ビジネスパーソンインタビュー
日本が逃しつつある、“最大のチャンス”。
アメリカ、中国、ザッカーバーグ。なぜ世界のトップ層は「メタバース」に振り回されているのか?
新R25編集部
インターネット上につくられた3次元の仮想空間、「メタバース」。
“インターネットの次の革命”とも言われている「メタバース」に今、アメリカや中国、世界中の先進国が凄まじい金額を注いでいます。
2017年、アメリカのEpic Gamesが仮想空間内でプレイヤー同士が遊ぶ『Fortnite』をリリースし世界的に大ヒット、2021年にはマーク・ザッカーバーグが社名をフェイスブックから「Meta(メタ)」へと変更しメタバース領域へ舵を切ることを宣言するなど…
日本で暮らす我々も、仮想空間「メタバース」という言葉を目にする機会は少しずつ増えてきました。メタバース。めたばーす…正直「なんのこっちゃ」ですよね。
「そもそも何なの?」「『ちょっとすごいVRゲームができるようになる』くらいの話でしょ?」「なんで世界のトップたちがこぞって騒いでんの?」。
正直完全になんのこっちゃサイドの筆者は今回、20代で東証マザーズ上場、現在は宇宙開発企業・株式会社スペースデータの代表取締役であり、4月に書籍『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』を上梓された佐藤航陽さんに、直接「メタバースって結局何なんですか?」とお聞きしてきました。
トレンドゆえに、知らないまま放置しておくのもなんだかモヤモヤする「メタバース」…ここらで正体を暴いてやろうと思います。
〈聞き手=サノトモキ〉
【佐藤航陽(さとう・かつあき)】株式会社スペースデータ 代表取締役社長。1986年生まれ。早稲田大学法学部在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8カ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。累計100億円以上の資金調達を実施し、年商200億円規模まで成長させる。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。米経済誌『Forbes』の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30Under 30 Asia)や「日本を救う起業家ベスト10」にも選出
メタバース、いったいどのへんが「インターネットの次の革命」なの…?
サノ
佐藤さん、本日はリモート取材になりますがよろしくお願いいたします!
佐藤さん
はい、よろしくお願いします。
すみません、ロボットで登場してしまって。
本日は一生こちらの画像でお届けします
サノ
さっそくですが…アメリカとか中国とかザッカーバーグとか、なんでみんなそんなに「メタバース」で騒いでるんでしょうか。
「メタバース」って、いったい何なんですか…?
佐藤さん
メタバースとは、「インターネット上に作られた“3次元の仮想空間”」のことです。
インターネット上に“立体”を構築する3DCG技術や、身体への負担の少ないVRゴーグルなどの急速な進化により、近い将来、あらゆるコンテンツが「観る」から「入る」に変わる。
世界のトップたちは、この“メタバース革命”を制した者が次世代ビジネスの覇権を握ると確信しているからこそ、あれだけ大きく騒いでいるわけです。
サノ
“「観る」から「入る」へ変わる革命”…
でもそれってぶっちゃけ、「VRゴーグルをつけて、まるでその世界にいるみたいにゲームができる」程度のことじゃないんですか?
正直、「スマホの登場くらい世の中が変わる」みたいな、そんな大革命になるイメージが湧かないんですが…
佐藤さん
メタバースはこの先あらゆる産業を巻き込み、「国」「企業」「個人」、あらゆる単位で変革を起こしていきます。
アメリカや中国のような優れた政府、またザッカーバーグのような世界のトッププレイヤーは、それを理解しているからこれだけ異次元の投資をしているわけです。
今日は、メタバースが世の中をどう変えていくのか、具体的に見ていきましょうか。
メタバースで何が変わる?①「企業の提供するサービス」
佐藤さん
まず、一番イメージしやすいのは「企業」ですかね。
メタバースの登場によって、企業が提供するあらゆるサービスが一変していくことになります。
ゲームや映画が「観る」から「入る」に変わっていくのはもはや言うまでもありませんが…面白そうなところで言うと、ディズニーやUSJのような「遊園地」。
遊園地…?
佐藤さん
これまでの遊園地は、1日の入場上限はせいぜい数万人。お客さんも1時間行列に並んでようやく1アトラクションに乗るような体験が当たり前ですよね。
サノ
雨の日も風の日も並んできました。
佐藤さん
しかしメタバースなら、場所の制約に捉われない“圧倒的な広さ”の仮想空間で、実世界では実現できないような非現実的なアトラクションの数々を提供できる。
そしてお客さんは、一切列に並ぶことなくそれを体験できるようになるわけです。もちろん、家族や友達と一緒に。
なるほど…お客さんの上限を考えなくていいとなると、収益もめちゃ跳ね上がったりすんのかな
佐藤さん
あとは“Google Earth”みたいなものも、あり方が劇的に変わると思います。
サノさんは今、「旅行先の天気を知りたいとき」ってどうしてます?
サノ
え…スマホで最新の天気予報を調べるか、Twitterの書き込みを検索しますね。
佐藤さん
ですよね。
でも、プロの連中が本気を出せば、現実世界の空間をほぼリアルタイムで「メタバース」上に再現することができます。
つまり、「今の渋谷がどれくらい混んでるか」「今、軽井沢はどんな天気なのか」、メタバースにログインして自分で確認すればいいんです。
サノ
未来、マジか。
あらゆるサービスが「観る」から「入る」に変わる世界…どうなっていくんだろう
メタバースで何が変わる?②「国の防衛、災害対策」
佐藤さん
そして、「国」単位の話をするならば、やはり…“防衛”ですね。
サノ
…「戦争」ですか。
佐藤さん
戦争のシミュレーションも、今は「3次元の仮想空間」上でのシミュレーションが当たり前です。
今回の戦争も、ロシア・ウクライナともに2次元でなく3次元上のシミュレーションをかけてやってると思います。
それこそ、今アメリカで“軍隊のDX化”を動かしているのは、VRゴーグル「Oculus(オキュラス)」の創業者パルマー・ラッキー氏ですから。そこでも、「メタバース」のプロフェッショナルが中心になっているんです。
そうなんだ…!
佐藤さん
もちろん災害シミュレーションもそうですし、中国なんかはスマートシティなどの「都市開発」も、どのように都市をつくっていくか「メタバース」上で検証しています。
なので本当に…みなさんの生活に「関係ある」どころじゃないんですよ。
メタバースが、あらゆるビジネス、公共事業を、“次の時代”へ進めるんです。
サノ
メタバースと聞くと、「ゲーム」とか「映画」とかの娯楽がちょっとすごくなる…くらいのイメージだったんですが…
僕らのこれからの生活を、根本的に変えていくような存在だったんですね…
メタバースで何が変わる?③「ビジネスパーソンの“プレゼン”」
佐藤さん
ちなみにメタバースの登場は、いち「ビジネスパーソン」にも大きく影響しますよ。
メタバースはおそらく、ビジネス界の「プレゼン」を一変させます。
結論を言ってしまうと、“パワポの時代”が終わる。
なにもう…ちょっとこの画面が怖くなってきました
佐藤さん
パワポの何が革命だったかというと、「グラフ」を民主化したことなんですよ。
「経営数字」「経営戦略」…言葉や数字を並べるだけじゃイメージしづらかったものを、「誰もが二次元のグラフや図を用いて、視覚的にわかりやすく説明できる」ようにしたわけです。
サノ
ふむふむ。
佐藤さん
しかしメタバースは、その先をいく。
メタバースは私たちに、「シミュレーション」を民主化するんです。
サノ
「シミュレーション」の民主化。
佐藤さん
たとえば家を探して不動産会社に行ったとき。写真やVRの360度動画を見せて、「不安であれば実際内見して確かめにいきましょう」と言う営業マンと…
「内見してる間にほかの人に申し込みされちゃうかもしれないんで」と、その場でメタバースを使って“実際と同じ仮想空間”を歩かせてくれる営業マン。
これってもう、圧倒的な差じゃないですか。
サノ
た、たしかに…!
佐藤さん
そういうことが、あらゆる業界で起こっていくと思います。
どんな企画もプロジェクトも、「起きるであろう未来を、実際に見せる」以上の説得力ってないじゃないですか。どれだけ数字や言葉、グラフでプレゼンしても敵わない。
「デジタルツイン」と呼ばれる領域なんですけど、これがビジネスの世界で“最強のプレゼン法”になっていくと思います。
佐藤さん
それに、2次元的なシミュレーションしかできないビジネスパーソンと、3次元的なシミュレーションができるビジネスパーソンでは、そもそも「意思決定の精度」がまるで違ってきますよね。
メタバース上で何度も実証実験をしてPDCA回して、成功確率を上げてからアクションに移す。
メタバースを使いこなせるかどうかで仕事の成果もめっちゃ差がついていくはずです。
サノ
や、やばい…メタバース、もっと勉強しないといかん気がしてきた…
佐藤さん
ただ、真に危機感を持つべきは「日本」そのものですけどね。
メタバースって、ぶっちゃけ“日本のラストチャンス”なんで。
「メタバースは、ぶっちゃけ日本のラストチャンス」
佐藤さん
中国とかアメリカみたいにトップが賢い国は今、「宇宙産業とメタバースが次世代の主力産業だ」と読んでとっくに動いてるんですよ。
で、「宇宙産業」はもう、世界と日本ではどうしようもないほど差が出てます。正直、追いつくことは絶対に無理です。
一方、今唯一日本が“下駄”を履いている領域が「メタバース」なんです。
どういうこと…!?
佐藤さん
メタバースはあらゆる領域に広がっていきますが、きっかけは「エンタメ」から始まります。
すでに今、ゲームがそうなってますよね。「仮想空間で集まるゲーム」を磨き続けたEpicGamesが、「Fortnite」で天下を獲りつつある。
サノ
たしかに…でもすでにFortniteにやられているわけで、日本にいったいどのようなアドバンテージが?
佐藤さん
「エンタメ×メタバースで覇権を取る」という点において、私たちの圧倒的なアドバンテージは、日本が「コンテンツ大国」ということです。
仮想空間をつくったとしても、人々を呼び込むには結局仮想空間内に「魅力的なコンテンツ」を用意する必要があるんですよね。
そのとき、アニメや漫画のような、 “世界中を熱狂させているコンテンツ”がそろってる国って、日本なんですよ。
サノ
なるほど!
佐藤さん
日本には優れたコンテンツを生み出す「人材」がいる。世界に通用する豊富な「知財」がある。そして“コンテンツにお金を払う”「文化」がある。
「メタバース」で覇権を獲るために必要なすべてがそろっているんです。
そこに気づいて、きちんと“メタバース上にコンテンツを輸出”できれば、日本には「メタバースで世界を獲れる可能性」が、まだ残っています。
サノ
…アツい‼︎
では日本はちゃんと、コンテンツ大国として花咲けそうな流れに乗れてるんですかね…!?
佐藤さん
あ、今のままだと逃すと思いますよ。間違いなく。
もういやだ
佐藤さん
「テクノロジーに対する投資」が圧倒的に足りてない。3DCG技術など、「メタバース」という技術自体の推進が、圧倒的に足りない。致命的に足りない。国も企業も、誰も投資してない。
今の状態をつづけたら、あと3年ぐらいで日本はこのチャンスを逃すと思います。
「いや、こんなの遊びでしょ…?」みたいな話をグチグチやってるうちに、アメリカや中国にアドバンテージをひっくり返される。今のところ、そうなる可能性が非常に高いです。
あかん…あかんぞ…
サノ
圧倒的有利な立場にいながら、そのチャンスをまるごと明け渡しちゃうかもしれないと。
どうすれば逃さずに済むんだ…何か兆しはないのでしょうか?
佐藤さん
今日本で最もこの変化の重要性を正しく捉えてるのは、やはり「ゲーム企業」だと思っています。
とくにソニーや任天堂。彼らは着々と進めてますよ、やっぱり。SONYは少し前に、Fortniteを運営するEpic Gamesに1250億円を投資して話題になりましたしね。
テクノロジーの最先端と、今後世の中がどうなるのかを解像度高く理解して、ちゃんと布石を打って駒を進めてる。
サノ
日本のゲーム企業って本当に優秀なんですね…世界に誇れるわ…
佐藤さん
ここ3年で、そういう企業がどれだけ出てくるか。そして国がその下支えとなる「テクノロジー領域」をどれだけ支援するか。
それによって、今後数十年の国家経済の行く末が左右されると言っていいと思います。
…という危機感に、『世界2.0』を読んだ方がひとりでも多く気付いていただけたらいいなと…!(笑)
サノ
めちゃくちゃよくわかりました。今日はありがとうございました…
政治関係者のみなさま…お願いなんで『世界2.0』読んでください…
今日はありがとうございました!
メタバース…なんのこっちゃじゃ全然ダメでした。
「個人」「企業」「国」、あらゆる存在に対し変化を迫るメタバースは、ビジネスパーソンにとっても日本にとっても、逃したらとんでもない痛手を負うことになるビッグウェーブ。
書籍『世界2.0 メタバースの歩き方と創り方』には、「いち個人としても、メタバース登場の衝撃に備えるためにできること」のヒントも転がっているので、ぜひチェックしてみてください…!
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