Mr.マリック著『超魔術の裏技術』より

同じ内容でも、驚きが2倍にも3倍にもなる。Mr.マリックが教える魔法のプレゼンテクニック

仕事
「ハンドパワー」「きてます」などの名言を残した、超有名マジシャンのMr.マリックさん

空中浮遊、透視、瞬間移動などのマジックをテレビで披露し、「超魔術」の名を知らしめました。

そんな超魔術師としての活動が30周年を迎えた今年、マリックさんがついに「超魔術」の正体を明かしました。

それが、超魔術ならぬ、超話術

マリックさんは「会話を巧みに操ることで、普通のマジックを普通のマジシャンがやればマジック。私がやれば超魔術になるのです」と語ります。

そのノウハウがつまった『超魔術の裏技術』より、「1対1」「1対2〜3」「1対10数人」のコミュニケーション法を3記事にわたってお届けします。

3回語れ

マジックの世界には強調法というテクニックがあり、“3回語れ”という格言があります。
1. 何を語ろうとしているか語る(暗示)

2. 実際に語る(明言)

3. 何を語ったか語る(明示)

出典 『超魔術の裏技術』

というものです。具体例を出しましょう。例えばナイフを使ったマジックだとします。
1. 「切るものが必要ですね」(暗示)

2. 「このへんにナイフがあったはずです」(明言)

3. 「ありました」とナイフを見せる(明示)

出典 『超魔術の裏技術』

「このナイフでこれを切ります」と言えば一言で済むのですが、わざわざ3回にわたってナイフのことを語るのです。

一言で済ませてしまうと、あっさりしすぎていて、お客様の印象に残らないんですね。

3回に分けて説明すれば、「うん」「うん」「うん」とお客様が3回頷く。

つまり、お客様に言葉を受け止めさせた上で、動作を見せるわけです。これから何が始まるんだろう?という興味をゆっくり育てていくわけです

この手法はマジックだけではなく、ビジネスシーンでも使えるテクニックです。会話例を出しましょう。
1. 「今日は、どうすればコストを抑えることができるか、というお話をしようと思います」

2. 「コストカットにおいて最も大切なのは…」

3. 「というわけで、今日はコストカットについてお話ししたわけですが…」

出典 『超魔術の裏技術』

まず最初に「どんな話をするのかな?」という聞き手に対して「こういう話だよ」と概要を伝えて、聞く準備をさせるのです。

聞き手の聞く準備が整ったら、実際に具体的な話をします。そして最後にもう一度、おさらいをするのです。

「コストカットについてですが…ということで、よろしくお願いします」というサラッとした話し方よりも、断然、聞き手の印象に残ります。

大切なことは強調すべきです。3回語ってください

確認話法

実演販売員時代からテレビ時代、そしてライブを行う現在に至るまで、私はずっと確認話法を用いています。

特にテレビ時代は効果的でした。

通常の話し方と、確認話法を用いた話し方、その比較例を出しましょう。コップの中のお茶を消すマジックで、私とタレントさんのやり取りです。
【通常の話し方】

「今からこのお茶を消します」

「飲むってオチでしょ?」

「いえいえ。よく見ててください…ハイ!消えました!」

「へーすごーい」

出典 『超魔術の裏技術』

確認話法を用いた話し方

「ここに一杯のお茶があります」

「何か仕掛けがありそう」

「どうぞ確かめてください。お飲みになってもいいですよ

タレントさんが手に取り、一口飲む。

「うん。確かにお茶ね」

「でしょう。では、このお茶を今から消します」

「飲むってオチでしょ?」

「いえいえ。飲まずに消しますよ」

「ほんとに~?」

「本当です。よく見ててください…ハイ!消えました」

「うわっ!すごーい!」

出典 『超魔術の裏技術』

私が登場する前のマジシャンたちは、前者の進行でした。早すぎるのです。

せっかく完成度が高いマジックを披露しても、あっさり終わってしまうから印象に残らないんですね。実にもったいない。

後者はじっくり時間を掛け、相手の頷きを確かめてから次の話題へ移っています。

相手が理解したことをひとつひとつ確認しながら進めていくのです。

そうすれば相手の驚き、喜びは2倍にも3倍にもなります

同じ内容のマジックでも、話し方次第で何倍もすごいショーにできるんですね。

実はこれがマジックと超魔術の境界線なのです。

私は超能力を持っていたのではなくて、ただのマジックを超魔術に見せるテクニックを持っていただけの話なのです。

確認話法は、話のうまい人が使う常套手段です。実はあなたも日常的に目撃しています。

テレビショッピングです。
「なんと3万円切ります!」

「えー!」

「2万9800円でお願いします!」

「すごーい」

「驚かれるのはまだ早いです。キャンペーン期間中につき、ここからさらにお値引きさせていただきます!」

「ほんとにー」

「はい、さらに5000円引きますよ!2万4800円!」

「わー」

「まだまだ終わりませんよ!今、お持ちの掃除機を下取りいたします!」

「え?いくらでですか?」

「1万円で下取りさせていただきます!」

「ということは…1万4800円」

「もう限界です!これ以上は下げられません…が…特製ハンドクリーナーをお付けします!」

「すごいですね!これは絶対にお得ですね!」

「ただし!お電話は今日から3日以内でお願いいたします!売り切れの場合はご容赦ください!」

「これは急がないと!」

「そうなんです!お早めにお願いします!」

出典 『超魔術の裏技術』

アシスタントに対して、そして視聴者に対して、ひとつひとつの段階を確認させながら、どんどん値引きして畳みかけていきます。

最後の最後に「早く電話しないと売り切れちゃうよ」と視聴者を焦らせます。完璧な流れです。

接客業の方や販売員の方はぜひ、テレビショッピングをご覧になって、スキルを盗んでください。

目が合う前に喋り始めてはいけない

見習いや前座のマジシャンたちは技術もおぼつかないから自信もないし、緊張はするしで、全く余裕がありません。

ショーの際にも、お客様の誰とも目が合っていないのに「こんにちは~、ようこそ~」なんて喋り始めます。これはいけません。

一体誰に向かって挨拶をしているのか。惰性はいけません。

日常生活でも同様です。相対する人と目が合ってから「こんにちは」と口を開くべきです

落語家を見てください。ゆっくりと袖から出てきて、座して、手拭いと扇子を脇に揃えて、顔を上げて、客席を見渡して、お客様の誰かと目が合ってから「えー」と、やっと口を開く。

ベテラン真打ちや名人と呼ばれる人たちほど、落ち着き払っています。

お客様は待ってくれるんです。お金を払って観に来るくらいなんですから。落語家が口を開くまでの時間は、自分が準備する時間ではありません。

お客様に対して「みなさん、聞く準備はできていますか?」という時間なんです。それが“間”というものです。

プレゼンがうまい人、講義がうまい人を見てください。そういう人たちは本当に落ち着いています。

人前に出て行って、腕時計を外したり、水を一口飲んだり。焦る様子がないはずです。

焦っていいことはひとつもありません。余裕や自信がないこと、冷静でないということを見透かされてしまいます。「あの人に任せるのは不安だな」と思われてしまいます。

かといってノロノロ、ダラダラやってはいけません。動作と話を分ければいいのです。

例えば会議やプレゼンの際、プリントを配りますよね。この時、配っている最中から話をし始めてしまう人がいます。

ダメです。全員に行き渡って、最後にプリントを受け取った人が紙面に目を落としたタイミングで、「お手元の資料をご覧ください」と言うのです。

落ち着いたパフォーマンスこそが信用を築きます

相手の見るタイミング、聞き取るスピードに合わせて、話をしたり、アクションを起こしましょう。それは相手に対する気遣いであり、思いやりです。

思いやりや気遣いがある人のことを、人は信用します。

教祖の話術

かんぺき」を漢字で書いてみてください。英語でいうパーフェクト、です。

ではどうぞ…書き終わりましたか?

完壁

あなたはこう書きましたか?

違います!正解はこうです!

完璧

「ぺき」のほうをよく見てください。「土」じゃなくて「玉」なんです。

間違えたという方。あなたはこれまで何十年も、間違った漢字を書き続けてきたわけです。

あなたが今まで常識だとか当たり前だとか思い込んできたことは、正しいとは限らないんです

出典 『超魔術の裏技術』

…いきなり失礼しました。これは私が“教祖の話術”と名付けた話法です。

今まで常識だとか当たり前だと信じてきたことを一瞬でひっくり返される。そうすると、人は「この人の話を聞こう」と思うんです。

そしてその後に語られる内容はすべて正しく聞こえてしまう。これが教祖の話術です。

まず人が気づきにくい鋭い指摘によって、初っ端にガツンと頭を殴られるようなショックを与えます。

そして次に、それをわかりやすく解説していくのです。

そうすると聞き手は語り手を信じます。

自分が全く知らないことを、このやり方で話されると、思わず尊敬の念を抱くのです。気が付けば、教えるほうと教わるほうの構図が出来上がっていますね。

これは学校の先生と生徒占い師と客、そして教祖と信者の構図です。完璧に主従関係が作り上げられているのです。

心を掴まれた聞き手は、その後もうんうんと頷いて聞き続けます。そして帰る頃には、高価な壺や数珠を買って帰る。そういう理屈です。これは実は、私の知り合いが宗教勧誘を受けた時の実話なんです。

正直に言います。私はずっと、この教祖の話術を使ってきました

超魔術を操る神と、それを見守る人間。そんな世界観をつくり上げていたわけです。この構図がないと、マジックショーは成立しません。

世の中で最もナメられてはいけない職業は警察官とマジシャンです。ナメられてしまうと職業として成立しないのです。

人は好奇心の塊です。騙されることに快感を覚える、不思議な動物です。不思議な錯覚を起こす絵を見入ってしまいますね。

目や脳が騙されることに驚き、喜ぶのです。常識や価値観をひっくり返される人、モノ、出来事が大好きなのです。

教祖の話術。使い方によっては犯罪にも利用されてしまう、危ない話術です。悪用厳禁。劇薬です。

逆に、あなたに教祖の話術を仕掛けてくる人には注意してください。あなたのことを懐柔しようとしているわけですから。

超魔術師による人の心を操るコミュニケーション術がここに

超魔術の裏技術 - 誰の心でも誘導できる -

超魔術の裏技術 - 誰の心でも誘導できる -

「実演販売員時代」「ナイトクラブ営業時代」「テレビ時代」「ライブ時代(現在)」の4つの時代で培ったコミュニケーション術。

マリックさんの経験に基づいて、相手の自分の話やパフォーマンスを効果的に届ける方法が『超魔術の裏技術』に収められています。

誰の心でも誘導できる」と豪語するマリックさんの超魔術をぜひ学び、明日からの会話で変化を実感してみてください。