ビジネスパーソンインタビュー
「思想はシステムに反映させる」
“1億円プレイヤー”6人が在籍するホストクラブ経営者が教える【マネジメントの掟】5カ条
新R25編集部
やる気が空回りしてる人、テンションが低い人、上司の前でだけ調子がいい人…。
会社にいれば、能力や性格がバラバラな人たちが集まるのは当然のこと。そんな人たちをひとつの方向に向かってマネジメントするって難しいですよね。
そう考えていたとき、一人の経営者の存在を知りました。
group BJ ONE'S CREATION代表取締役社長・一条ヒカルさん。
これまでに多くの有名ホストを輩出し、未経験者のみで店舗の売上「月間1億円」を突破した偉業を持つ超敏腕マネージャーです。
先日、「儲けの秘密」をつづったこちらのnoteが、ネットで話題に。目にした方もいるのではないでしょうか。
最近では業界の枠を超え、一般企業で人事やマネージャー層を対象としたセミナーの講師を務めているのだとか。
ぜひマネジメントの極意を伺いたい…!
ということで、一条さんがオーナーを務める歌舞伎町「CLUB CLASSY」に行ってきました!ワクワク!
〈聞き手=於ありさ〉
業界の4割のホストは、月の売上が0円~数万円…
【一条ヒカル(いちじょう・ひかる)】1987年1月4日生まれ。富山県出身。美容師の経験を経て、現在のgroup BJでホストとしてのキャリアをスタート。現在は同グループのホストクラブ4店舗を経営。2019年5月に放送された日本テレビ『ものまねグランプリ』にて俳優・佐藤健のそっくりさんとして出場し話題となった
一条さん
わざわざ店舗までお越しいただきありがとうございます!
店内寒くないですか? なにかあればおっしゃってくださいね!
於
だ、大丈夫です! よろしくお願いします!
(サラっとした気遣いがすごい…)
…というか待て待て、めちゃくちゃカッコよくてビビるんですけど! こんな上司がいたら、それだけで頑張れそうです
於
一条さんのグループには、年間で1億円以上売り上げるホスト“1億円プレイヤー”がいらっしゃるんですよね?
一条さん
そうですね。“1億円プレイヤー”は6人います。
もっと言うと、日本で唯一、6年連続で年1億円以上売り上げているホストもいます。
於
ろ、6年連続!? そもそも“1億円以上売りあげる”ってことがすごいと思ってしまうんですけど、ホストの世界では普通のことなのでしょうか?
一条さん
普通ではないですね(笑)。
業界全体では、月の売上が0円~数万円のレベルのホストが4割。
1億円プレイヤーと呼ばれる人は歌舞伎町でも30人、2年以上連続で1億円以上売り上げているホストはそのうちの5人といわれていますから。
ほとんど稼げてない人が4割いることにも驚愕です
於
なんで、一条さんのお店のホストだけがそんなに売れっ子なんでしょう?
すごいイケメンだけを採用しているとか…?
一条さん
いえ、メンバーには悪いですけど、まれにイケメンじゃない子もいます(笑)。
それに他店からの引き抜きをしていないので、経験があるホストや、もとから売れる素質がある人を集めたというわけでもありません。
一条ヒカル流マネジメント①「長所をムリヤリ引き出して、居場所を作る」
一条さん
やはり重要なのは、チームをマネジメントすること。
まずは、長所を見つけてあげることですね。
一条さん
先ほどもいったように、うちにはイケメンじゃない子もいますし、オシャレに着飾ることに興味のない子や、女性とまともに話せない子もいます。
だから、まずは自信を持ってもらうためにも長所を見つけて、自分の職場に居場所を見つけてあげることが重要なんです。
於
職場なんだから当然居場所はあると思いますが…
一条さん
いや、僕はそうは思いません。ホストに限らず、「自分は承認されている」「職場に居場所がある」とちゃんと思えていない人って多いです。
「ここはキミの居場所なんだよ!とちゃんと伝える」。これがマネジメントの最初の一歩なんですよ。
一条さん
ここで1つポイントなのが、見つけてあげる「長所」がウソではダメ。
テレビに出ているタレントさんを想像したらわかりやすいと思うのですが、強引なキャラづくりって長続きしませんから。
あくまでも素の性格のなかから長所を引き出し、ポジションを見つけてあげることが有効だと、僕は思います。
於
なるほど…でも、長所ってそんなに簡単に見つかりますかね?
「こいつ何にもいいところないな」って人も、職場にはいるような…
一条さん
仕事をしているとき以外にも目をこらして、それを見つけてあげるのが僕の仕事です。
うちの店に、「かっこよくない」「ファッションセンスがない」「気遣いができない」って子がいたんですけど…
於
(それはそもそもホストとして大丈夫なんだろうか…)
一条さん
その子を見てて思ったんです。「あいさつの声が大きいな」って。
だから「お前があいさつしてるの聞くと、こっちも元気出るわ!」「今日からコール隊長やってくれない?」って、コール隊長に任命したんですよ。
於
ほう…
一条さん
そしたら、コールを聞いて「あんなヤツいたんだ」って指名が入るようになって、仕事への意識が上がっていったんです。接客も頑張るようになったり、髪型や服装も積極的に見直すようになったり。
そうなったら、もうプラスの連鎖ですよね。
「一緒に歩いてて『こいつ、絶対に赤信号を渡らないな、マジメなところがあるのかもしれない』とかでもいいんですよ」
一条さん
小さな長所を見つけて引っぱりだして、ぐっと強いものに料理する。
それがマネジメントの第一歩です。
一条ヒカル流マネジメント② 「みんなが気づいていないところだけを褒める」
於
マネジメントというと、「褒めて承認してあげるべき」という話もよく聞くんですが、“褒め方のコツ”とかもありますか?
一条さん
やみくもに褒めればいいってわけではない。あんまり褒めまくっててもウソっぽいですし。
僕は、みんなが気付いていないところだけを褒めるようにしています。
一条さん
たとえば、お店が閉店するときって、ホストたちは自分を指名してくれたお客様を店の外までお見送りするんです。
ただ、指名されてなかったり新人だったりすると、片付けや清掃をする時間になるんですね。
於
人気の差が顕著に出る瞬間ですね…
一条さん
そう。人気のホストが華やかにお見送りをして、店中の注目が集まる瞬間。
僕は、そういうときにコップを下げてくれてる子を褒めます。
トイレ掃除もそうですね。トイレは防犯カメラが付けられない場所ですから、手抜きはかんたん。でも、誰も見てないのに頑張れる人っているんですよね。
於
上司からそんなところを褒められたら、自分のやってることはムダじゃないんだなって思えそうです…!
一条ヒカル流マネジメント③「今までの価値観を思い切って壊す」
一条さん
あと、一度その子自身をぶっ壊すことも大事ですね。
ここまではやさしいマネージャーでしたが、急にバイオレンスな教えが
於
いきなり過激なんですけど…なぜ壊す必要が?
一条さん
変化の「ゼロイチ」を経験させたいんですよ。
優秀な人って、「俺はこういうタイプだから」という自分自身に対する決めつけがないんです。柔軟だから、努力の幅も大きい。
学生時代に「無理してスクールカーストの高いグループに入ったのに、イケてないままでからかわれてる人」っていませんでしたか?
於
あー…イケてる人が多い部活に入っても、結局パッとしない人。
一条さん
そうそう。ホストクラブの門をたたく子のなかには、「ホストになれば今までの自分から変われるはず」と思い込んでいる子もいるんですよ。
でも、ホストになっただけでは、変われないのが現実。なので実際に行動させて、まずは「変われること」を体感してもらうんです。
僕は、黒髪の子は金髪に、金髪の子は黒髪にしたらどう?ってアドバイスします。
於
ええ!? 結構イヤがられません?
一条さん
もちろん強制しないですけど、大事なのは、その子が今まで思っていた「イケてる」の感覚を崩すこと。「イケてない毎日のマンネリ」を打破させる感じですね。
「自分は黒髪じゃなきゃモテないって思ってたけど、そういうことじゃないんだな」って実感してほしいんです。
髪型じゃなくても、服装とか、言葉遣いとか。「自分は変われるんだ」って実感できた人は、目が覚めたように伸びますよ。
於
なるほど…! 伸び悩む人の「価値観をゼロに戻す」ってことなんですね。
一条ヒカル流マネジメント④「一人で儲けるよりも、チームで儲けたほうが効率的」
於
ここまで、個人の能力をどう伸ばすかというお話が中心でしたが、チームや組織をまとめる際に意識していることってありますか?
あ、でもホストってあまりチームで動いたりしないんですかね?
一条さん
いえ。むしろ今はホストもチームプレーの時代だと思っています。
於
ほう! それはなぜですか?
一条さん
ほかの業種にも言えることだと思うんですけど、一匹狼が一人勝ちして目標達成していくってリスキーだし、育成する側もしんどいと思うんですよ。
ホストの場合、個人で月1000万円売り上げるのって瞬間的なものだと思っていて…
何かの拍子に退職されたり、指名のお客様がほかのお店に通いだしたりしたら、売上が一気に落ちますよね。
於
たしかに。企業でもエース営業マンが辞めると、チーム全体が苦しくなりますもんね。
一条さん
そう! だから僕の店は、チーム力を底上げすることが大切だという経営方針なんです。
ここで1つクイズなんですけど、「チーム力を底上げするために大事なこと」って何だと思いますか?
於
なんだろう…キャラが被らないようにバランスよくメンバー配置するとかですか?
一条さん
ちょっと考えすぎですね!
正解は、「取引先からモテるよりも、同僚からモテる人を増やすこと」です。
一条さん
一匹狼タイプに限界があるのには、もう一つ理由があって、同僚からの妬みで引きずり落とされることなんです。
於
たしかに、ノルマがあるような仕事だと、チーム内での争いが激しくなっちゃいますもんね…
一条さん
でも、身内にモテる人だったらどうでしょう?
少なくとも、自分が日ごろから慕っている人のジャマはしないと思います。
一条さん
だから僕らの会社では、お客様にモテる前にスタッフにモテろと教えています。
従業員同士の仲が良い組織のことを、“仲良しクラブ”って揶揄する人もいますけど、長い目で見たときに最後に勝つのは「チームプレー」だということは、この10年で証明してきました。
一条ヒカル流マネジメント⑤「ポリシーは評価システムに反映させる」
於
チーム内の「空気」に関するお話がいくつか出てきましたが、組織の空気を変えるって、なかなか難しいですよね…?
一条さん
そうですね、空気を変えるには、お伝えしてきたようなマネージャーの「褒めスキル」にくわえて、「評価システム」を導入するのが大事です。
於
どういう評価システムにしてるんですか?
一条さん
売上による評価にくわえて、「従業員同士の評価」も取り入れてるんです。
上からの評価だけでなく、同僚や後輩からどう思われているか、という項目ですね。
於
なるほど! 一部の企業が導入している「360度評価」みたいなものですね。
一条さん
そう! このような評価システムにすることで、個人プレーに走ってもメリットがない、と実感を持ってメンバーに伝えられます。
今日お話してきたような「マネジメントの思想」っていろいろあると思うんですが、重要なのは、その思想を「評価システム」に反映させることなんですよね。
口で「ああしろこうしろ」と言うだけじゃなく、「こういう人を高く評価します」「こういう人は出世します」というメッセージを、システムに組み込む。
メッセージは、言うだけではなくシステムにする…! 納得の教え
経営者志望の学生がマネジメントを学びに来ることも…!
一条さん
うちの店では、今日お話ししたような手法で、おかげさまで大きく成長することができています。
最近では、経営者志望の学生が「マネジメントを学びたい」と言って面接を受けに来たりするんですよ。
実際に起業していったOBも多くいます。
於
それはすごい!
一条さん
マネジメントや経営を学びたい新R25読者がいたら、ぜひgroup BJで働いてみてほしいです!
…って書いておいてください(笑)。
ホストのマネジメント論…というと「イッキ飲みして尊敬を集める」とかなのかな…と思っていたら全然違いました。
ひとつひとつ意味付けをして論理的に教えてくれる一条さんの言葉は、どれも納得感のあるもの。こんなふうに説得力を持って説明できるところも、後輩から慕われている理由なんだろうな…。
興味を持った方は、ぜひお店へ!
〈取材・文=於ありさ(@okiarichan27)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美(@hiromi_ike)〉
一条ヒカルさんのSNSはこちら!
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