三谷淳著『目標達成の全技術』より

こうすれば目標に情熱を持てる。人間の習性を利用して「目標達成力」を高める方法

仕事
目標達成には、体系化された“あるメソッド”がある。

多くの経営者の目標設定に関わり、8社を新規上場に導いた弁護士・三谷淳さんは、そう断言します。

会社員にとっては、給与にも評価にも関わる目標達成。

今回は、著書『目標達成の全技術』より、その秘訣についての2記事をご紹介します。

目標達成のカギは行動力と公欲

私の仕事は、たくさんの人の目標達成をサポートすることです。

クライアント企業は毎年のように新規上場を果たしていきますし、社外役員を務める企業は、過去最高益の更新を続けています。

主催する勉強会のメンバーや、自社の部下たちが次々と目標を達成していく姿も間近で見ています。

一方で、中には高い目標を持てずに低空飛行を続ける人や、心が折れて目標達成をあきらめてしまう人を見ることもあります。

たくさんの人を見て、私は目標達成のためにとても重要な要素と、一見すると重要に見えても実はあまり大切ではない要素があることに気がつきました。

重要な要素は、

行動力=スピードや手数」

公欲=人の役に立ちたいという心」

です。

行動することで情熱が生まれる

達成力を高める1つめのカギは、「行動のスピード」です。

人間は感情の生き物で、心からやりたいと思うこと、情熱を持てることしかできないようになっています。

ですから目標達成力とは、情熱を持ってやり続ける力、と言いかえることができます。

情熱を持っている人と、情熱を持っていない人では、明らかに行動のスピードが違います。

情熱がある人でスピード感がない人はいません

「企画書を提出します」と宣言しながら、何日たっても提出がない。

「ベストのプランを提案します」と言いながら、催促されるまで返事をしない。

ダイエットを始めるためにジムに入ると言いながら、いつまでたっても入会しない

体力作りのためにジョギングでも始めてみようかなと言いながら、すでに3か月たっている。

情熱がある人はこのような行動はしません。

すぐに行動をしているはずです

たとえば、今期は過去最高の売上を達成しようと情熱を持って仕事に取り組んでいる社員は、お客様から問い合わせの電話を受けたら、お昼休みを返上してでも急いで見積書を作ろうと考えるはずです。

しかし、会社から売上予算は与えられているものの、本気で取り組む情熱を持てない社員は、お客様から問い合わせの電話を受けても、他にも仕事があって忙しいからと見積書の作成を後回しにするかもしれません。

では、どうやったらこの目標に情熱を持てるのでしょうか。

答えは、人間の感情は理性に従うとは限らないが、行動には必ず従うという習性を利用するのです。

つまり、やりたくない仕事を頭(理性)でいくら「どうせやらなきゃいけないのだから頑張ろう」と考えても、情熱は湧き出てきません。

しかし、情熱を持っていなくてもスピード感のある動きをすることはできます。

最初はポーズでもよいので情熱がある人と同じ行動をとっていれば、頭で「前向きに頑張ろう」と考えていなくても、後から情熱が生まれてくるのです。

最初は乗り気でなかったり、面倒くさいなあと思っていたとしても、スピード感のある行動を続けているうちに、だんだんとまわりが喜んでくれたり、自分の成長が実感できたりして、情熱の炎が大きくなってくることはよくあることです。

「おっ、こんなに早く企画書を提出する人は初めてだ!やる気あるね!」

「プランの提案は明日以降だと思っていたけど、たった1時間でご連絡いただけるなんてビックリしました」

こんな反応をお客様からいただけると、明日からはもっと早くやってやろうと情熱が湧いてきます

また、

「今週は先週よりも重いウエイトを上げることができたぞ」

「何だか、ジョギングを始めてから疲れを感じなくなったな」

このような小さな手応えを感じられると、どんどんと行動にのめり込み、拍車がかかります。
情熱は頭の中(理性)でなく行動で作るものです。

自分はやり抜く力に自信がないとか、最近ちょっと情熱が冷めてしまっている気がすると思う人は、どうすれば情熱が湧いてくるかを考えるのではなく、目の前の行動のスピードを上げるすぐにやってみるということを試してみてください。

感覚的にはいままでの3倍のスピードで行動しているくらいでちょうどよいと思います。

考える時間もないほどの速度で行動してみると、自然と情熱がついてくるのに気づくはずです。

欲を力に変える方法

人の役に立ちたい」と誰もが思っている1つの有名な寓話があります。

ある人が道を歩いていると、レンガ積みをしている職人が3人いました。

それを見て、「何をしているのですか?」と1人ずつに聞いていくと、

1人目の職人は、「給料をもらうために、レンガを積んでいるのさ」と答えました。

2人目の職人は、「建物に大きな壁を作るために、レンガを積んでいるのさ」と答えました。

3人目の職人は、「歴史に残る大聖堂を造って、みんなに喜んでもらうんだ」と答えました。

まったく同じように仕事をしている3人の中で、最もモチベーションが高く、目標達成力に長けている職人は誰でしょうか?

もちろん3人目の職人です。

なぜなら、他の2人に比べて大きな公欲を持っているからです。

そして、この公欲の大きさが、達成力を高める2つ目のカギになります。

第1ステップで、達成を喜んでくれる人の名前を書き出しながら、たくさんの人が喜んでくれる目標を設定するようにお伝えしたのはこのためです。

人の欲は「私欲」と「公欲」の2種類に分けることができます。

どんな人でも、この2種類の欲を持っています。

私欲とは、自分が満たされたい自分だけがいい思いをしたいという欲求です。

たとえば、食欲、性欲などが代表例です。

「お金持ちになりたい」

「ビジネスクラスで海外旅行に行ってみたい」

といった物欲、金銭欲もありますし、

「他人からちやほやされたい」

「疲れているので空席があれば座りたい」

といった欲もあるかもしれません。

人間も動物である以上、私欲をゼロにすることはできません。

私欲の本質は「自分こそは生き残りたい」という動物の生存本能にあり、この欲がゼロになると、競争に敗れて生きていけなくなるからです。

一方で、公欲というのは、他人の役に立ちたい世の中の役に立ちたいといった種類の欲です。

たとえば、

「部下に成長してもらいたい」

「社員にたくさんボーナスを払いたい」

「家族に楽しんでもらいたい」

といったものになります。

「公欲なんてきれいごとだ」とか、「自分は私欲ばかりで、公欲なんて持てそうもない」と感じる人もいるかもしれませんが、人間のDNAには必ず公欲がインプットされています

ゾウやクジラのように体が大きいわけでも、ライオンや馬のように足が速いわけでも、牛やサイのように力が強いわけでもない人間がこの地球で生き延び、食物連鎖の頂点に立つことができたのは、他の動物にはない「他の人と協力する」という能力があったからです。

人の脳は、自分だけでなく、他の人のために役に立つことを喜び、快感を覚えるようにプログラミングされていて、それはあなたも例外ではありません。

公欲も行動で高められる

私欲から出た目標より、公欲から出た目標のほうが達成力が高いのは、2つの欲は同じ欲でも、少し性質が違うことに理由があります。

私欲は、欠乏欲求とも呼ばれ、満たされていないうちは頑張ろうとしますが、満たされたとたんにやる気がなくなり、頑張らなくなってしまいます。

ライオンは、空腹にならないかぎり狩りをしないと言います。

人間でも、

「テスト前に焦って勉強したけど、テストが終わるとまた遊びほうけてしまう。結局いつも、勉強するのはテスト前だけだ」

「モテるために一生懸命ダイエットしたけど、結婚したらすごく太った」

といったことがあります。

私欲はすぐに飽きがきて、長続きしないのです

一方で、公欲はそれが満たされても、すぐに次の新たな公欲が生まれるので飽きるという現象がありません

満たされても限りなく次の欲求が湧いてくるので、「成長欲求」とも呼ばれます。

私欲を減らして公欲を増やす方法も、情熱の作り方と同じです。

頭で考えたこと(理性)が心の状態を作るのではなく、その人の行動が心の状態を作るので、まずは人のためになる行動をしてみればいいのです。

「今日は会社の前の歩道のゴミ拾いをしていたら、道行く人から『ありがとう』と声をかけられた。明日は向かいの歩道のゴミ拾いもしてみよう」

「社内の顧客管理システムの使い方を解説するマニュアルを作ったら、後輩たちからすごく感謝された。今度は経理システムの解説マニュアルを作ってみよう」

このような行動を続け、たくさんの人が喜ぶ経験を積んでいくことで、心の中に公欲を育てていくことができるのです

目標達成への道筋を体系的に学ぼう

最高の結果を出す 目標達成の全技術

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目標を立てたが、計画どおりに進まない。想定外のハプニングで挫折してしまう。

そんな方にこそおすすめしたいのが『目標達成の全技術』。

「スランプのときに達成者がやっていること」「うまくいかないときの軌道修正法」など、“一歩先”のメソッドが詰まった一冊です。