ビジネスパーソンインタビュー

これからの時代、「問題解決に長けた人」はオールドタイプとして急速に価値を失っていく

山口周著『ニュータイプの時代』より

これからの時代、「問題解決に長けた人」はオールドタイプとして急速に価値を失っていく

新R25編集部

2019/09/16

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「これからの時代は、これまで『優秀な人材』と評価されていた人が時代遅れの存在になる」

電通、ボストンコンサルティンググループで組織開発などに従事してきた山口周さんの新著『ニュータイプの時代』の主張です。

働き方が変わっていくように、社会で必要とされる人材も変化している。これまで通りの成功体験では通用しない時代になってきた、と山口さんは警鐘を鳴らします。

そして、同書のなかでこれからの時代に活躍する「ニュータイプ」の存在を提示しました。

40年以上も働くであろう20代のビジネスパーソンにとって目指すべきその「ニュータイプ」とは?

同書から3記事を抜粋して、その答えに迫ります。

「20世紀的優秀さ」の終焉

『ニュータイプの時代』のメッセージをまとめれば、次のようになります。

20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて高く評価されてきた、従順で、論理的で、勤勉で、責任感の強い、いわゆる「優秀な人材」は、今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくことになるでしょう

一方、このようなオールドタイプに対置される、自由で、直感的で、わがままで、好奇心の強い人材=「ニュータイプ」が、今後は大きな価値を生み出し、評価され、本質的な意味での「豊かな人生」を送ることになるでしょう。

20世紀の後半から21世紀の前半まで、50年ほどのあいだ「望ましい」とされてきた思考・行動様式の多くは、今日、急速に時代遅れのものになりつつあります。

この記事では、これらの旧態依然とした思考・行動様式を「オールドタイプ」として、一方、それに対置される新しい思考・行動様式を「ニュータイプ」として整理し、読者に提示します。

では、ニュータイプとはどのような人物像なのでしょうか。ここで「頭出し」をしておけば、図1のような思考・行動様式を持った人物像ということになります。

ご覧いただければわかる通り、このようなオールドタイプの思考・行動様式は、これまで長いこと一般的に「資本主義社会で成功する優秀な人物」と考えられてきた人材の要件です。

しかし、今まさに激しい変化のまっただなかにある社会の構造やテクノロジーを踏まえれば、これらの思考・行動様式はアップデートされなければなりません。

ここでかつて礼賛された人材要件=オールドタイプが、なぜ新しい人材要件=ニュータイプにアップデートされなければならないか、大きく2つのポイントから、その理由を指摘しておきたいと思います。

「正解を出す力」に、もはや価値はない

1つ目のポイントは、オールドタイプの思考・行動様式が、「社会への価値の創出」という観点から、すでに有効ではなくなりつつあるということです。

いわゆる「優秀さ」は文脈依存的な概念であることに注意が必要です。

どのような時代にあっても、その時代において「望ましい」とされる人材の要件は、その時代に特有の社会システムテクノロジーの要請によって規定されることになります。

これはつまり、世の中の要請に対して相対的に希少な能力や資質は「優秀さ」として高く評価され、逆に過剰な資質や能力は「凡庸さ」として叩き売られる、ということです。

したがって「モノ」が過剰になる一方で、「問題」が希少になっている現在の社会において求められる人材要件が、その真逆である「モノ」が希少で「問題」が過剰であった、かつての社会において求められる人材要件と大きく異なるのは当たり前のことなのです。

しかし、人間のマインドはとても保守的なので、多くの人は相も変わらず、偏差値に代表される「正解を出す能力」を、その人の「優秀さ」を示すモノサシだと信じていまだに崇め続けています。

この認識のネジレが、社会のさまざまな局面で悲劇と混乱を巻き起こしています。

19世紀の西部開拓時代を舞台にした伝説上の人物、ジョン・ヘンリーの物語はご存知でしょうか。

誰よりも力強くハンマーを振るうことができた鉄道線路作業員のジョン・ヘンリーは、当時の最先端技術であった蒸気ハンマーに対して「鍛えあげられた人間がそんなものに敗れるはずがない」と戦いを挑み辛くも勝利しますが、心臓麻痺を起こして死んでしまいます。

この物語は、産業革命の時期において、それ以前に「優秀な人材」を規定するモノサシであった「筋力」や「精神力」が、もはやそうではなくなりつつあった過程で起きた混乱と悲劇を象徴的に示しています。

オールドタイプは現代の問題を拡大再生産している

さて次に、オールドタイプからニュータイプへのアップデートが必要だと指摘する2つ目の理由として挙げなければならないのが、これまで活躍していた人材=オールドタイプが発揮してきた思考・行動様式によって、資本主義というシステムが生み出す問題が拡大再生産されている、という点です。

たとえば現在、世界中の都市で「ゴミ」は深刻な問題になりつつありますが、これは「量的な向上」を無条件に是とするオールドタイプの思考・行動様式が生み出した結果といえます。

確かに、かつてのようにモノが不足している状況であれば、ひたすらに「量的な向上」を目指すというオールドタイプの行動様式は、時代の要請と整合していたかもしれません。

しかし、現在のようにモノが過剰に溢れている状態で、ひたすらに「量的な向上」を目指せば、すでに過剰にあるモノを次々にゴミにしていくしかありません。

問題は少なく、解決能力が過剰な時代

これまで長いこと、私たちの社会では「問題を解決できる人=プロブレムソルバー」が高く評価されていました。

原始時代以来、私たちの社会は常に多くの「不満」「不安」「不便」という「問題」に苛まれており、これを解決することが大きな富の創出につながったからです。

寒い冬を凍えることなく過ごしたい?」ストーブをどうぞ!

雨に濡れずに安楽に遠くまで移動したい?」自動車をどうぞ!

ということです。

しかし今後、このような「問題解決に長けた人」はオールドタイプとして急速にその価値を失っていくことになるでしょう。

ビジネスは基本的に「問題の発見」と「問題の解消」を組み合わせることによって富を生み出しています。

過去の社会において「問題」がたくさんあったということは、ビジネスの規模を規定するボトルネックは「問題の解消」にあったということです。

だからこそ20世紀後半の数十年間という長いあいだ「問題を解ける人」「正解を出せる人」は労働市場で高く評価され、高水準の報酬を得ることが可能でした。

しかしこのボトルネックの関係は、今日では逆転しつつあります。

つまり「問題が希少」で「解決能力が過剰」になっているということです。

ビジネスが「問題の発見」と「問題の解決」という組み合わせで成り立っているのであれば、今後のビジネスではボトルネックとなる「問題」をいかにして発見し提起するのかがカギになります。

そして、この「問題を見出し、他者に提起する人」こそがニュータイプとして高く評価されることになるでしょう。

一方で、過剰である「問題の解決」に対しては今後、これまでのような評価も報酬も与えられないということになります。

つまり、これまで高く評価されてきた「問題解決者=プロブレムソルバー」はオールドタイプとして急速に価値を失っていくことになる、ということです。

そのような変化を示唆する象徴的な現象はすでにそこかしこに見ることができます。

「問題の希少化」を招いたのは構想力の衰え

オールドタイプが「与えられた問題を解く」ことに長けている一方で、ニュータイプはまだ誰も気づいていない問題を見出し、それを社会に向けて提起します。

なぜ、ニュータイプは誰も気づいていない「問題」を見出すことができるのでしょうか。

この論点を考察するにあたって、そもそも「問題とは何か」という点について考えてみましょう。

問題解決の世界では、「問題」を「望ましい状態と現在の状況が一致していない状況」と定義します。

「望ましい状態」と「現在の状態」に「差分」があること、これを「問題」として確定するということです。

したがって「望ましい状態」が定義できない場合、そもそも問題を明確に定義することもできないということになります。

つまり「ありたい姿」を明確に描くことができない主体には、問題を定義することができない、ということです。

「問題の希少化」という「問題」の本質はここにあります。

「問題の不足」と聞けば、なんらかの確定的に定義できる「問題」自体が不足しているように思うかもしれませんが、これはそんなに単純な問題ではありません。

「問題の不足」という状況は、そもそも私たち自身が「世界はこうあるべきではないか」あるいは「人間はこうであるべきではないか」ということを考える構想力の衰えが招いている、ということなのです。

私たちは「ありたい姿」のことをビジョンと表現しますが、つまり「問題が足りない」というのは「ビジョンが不足している」というのと同じことなのです。

これは企業経営にしても国家運営にしても地域コミュニティの存続にしても同様です。

取り組むべき問題=アジェンダの明確化は国の、あるいは企業の、あるいは地域コミュニティの「あるべき姿=ビジョン」が明確になって初めて可能になります。

問題を生み出すことができないというのは、要するに「あるべき姿=ビジョン」が不足している、ということなのです。

これを言い換えればつまり、ニュータイプとは、常に自分なりの「あるべき理想像」を思い描いている人のことだということになります。

ニュータイプは、自分なりの理想像を構想することで、目の前の現実とそのような構想とを見比べ、そこにギャップを見出すことで問題を発見していくのです。

時代に取り残されたくないのなら「ニュータイプ」を目指せ

PCやスマホのOSはどんどんアップデートしていくのに、私たち自身がアップデートしないまま生きていくわけにはいきません。

自分で課題点を見つけ出し、正解のない社会を生きていく

ニュータイプの時代』を読んで、その覚悟を決めないといけません。

〈撮影=疋田千里〉

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