中田敦彦著『中田式 ウルトラ・メンタル教本』より

緊張は、自分が真剣に取り組んだ証だと胸を張れ。あとは開き直って人前に出ればいい

仕事
昨年アパレルブランド「幸福洗脳」を立ち上げ、さらに今年開設した「中田敦彦のYouTube大学」は5カ月で登録者数が100万人を突破するなど、芸人の枠を超えた躍進をする中田敦彦さん

ただ、ここまでのキャリアは、急上昇と急降下の繰り返し。賛辞を浴びることもあれば、非難されることも数多くあったそうです。

中田さんがそんな激動のキャリアでも挑戦を続けられたのは、“くじけないメンタル”があったからこそ。

新著『中田式 ウルトラ・メンタル教本』には、そんな中田さんがメンタルを保つために、41個の「やらないこと」を列挙しています。

中田さんのメンタルハック術より、「緊張したらどうする?」「人の目が気になってしまう」「自分に自信がない」という疑問への解決法をご紹介します。

無理に緊張を解こうとしない

誰もが経験のあることだと思いますが、入試のときに試験会場を見渡すと、全員が自分より賢く見えるのは、まさに受験生あるあるですよね。

でも、全員自分より頭がいいなんて、完全なる思い込みです。

人間は、いろんな状況に心が対応するようにできています。

要するに、不合格だったときの布石なのだと思います。試験会場で「俺以外全員バカだな」と思ったのに合格できなかったときの自分は、言葉にならないほど情けないですから。

そんな受験生あるあるは、集団を前にしたときの緊張感が引き起こすものです。人前でスピーチするとき、「聴衆を全員ジャガイモだと思うようにする」という暗示も緊張したときの対策法ですよね。

これだけ舞台やテレビ出演を経験した僕も、人前に出るたびに緊張します
 
YouTubeの収録や大学の講義も同様です。毎日のように繰り返している仕事でも緊張するのですから、そういう性分なのです。

集団とは、そこにいるだけで威圧的です。気圧(けお)されるのは仕方がありません。講演の現場では、余計なことまで考えてしまいます。

経営者50人の前で、ビジネスについて話しても鼻で笑われるだけではないか?

ご婦人の多い会場で、僕のような男は総スカンを食らうのではなかろうか?

不安な気持ちは、放っておくとどんどん肥大していきます。

聴衆をジャガイモだと思って話すことで解決という人もいると思います。おそらくそれも、ひとつの良案なのでしょう。

ここで、僕が考える2種類の緊張についてお話しさせてください。

単純に、緊張には「よい緊張」と「悪い緊張」しかありません。

よい緊張とは、「自分はこれだけの準備をしたのだから、絶対に失敗したくない」と思いを強くする緊張です。準備をした。努力も重ねた。それを思い出し、武者震いしています。

そういう緊張は、なんら問題はありません。あとは開き直って人前に出ればいい。意外にも、そういうときは本番で落ち着けるものです。

悪い緊張は、準備不足によるものです。何も対策を打っていないまま本番を迎えて、その場で「ヤバい」と焦ります。じわじわと汗をかき、一番大事なときに緊張のピークを迎えるのです。

悪い緊張とは無縁でいたいものです。

でも、緊張することはすなわちその対象を大事だととらえている証です。まったく緊張しないのは、それを重要視していないということでもあります。

そして、緊張感は個人ないし集団と対峙するときに起こる感情です。

バイトの面接でも、スピーチの本番でも、必ず目の前には人がいます。

だって、ペットボトルのお茶を前にして「緊張するなあ」と思いながら飲むことなんてないでしょう。

僕は、緊張をやわらげようとしなくていいと思っています。

緊張したまま、自分の緊張感をはっきりと自覚する。むしろ緊張していることは、自分がそれに対して真剣に取り組んでいる証拠だと誇りに思えばいいのです。

毎週の収録や講義で相変わらず緊張するのは、YouTubeのユーザーさんや学生たちに楽しんでもらいたいと思うからです。どうでもよければ、鼻でもほじって気楽に構えているはずです。

それでも極度の緊張で何もできなくなってしまうほどだったら、ごく簡単なことをやってみましょう。てのひらに人と書いて吞む。深呼吸する。ワッハッハと声に出して笑ってみる。気持ちがラクになるのなら、なんでもいいです。

僕の場合、講演などでは実際にこう口に出してしまいます。

いやあ、緊張しています。会場も謎の緊張感に包まれてますね!

これだけで、少し気楽になれます。客席の人たちも緊張していたのか、この言葉で、空気がマイルドになるのです。

緊張感を無理にゆるめる必要はありません。あなたが真面目な人間であることに胸を張ってください。

「自分」を見せない

品川庄司の品川祐さんと、仲良くさせていただいています。

元祖嫌われ芸人の品川さんと、何かと鼻につくことで他の追随を許さない中田敦彦が並んで飲んでいる光景は、なかなか異質なツーショットでしょうね。

品川さんは、一緒に飲んでいると常にイジってくれる側にいて、容赦ないコメントをどんどん浴びせて楽しませてくれます。それが品川さんの素だと思います。

バラエティ番組などでの品川さんはツッコミがあまりに的確だったせいで、キツイ人に思われがちでしたけど、ああ見えて、収録中のフリが飛び切りうまい、じつは後輩思いの優しい人でもあります。

その品川さんが映画監督として現場に立つと、オラオラ系のイジりキャラは完全に姿を消します。カットをかけたあと必ず、「最高! めっちゃいいです!」と役者さんたちに声をかけるんです。監督としてまさにプロフェッショナル。

だから、できれば品川さんにはずっと監督をやっていてほしいんです。僕らへの容赦ないイジりがなくなって、気が休まりますから(笑)。

まあ、それはともかく、つまり映画監督の品川さんは、映画監督としての役割を演じているわけですね。

監督として現場をもっともいい状態にするために、自分を「監督モード」にして臨んでいる。その目的はいい作品を撮ること、それがすべてです。あたりまえですが、役者さんへのおべっかではありません。

もし、品川さんが撮影現場でバラエティ番組のようなイジりキャラを貫いたら、みんな凍りついてしまうでしょう。まともな映画など撮れるはずがありません。

ミッション達成のためには自分なんて見せなくていいということです。

どんな仕事にも、役割というものがあります。

その役割に適した態度をとることは、ビジネスの現場ではとても重要です。

地位は人を作る」とはよく言ったもので、その立場になって必死に仕事をすることで、役割を演じられるようになるのだと思います。

そして、その姿が周囲になじんではじめて、「板についた」となる。

講演会の仕事を受けるときの僕も、講師の役割を演じています。

たったひとりで100人単位の客席に向かって話をするのですから、

「誰も興味を持ってくれなかったらどうしよう」

と、いまだに緊張します。けれども、それで怖気づいてしまっては仕事になりません。「講師モード」の自分に変わるのです。

講演では、とにかく参加者のみなさんに、

「みなさん全員に才能がありますから!」「人はなんらかの宝を持っています」

と連呼します。もちろん本心です。ただし、普段の僕のテンションではありません。講師モードになって演じている面があります。ここで本来の自分は見せません。

ありのままの自分を封印して、役割を演じきること。それはビジネスにおけるもっとも重要なスキルのひとつなんです。

「くじけないメンタル」と「冷静な思考」を持つための中田式ノウハウ

中田式 ウルトラ・メンタル教本 好きに生きるための「やらないこと」リスト41

中田式 ウルトラ・メンタル教本 好きに生きるための「やらないこと」リスト41

中田式 ウルトラ・メンタル教本』は、メンタルを鍛えるという方向とは少し違います。

同書には、ほんの少しのマインドチェンジで、メンタルの危機を回避してくれるようなハック術が41も載っています。

そのひとつひとつのハック術は、すべて中田さんの経験をもとにしたもの。決して机上の空論ではない、メンタルの整え方が学べます。