“若者を諦める”と、生きやすくなる!?

カギは「コミュ力」!? 僕らはなぜ大人になれないのか…精神科医に聞いた

ライフスタイル2018.03.06by 新R25編集部

皆さん、「大人」になれてますか

…急にすいません。新R25編集部の天野です。

僕らは20代中盤から30歳前半くらいまでの「R25世代」に向けて情報発信をしているわけですが、自分も含めて、この世代って「年齢的には立派な大人だけど、中身はめっちゃ子供」だと思うのです。

そんな時、気になる本の情報が飛び込んできました。

「若者」をやめて、「大人」を始める』(イースト・プレス)

おおまかな内容は、

世間で「大人」と言われる年齢になったみなさん、立派な「大人」になれた実感はありますか? 人生の選択肢が多様に広がったからこそ、生き方が定まりにくいこの現代。それでも月日は流れ、いやおうなく私たちは年老いていきます。「成熟のロールモデル」が見えなくなった社会において、「若者」の立場を卒業し、「大人」を実践するとはどういうことか? 異なる世代との付き合い方、恋愛・結婚観、趣味とともに生きていくことについて。リアリティと現実のギャップに戸惑う人びとへ、新たな指針を示す人生論

出典http://www.eastpress.co.jp

…というドンズバな感じ。

そこで、著者である精神科医・熊代亨先生に、「大人とは何か」を教えてもらいたいと思い、取材を申し込みました。本を読みながら、お話を伺います。

僕らが「いつまでも若者でいたい」と思ってしまう理由

編集部・天野

編集部・天野

熊代さん、よろしくお願いいたします。

熊代先生

熊代先生

はい、よろしくお願いします。

(※熊代先生は実際には43歳の男性ですが、記事中ではかわいい白くまのアイコンで登場されます

天野

天野

いきなりざっくり聞いてしまいますが、僕らはなぜ「大人」になれないんでしょうか

熊代先生

熊代先生

80年代から90年代にかけて、「自由である」「可能性がある」といった、「若者を続けるメリット」ばかりが強調されてきたというのが大きいです。第二次大戦後は、戦前の「大人」の価値観や文化を否定する、新しい若者文化が広がってきました。

そうしたなか、メディアは何十年も「若者」の素晴らしさを宣伝してきました。加山雄三、矢沢永吉、松田聖子がテレビに出ると、「いつまでも若い」と称賛されますよね。

天野

天野

たしかに。あと「若者の間で流行ってるもの」とかも価値がある気がしてしまいます。

熊代先生

熊代先生

私や、ちょっと上の世代は、いつまでも若者でいられるという物語を信じてきたわけです。「フリーター」という自由な生き方ももてはやされました。

しかしその「若者」を続けた結果、生活が不安定な人が増えて“ロスジェネ”と呼ばれる世代になってしまった。「いつまでも自由なのがいい」というのは幻想だということです。

「40歳、夢から醒めて、逃げ場なし」。すげえ脅してくるな…
熊代先生

熊代先生

また、「いつまでも若者でいられる」は良いことのように思えますが、イコール「若者で居つづけなければならない」というデメリットもある。無理に若者でいつづけようとすると、体と心が“くたばって”しまいます

「『大人』が『若者』と同じように振る舞うと破滅が待っている」。怖いんですが…
天野

天野

くたばるってなんですか?

熊代先生

熊代先生

この本では、母親になってからも20代と変わらず趣味や仕事を続けようとして、限界が来てしまった患者さんや、若い女性と不倫の恋に落ち、妻と離婚したことがきっかけで、アルコール依存やうつになってしまった患者さんを紹介しました。

独身の若者にはできることでも、歳を取り、立場ができあがってからでは難しくなることってあるように思うんです。そこを読み違えると、心身がもちません。

「大人」になるべきタイミングっていつ? どうなったら大人?

天野

天野

でも本のなかでは、“精神が成熟していないまま、無理に「大人」をやると無理が生じる”とも書かれていますよね。「いつ大人になるべきか」は個人差があると。

そのタイミングって、どう判断すればいいんでしょうか…?

熊代先生

熊代先生

アイデンティティや人間関係が安定してきたとき、と考えてください。

ズッ友”という言葉がありましたが、「ずっと付き合っていく」友人関係、パートナー、仕事などに確信が持てたら、「大人」というステージにジャンプする意識を持ったほうがいいですね。

天野

天野

なるほど。そのあとにどうなれば僕らは「大人」になったと言えるんでしょうか?

熊代先生

熊代先生

自分自身の成長や欲求を最優先にしなくなったら、でしょうか。「自分が物語の主人公なんだ」っていう感覚が薄れてからが大人です。例えば、子供や、職場の後輩の成長を、自分のこと以上にうれしく思うとか。

天野

天野

自分のこと以上に…。難しいですね。

今仕事をしていて、自分が成長してる手応えもあるし、後輩よりは自分のことが大事だと思っちゃうんですが

この状態がずっと続いたらどうしたらいいんでしょう…?

熊代先生

熊代先生

若者盛りの時期は、それでもいいと思うんです。でも多くの人間は、いつまでも自分自身に夢中になりつづけていられないものなんですよ。

インターネットとかで活躍してる人を見てると、たまに「ずっと自分の成長だけが楽しい」みたいな人もいるんですけどね。「40歳過ぎても自分に熱中できる」っていうのはある種の才能だと思います

大人になると「生きやすくなる」

熊代先生

熊代先生

私が言いたいのは、「大人」になることは決して悪いものではないということです。

若者を諦めて「もう自分は大人なんだ」と吹っ切れると、生きやすくなります

天野

天野

生きやすくなるというのは…どういうことでしょう?

熊代先生

熊代先生

たとえば中年の飲み会って、楽しそうに昔のコンテンツの話をずっとしてるじゃないですか

天野

天野

めっちゃ分かります。というか自分もしてるかも…。

熊代先生

熊代先生

あれは要するに、「アイデンティティの指差し確認」なんです。つまり、俺たちはこういうコンテンツを吸収して生きてきたんだよな」っていうことを再確認して、自分という存在を維持している

天野

天野

あ~~~、友達と飲んでると、ひたすら昔の音楽を聴いたりしますね。熊代先生もそういうことがあるんですか?

熊代先生

熊代先生

自分も若いころは同年代の友人たちと一緒に、“いかにも中年に向けたリバイバルコンテンツ”をありがたがるオジさんたちを軽蔑してたんですよ。「中年オタクのなれの果て」とか言って。

「CLANNADは人生」。熊代先生も結構なオタクです
天野

天野

オタクに対しては急にキツイ言葉が。

熊代先生

熊代先生

ところが自分が中年になると、周りの同世代のオタクたちが、『ガンダム』や『エヴァンゲリヲン』のリバイバルグッズを楽しんでいるんです。新しいオタクコンテンツを受け入れる余裕がないんです

でも、最近はそういうのもいいと思うようになりました。若者と同じように、新しいコンテンツを受け入れるのはコストがかかることです。流行を追わなくて構わないって、本当は気楽なことじゃないでしょうか。

自分の周りで“いい中年”を探して、観察してみるといい

熊代先生

熊代先生

戦後に浸透した「自分を最優先」する考え方やライフスタイルは、社会的にもデメリットを及ぼしています。たとえば、「少子高齢化」です。

その弊害はいろいろありますが、たとえば今、職場で「ずっと自分が最年少」とか「部下がいない」という若手ビジネスマンが多い。つまり、世代が違う人との交流が少ないんです。

私は北陸の田舎の出身なのですが、子供の頃は、地域に顔なじみの大人や年配者がたくさんいて、そこから「大人」を学んでいた気がします。世代の違う人と接点を持つことで、世代の違いを認識して、「大人」になっていく材料をもらっていたんです。

職場で良い中年の「大人」がいたら、何を大事にして、どんなことに喜ぶのかとか、よく観察してみるといいですよ。「自分もこうなる可能性が高いんだ」という未来の情報がたくさんあるはずです

天野

天野

職場に「いい大人」がいない場合はどうしたらいいですか?(笑)

熊代先生

熊代先生

たとえば、同じ業界の人とか、同じ趣味の人とか、馴染みの飲み屋の常連とか、何でもいいのでそういう大人を探してみて、“マーク”してみるといいと思います。

「若者」は、そういう何者でもない「大人」をバカにしがちだから、普段から意識してないとそういう人の存在に気付かないんですよ。

“心のシフトチェンジ”をして普通に生きているだけで、「大人って結構大したものですよ」と熊代先生
天野

天野

でもそれ、ちょっと大変ですね。会社にいるだけじゃダメで、いろんな出会いを探さなきゃいけないんですね。

熊代先生

熊代先生

なので、現代では「コミュ力」がない人が「大人」になるのって難しいんです。SNSなどでコミュニケーションは取れますが、あれはあくまで似たもの同士をユルくつなぐだけだと思いますし。

天野

天野

本のなかにも、そもそも典型的な「大人」になることが“ぜいたく”な行為になっていると書かれています。

熊代先生

熊代先生

後輩を育てる余裕がある職場にいる、結婚して子供を作る余裕がある…という椅子をめぐる“椅子取りゲーム”みたいになってしまってるんじゃないかと。

職業によっても有利不利がありますよね。昼夜を問わず働く…みたいな働き方をしてたら、心をシフトチェンジする時間なんてないですよ

だからこそ、R25世代の人たちには周囲の人間から注意深く学んで、自分なりの「大人になるタイミング」を見極めてほしいなと思います。

大人になんて、いつかそのうちなれるだろう…と思いきや、全然そんなことはないようで。お話を聞いてみたら、「大人になる」ためには、自分のアイデンティティを確立させること、世代の違う人間と関わり学ぶことが必要とのことでした。

本のなかには、これらを適切にやっていかないと「破滅が待っている」という怖すぎる一文も…! R25世代の皆さんも、自分の身を振り返ってみてください。では。

〈取材・文=天野俊吉(新R25編集部)〉

著者紹介

p_shirokuma(熊代亨)(@twit_shirokuma)さん | Twitter

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精神科専門医。「診察室の内側の風景」とインターネットやオフ会で出会う「診察室の外側の風景」の整合性にこだわりながら、現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信中。<br>通称“シロクマ先生”。著書は『「若者」をやめて、「大人」を始める』(イースト・プレス)『認められたい』(ヴィレッジブックス)など

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