ビジネスパーソンインタビュー
牛丼・アイス無料はすっかり定着。携帯キャリアの格安クーポンってどういう仕組み?

「携帯料金割引」じゃないのはなぜ?

牛丼・アイス無料はすっかり定着。携帯キャリアの格安クーポンってどういう仕組み?

新R25編集部

2018/02/04

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ソフトバンクがお得なサービスを実施している。毎週金曜日にさまざまな“無料クーポン”を配布する「スーパーフライデー」だ。過去には吉野家の牛丼、サーティーワンアイスクリームなどがタダになり、全国の店舗には大行列ができた。

そんなソフトバンクに追随し、auも「auエブリデイ」をスタート。格安クーポンを毎日入手できるという大盤振る舞いを見せている! 両社ともに太っ腹だけど、無料で商品がもらえるって不思議すぎる!これってどんな仕組みになっているんだろう?

キャリアはユーザーの囲い込み、提携会社は送客、ユーザーは無料で3者がウレシイ状態に!

Rodrigo Reyes Marin/アフロ

吉野家さん、いつもお世話になっております

無料クーポンの配布は、なにを目的としているのか。携帯電話ジャーナリストの三上洋さん、教えてください!

三上さん

携帯会社の目的は、“バズらせる”ことです。行列を作って話題性を生み、口コミやSNSでの拡散へとつなげています

――たしかに「牛丼無料」なんかは、SNSでもよく話題にされていましたが…それによりどんなメリットがあるんでしょう?

三上さん

携帯会社は、ご存じの通り「MNP(ナンバーポータビリティ。電話番号を変えずにキャリアを乗り換えること)」によってユーザーの奪い合いが続いている状態。「囲い込み」を行いながら、新規顧客も開拓することが狙いでしょう

――牛丼やアイスの料金は、携帯会社が負担してるんでしょうか?全額負担だとしたら、さすがに割に合わない気も…。

三上さん

携帯会社の負担はごく一部のはず。推測ですが、350円の牛丼なら1杯あたり50円~100円でしょうか。

また、タダ牛丼目当ての客を増やしても仕方ないと思われがちですが、一度来店してもらえれば「牛丼」や「アイス」を習慣付けできる可能性があるため、提携企業にとっても売上アップは十分に見込めるのです

なるほど…。携帯会社はユーザーの囲い込みをしながら、提携企業は集客、ユーザーは無料の商品をゲットできているのか。このサービスは、三者三様の“WIN”の上に成り立っているようだ。

顧客がどんな店に行き、どんなプランに入っているか? データを収集してマーケティングに活用

Rodrigo Reyes Marin/アフロ

例えば、「学生をもっと取り込むべき」というデータがあれば、広告の内容も学生向けのものになるはず…

こうした「送客ビジネス」は、昨今のビジネスシーンにおいて注目を浴びつつあるのだとか。

強みのひとつは、顧客データを集められることだ。たとえば、スーパーフライデーの利用時には、キャリアから来たメールに記載されている「クーポンコード」を店頭で入力して注文する。これにより「誰が、いつ、どこに来店したか」をデータ化でき、マーケティングにも活用できるのだ。

具体的にいうと、その人たちはどんな地域で行動していて、どんな料金プランに加入していて、どれぐらいの通信料を払っているか(動画などをよく見ているか?)がわかる。これは、広告を作ったり戦略を立てたりするうえで非常に重要なデータとなる。

類似の手法だと、「Beacon(ビーコン)」を使った送客ビジネスも活発だ。ビーコンとは、Bluetoothを利用した情報収集・発信サービスで、付近のお店から「タイムセール中です」「ハッピーアワーをやっています」といったお知らせがスマホに通知される。LINEと連動した「LINE Beacon」も登場し、ユニクロなども導入済みだ!

「クーポンより携帯料金を下げて」との声も。うかつに料金を変えられない携帯会社のウラ事情

Rodrigo Reyes Marin/アフロ

今年1月15日におこなわれた、ソフトバンク社の新サービス発表会

そんな手法も取り入れたスーパーフライデーだが、実際の効果には疑問符も付くという…。

三上さん

本当に、携帯会社の「顧客定着・新規開拓」につながっているかといわれると、正直疑問なんですよね。牛丼を食べるためにソフトバンクを利用しつづける人はいませんから…

それもその通りで、一部の“仕組みをわかっている”ユーザーからは、「クーポンを配布するくらいなら携帯料金を下げてほしい」という声も挙がっているとか。昨今は格安スマホが台頭し、月々1500円程度からスマホを使える時代になったが、携帯会社の大手3社は5000~6000円がベースラインのまま。

――なぜ携帯会社は直接料金を下げるのではなく、遠回りに思える「無料クーポン」なんてことをやるんでしょう

三上さん

携帯会社の業界的な「経営指標」とされているのは、顧客数と顧客単価。契約回線がいくつあり、ユーザーあたりの単価がいくらかによって会社の株価も決まってきます。そのため、ベースとなる携帯料金を下げるわけにはいかないんです

――でも、料金を他社より割安にすれば、ユーザーがたくさん流れてきて顧客数が上がるからOKなんじゃ?

三上さん

大手3社の価格競争は激しく、独自のプランを出しても他社に模倣されてしまうんです。つまり、自社の料金を下げたら他社も下げるため差別化にならず、結果的に業界全体の平均料金を落としてしまうだけ、ということに…

なかなか料金を変えられない事情はナットクだが、格安スマホの利用率が上がるなか、大手3社も近い将来、料金の見直しを迫られそうだ。

携帯会社の思惑がからみ合うスーパーフライデー。ボクらビジネスマンにありがたいことは確かなので、牛丼はおいしくいただきましょう!

〈取材・文=佐藤宇紘/編集=天野俊吉(新R25編集部)〉

取材協力/参照資料

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