主(特に子会社の株主)の利益を損なう恐れがあるということで、下火になってきています。

サイバーエージェントの子会社として上場した、クラウドファンディングのマクアケなどの例はありますが、あまり主流とはならないでしょう。

有望なのは、大企業からカーブアウト(スタートアップとして分離独立)して、ゆくゆくは親会社の連結対象からも外れる形です。

例えば、エムスリーは、ソネットの子会社として設立された後に上場を果たして、子会社から外れました(現在は、ソニーが34%の株式を保有)。

エムスリーのようになれると、大企業イントレプレナーとして、成長志向スタートアップを超える社会インパクトや報酬を得られます。

まずは自分が5つのタイプのどれに当てはまるか、どれを目指したいのかをじっくり考えてみてください。

最も成功率が高いのは「スタートアップ幹部型」

4つ目の「スタートアップ幹部型」。これがもっとも有力な選択肢かもしれません。

いきなり起業するのは気が引けるけれども、スタートアップの幹部として経営を担い、ゆくゆくは自ら起業することも視野に入れるコースです。

私がいろんな人を見ていて、成功確率が最も高いと思うのは「大企業(外資でも日本企業でも)→スタートアップ幹部→自ら起業」というルートです。

自ら起業するまでの修業期間は人それぞれです。個人として「もう学ぶことは学んだな」と思った時に起業すればいいのですが、濃い経験を得るには、各キャリアを5年は経た方がいいとは思います。

大企業5年、スタートアップ幹部5年で、32歳くらいで起業するというのが王道でしょうか(繰り返しですが、人それぞれですので、あくまで目安です)。

私は41歳での起業となりましたが、もし20代から人生をやり直せるとしたら、このルートを選ぶと思います。

大企業はどこもクオリティが一定水準を超えているため、最初の大企業でどこを選ぶかは、そんなに大差はありません

それに対して、スタートアップは本当にピンキリです。どの会社を選ぶのかが人生を大きく左右します。

手痛い失敗をするのもいい経験になりますが、家族もいる人は、そんな失敗をする余裕はないでしょうから、当たりくじを引くに越したことはありません。

ということで、私の考える「賢いスタートアップの選び方」の5つのポイントを紹介します。

ポイント①創業者がいるかどうか

創業者が今なお経営陣にいるかどうか。これは決定的に重要です。

創業者とは、いわば天皇のようなもの。創業者がいないということは、天皇のいない日本みたいなものであり、教祖のいないキリスト教のようなものです。

ワークスアプリケーションズ創業者の牧野正幸さんが「創業者なきスタートアップはマシーンみたいなもの」と表現していましたが、その通りだと思います。

創業者なき後のスタートアップは、仕組みを回していくマシーンのようになり、新しい創造が生まれにくくなるということです。

スタートアップの最大の強みは、創業者が作ったカルチャーであり、事業であり、早い意思決定です。

これがなくなると、リソースが豊富な大企業に勝てる見込みは薄くなります。

ポイント②創業者が好きか嫌いか

創業者がいる会社で、次にチェックすべきは、創業者との相性です。

スタートアップは文化が大事ですが、その文化は創業者の価値観を反映したものに他なりません。

つまりは、その創業者が好きか嫌いかと、その会社の文化が好きか嫌いかは、ほぼイコールなのです。だからこそ、創業者と自分の相性はとてつもなく重要です。

正確に相性を見極めるためにも、面接の際には、創業者と会えるようにリクエストした方がいいでしょう。

それがダメでも、メディアに出ている記事(本があればなおいい)を読めば、ある程度のことはわかります。ただし、記事や本の言葉は、綺麗なPR上の言葉も多いため、盲信してはいけません。

望むらくは、イベントなどの登壇で「生の姿」を見たいところです。

オーラがあるか、スピーチに引き込まれるか、他の人の話をどんな佇まいで聞いているか、待ち時間に何をしているのかなど、映像とはまた違った顔を覗けるはずです。

ポイント③ビジネスモデルが強靭かどうか

いくら創業者が好きでも、「好き」という感情だけでは、幸せな仕事生活は続きません。

投資家になった気持ちで、その会社の事業やプロダクトの強さ、ビジネスモデルの強靭さを調べ尽くしましょう。

どんなにカッコいいことを言っていても、強固なビジネスモデルとプロダクトのない会社は、十分な投資ができず、四半期決算に追われて疲弊していきます。

未上場で大型調達に成功していても、あっという間に資金が底をつきます。

何よりも自分がポテンシャルを信じられるプロダクトや事業でないと、あなたの情熱も続きません

その会社の創業者だけでなく、事業やプロダクトにも惚れられるかがカギを握るのです。

ここでしっかり分析すれば、面接でもいい答えができるでしょうし、入社後もスタートダッシュをかけやすくなるでしょう。

ポイント④センスがあるか

今の時代、ビジネスやデザインやクリエイティブのセンスがあるスタートアップでないと、ブランドを育てて大きく羽ばたくことはできません

米国のスタートアップと日本のスタートアップの差の一つは、デザインセンスです。米国でヒットしているBtoBサービスは、ロゴやUIUXが洗練されたものが中心です(Zoomはちょっとダサいですが)。

日本の場合、お笑い芸人を使ったCMが多く、認知度アップのマーケティング戦略としては機能していますが、中長期的なブランド戦略としては首を傾げてしまいます。

だからこそ、ホームページ、プロダクト、オフィス、創業者のファッション、社員のファッションなど、外から見えるセンスに目を光らせるべきなのです。

ここでいうセンスとは、かっこいいかどうかもありますが、問うべきは一貫性であり、統一感です

創業者のファッションや佇まいがえらくダサいのに、オフィスだけ有名デザイナーに頼んでカッコよくしていると、肩に力が入りすぎてむしろダサい。

逆に、質素なオフィス、質素なデザイン、質素なファッションで統一している人は信頼感が高まり、経済感覚もしっかりしている印象を与えます。

ポイント⑤報酬制度がフェアか。ストックオプションをもらえるか

スタートアップの報酬はここ数年でずいぶん上昇しました。

マザーズ上場企業の平均年収を見ると、メルカリが820万円に達していますが、他の企業では700万円以下が標準です。

未上場企業の場合は、マザーズ上場企業よりも低いケースが大半です。つまり、大企業と比べると、年収レベルは劣ります。

もう一つ、スタートアップの報酬の特徴は、幹部層とそれ以外のメンバーの差がとても大きいということです。

年収にさほど差はなくとも、ストックオプションなど株式から得られる収入に大きな差が付きます。いわば、格差社会です。

報酬制度には会社や創業者の思想が色濃く出ます。

だからこそ、スタートアップに入るのであれば、単に収入の平均値を見るだけでなく、どんな報酬制度なのか、ストックオプションをもらえるのか、をしっかり確認すべきです。

100人以上の取材を経て分かった「起業の教科書」

起業のすすめ さよなら、サラリーマン

起業のすすめ さよなら、サラリーマン

自分に合う起業型キャリアを知るために、意志だけではなく「他人の意見」も聞くことが必要だと語る佐々木さん。

好きなことと、向いていることは一致しない可能性があるからこそ、冷静な判断が必要だと言います。

具体的な起業のヒントやイメージを得たい方、ぜひ『起業のすすめ さよなら、サラリーマン』を読んでみませんか?

佐々木紀彦さんからの「テーマ」

佐々木紀彦さんへの取材のなかで、“起業家のように「個」として生きるために、本を1冊書くことをオススメしたい”というお話がありました。

ということで本日の「新R25ワイドショー」では、こんなテーマを公開。
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