ビジネスパーソンインタビュー
伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義』より
東大金融研究会が教える“運のいい人になる方法”。東大生が学び、実践する「仕事のスタンス」とは
新R25編集部
東大金融研究会という団体を知っていますか?
発足から2年で約1000名が参加しており、東大新入生の20人に1人が入るほどの人気と注目を集めている団体です。
創設者は、外資系ヘッジファンドで20年以上活躍した超一流の投資のプロ・伊藤潤一さん。
伊藤さんが東大金融研究会で実際に教えている、お金を元にした思考法・考え方の本質を伝授する書籍『東大金融研究会のお金超講義』が発売されています。
本記事は同書より、講義内で伊藤さんが教えている内容であり、実際の東大生が実践している仕事のスタンスについて抜粋しています。
一見すると直感的に見える学びが、東大生も納得するほどロジカルに説明されていました。
①お金よりも考えるべきは時間の価値
東大金融研究会の活動の中で時間の使い方を学ぶために重要なのが、アスリートとの交流です。
優れたスポーツ選手は、常に先々の大会を意識し、その大会に向けて時間を逆算しながらトレーニングをします。
オリンピックを目標とするようなトップアスリートであれば、4年間という時間を逆算し、間に小さな目標を立てながらそれをクリアしていく計画性が身についているのです。
彼らほど時間の使い方をよく知っている人はいないと言ってもいいでしょう。
私は、2008年北京オリンピック、2012年ロンドンオリンピックで銀メダルを獲得したフェンシングの太田雄貴さんが、小学生から高校生までの子どもたちに指導する様子を見せてもらったことがあります。
太田さんが力を入れていたのは、ノートに目標を書かせ、それを具現化するために「いま何をすべきか」を考えさせることでした。
まず必要なのは、目標にしている状態といまの状態の間にあるギャップを明確に認識すること。
ギャップを認識できたら、それを埋めるために何が必要なのか、現状で足りていないことは何なのかを徹底的に考えさせるのです。
「日々の積み重ねが大切」とはよく言われますが、ただやみくもに積み重ねれば結果が出るわけではありません。
目標を設定し、それに向けてどんな積み重ねが必要なのかを分析してこそ、「日々の積み重ね」が大きな意味を持つのです。
②「運がいい人」になれるたった一つの条件
「口に出す」ことはとても重要です。
たとえばAさんのことを好きになったとき、心の中で「Aさんが好きだ」と思っているだけではいつまで経っても状況は変わらないでしょう。
しかし「実はAさんが好きなんです」と口にすれば、誰かが「じゃあ今度3人で会いましょう」と動いてくれるかもしれません。
協力者が出てくれば、「Aさんと付き合いたい」という夢が実現する可能性も高まります。
よく「あの人は運がいい」「私は運が悪い」などと言いますが、「運」というのはもともと人によってさほど違いがあるものではないと思います。
それでも「運がいい」と言われる人がいるのは、単純に何事においても勝率が高いからでしょう。
そしてその勝率の高さを生み出しているものは何かといえば、私は「自分の望むことを口に出しているか出していないか」の違いのような気がしています。
ですから私は、東大金融研究会のメンバーには「自信がなくてもいいから、やりたいことがあったら口に出すことが一番大事」だと言っています。
やりたいことを口に出せずにいると、誰も気づいてくれず実現する可能性が高まらないばかりか、「どうして誰も気づいてくれないのか」といじけた気持ちになったりもします。
運がいい人と運が悪い人の格差は、現象面でも心理的な面でもどんどん広がる傾向があるのです。
もしあなたが「自分は運が悪い」と感じることがあったら、まずは「どんどんやりたいことを口に出す」ことを実践してみてください。
起業したい人にどんどんアウトプットさせるのも、基本的な考え方は同じかもしれません。
まずはアイデアを人に伝えて、叩かれたりアドバイスをもらったりしながら、走る。
限られた時間の中でやりたいことを実現するには、「とにかく、やる」ことが一番大事だと思っています。
③自己実現より優先すべきは自己紹介
東大金融研究会のメンバーを見ていて気づいたことの1つに、自己紹介が適当な人は総じて「ダメ」なケースが多いということがあります。
そもそもサークルで自己紹介をする場面では、数十人でお互いに挨拶し合うこともあります。
よほど目立つ人以外はなかなか覚えてもらえませんから、自分を覚えてもらいたいなら工夫する必要があるはずです。
そこで相手の記憶に残るような工夫ができないなら、いくら自己紹介をしてもお互いに時間の無駄になってしまいます。
最もダメなのは、たとえば「東大の半沢です」というように名字だけで自己紹介を終わらせるケースです。
ここで最低限、「東大の文Ⅱに今年入りました、1年生の半沢直樹です」というだけでも、相手への記憶の残り方は大きく変わるでしょう。
ちなみに、最低限の自己紹介もできない人は3割ほどにすぎませんが、自分の名前を端折る3割の人はほぼ100%、活動の場から姿を消していきます。
東大金融研究会に対して、そもそもいいかげんな気持ちしかないのでしょう。
自己紹介で、笑いをとる必要はありません。記憶に残る面白さがあればいいと思います。
たとえば、東大金融研究会のメンバーでマッキンゼー・アンド・カンパニーに内定した女子学生Oさんの自己紹介は見事でした。
「東大経済学部4年生のOです。私は浦安出身で、ディズニーランドが好きです。中でもディズニーのパレードを見るのが大好きなのですが、みなさんはパレードを見るためにずっと待ってる人たちを見たことがありますか?あの人たちのことを『地蔵』と呼ぶんです。私は地蔵をしながら受験勉強をして、東大に入りました」
こんな自己紹介をされたら、誰も彼女のことを忘れないでしょう。
その場にいる全員が共有できるディズニーランドの話があり、そこでパレードを待つ人を「地蔵」と呼ぶという未知の情報の提供で興味をひき、その中で地蔵をしながら勉強したというオチまで入っているのですから。
初めて聞いたときは「うまいなぁ」と感心したものです。
「自己実現」という言葉を口にする人は少なくありませんが、「自己を実現」するより前に「自己を紹介」できるようになるほうが自分の価値を上げることにつながります。
自分の価値を決めるのは、自分ではなく他人だからです。
たかが自己紹介、されど自己紹介です。
人に強烈なインパクトを残せる自己紹介ができれば、数学的にいえば「初期値」が大きく変わり、それによって最終的な結果もまったく違うものになるでしょう。
ですから、東大金融研究会では自己紹介の訓練ができるよう、新しいメンバーが入ってきたときはなるべく講演後の時間にみんなで自己紹介する機会をつくっています。
最初はイマイチでも、何度もトライするうちに自己紹介がうまくなっていく人をたくさん見てきました。
そういった人ほど人気企業に内定していくものです。
④仕事は何ですか?と聞かれて社名を答える人は危ない
終身雇用が崩れたと言われて久しく、「1つの会社で勤め上げる時代は終わりつつある」ということは多くの人が認めるところでしょう。
電通が40歳以上の社員を対象に個人事業主として契約する制度を導入したり、サントリーホールディングス新浪剛史社長の「45歳定年」発言が波紋を呼んだりした例が示すように、会社に居座れないようにする施策はこれからもどんどん出てくるはずです。
そもそも日本人は、自分は何の仕事ができるのか、何の仕事をしたいのかということについて無頓着な傾向があるように思います。
かつて私が日本の銀行で働いていた頃、著名ファンドマネージャーから「日本人は『あなたの仕事はなんですか』と聞かれると『私は部長です』などと肩書を言う人が多い。外国人なら『私は○○ができます』と言う。日本人は肩書きで生きている」と言われたことがあるのですが、私もこの見方はあながち外れていないと感じるのです。
あれから30年ほど経って時代は大きく変わり、社会は「何ができるか」「何をしたいか」で仕事を選ぶ方向に変化しています。
それなのに、いまだに仕事は何かと尋ねられて「私の勤務先は○○社です」と答えたり、所属先をステータスと勘違いしたりしている人もいます。
そのような人が40代、50代で会社から見放されたら、どうなってしまうのでしょうか。
いまはまだ移行期ですから、たとえば電通の新しい制度でも「10年間は一定の固定給を保障する」といった仕組みが用意されています。
しかしいずれはそういった保障もなくなっていくはずです。
そのとき、残るのは自分のスキルです。
これからは、「自分のスキルを磨ける職場で働く」ことがより大きな意味を持つようになるでしょう。
スキルというのは、エンジニアやポートフォリオマネジャーなどの業務をこなせるスキルだけでなく、コミュニケーションスキルなども含みます。
スキルの種類は問いませんが、若いときから「いま身につけている自分のスキルは何なのか」を意識できる職場に身を置くことが大切です。
年齢を問わず長期的に意義のある仕事ができ、自分より若い人と交わることで刺激を得て、いつまでも若々しくいられるほうが望ましいでしょう。
「人生100年時代」における問題は、老後の生活費のこと以上に「生き生き働き続けたいと望んでも、その機会を得られない状況」に陥ることにあると思います。
「人生100年時代」は長い戦いになります。
そこで大事なのは、なるべく多くのオプション(選択肢)を自分でつくり出すことです。
そのうえで、自分に合っているものはどれかを判断する必要があります。
人生の勝負は、たくさんのオプションをつくる「創造力」と、その中から最適なものを選ぶ「判断力」の掛け算で決まるといってもいいでしょう。
この掛け算において、先に立つのは「創造力」です。
「毎日忙しいから」「今の業務が大変だから」と言いながらオプションをつくり出すことを放棄している人は、人生の勝負で負けてしまう可能性を意識すべきでしょう。
頭のいい人が実践している、お金と人生の戦略
同書で特に強調されているのは、自分の頭で本質的に考えること。
そして、その力は人生で大事な人間関係、時間、お金、仕事などに一生役立つものになると伊藤さんは説きます。
講義の中で伊藤さんが指導している内容は、実際に東大金融研究会のメンバーに実践してほしいと思っていることであり、ビジネスパーソンにとっても重要なお金と人生の戦略になっています。
ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか?
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