北野唯我著『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』より

いい営業マンが「○○について」という文章を書かない理由。“伝わる文章”の法則とは?

仕事
「ビジネスとは精神的な活動ではなく、むしろ、フィジカルな作業の連続」

『転職の思考法』や『天才を殺す凡人』など数々のベストセラーを生みだしてきた作家であり、株式会社ワンキャリア取締役でもある北野唯我(きたの・ゆいが)さんはそう言います。

しかし仕事内容は教えてもらえても、効率よくパフォーマンスをあげる“仕事術”までは、誰にも教えてもらえないもの…。

そこで、北野さんの“仕事術”を惜しげなくまとめた新著『仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた』(日本図書センター)から、「提案力」「文章力」「集中力」を高める仕事術を一部抜粋してご紹介。本日の内容は「文章力」をあげる4つのコツです。
出典

仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

仕事の教科書

仕事の教科書

伝わる文章を書くコツ① “動詞=結論”をうまく使う

いい話し手であり、いい書き手であり、いい営業マンであり、いいマーケターである人は、動詞の使い方が抜群にうまい。

前提を合わせるために「動詞」を定義しておくと、たとえば、着る・食う・住む・書く・話すといった動作や、存在する・存在しないといった物事の動作や状態を表す言葉だ。

具体例を使って見ていこう。

まず、ダメな文章の典型例でありがちなのが、「○○○について」という一文だと私は思っている
Before:
いい文章の書き方について
組織改編ミーティングについて

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

一見すると、問題なさそうな気がする。

なにが問題なのだろうか?

それは、結論がないことだ。

結論とはなにか?

それはずばり、「動詞」なのだ。

どんなビジネス文章も、最終的には結論に動詞が伴う。

行き着くところ、「Do=やる」か「Don’t=やらない」の2つしかない

営業のミーティングを「やる」。広告施策を「やらない」。商品開発を「やる」。M&A(=買収)を「やらない」。これが結論だ。

ということは、「動詞のない文章=結論のない文章」なのだ

では、どうすればいいか?

自分が書いた文章に、きちんと動詞が入っているかを確認して、入っていなければ必ず追加するのだ。

たとえば、このような修正ができる。
Before:
いい文章の書き方について
組織改編ミーティングについて

After:
いい文章の書き方をご紹介します
組織改編の進捗共有&ご相談

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

1つめの例では、「紹介」という動詞を加えた。

読み手からすると、「紹介してくれるんだな」という結論がすぐに理解できる。

2つめの例では、「共有」「相談」という動詞を入れている。

ただ、これだけだと、まだわかりづらさが残る。

そこで、「結論を先にもっていく」のだ。
Before:
いい文章の書き方をご紹介します
組織改編の進捗共有&ご相談

After:
【ご紹介】いい文章の書き方について
【共有&相談】組織改編について

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

どうだろう?

この工夫を施すだけで、文章はかなり相手に伝わりやすくなる。

文章とは、「動詞=結論→そのほかのオマケの文章」という順番が、人間にとって理解しやすいのだ。

伝わる文章を書くコツ② 一文20文字以内で短くまとめる

「究極的に美しい文章とはなにか?」と、私は考えることがある。

「価値がしっかりと読者に伝わる文章とはなにか?」と表現することもできるかもしれない。

結論を言うと、「究極的に美しい文章」とは、「文字数に対する、情報量の割合が高い文章」だと思う。

言い換えると、「大量の情報が入っているのに、短くて、わかりやすい」こと。

具体的には、文字数はどれだけ多くても一文が40文字、できればその半分の一文20文字以内に抑えるべきということだ。

ちなみに、一文とは、書き出しから句点「。」までを指す。

例を挙げて考えていこう。
Before:
あなたは、なにか文章を書くとき、「自分の書いた一文は何文字か」を意識したことがあるだろうか。(46文字)

After:
あなたは意識したことがあるだろうか。「自分が書いた一文が何文字ぐらいか」を。(18文字+20文字)

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

両方を音読してみるとわかるが、前者は意味がわかりづらくなっている。

一方で、後者はわかりやすい。

ただ、あなたはこう思うかもしれない。

「短くまとめられません。だって、文章が下手だから」と。

気もちはわかる。

でも、本当は順番が逆なのだ。

文章がうまいから短く書けるわけではなく、短く書こうとするから文章がうまくなっていくのだ。

Twitterをイメージするとわかりやすい。

Twitterは140文字の制限がある。

そして、人は「140文字以内で書きなさい」と強制されれば、140文字で書けるようになる。

しかし「自由に書いていいですよ」と言われると、ダラダラ書いてしまって、140文字に収められないのだ。

伝わる文章を書くコツ③ 「事実」と「解釈」を分ける

どこまでが「事実」で、どこまでが話し手の「解釈」なのかわかるように、「事実」と「解釈」を一文に混ぜないこと。

「事実」と「解釈」は、一文ずつ、合計二文に分けて書くことが大事だ。
事実:ありのままに起きたこと。書き手なりの意味づけがない情報。
解釈:事実に対して、書き手なりの意味づけがある情報。

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

たとえば、空に雲があるというのは「事実」である。

一方で、その雲を見て、雨が降りそうだなと想像するのは、その人の「解釈」である。

このように、事実と解釈の違いをしっかりと認識して、2つを分けて文章を書くことができるようになるだけで、あなたの文章は相当にわかりやすくなる

具体的に考えてみよう。

たとえば、あなたはいま、上司に営業実績を報告しないといけない。

そのときNGな報告と、改善後のOKな報告は、以下のようになる。
・Before(NGな報告):
たいへんうれしいことに、売上目標が10億円のところ、必死の営業努力と市場環境の後押しによって、目標を大幅に達成し、今期の売上が11億円に着地しました。

・After(OKな報告):
今期の売上は、目標10億円に対して、11億円に着地しました。この好調の理由を当社は、必死の営業努力と市場環境の後押しの2つだと考えております。

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

ここでの事実とは、「目標10億円に対して、11億円だったこと」だ。

そして解釈とは、「好調だと思っていること」「好調の理由は、営業努力と市場環境の後押しだと思っていること」である。

Afterのように、事実と解釈を二文に分けて書くだけで、一気に文章はわかりやすくなるのだ。

伝わる文章を書くコツ④ “30%の感情”で相手の心に届ける

世の中には、「意味はわかるが、人が動かない文章」というものが多々ある。

言っていることは正しいし、結論も先に述べている。

事実も解釈も分けて考えられている。

ただ、文章が伝わらないし、人望がない。

なぜか?

それは、「共感」という視点が抜け落ちているからだ

まず、「共感」とはなにか?

文字どおり、「共通の感情」を示す。

読み手が体感したことのある「感情」が、あなたの「感情」と一致していることだ。

重要なのは、読み手である「相手の感情」を見つけようとする姿勢であり、その感情を十分な量、文章に入れる行動だ。

たとえば、営業成績を報告するために、以下の文章があったとしよう。
Before:
売上目標100万円に対して、実績は110万円でした。目標に対して110%で、これは前年比では、120%の数字になります。当初の目標も高いものでしたので、私は好調である、と考えています。

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

この状態を定量的に表すならば、事実60%、解釈40%ぐらいだろう。

まず、結論が述べられているし、前半の二文が事実で、最後の一文が解釈で、分けられている。

悪くはない。むしろ、シンプルでいい。

ただし、これはただの報告であるため、それ以上でもそれ以下でもない。

もしあなたが、だれかの気もちを動かしたいと願っていたり、または、将来、多くの人を率いる立場になると決めていたりするのであれば、解釈の後に「共通感情を加える」クセをつけたほうがいいだろう。

先ほどの例であれば、こうなる。
After:
売上目標100万円に対して、実績は110万円でした。目標に対して110%で、これは前年比では、120%の数字になります。当初の目標も高めでしたので、好調な数字だとは思っています。

打ち上げの場で、ある社員が「安心した」とこぼし、ある社員は「自分だけ、数字が未達で残念だ」と言っていました。私も同じ気もちです。ほっとした、と同時に、悔しさもあります。なぜなら、私たちならもっとできたとも思うからです。

出典 仕事の教科書 きびしい世界を生き抜く自分のつくりかた

文章の構成を定量的に表すと、事実40%、解釈30%、感情30%ぐらいになった。

さらに、ぐっとエモーショナルになったと思わないだろうか?

結局、ビジネスでもなんでも行き着くところ、心・技・体のすべてがとても重要になる

だから、心につながっている「共通感情」を大切にするのは理想論でもなく、実質的なトレーニングにもなる。

言い換えれば、成果にもつながるのだ。

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