疑似国会討論を仕掛けてみました
片山さつきが推進する「スポーツベッティング」を追及したら、政治家としての力に圧倒された
新R25編集部
若者の政治への関心の低さ。
この問題、「政治家がどんな人たちなのか全然わからない」ことが大きな理由のひとつになっているのでは…? と我々は考えました。
そこで新R25編集部は、政治家を我々と同じ“ひとりの働き手”として掘り下げてみることに。
今回お相手いただくのは…参議院議員の片山さつきさん。
【片山さつき(かたやま・さつき)】政治家。自由民主党所属の参議院議員。1982年に東京大学法学部を卒業し、大蔵省へ入省。2004年7月には、女性初となる主計局主計官に就任した。2005年9月、第44回衆議院議員総選挙に静岡7区から自由民主党公認で出馬し、初当選。2018年の第4次安倍改造内閣では内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革、男女共同参画)および女性活躍担当大臣を任された。現在自民党の総務会長代理、金融調査会長、スポーツビジネス小委員長等多くの役職を務める
女性政治家として12年以上活躍したのち、2018年の第4次安倍改造内閣では内閣府特命担当大臣(地方創生・規制改革・女性活躍担当)として閣僚入りした片山さん。
2019年10月に内閣から党に戻り、現在は「スーパーシティ構想」や「スポーツベッティング」「DX人材の育成」など、日本に新たな風を吹かせる最先端プロジェクトの推進を任されている片山さんですが、“いち働き手”としていったいどんな力が優れているのでしょうか…?
今回はせっかく大物政治家相手ということで…いろいろと推進に苦労しそうな「スポーツベッティング(もともと違法だった、スポーツの試合を対象にした賭けゴト)」の推進について“疑似国会討論”を仕掛け、その手腕を確かめてみました。
〈聞き手:福田啄也(新R25編集部)〉
片山さん
私ひとりが出るより、あと何人か一緒にいたほうが絶対面白くなると思うんだけど…まあいい記事にしてください。
よろしくお願いします。
のっけからとんでもないプレッシャーがかかりました
福田
片山さんってTwitterフォロワー数27万人以上などソーシャル上でも影響力がありますし、バリバリ表舞台で活躍しているイメージですが…
もともとは官僚だったんですよね?
片山さん
そうですね。1982年に官僚になってから、ずっと大蔵省(現財務省)で働いていたんですよ。
今のR25世代の方々って90年代生まれでしょ?
福田
そうですね。
片山さん
みなさんが生まれ育ったころってバブルが崩壊して、いろんな銀行が経営破綻して倒産したんですよ。
その不良債権を整理し、日本経済の立て直しを担当したのが私です。
すご…じつは不動産ビジネスをやっている人で知らない人はいない「SPC法」や「REIT」「サービサー」を整備したのも片山さんの仕事だそうです
片山さつきの政治家としてのすごさを実感。推進する“スポーツベッティング”を追及してみた
福田
今回は、片山さんのいち“仕事人としての力量”を実感すべく…
片山さんが今もっとも注力しているプロジェクトのひとつである「スポーツベッティングの推進」について、僕から“擬似国会討論”みたいなノリでいろいろと追及させていただきたいんですが…よろしいでしょうか?
どうでしょう…?
片山さん
いいですよ。やりましょうか。
福田
さっそくですけど、「スポーツベッティング」とは“スポーツの試合を対象にした賭け”で、サッカーや野球、バスケットボール、テニス、アメフトなど、あらゆるスポーツが対象になると思うんですが…
これって、もともと国内では違法行為に当たる可能性があったわけですよね?(キリッ)
なぜ今このタイミングで適法内にしようと思っているのでしょうか?
片山さん
まず、すでに海外では「日本のプロ野球などを賭けの対象にして儲かっている人」が大量にいます。
つまり、現状日本にはプロスポーツにおける“逸失利益”が何千億もあるんです。
福田
海外ではそんな規模のビジネスになってるんですか…!
知らなかった…
片山さん
オンライン化が加速する今、この流れを止めることは現実的に不可能。
だったら、日本がちゃんと管理し、主導権を持って”元締め”になったほうがいい。
もし実施するなら、デジタル世界に限定し、アクセスにはマイナンバーを必須にします。
上限や頻度を設定すれば、子どもの遮断やギャンブル中毒の防止などが非常にやりやすい“安全な遊び”にできるはず。
“元締め”って久々に聞いたな…
福田
つまり…新たな「お金儲け」と。
そこで生まれた財源は、どのようなことに活用されるのでしょうか?
公営ギャンブルなどは、地域振興などに還元をされていますが、スポーツベッティングで生まれたお金はどこに消えていくんですか…!?
片山さん
まずひとつ目は、「スポーツそのものの振興」です。
たとえば、女子サッカーのプロリーグが発足しましたけど、1試合で観客が平均1800人に達しないこともあります。5000人はいないと、入場料を取ったとしても採算はとれません。
これが続いてしまったらどうなると思いますか?
福田
えーっと…プロスポーツ選手が路頭に迷う、とかですかね…?
今年30歳になるとは思えないくらい情けない回答をしてしまった(自戒)
片山さん
次世代が育たない。これが一番の問題です。
日本の女子サッカー「なでしこジャパン」は世界一のレベルなのに、今のままでは子どもたちが「プロ選手でスターになったら順風満帆な人生を送れる」という憧れを持てなくなるし、そもそも選手を育成できるトレーナーの数も増えない。
結果、「スポーツ種目」そのものが衰退していくでしょう。
福田
種目そのものが衰退…
片山さん
じつはもう多くのスポーツが、大会を開きたくてもその財源がない状況まで来ているんです。
自分たちでスポーツをもう一度盛り上げるためには、新しい財源を生み出さないといけない。たとえば“投げ銭”とかね。
スポーツベッティングもそのひとつなんです。
なるほど…
福田
(納得しかけてしまった…!)
もう少し追及させてください。
スポーツ振興はもちろん素敵なことだと思うのですが、それだけでは国民は納得できない気がしています。
その点はどうお考えですか?
片山さん
これまで競馬や競輪と言われる公営ギャンブルでは、その売上を地域の学校や道路などの公共施設の整備、社会福祉などで大きく貢献してきました。
それと同様に、スポーツベッティングで得た収益を、その地域に還元していけると思います。
福田
ほう…地域にどんな変化を起こすことができるのでしょう?
片山さん
たとえば今、「デジタル」による分断が発生しています。
学校教育ではプログラミングが必修になりつつありますが、家庭環境によっては1人1台のタブレットは学校でもらえても、利用料が負担で使用を抑えざるをえないご家庭や、もう少し機能の高いPCを手に入れることができないご家庭が現実にはたくさんあるわけです。
福田
そうですね…
片山さん
でも今はもう、PCを通じたデジタルオンラインは必須の“道具”。
すでに“教育格差”があるなか、PCがないだけでさらに大きな格差が生まれる時代になります。
だから、国は各家庭や個人にPCを普及させ、すべての子どもたちがプログラミングに熟達するレベルまで引き上げていくべきなんです。
ただ現実は、指導者もまったく足りてないし、消費税を増税しただけでは財源が足りていないんです。
福田
(やばい、何も言い返せない…)
片山さん
そこで私が注目したのが、スポーツベッティングが生みだす“利益”。
スポーツベッティングを適法にし、「格差の是正に使う」。
これをもうひとつの活用法として想定しています。
1を聞いたら10で返してくださる。そして理路整然だ…
片山さん
ここまでで、気になる点はありますか?
福田
いえ…まったくありませんでした…
片山さん
ならよかったです。
(ピリリリリ)あっ、すみません、電話が入っちゃった。失礼しますね。
片山議員、一時退場。怒涛の答弁でした…
福田
…
片山さんが退室されてから、およそ10分。待機している間、片山さんの名刺がリーフレットになっていることに気づき勝手に盛り上がる一同
政治家は「政策をつくる」だけじゃダメ。“説得する能力”こそ求められる
片山さん
…すみませんね。で、なんでしたっけ?
もう少し討論しましょうか?
福田
いえ…「スポーツベッティング」の正当性についてはすごく腹落ちしました。
むしろ、僕も推進したいと思っています。
編集部いち流されやすい男・福田。片山先生の書籍も拝読しました
福田
ただ、逆にどうしてこういう事実に基づいたお話がもっと広まらないのかなと不思議に思って。
片山さん
新しいことを始めるときというのは、まず「そんなことできるわけがない」と頭のなかでシャッターを下ろしちゃう人がほとんどです。
「理解されないことへの想像力」、そして「そのうえで理解されるように伝える力」こそが、政治家に必要な能力なんです。
片山さん
私は、政治家の仕事は「①政策を発想する ②実現する ③発信する」の3つが必要だと思っていて。
多くの人は「発想する」「実現する」ということをイメージされているでしょうけど、政治家にはやっぱり説得する能力もなきゃいけないんですよ。
そのために、私はあらゆるSNSを通して、発信を続けているんです。
福田
Twitterフォロワー数27万人という実績も、その信念の上に積み上げられた結果なんですね…
批判されても、絶対私のほうが「わかっている」と言える。仕事人・片山さつきとしての素顔
福田
「発信する」はとても大事だと思うんですけど、その一方で、批判が集まってしまうリスクもありますよね?
片山さん
まあ、私も何回か炎上したことがありますからね。
自分で言っちゃうんだ
福田
自分が「国のために」と信じてやっていることを批判されるのって、つらくないんですか…?
これは政治家の方全般を見ていて思うんですけど。
片山さん
私は46歳まで官僚の最前線で働いてきて、たとえば旧ソ連が崩壊したあとのロシアやウクライナや東欧等の市場経済移行を支援する施策や、何兆円にもおよぶ厚生労働予算や防衛予算の査定もおこなっていました。
「政治家なんて国会議事堂で座っているだけだろう」みたいな声もたまに聞きますけど、私には国を動かしてきた圧倒的な経験もある。
私よりも“わかってない人”からの批判なんてまったく気になりません。
「だから、私は折れない」
片山さん
そもそも「国民からの要望を取りまとめて形にする」だけじゃ、政治家は仕事をしたとは言えないんですよ。
それじゃ、政治家としては全然足りない。
福田
そうなんですね…
片山さん
国民の要望は、“種”みたいなものなんですよ。
あらゆる施策は「国民の要望」がもとになっているべきですが、そこから本当に「国民の未来のためになるかたち」に育て上げてていくのが私たちの役目。
だから政策って要望をストレートに叶えるアウトプットじゃないことも多いんですけど…
そこでくる批判にめげず、本気で理解してもらえるよう「伝える力」を伸ばしつづけることが、政治家には必要なんです。
軽い気持ちで討論してみたのですが…あらゆる情報を整理して、多くの人が納得し、誰もが推進したくなるような法案に整備する。
そして、批判に動じず、その実現を貫く姿勢が政治家・片山さつきさんの強さだと実感しました。
仕事人としての政治家の素顔。次回はどんな方が出演してくれるのでしょうか…?
お楽しみに!
〈取材・文=福田啄也(@fkd1111)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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