日本人の睡眠時間は、世界ワースト1〜2位
「睡眠は90分サイクル」はウソ!? 睡眠界の権威が語る“最高の睡眠”をとる方法
夜遅くまで残業して、帰宅後にも自分の時間が欲しいとなると、どうしても睡眠時間を削りがち。翌朝は寝不足で眠い目をこすり通勤電車に揺られる毎日…。
このままじゃいけないのはわかってても、どんなふうに習慣を変えればいいのかわからない。
そこで今回は「睡眠」の世界的権威に、
・最適な睡眠時間は何時間?
・睡眠不足が続くとどんな影響があるの?
・長く眠るのではなく、睡眠の質を上げて“睡眠負債”を減らす方法は?
こんな疑問をぶつけました。
その権威とは、発行部数30万部突破のベストセラーとなった『スタンフォード式 最高の睡眠』の著者であり、スタンフォード大学教授の西野精治さん。
スタンフォード大学の最新研究によると、僕らが知っている“睡眠の常識”には間違いが多くあるようです。
目次
日本人の睡眠時間は世界最低レベルで不足している
2睡眠不足がもたらす恐ろしい悪影響
睡眠不足の悪影響① ありとあらゆる病気のリスクが高くなる
睡眠不足の悪影響② 睡眠不足が続くと太る
睡眠不足の悪影響③ 起きている間のパフォーマンス低下
3「睡眠負債」は土日に少し多く寝るくらいでは解消できない
4睡眠時間が十分にとれないなら、入眠から90分の質にこだわろう
5睡眠の“ゴールデンタイム”の質を高める2つの方法
“ゴールデンタイム”の質を高める方法① 寝る90分前に15分、お風呂に入ろう
“ゴールデンタイム”の質を高める方法② 脳の活動をオフにしてリラックスする
6スッキリ起きるための2つのコツ
スッキリ起きるコツ➀ アラームは20分の間隔で2回鳴らす
スッキリ起きるコツ② 起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びる
7睡眠にまつわる“常識”は正しい?間違い?
睡眠の“常識”① 「電車でのうたた寝はNG」はホント?
睡眠の“常識”② 「お酒は睡眠の妨げになるから避けるべき」はホント?
睡眠の“常識”③ 「寝る前にスマホを触ると、ブルーライトで睡眠を阻害される」はホント?
睡眠の“常識”④ 「睡眠のサイクルは90分だから、それに合わせて睡眠時間を決めるべき」はホント?
8睡眠の“常識”⑤ 「訓練すればショートスリーパーになれる」はホント?
9睡眠の“常識”⑥ 「昼寝は夜に眠れなくなるから避けるべき」はホント?
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日本人の睡眠時間は世界最低レベルで不足している
ライター・サトー
西野さん
調査対象は数千人~100万人規模とかなりバラバラですが、そのほとんどで日本人の睡眠時間は、たいてい世界ワースト1位か2位なんですよ。
ライター・サトー
西野さん
さらに私たち、スタンフォード大学の研究チームがおこなった調査では、他国の主要都市と比較して、睡眠時間の理想と現実のギャップが東京の人はとくに激しいという結果が出ています。
日本は類を見ないくらいの、「睡眠不足大国」なんです。
『スタンフォード式 最高の睡眠』より
睡眠不足がもたらす恐ろしい悪影響
ライター・サトー
西野さん
ライター・サトー
睡眠不足の悪影響① ありとあらゆる病気のリスクが高くなる
西野さん
・高血圧
・糖尿病
・精神疾患
・うつ
・ガン
・感染症
西野さん
そして6年後、前回と同じ人々を追跡調査したところ、病気で亡くなったのが最も少なかったのは、平均値である7.5時間寝ている人々でした。
一方で毎日3~4時間しか寝ていない人は、平均的な睡眠時間だった人々の1.3倍、死亡率が高かったんです。
ライター・サトー
睡眠不足の悪影響② 睡眠不足が続くと太る
西野さん
ライター・サトー
西野さん
ライター・サトー
睡眠不足の悪影響③ 起きている間のパフォーマンス低下
西野さん
睡眠不足になると、それくらいパフォーマンスが下がってしまいます。
ライター・サトー
西野さんの奥様、智惠子さん
具合が悪いと思ったら、すでにアウトですよ!
ライター・サトー
「睡眠負債」は土日に少し多く寝るくらいでは解消できない
実はこの睡眠負債、ちょっとやそっとでは解消できない、厄介な存在らしいんです。
ライター・サトー
西野さん
ライター・サトー
西野さん
つまり寝られるだけ寝かせてみて、どれくらいの睡眠が必要なのかを確かめようというわけです。
ちなみに、実験前の彼らの平均睡眠時間は7.5時間。働き盛りの20代から見れば、十分な睡眠時間と思いますよね。
ライター・サトー
西野さん
7.5時間も睡眠をとっていて健康的かのように思える彼らも、実は1日40分くらい足りなかったんです。
ライター・サトー
西野さん
『スタンフォード式 最高の睡眠』より
ライター・サトー
西野さん
睡眠時間が十分にとれないなら、入眠から90分の質にこだわろう
ライター・サトー
西野さん
私たちは通常、眠りに落ちたあとにノンレム睡眠(脳の活動が低下する深い睡眠)とレム睡眠(脳が活動している浅い睡眠)を、4~5回の周期で繰り返します。
この周期のなかで、最も深い睡眠をとれるのが1回目の周期。特に入眠直後のノンレム睡眠が、最も深くなるんです。
『スタンフォード式 最高の睡眠』より
ライター・サトー
西野さん
記憶の定着や悪い記憶を忘れるなど、精神的にも大切な作業がおこなわれています。
ライター・サトー
西野さん
8時間寝たのに眠気が取れない人と、6時間の睡眠でスッキリ起きられる人の差も、ここにあります。
つまり「最初の90分」で深い睡眠を得られる努力をすることは、改善の効率がいいんです。
睡眠の“ゴールデンタイム”の質を高める2つの方法
ライター・サトー
西野さん
“ゴールデンタイム”の質を高める方法① 寝る90分前に15分、お風呂に入ろう
西野さん
そもそも体温には2種類があって、体の表面の温度である「皮膚温度」と、脳や臓器など、体の内部の温度である「深部体温」に分けられます。
特に深部体温のリズムは強固で、朝は高くなって夜には低くなるパターンにほぼ固定されているんです。
ライター・サトー
西野さん
それが夜になると、毛細血管を通じて深部体温の熱が手足から放出されます。深部体温と皮膚温度の差が小さくなるわけです。そのタイミングに合わせて、私たちの眠気は強くなります。
このメカニズムに合うように体の温度を調節すると、スムーズに入眠でき、“ゴールデンタイム”の質が高くなります。
『スタンフォード式 最高の睡眠』より
ライター・サトー
西野さん
私たち人間は恒温動物なので、体温を一定に保とうとする機能が備わっています。入浴はこの性質を、上手に活用できるんです。
西野さん
そしてお風呂を出ると、約90分かけてゆっくり入浴前の体温に戻ったものの、毛細血管は拡張したままなので、血管から熱が放散されて、さらに深部体温は下がっていきました。
つまり体の芯まで温めると、皮膚温度は上がり、深部体温は下がっていくということです。
ライター・サトー
西野さん
もし「忙しくて入浴後に90分も待てない」という場合は、深部体温が高くなりすぎないようにシャワーやぬるめのお風呂にするといいでしょう。
“ゴールデンタイム”の質を高める方法② 脳の活動をオフにしてリラックスする
西野さん
就寝前の1時間は頭を使わないようにするのが大事ですね。テレビやスマホなどは見ず、明かりを消してリラックスしましょう。
ライター・サトー
西野さん
よりリラックスできるものや退屈なもののほうが、睡眠の観点ではおすすめです。
スッキリ起きるための2つのコツ
スッキリ起きるコツ➀ アラームは20分の間隔で2回鳴らす
西野さん
ライター・サトー
西野さん
朝に近づくほど浅い眠りであるレム睡眠は長くなります。そのタイミングであれば小さな音でもムリなく起きられます。1回目を小さな音にする理由はここにあります。
加えて朝方になると、ノンレム睡眠の出現時間は短くなるので、たとえばアラームの間隔を20分にしておけば、レム睡眠のタイミングに2回のうちどちらかは当たる確率は非常に高くなります。
目覚めが悪くなるタイミングで、ムリやり起こされるのを避けられる方法なんです。
スッキリ起きるコツ② 起きたらカーテンを開けて太陽光を浴びる
西野さん
そこで大事なのが、午前中に太陽の光を浴びることです。
私たちの体は、太陽光によって体内のリズムを調整しています。たとえば眠気をひきおこすホルモンの「メラトニン」は太陽の光を浴びることで分泌が抑制されるメカニズムになっているんですよ。
ライター・サトー
西野さん
睡眠にまつわる“常識”は正しい?間違い?
ライター・サトー
ズバリ答えていただけませんか?
西野さん
睡眠の“常識”① 「電車でのうたた寝はNG」はホント?
ライター・サトー
自宅でグッスリ眠ることを考えると、うたた寝は我慢したほうがいいんですかね?
西野さん
眠気があって眠れる環境であれば、総睡眠時間を増やすのを優先して、無理せず休んでください。眠気は睡眠がとれるチャンスなので短時間でもとったほうがいいです。
ただし細切れの睡眠では、まとめて寝るほどの効果は期待できません。「家で5時間、通勤で2時間の合計7時間睡眠だ」という考えはやめましょう。
睡眠の“常識”② 「お酒は睡眠の妨げになるから避けるべき」はホント?
西野さん
一方で、お酒には入眠作用もあります。寝る100分前くらいまでに、350mlの缶ビール1本、あるいは日本酒1合くらい飲むのであれば、ほどよいリラックス効果が得られて翌日のコンディションも問題ないでしょう。
ライター・サトー
西野さんの奥様、智惠子さん
ライター・サトー
睡眠の“常識”③ 「寝る前にスマホを触ると、ブルーライトで睡眠を阻害される」はホント?
ライター・サトー
西野さん
たしかにブルーライトには脳を覚醒させる効果があるんですが、睡眠に影響を及ぼそうとするなら、かなり画面に顔を近づけてじっと長く見つづけるぐらいのことをする必要があります。
ライター・サトー
西野さん
スマホを操作しているときはいろんな刺激的な情報に触れますよね。それで脳が興奮して眠れない。そちらのほうが問題なので、スマホを寝る前に触ることはおすすめしません。
睡眠の“常識”④ 「睡眠のサイクルは90分だから、それに合わせて睡眠時間を決めるべき」はホント?
ライター・サトー
西野さん
これは個人差だけでなく、天気や体調、眠る場所などのシチュエーションによっても変化するんですよ。だから90分のサイクルで考えて、気持ちいい起床を目指すのは難しいでしょう。
ライター・サトー
睡眠の“常識”⑤ 「訓練すればショートスリーパーになれる」はホント?
ライター・サトー
西野さん
2週間~3週間ほど同じ睡眠時間で生活してみて、もしも体調不良などなければ、続けるといいでしょう。
ライター・サトー
西野さん
1日10時間以上眠るロングスリーパーのなかにも、アインシュタイン、ウサイン・ボルトなど偉大な功績を残している人はたくさんいますし、たいていは起きてる時間のムダを削るほうが簡単です。
自分の理想のライフスタイルなどを踏まえたうえで、本当にショートスリーパーにならないといけないのかを考えてみてください。
睡眠の“常識”⑥ 「昼寝は夜に眠れなくなるから避けるべき」はホント?
ライター・サトー
日中のパフォーマンスは上がりますし、認知症のリスクを下げることもわかっています。たとえば2000年に、日本の国立精神・神経医療研究所センターで、アルツハイマー患者337人とその配偶者260人を対象に、昼寝の習慣を調査しました。
すると、昼寝の習慣が1日あたり30分未満のグループは、昼寝の習慣がない人よりも認知症の発症率が約7分の1程度だったんです。
ライター・サトー
西野さん
ライター・サトー
西野さん
昼寝は30分未満に抑えるのがいいでしょうね。短時間であれば、非常におすすめしたいです。
ライター・サトー
寝不足気味で体調がよくないと感じている方は、今日からでも“睡眠のゴールデンタイム”を意識するなど、睡眠習慣を見直してみませんか?
〈取材・文=サトートモロー(@tomorrow_p_sato)/編集・撮影=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉
『スタンフォード大学教授が教える 熟睡の習慣』西野 精治 | Amazon
※2 Uemura-Ito, S., et al.,Sleep facilitation by Japanese hot spring; EEG, core, proximal, and distal temperature evaluations.Sleep and Biological Rhythms, 2011.9(4): p. 387.
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