ビジネスパーソンインタビュー
イチナナライバーmaaamiさんが成功を収めるまで
極貧家庭、夫のDV、職場のパワハラ… 壮絶な逆境から「17 Live」で人生逆転した女性の話
新R25編集部
YouTuberに続く新たな職業として注目を集めている、「ライバー」を知っていますか?
ライバーとは、ライブ配信者のこと。スマートフォンひとつで誰でも簡単にライバーになれる時代、新R25読者のなかにも一度はご自身のSNSなどでライブ配信をしたことがある方もいるのではないでしょうか?
そんなライブ配信市場で、今、特に盛り上がりを見せているのがライブ配信アプリ「17 Live(イチナナライブ)」。2017年に日本リリースされてから約1年半。アプリ内のイチナナライバーは7000人、全世界でもユーザー数4000万人以上と、数字を見てもその人気が伺えます(数字は2019年2月現在)。
今回は、そんなイチナナライバーとして圧倒的な人気を誇るmaaamiさんに、17 Liveで成功する秘訣を伺おうと取材をオファー。
今の姿からは想像もできないような壮絶な過去を持つmaaamiさんが、努力と戦略で勝ち取ったシンデレラストーリーをお届けします!
〈聞き手=ライター・於ありさ〉
【maaami】イチナナライバー。ライブMV(音楽にあわせて「フリースタイル」でスマホを動かしたり演出をしたりする独自の配信方法)と呼ばれるスタイルで、トップクラスの人気を誇る。ファンから贈られるギフトポイントで競うイベントで世界一に輝いたことや、単月で「日本一稼いだイチナナライバー」になったこともある
貧乏、DV、パワハラ…とにかく不幸の連続だった
ライター・於
まず「17 Live」を始める前のお話を教えてください!噂によるとかなり不幸続きだったとのことですが…
maaamiさん
たしかに子どものころから“不幸続き”でした(笑)。家がかなりの貧乏で、トイレはぼっとん、洋服は穴が開いてもワッペンで隠して着つづける、小学校のころまでお風呂は3日に1回…という生活を送っていて。
お風呂が自分にとっての「一大イベント」って感じでしたから…
ライター・於
いきなりパンチのあるエピソード…
maaamiさん
中学になって、少しは生活がよくなったんですけどね。中学のころは、自分の夢だったキャビンアテンダントになるために、勉強を頑張りました。
でも、どんなに勉強しても、経済的な理由で目標の大学に行くことはできないと知って、諦めました…。それで学校にあまり行かなくなって…
学校に行かず、海に行ったり、バンド活動をしていたりしたそう…
ライター・於
maaamiさん、結婚されていたこともあったんですよね?
maaamiさん
そうなんです。短大を卒業してすぐ、友人の紹介で出会った人と結婚しました。20歳で子どもも生まれたんです。
でも、結婚していた4年間は今振り返っても、本当にきつかった…
ライター・於
どうしてですか?
maaamiさん
束縛がすごかったんですよね。
「男女間の友情は成立しない」と男友だちの連絡先を全部削除、携帯はGPSで監視されていて、ちょっと違うところに行くと「今、誰とどこにいるの?写真送って」と。モラハラとDVもありました…
それが4年間。当時の私の感覚は異常だったと思います。
ライター・於
4年間も…つらすぎますね。逆にそこからどうやって別れたんですか?
maaamiさん
ほぼ逃げたようなもんです。妹に携帯をもらって、こっそり家を契約して…
誰しも、結婚に夢を持ってると思うんですけど、
貧乏だった子どものころより、この4年間のほうがよっぽどつらかったですね。
maaamiさん
逃げた後は「仕事をしなきゃ」と急いで職探し。やっと採用してくれたアパレルショップで仕事を始めました。
でも、そこでもあまり良い思い出がなくて…
ライター・於
なにがあったんですか?
maaamiさん
短大卒業後、少しだけヨガインストラクターとして働いて、すぐに結婚してしまったので、社会人経験がほぼなかったんですね。だから、焦っていたというか…早く稼げるようになりたくて、「次は何をやったらいいですか?」「この仕事、覚えたいです」と積極的すぎたんです。その結果、店長にウザがられてしまって…
お店の角に三角形のスペースを作られて、「ここから出ないで」って言われたり、女の子1人じゃ持てないような鉄のパイプを一人で何十本も運ばせられたり…
さらに上の人にそれを話したところで逆効果。嫌がらせは悪化する一方でした。
ライター・於
なんでそんなつらい状況が続くんですか…
でも、一度は戦ってみたんですね。
maaamiさん
もともと負けず嫌いなんですよ。だから、負けたままじゃ嫌だし、絶対どこかで逆転したくて!
強い
やるからには本気で! スマートフォン1つで始まったmaaamiの逆襲
ライター・於
ライバーを始めたきっかけは、なんですか?
maaamiさん
超個人的な話なんですけど、元旦那に子どもの親権をだまし取られていて、それを取り返そうと裁判をしてて…負けかねない状況だったんです。
でもライブ配信から有名になって、あわよくばテレビに出られるようになったら、もし離れることになっても、子どもに「あ、ママだ」って気づいてもらえる。
それなら間接的にだけど側にいられるかな…って思ったんです。
ライター・於
お子さんのためだったんですね…
maaamiさん
以前に別のプラットフォームでライブ配信をして、一時的に伸びたことがあったので、集中したらうまく行くかもと思ったんです。それで、ライブ配信1本に集中しようと、アパレルを辞めました。
ライター・於
かなり思いきりましたね。
ライブ配信以外の収入はゼロということですよね?
maaamiさん
ゼロですね。鞄とか洋服とか全部売って、食費に充ててました。
洋服は全部妹から借りて、コンビニのビニール袋を鞄代わりにしてましたね。
「3カ月で成功しなかったら、仕事を探す」とリミットを決めて、とにかく頑張ってみようと。
ライター・於
相当つらい状況にも思えるのですが、どうして頑張れたんですか?
maaamiさん
学生のころからいろいろうまくいかなくて、結婚生活も本当につらかった。
でも、「どこかで絶対逆転しよう!」ってずっと思ってたんです。そういう負けず嫌いな気持ちが原動力になってるところはありますね。
あとは、親権を争う裁判のためにお金が必要だったこともあって…いろんな意味で「ここで成功するしかない!」って集中できたんだと思います。
今は無事お子さんと暮らしているそう
「とにかくデータを取る」「親近感を持ってもらう」maaami流人気獲得術
ライター・於
配信に専念してみて、順調にフォロワーを増やせた理由はなんですか?
maaamiさん
とにかくデータを取っていました。
毎日何時間配信して、どのくらいイイネが取れて、どのくらいフォロワーが増えたか統計を取る。その結果を見て、自分なりのゴールデンタイムを見つけて配信したり…
あとは、台湾の方が多く見てくださっていたので、中国や台湾のあいさつや若者言葉を勉強してみましたね。あいさつだけでもできれば、親近感を持って見てもらえるかなと思って。
ライター・於
すごい努力家…やっぱりかなり戦略的に動かれてたんですね。
maaamiさんの代名詞でもある、ライブMV(音楽にあわせて「フリースタイル」でスマホを動かしたり演出をしたりする独自の配信方法)はどうして生まれたんですか?
11秒ぐらいから、ライブMVの様子が見られます
maaamiさん
私がイチナナを始めたころって日本人が少なくて、ユーザーの中心は台湾の方だったんですね。語学の勉強はしても、さすがに流ちょうにコミュニケーションを取るのは難しかった。
だから、目につくことをやりたいなって思ってエアドラムやエアギターを始めました。そこから、今のライブMVに行きつきましたね。
ライター・於
なるほど…それで人気が爆発したわけですね。
人気になると批判もありそうですが、いかがでしたか?
maaamiさん
もちろんありましたよ。ライブMVをパフォーマンスしている間は、コメントを返さないんですね。
でも、ライブ配信は普通コメントを返すものじゃないですか。だから「コメント返さないとか、フォロワー増えないよ?」とか「え、シカト?」とか言われました。おちょくられることも多かった。
ライター・於
気にならなかったんですか?
maaamiさん
まったく気にならないと言ったら嘘になるんですけど、結婚していた4年間に比べたら屁でもなかったです(笑)。
自分の頭のなかでは、伸ばせる未来が描けていたので、いいやと思っていました。
「接触時間を増やす」ために長時間配信する一方で、情報には踊らされない
ライター・於
ライブ配信って気軽に始められる一方で、なかなか見てもらえず、すぐに辞めてしまう方も多いじゃないですか。誰でも成功できる秘訣ってあるんでしょうか?
maaamiさん
配信する時間が長ければ長いほど、成功する確率が上がると思います。
私も12時間配信とかしてましたもん。起きて配信、寝て配信。休みはなし!(笑)
ライター・於
12時間…!?
そんなに長く配信することの意味って何なんでしょう?
maaamiさん
「接触回数が増える」んですよ。
人って、最初は興味ないと思っていたものでも、何回か接触していてある一定回数を超えると、急に気になるようになる。
朝会社行く前にイチナナで見かけたmaaamiが、仕事を終えて、まだ配信してたら、「え?まだ配信しているの?」って興味を持ってもらえますよね。
ライター・於
なるほど…
maaamiさん
街で流れている音楽だって、よく耳にしているうちに気になっちゃって、好きになったりするじゃないですか。
それと一緒で、とにかく潜在的なファン、ファン予備軍の目にとまるようにする。そのために有効な方法が、長時間配信だと思ったんです。
ライター・於
ほかに、ご自身で思う“成功の要因”みたいなものはありますか?
maaamiさん
今って、たくさんの“成功する方法”みたいな情報がありますよね。イチナナに関しても、こうやったら稼げるみたいな方法って調べたらたくさん出てきます。
でも、そういう情報に振り回されるんじゃなく、最終的には自分で試して、本質的なことを見抜くことが大事なのかなと思います。
ライター・於
本質的なこと?
maaamiさん
こうしたら稼げるって書いてあったからって、自分がやりたくないことをやっていたらつらいだけだと思うんです。
どういうことをやりたいのか、お金を稼いでそこから何がしたいか、突き詰めていくことが重要だと思うんです。
それがないと、たとえば長時間の配信なんて続けられないですよね。
maaamiさんにとっては、高校時代から続けていた音楽が、活動のベースになっているとのこと
「もう1人で戦わなくていい」トップライバーになって手に入れたのは大金ではなく、仲間
ライター・於
トップライバーとなったことで、以前とは比較できないくらいの生活になったのではないかと想像します。
maaamiさんがトップライバーになって、手に入れたことってなんですか?
maaamiさん
うーん、まわりの仲間ですかね。
これまでを振り返ると、私はずっと1人で戦っていました。
でも、今は批判されても、どんな状況になっても、分かってくれる、応援してくれるファンの方や信頼できる人がいる。そんな安心感や心強さを感じているんです。それが一番大きいですね。
ライター・於
トップライバーとして、かなり稼がれていると思ったので、お金と答えるのかと思いました(笑)。
maaamiさん
たしかに鞄がビニール袋ではなくなりましたね(笑)。
でも、高い鞄や車を買ったりしても、1人でそれを持っててもしょうがないじゃないですか。
だからあくまでも、いただいたお金はまわりの皆さんに返せるような形で使いたいんです。
ライター・於
返すというのは?
maaamiさん
自分の曲をリリースするための制作費に充てたり…自分が新しいことに挑戦しながら、ファンの方を楽しませられるようなことに使いたいんですよね!
お金で手に入る幸せよりも、誰かと時間を共有できたり、皆で何か作り上げることの方が私にとっては、よほど裕福なこと。だから今、本当に幸せだなと感じるんです。
「17 Live」で、それまでの悲惨な生活を一変させたmaaamiさん。
「なぜ、壮絶な過去を経験しても、maaamiさんの描く未来はポジティブなのですか?」とお伺いすると、「これまでも、逆境の後には超幸せなことがありました、単純に幸と不幸が繰り返しているだけと思っているからです。今幸せを感じられるのも、これまで不幸が続いたおかげかもしれませんね」とのこと。そう話す姿に、芯の強さを感じさせられました。
一生幸せが続く保証なんて、誰にもない。でも、ファンや仲間を思いやり、その人たちから愛されるmaaamiさんに乗り越えられない逆境はないのかもしれません。
〈取材・文=於ありさ(@okiarichan27)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中山駿(@nk_shun)〉
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