ビジネスパーソンインタビュー
学校にも「補助先生」を作ってほしい
人は、育てる前に守るべき。“褒めの達人”関根勤が「僕は守護神でいたい」と語るワケ
新R25編集部
以前、関根麻里さんに取材をした際、「ダメな君でも愛してる」など、相手を肯定する数々の名言やエピソードが飛び出した父・関根勤さん。
気になって調べてみたところ、どうも関根さん、後輩芸人に対しても基本的にダメ出しはせず、「褒める」ことに徹しているのだそう。
人を育てるうえではダメ出しが必要な場面もたくさんあるはずですが、関根さんはどうしてそこまで「褒め」にこだわるのか…?
今回、そんな関根さんに直接“褒めの哲学”を伺ったところ、出てきたのは「人の守り方」のお話でした。
〈聞き手=サノトモキ〉
【関根勤(せきね・つとむ)】1953年生まれ、東京都出身。70~80年代に『カックラキン大放送!!』『欽ちゃんのどこまでやるの!?』などのバラエティ番組で活躍。ものまねやコントなどで人気を得る。1989年からは自らが座長となる舞台「カンコンキンシアター」をスタート
今の時代には、うまくいかない人を肯定する“守護神”が必要だ
サノ
さっそくですが、関根さんはどうしてそんなに人を褒めるんですか?
関根さん
僕はね…「守護神」でいたいんですよ。
一言目で会話に追いつけなくなった筆者
サノ
守護神…?
関根さん
「この人に相談すれば、絶対に自分のことを肯定してくれる」と思える存在ですね。
今の時代、そういう「無条件で人の味方になれる大人」が、世の中にもっと必要だと思うんです。
関根さん
僕はね、世の中で一番褒めてあげなきゃいけないのって「うまくいかなかった人」だと思うんですよ。
サノ
うまくいかなかったのに、褒めるんですか?
関根さん
失敗して、自信を失って下を向いてるときこそ、まわりが褒めて前を向く手伝いをしてあげなくちゃ。
ほとんどの人はうまくいってないとき、自分はダメなやつだなあ、ここから逃げ出したいなあってなっちゃう。
サノ
たしかに、本当に肯定されたいのって、落ち込んでるときかも。
関根さん
でしょう?なのにみんな、「うまくいった人」ばっかり褒めるでしょ!
だから「デキる人」は自信をつけてどんどん「デキる人」に、「デキない人」は自信を失ってますます「デキない人」になってっちゃうのよ。
今はそうやって、「自分は価値のない人間なんだ」とドロップアウトする人がうまれやすい構造になってる気がするんですよね。
関根さん
「デキないやつ」なんてレッテルを貼られてる人も、チームに貢献してるもんなんですよ。
たとえば会社も、「成果」を示せない人は「デキないやつ」扱いになるけど、「デキないやつ」は案外人間関係を円滑にする貴重なクッションになったりするんです。
会社には見えない「成果」を出してるかもしれない。
サノ
たしかに。
関根さん
「成果」という一つのベクトルだけで評価する会社が多いから、デキない人は自分の価値を見失って苦しくなっていく。
だから会社にも、「守護神」って役職を作ったほうがいいと思うんですよ。
「新R25編集部で守護神をやっております」みたいな…ありだな…
学校教育にも「守る」人を導入して、心のプロテクターを育てろ
サノ
「人を育てるうえでは、厳しくダメ出しすることも必要」という考えに対してはどう思いますか?
関根さん
学校でも会社でも同じだと思うんだけど、うまくいってない人は「育つ」なんてムリなの。
「育てる」前に、まずは前を向かせてあげなくちゃいけない。みんな、そこをすっぽ抜かしちゃってるんですよ。
まずは、その人の自尊心を「守る」。「育てる」のはそこからです。
サノ
でも褒めてからダメ出しすると、「結局『褒め』は建前で『ダメ出し』が本音なんだろ?」ってなっちゃいませんか?
あるあるですよね?
関根さん
だからこそ、ただ褒めるだけの「守護神」が必要なんですよ。
「守る」と「育てる」は役割分担したほうがいいんです。
今は「育てること」ばかりが注目されてる。「守ること」にももっと着目されたら、心が折れてしまう人はグッと減ると思いますよ。
サノ
なるほど。
関根さん
僕、学校にもデキない子を肯定する「補助先生」を作ってほしいってずっと言ってるんだよね。
補助先生?
関根さん
たとえば体育の先生は、運動が得意で大好きでしょう?
そういう人って、「育てる」人としては優秀だろうけど、運動が嫌いな子が体育でうまくいかなくて落ち込んでいたとき、その子の気持ちに寄り添って「守る」ことはできないと思うんだよね。
サノ
たしかに…
関根さん
そんなときにね、「体育が苦手でも、あなたにはこんな魅力があるから大丈夫!」と他の角度から肯定して、自分の価値を思い出させてあげる補助先生がいたらいいなあと思うんです。
僕だったらすぐ飛んで行って言いますよ…「跳び箱がすべてじゃない! できる範囲でチャレンジしよう」って。
「世界最速の男ウサイン・ボルトだって、たぶん地理とかは成績Cだぜ?」
関根さん
「まわりと同じ強さをもたなくてもいいんだ」という心のプロテクターを子どものうちに育んでおければ、大人になったとき自分の価値を見失わないで済むんです。
サノ
たしかに、会社も学校も、「業績」とか「成績」とか、一つのベクトルで無理やり競争させられるから苦しかったりするもんな…
関根さん
僕も、勉強面では完全なダメ人間でしたからね。
でも、僕にはお笑いがあった。それぞれがそれぞれのオタクを見つければ、それでいいんです。
オタクと書いて「得意分野」と読めるものがあれば、それでいいんですよ。
関根さん
いじめにあってる子も、今すぐ僕のとこ相談にきてほしい。
全部、肯定してあげたいと思うね。
サノ
どんな声をかけてあげればいいんでしょうか?
関根さん
「限界を感じたら、学校行かなくていいよ」って。
いじめなんて、人間に集団のなかからちょっと合わない人を排除する本能が組み込まれてるから起こるだけで、絶対になくならない。
君はたまたまその標的に選ばれちゃっただけで、君じゃなきゃいけなかった理由なんて何もないんだよと。
関根さん
君は他の子と比べて心が大人だから、あっちが大人になるまで別のところで待ってやればいいの。大丈夫、大丈夫!
…なんて、そういうことを言いたいね。
サノ
…きっと、今の関根さんが「守護神」に思える子、たくさんいるんだろうなと思います。
「ネットの中傷に悩んでる女優さんには、こう言いたいね」
サノ
関根さんは、人のことを嫌いになったりすることはないんですか?
関根さん
ありますよ! 僕も人間だから、人の良いところばっかり見てるようで、人の嫌なところを見つけて嫌いになったりもする。
でも、最近はそういう暗ーい気持ちをSNSで人にぶつけて晴らそうとしちゃってる人が多くて、よくないなあと思います。
サノ
SNSができて、大人になってもいじめをつづけてるみたいな人も増えちゃいましたよね…
関根さん
SNSの悪口で「世間みんなが敵に回った」みたいに苦しんじゃう人もけっこういるけど、あれが全世界の意見ではないからね。
ネットの誹謗中傷に悩んでる女優さんとか、いるじゃないですか。僕は言いたいね。「ネットのない時代の女優さんは、もっとのびのび演技してましたよ」って。
関根さん
「演技もうまくて美しいあなたが、そんなの気にしてどうするの!さっ、とりあえずハワイに行きましょうか。ほら、夏だよ! 海だよ! 泳ぎましょうよ〜!!」
なぜ海に!?
関根さん
…ってな具合にね、別の世界を見せてあげたほうがいいんですよ。
サノ
ちょっと唐突のハワイに圧倒されましたけど、今日のお話を聞いて、もっと人を褒めて、「守る」ことに目を向けてみようと思いました。
麻里さんや後輩芸人さんをはじめ、関根さんに守られてきた方々、たくさんいるんだろうな。
関根さん
何かで悩んでる人、傷ついてる人、うまくいってない人、みんな相談にきてほしいね、ホントに!
大丈夫、絶対肯定してみせるから!
心が救われすぎて思わず記念撮影していただきました。ありがとうございました!
「育てる」だけでなく、「守る」。
無条件の肯定感って、前に進むエンジンになるもの。自信を失ってしまいそうな競争社会のなかで、自分の価値を思い出させてくれる「守護神」は、どんな人にとっても必要な存在なのかもしれません。
僕も、まずは一人くらい、誰かにとっての守護神でいられるように、褒めることの大切さと今一度向き合ってみたいと思います。
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
関根勤さん、3カ月連続ライブを行います!
人を「守り」、「育てる」。そんな優しさを教えてくれた関根勤さん。
ご自身も、精力的にライブを行っています。
10月20日からは3カ月連続のライブを開催! 優しさと笑いたっぷりの舞台を楽しんでみては?
【第1弾】「怒涛の第一弾!シドニーからの使者」10月20日(日)開場19:00/開演19:30
【第2弾】「困惑の第二弾!宇宙大統領VSオッパイ」11月16日(土)開場20:00/開演20:30
【第3弾】「憐憫(れんびん)の第三弾!コンプリートファイターズ」
12月1日(日)開場19:00/開演19:30
【会場】渋谷ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)※渋谷駅から徒歩10分・東急Bunkamura前交差点左折
【料金・チケット】前売3500円/当日4000円
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