チャンネルが一気に増えるかも!?

テレビの世界が大きく変わる!? 政府が導入検討中の「電波オークション」を解説!

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多くの先進国で導入されている「電波オークション」という制度。最近、日本でも導入が検討されているらしく、安倍政権も9月13日には「前向きに検討したい」とのコメントを出した。

この制度が導入されれば、ボクたちがふだん見ているテレビの世界が大きく変わるようだ。最近よく問題になっている偏向報道を撲滅するなんていう意見もあるけど、一体どういうことなのか…? 「電波オークション」の基礎から解説する!

「オークション形式」で企業が電波を買える! アメリカ、イギリスなど先進国の多くで導入

日本では現在、テレビやラジオの放送、携帯電話の無線通話やデータ通信の“通り道”となる電波(周波数)は、国が管理している。電波を使うためには事業者が総務省に申請をする必要があり、審査を経て利用権を取得し、周波数の割り当てを受ける。この仕組みを「比較審査方式」と呼ぶ。許可を受けた事業者は、総務省に利用料を支払って電波を使用する。

対して「電波オークション」とは、名前の通り、電波の利用権をオークション方式で売り出す仕組みのこと。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど、先進国の多くがすでに導入している。アジアでも、日本、中国、北朝鮮、モンゴル以外は導入済みだ。

新規参入があればチャンネル数が増え、「競争の原理」で番組の質が向上する

では、オークション形式にするとボクらユーザー(国民)にはどんなメリットがあるのか? 

現在のテレビ業界は特定のテレビ局による寡占状態(一部の企業だけが権利を持っていること)にあるが、“新規参入”が増えれば、競争の原理が働いてサービスの向上が期待できる

テレビのチャンネル数はリモコンの数字分までしか増やせないと思われがちだが、日本では「使われていない電波」が存在している。電波オークションにより放送局の数が増えれば、思想的にもさまざまなスタンスの放送局のなかから自分に合ったものを選べるようになるのだ!(ケーブルテレビが主流のアメリカでは、多くの家庭で50〜数百チャンネルを見られるプランを契約している)

ただし、オークションにより電波の価格が高騰した結果、落札にかかるコストが制作費を圧迫し、逆にサービスの質が低下するかもしれないという危惧もある。

競合が増えて「電波利権」を失いたくない既存のテレビ局が導入を阻止している?

視聴者にとっても新規参入を狙う事業者にとってもメリットが大きそうな「電波オークション」だが、日本で導入が進んでいない理由は、政治力の強いテレビ局と系列の新聞社が頑なに反対しつづけているからだという。

新たなチャンネルが増えれば、当然視聴率は分散する。それを懸念した既存のテレビ局が、政治家とつながりを持って新規参入を阻止しようとする動きがあるらしい。自分たちが独占していた“電波利”を失いたくないのだ。

政府がオークション導入をほのめかしてテレビ局を統制しようとしている?

一方、電波オークションが「政府によるメディア統制の手段になる」という声もある。ジャーナリストの津田大介氏は、安倍政権が「電波オークション」導入の可能性を示唆していることについて、『AERAdot.』のコラムのなかで、
突如導入を持ち出した(そしてそれを政権に近いとされる産経新聞のみが報じている)ことには、経済的な面から放送局に揺さぶりをかけたい思惑が透けて見える。電波オークションは時代の流れとして導入すべき制度だが、同時に日本では『政権のメディア統制』という文脈があることも踏まえて議論しなければならない

出典 津田大介「メディア統制の手段にもなる電波オークション」

と語っている。つまり「政権に批判的なテレビ局などに対して、『電波オークションを導入して、お前たちの既得権益をなくすぞ』」と脅しているのではないかというのだ。

こうした点を考慮すると、早急に導入すべき!と結論づけるのは早計なのかもしれないが、電波オークションの導入がもたらす“テレビのオープン化”は、ネット全盛の現代には合っているように思える。今後の動向に注目したいところだ。

〈文=新R25編集部〉