ビジネスパーソンインタビュー
スタートアップへの転職は「4つのフィット」で判断せよ
「GAFAM転職」や「スタートアップ転職」のリアルを取材したらめちゃくちゃ勉強になった
新R25編集部
みなさん、今のキャリアに満足できていますか?
きっと自信を持ってYESと答えられる人はほんのひと握りで、大なり小なり悩みを抱えていることでしょう。
新R25編集部・福田もそのひとり…。
30代に突入し中堅と呼ばれるポジションですが、「そろそろ次のキャリアを考えたほうがいいかも…?」「でも次のキャリアってどう描けばいいんだっけ…」と漠然とした不安を抱えているようです。
そんなビジネスパーソンの不安を払拭するために昨年立ち上がったのが、次のキャリアが見える転職サイト「ONE CAREER PLUS」。
次のキャリアが見える、転職サイト「ONE CAREER PLUS」
4000件以上の転職実例である「転職体験談」などに代表されるキャリア情報、面接や選考内容に関する情報、求人情報などが公開されています。特に「この人はどこからどこへ転職した」という新たなキャリア情報に注目が集まっています。
今回は、そんな「ONE CAREER PLUS」のキャリアデータも踏まえて、キャリア市場を分析する「キャリアアナリスト」のもとを訪問。
ONE CAREER PLUSに集まったデータも交えながら、福田の次のキャリアについて考えてもらいました。
【右:長谷川嵩明(はせがわ・たかはる)】新卒でGoogle Japanに入社し、SMB市場へのインターネット広告営業に従事。その後、株式会社ワンキャリアに4人目の社員として参画。2019年より新卒事業の執行役員として「ONE CAREER」のメディア事業のマーケティング・コンテンツ領域を統括し、上場も経験。現在は新規事業開発・キャリアアナリストを務める 【左:佐賀駿一郎(さが・しゅんいちろう)】キャリアアナリスト。新卒でビズリーチに入社し、転職サービス営業・新卒採用人事を担当。2019年より株式会社ワンキャリアにジョイン。イベント企画や動画・ライブ事業の立ち上げを経て、現在はONE CAREER PLUS事業開発・キャリアアナリストを務める
〈聞き手=福田啄也(新R25編集部)〉
新R25編集者の30歳は次にどんなキャリアを歩める…?
長谷川さん
さっそくですが、福田さんのキャリアの悩みをお聞かせいただけますか?
福田
はい…
僕は今、新R25編集部に5年ほど在籍していて。インタビュー記事や広告をたくさん制作してきたし、新卒社員の育成などもしてきました。
めちゃくちゃ働いたおかげでいろんな経験を積めた20代でしたが、30歳になり「このまま同じことをやってていいのかな」と思っていて…
さらに先日子どもが生まれたこともあって、これからのキャリアを考えるのがより難しくなっているんです。
心なしか顔色が悪いのは気のせいでしょうか
長谷川さん
なるほど…
福田さんには4つの道が考えられますね。
福田
4つも!?
長谷川さん
まずは、コンテンツを制作してきたスキルを活かして、新しいWebメディアの編集長を目指す。
2つ目は、業界に特化したメディアの編集者。今はビジネス系メディアですけど、コスメや金融などの専門性に特化したメディア事業などです。
福田
またメディアの編集者系か…
嫌なのか?
長谷川さん
もちろん特化した領域になると、編集者の目線を活かした業務に携われることもあると思いますよ。
たとえば、Eコマースにつなげるためのメディアグロースに編集者やメディア事業の事業開発担当として挑戦するようなケースが考えられます。
福田
なるほど。
長谷川さん
また、業種を変えるパターンとしては、Webメディアの知見を武器に制作ではなく「支援する」側に回る。
大手広告代理店やコンサル企業に移って、クライアントのオウンドメディアのプロデュースとかですね。
あとは、「コンテンツづくりをたくさん経験してきた」とおっしゃっていましたので…その知見を活かして、BtoBサービス企業のコンテンツマーケティングに軸足を置いてもいいかもしれません。
福田
マーケター! かっこいい…
ただ、正直まったくやったことない職種でも採用はしてもらえるんですか…?
佐賀さん
福田さんなら、デジタルマーケティングへのキャリアチェンジもできると思います。
ただ、キャリアチェンジする際にチェックすべきは、業務の裁量がどのくらいなのか。
たとえば「シード期のスタートアップでのデジタルマーケティング責任者」になってしまったら、まったく歯が立たないと思います。
すごく広い領域に関わることになりますから。
佐賀さん
一方で、コンテンツマーケやイベントマーケ、広告を使ったマーケ…というように、マーケティング業務が細分化された事業部であれば、狭い領域からスタートできるので、スキルを活かせるのではないかと思います。
長谷川さん
さらに、年次が上がってくるごとにマネジメント力を上げていければ、責任者というポジションにもチャレンジしていけると考えられますよ。
福田
自分の考えだけでは辿りつけないような道ばかりでした…
顔色が良くなってきました
GAFAMのような外資系テック企業に入れるチャンスも…!?
佐賀さん
今の福田さんのように、「自分の市場価値がわからない」「行けるところがない」と言われる方が多いんです。
でも、「使っている言葉が違うだけ」で、いまの仕事内容が行きたい企業の求人内容に活かせることってよくあるんです。
たとえば、GAFAMのような人気の外資系テック企業への転職を希望される方のご相談もよくあるのですが、「私のキャリアでも可能性があるんですか?」と驚かれるケースがあります。
福田
へええ!!
GAFAMって、めっちゃ頭がいい世界的なエリートしか入れないと勝手に思っていたのですが…僕でも転職は可能なんですかね?
長谷川さん
難しいところですね。
編集ポジションだと、著名テックメディアの編集長の方がネクストキャリアとして転職されたケースなどもありましたが、残念ながら、すごくレアケースかもしれません…
そこは忖度でもポジションがあってほしかった…
長谷川さん
最近Twitter社の代表が変わったのを機に大量にリストラが発生したこともあり、直近のGAFAMをはじめとした外資系テック企業の採用は抑制傾向なのが大前提なのですが…企業によっては求人票が出ています。
それに、これまでのGAFAMなどの外資系テック企業の採用を見ると、全然業界未経験でも採用をしている会社はあるんです。
たとえば、営業支援ツールを提供するセールスフォース・ジャパンさんでは、人材業界や金融業界の方がたくさん転職しています。
どうしてだと思いますか?
福田
…営業職を欲しているから?
佐賀さん
そうです!!
当たっちゃった
佐賀さん
ONE CAREER PLUSでは、「GAFAMの前職の業界はどこか?」「どのくらい経験してきたのか?」という実績が公開されています。
佐賀さん
たとえばセールスフォース・ジャパンさんなら、業界未経験の営業を採用する場合でも育成体制・プロセスが整っており、営業もいわゆる「The Model型(分業制)」です。
人材や金融など、無形商材の営業として鍛えられた経験があれば、それを活かしやすい体制になっていたりします。
佐賀さん
ちなみに、GAFAMのような超有名企業に関しては、みんな「どうすれば入れるか?」といった“入り口”を考える方が多いのですが…
重視すべきは“出口戦略”なんです。
福田
“出口戦略”…
佐賀さん
“出口戦略”というのは「ここでどういう経験を積んで、次に何をしたいか」ということです。
たとえば大手企業での広告営業の経験を活かして、Googleに採用された方がいたとします。
そのとき、「よし、年収が上がったぞ」という思いだけだと、次に転職するとなったときに「この年収を維持したい」となって、選択肢が狭まってしまう。
つまり、大手企業の看板だけにとらわれずに「自分のキャリア」をちゃんと意識して、転職を考えるべきなんですよね。
福田
たしかに…その意識が足りなかったな…
うなずきすぎて、取材中とは思えない角度になってる
スタートアップへの転職も「4つのフィット」で判断すればリスクが下がる
福田
ちなみに、最近まわりでスタートアップへ転職する同期も増えていて。
興味はあるんですけど、リスクがあるじゃないですか?30歳からスタートアップへの転職ってどう思いますか?
長谷川さん
弊社のデータで見ると、スタートアップへの転職前・転職後の最終的な年収は54%の方が上がっているんです。
福田
おおおお!
ただ、すべてのスタートアップがそうとは言いきれませんよね?
リスクの少ない企業を見極めるには、どうすればいいのでしょう…?
長谷川さん
事業の規模やフェーズを見て判断するべきですね。
ひと言で「スタートアップ」と言っても、社員10名の企業から300名の企業まで規模はさまざまですし、売上規模・時価総額も異なります。
時価総額では1000億円を超える、いわゆる“ユニコーン企業”といった規模だけでいうと上場していてもおかしくない企業もあるんです。
佐賀さん
ただ、私たちアナリストからアドバイスをさせていただくとすれば、スタートアップ企業に転職する前に、「4つのフィット」という言葉を覚えておいてほしいということです。
長谷川さん
まずは先ほどお話した「フェーズフィット」。「どのくらいの規模感や事業の進捗具合の会社に入っていくか?」という視点です。このフェーズによって、働き方や得られるスキルが変わります。
2つ目は「テーマフィット」。これはいわゆる「事業内容がフィットしているか?」
たとえば同じSaaS業界でも、バックオフィスの業務を改善するツールなのか、建設業界の業務改善ツールなのかで顧客も金額も異なります。
そういう事業内容や営業内容が自分と合っているか?ということですね。
長谷川さん
3つ目は「リターンフィット」。いわゆる報酬のことですね。「希望する年収を得られるか?」「昇給のタイミングはどうなっているか?」など、自分の理想と照らし合わせてください。
最後は「カルチャーフィット」。「実際の組織の人の雰囲気や会社の印象がマッチしているか?」ですね。
福田
なるほど…これってどの企業での転職でも役に立ちそうな判断基準だな…
長谷川さん
スタートアップへの転職って、多くの人が「カルチャーフィット」だけで決めることが多いんです。でも、ほかの点がマッチしていないことも多くて…
だからこそ、この4つの要素で見て転職を決めるのがいいと思います。
「ONE CAREER PLUS」では、「#キャリアの地図 2022年 スタートアップ編」と題して、「あのスタートアップ各社には、どんな企業から転職しているのか?」を可視化したコンテンツも公開していますので、ぜひお役立ていただけるとうれしいです。
キャリアは「自分の人生の資産運用」。「売る転職」「買う転職」がある
長谷川さん
ここまで、具体的な福田さんのキャリアイメージについてお話ししてきましたが、最後にひとつお伝えしたいことがあります。
福田
なんでしょう…!
長谷川さん
ここ数年、ビジネスパーソンの待遇は大きく変わっていますよね。
「終身雇用はもう難しい」とか「ジョブ型の人材になれ」とか。
これによって、若い世代を中心にキャリア観も大きく変わってきていて、今は「キャリア=自分の資産」という考え方になっているんです。
長谷川さん
いまの若手にとって転職は当たり前になってきていますが、それって「わかりやすいリターンを得られるか?」という視点なんです。
そのリターンというのは、報酬はもちろん「スキル」もあります。この会社に入って、自分にどんなスキルが身につくのか?という点です。
佐賀さん
ここ数年で、「市場価値」という言葉を耳にすることが多くなり、「自分にはどんな価値があるのか?」「それはどこで発揮できるのか?」などといったご相談も増えました。
転職には、「売る転職」「買う転職」という概念があると思っていて。
佐賀さん
「売る転職」は自分が持っているスキルを企業に売り込むこと。
「買う転職」はその逆で、自分にない経験を企業で得る転職という意味です。
これは出口の話につながるのですが…「転職に何を求めるか? それは売りか?買いか?」ということを意識しておくと、キャリアに関して迷うことはないと思います。
佐賀さん
そして、もし迷ってしまったら、そのときは我々を頼ってください。
今回の転職を通じて、自身のキャリアで「売る要素はなにか?」「買う要素はなにか?」を一緒に考えていきましょう。
終わりに…
福田
今日の取材、僕の個人相談みたいになってしまったのですが、大丈夫でしたか…?
長谷川さん
もちろんです。
普段のキャリアに関するご相談もこうした流れで、その方のキャリアの状況に合わせてお話が進むケースが多いんですよ。
福田
このキャリアアナリストの方への相談って、基本的に誰でも受けることが可能なんでしょうか?
佐賀さん
もちろんです。
転職までいかなくとも「自分のネクストキャリアの選択肢と可能性を理解・整理したい」とか「客観的な意見がほしい」という場合には、少しでもお力添えできればと思います。
“決めつけ転職”から抜け出そう。
自分のキャリアを客観的に見れていなかった福田のように、「転職先が限られているはず」と多くの人が勝手に判断してしまいがち。
ですが、人の実績が蓄積された確かなデータで相談に乗ってくれるキャリアアナリストを頼れば、諦めかけていた道が切りひらけたり、思わぬ道に出くわせそうなことがわかりました。
福田のように「先が不安」と“なんとなく”の心配を抱えている人こそ、とにもかくにも、まずはキャリアの相談をしてもらいましょう。
〈取材・編集=福田啄也(@fkd1111)/文=清水紗良(@r25_shimizusara)/撮影=岡田誠〉
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