「酔っぱらってポチっちゃいましたね」

「ロケットの発射ボタンを押す権利」を1000万円でポチった男から学ぶ“ノリ”の真髄

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“ノリ”とは、ただの無謀か、金持ちの道楽か、それとも勇敢なチャレンジか。

「不況生まれ、デフレ育ち」の環境のなかで合理的に生きることを求められているR25世代からは薄らいでいるかもしれない“ノリの良さ”。

そんな時代に、驚きのノリで世間をザワつかせた男がいる。株式会社ニーズ・コーポレーション代表取締役、芹澤豊宏さんがその人だ。
芹澤さんは、昨年ホリエモンこと堀江貴文氏らが民間ロケット(通称:ホリエモンロケット)の打ち上げ費用調達のために実施したクラウドファンディングで、「ロケットの発射ボタンを押せる権利」を1000万円でポチった男

なかなか一歩を踏み出せない僕らにとっては、理解しがたい宇宙人のような存在である芹澤さん。今回は編集長の渡辺が、そんな彼が考える「ノリの真髄」を(芹澤さんのノリの良さを検証しながら)聞いてきた。

1000万円だけじゃなかった!? 「堀江さんには相当お金突っ込んでますよ(笑)」

渡辺:今日はよろしくお願いします。まずはじめに、ニーズ・コーポレーションはどんなことをしている会社なのか教えてください。

芹澤:建築、不動産、飲食、投資などの事業をしています。建物の新築やリノベーションを割安で請け負うことができるノウハウを持っていることが強みで、不動産投資のコンサルティングなんかもやってます。また、アジアを中心に海外で35店舗ほど飲食店やエステサロンを経営していて、その経験を活かして海外進出のお手伝いなどもしてますね。

渡辺:芹澤さんの会社は、堀江さんが主宰するサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」の法人会員だと聞きました。法人会員にはどんなメリットがあるんですか?

芹澤:堀江さんのコンサルティングを受けられます。ウチは投資先を紹介してもらったりしてますね。インターステラテクノロジズ(堀江さんがファウンダーをつとめるロケット開発会社)にも、サロン経由で出資させてもらいました。
画像は「堀江貴文イノベーション大学校」(DMMオンラインサロン)のスクリーンショット
渡辺:サロンの法人会員になったきっかけは?

芹澤純粋に堀江さんへの興味。それだけですね。『鮨会(すしかい)』(限定10名で堀江さんと高級寿司を食べるプレミアムイベント)の第1回にも参加してるし、サロンも法人会員になる前に、まずは個人として第1期から入ってます。堀江さんが風船上げたら、すぐそれに飛びついてきました。これまで相当お金突っ込んでますよ(笑)

渡辺:堀江さんは芹澤さんがいれば生きていけるんじゃないですか(笑)?

芹澤:去年堀江さんが(胃がんの原因になる)ピロリ菌の撲滅プロジェクトでクラウドファンディングをやったときも、一番高い200万円のプランをポチりましたね。リターンで僕の地元のいわき(福島県)に来てもらって、予防医療について講演してもらいました。小学生から高校生までは無料で招待したんですが、全部で1500人くらい集まったかな。

渡辺:え、1000万円の前にしれっと200万円もポチってたんですか!? どうしてそこまで堀江さんを追いかけてるんですか?

芹澤:30代前半でフジテレビを買おうとするとか、スケールがハンパないじゃないですか。いまそんなこと考える人いないでしょ?

渡辺:そうですけど、芹澤さんみたいな人もいない気が…。

仲間と飲んでいて、その場のノリで1000万円をポチッ。「酔っぱらって押しちゃいましたね(笑)」

渡辺:話題になった1000万円のプランは、どういった経緯で購入を決めたんですか?

芹澤:定期的にサロンの法人会員の面談があるんですけど、その度に堀江さんから冗談で「芹澤さん、買ってよ〜」って言われてたんですよ。それでちょっと考えて、「まぁ、アリかもなぁ」って…

渡辺:ならないですよ。そこはすぐ 「なんでやねん!」ってツッコまないと。

芹澤:そのときはまだ決めるには至らなかったんですが、クラウドファンディングも終わりに近づいてきたタイミングで、たまたま仲間と飲んでいてその話題になって。「いっちゃう?」みたいな。

渡辺:いっちゃわないですよ! 「もう一杯行っちゃう?」じゃないんだから。

芹澤酔っぱらってたこともあって、押しちゃいましたね

渡辺:もういますぐに断酒したほうがよくないですか?

芹澤:僕、酔っ払うと財布のヒモがなくなっちゃうんですよ…。社会人になってから、9割以上はごちそうしてるんじゃないかな(笑)。

渡辺:すごく仲良くなりたいです。
渡辺:ちなみに、会社の社員の方々は(1000万円出したことに対して)何か言ってました?

芹澤:いや何も。話題にすらならなかったですね。みんな見て見ぬフリですよ。

渡辺:完全に腫れモノ扱いされてるじゃないですか。

タイミングを間違えると全部止まる。罰ゲームのように緊張したロケット発射…

渡辺:ロケット打ち上げ当日はやっぱり緊張しましたか?

芹澤:めちゃくちゃしましたね。右手で押すか左手で押すか、事前にシミュレーションして臨みました。僕が押すタイミング間違えると、ロケットが全部止まっちゃうんですよ!それがホントにプレッシャーで。

渡辺:1000万円払ったのに罰ゲームみたいになってません? 芹澤さんの好きなタイミングで押せばいいってワケじゃないんですね。

芹澤:20ぐらいからカウントダウンが始まって、その流れのなかで押さないといけないんですよ。4、3、2…のあたりで押して、ゼロで発射するようにタイミングを合わせて。

渡辺:それはたしかにイヤですね…。ちなみに、その瞬間は『アメリカ横断ウルトラクイズ』さながらの「ウルトラハット」をかぶってたんですよね。その演出だと、ついボタンを早押ししちゃいそうですが。

芹澤:あれはテンション上がりました。

渡辺:実は今日、そのときの雰囲気を出すために編集部でもそれっぽいハットを用意してきたんですよ。よかったらかぶってみてください。

芹澤:お、いいですね!
芹澤:そうそう、こんな感じでしたね。こんなメガネはかけてないですけど。

渡辺:ちなみに、結局そのときのロケット打ち上げは失敗してしまったんでしたっけ?

芹澤:そもそも勘違いしてる人が多いんですけど、前回はあくまで打ち上げの「実験」だったんです。“宇宙の入り口”とされる高度100kmには到達しなかったですけど、無事に打ち上がって20kmまでは行きました。

次回以降の改善につながる貴重なデータも取れたし、オペレーションの確認もできた。その意味で「実験としては成功だった」というのが当事者の見解ですね。もうスポンサーもついたみたいですよ。
渡辺:なるほど。そして、それだけ宇宙に大きく前進した民間ロケットの発射ボタンを押したのが芹澤さんということになるワケですね。

芹澤:ホントに貴重な経験だったと思ってます。ただ、やっぱりお酒飲んでノリでポチって、さすがに次の日の朝はちょっと反省しましたよね。あっはっはっは(笑)!

渡辺:この人…絶対またポチると思う)

ノリの良い自分でいると自然と周りにノリの良い人たちが集まり、前向きな人間関係が構築できる

渡辺:これまでの人生、やはりノリが良いことで得をしてきたことが多いですか?

芹澤:ロケットの件は思いのほか話題になりましたね。「テレビ見ましたよ」と言われることも多くて。NHKにも取り上げられたんですが、そこそこ宣伝効果があったと思ってます。あとは、打ち上げの前夜祭に来ていたVIPの方々と出会えたこともよかった。

もうすぐ次回のロケット打ち上げに向けてまたクラウドファンディングが始まると思いますが、アピールがうまい法人なら1000万円以上の効果が出せるはずですよ。
渡辺:ほかに良かったことはありますか?

芹澤:リーマンショックの後、まだ誰もやっていなかった「土地から仕入れるコンパクトマンション開発」をいち早くやったんですが、それも成功した事例ですね。

渡辺:でも、ファーストペンギンになるって僕らにとってはなかなか難しいんですよね…。
芹澤:ただ、そういう個別事例を超越した本当のメリットは、“ノリは伝染する”ということだと思います。

自分をノリの良い状態にしておくと、自然と周りにノリの良い人たちが集まり、前向きな人間関係が構築できる。そして、そこからまた面白い情報が入ってきたり、新しいビジネスにつながったりする。それを繰り返してきていまの自分がいます。
渡辺:正直、自分は芹澤さんや堀江さんのような生き方がうらやましいです。どうしたらノリが良くなれますかね?

芹澤:う〜ん、それはなかなか難しい質問ですね。先天的な性格のような気もするし…。
渡辺:カンタンに教えられるもんじゃないですよね。でも、もう少し芹澤さんの頭の中をのぞいてみたいなぁ…。


…そうだ! 芹澤さん、僕と一緒にこれでつながってくれませんか?


芹澤
:つながる?


















渡辺:これなら以心伝心で芹澤さんの頭の中を理解できるはず!

芹澤:もうなんでも聞いてください!

スキマ時間で徹底的に情報収集。情報があれば、ノリでやっていいかどうかの判断ができる

渡辺:ありがとうございます! では、ノリの良い自分でいるために、芹澤さんがふだん意識していることはありますか?
芹澤:まず、情報収集は徹底的にやってますね。いまはスマホで何でも情報が手に入る時代なので、とにかくスキマ時間を活用して情報を取りつづける。自分が情報を持っていれば、これをノリでやっていいか否かの判断がしやすいので
渡辺:その考え方、最近自分にとって発見だったんですよね。キングコングの西野さんも最新の著書のなかで、「踏み出す勇気はいらない。必要なのは情報だ」と言っていて。行動できないのは、情報が少ないから。知らないからコワイんだと。

芹澤:そう思います。堀江さんのサロンに入っている目的も情報収集ですし、自分の情報の幅を広げるために、ふだんはむしろ異業種の人と多く接するようにしてます。
渡辺:ほかにも自分のなかで決めているルールなどはありますか?

芹澤:日頃から自分が持っているもの・持っていないものを明確にするようにしてます。そのうえで自分にないものを持っていて尊敬できる人がいれば、その人からのお声がけやお誘いには何も考えずについていくようにしてますね。
渡辺:へ〜! かなり思い切った発想のようにも思えますが、そういうルールを決めちゃえば迷わないのかもしれませんね!

芹澤:あとは、ノリって“自分に言い訳しやすい”というメリットもあるんですよ(笑)。失敗しても「どうせノリで決めちゃったからしょうがない」って思えますから。

渡辺:なるほど、おもしろい! 最後に、億劫で一歩を踏み出しきれない若者に向けてひと言アドバイスをお願いします!

芹澤:そうですねぇ…
芹澤:こんな大人になっちゃダメですよ!

渡辺:刺さってると思います。今日は貴重なお話をありがとうございました!

あとがき

最後に、こぼれ話をひとつ。実をいうと、今回ちょっとだけ写真を掲載するかどうか悩みました。しかし、それを相談したときに芹澤さんの口から出たのは、「いや、出すでしょ!」のひと言。ノリの良い人にこうやって後押しされると、すごく勇気をもらえるんです。

今回のインタビューを通じて、自分もノリの魅力に気づき、また少しだけノリが良くなれた気がします。みなさんも、まずは日々の情報収集から始めてみませんか?
もうすぐハロウィンですね
株式会社ニーズ・コーポレーション

株式会社ニーズ・コーポレーション

芹澤さんが経営するニーズ・コーポレーションのHPはこちら。この記事が負の宣伝効果にならないことを願います。
〈取材・文=渡辺将基(新R25編集長)/撮影=長谷英史〉