澤円の深夜の福音ラジオVoicyより

仕事で充実している人が、突然ポキっと折れてしまうメカニズム

仕事
がんばるビジネスパーソンに「疲れ」はつきもの。

なかでも全力で仕事に向き合っている人こそ、肉体的にも精神的にも疲れを感じることでしょう。

ただ、そういう人に限って、心の底では「このくらいの疲れ、ちょっと休めばどうにかなる」と思い込んでいませんか?

…ちょっと待った! その疲れ、侮ってはいけません。

大手外資系IT企業で執行役員を務める澤円(さわ・まどか)さんは、「肉体的な疲労こそがメンタルに反映される」と警鐘を鳴らしています。

メンタルの不調と無縁に見える人が、ある日突然ポキっと折れてしまう理由とは?

そして、そんな“最悪の事態”を避けるために今からやっておくべきこととは?

澤さんのVoicyから、その答えを探ります。
【澤円(さわ・まどか)】生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、大手外資系IT企業に転職。現在に至る。プレゼンテーションに関する講演を多数行ない「プレゼンの神」とも呼ばれている。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める

「肉体的な疲れ」を甘くみてはいけない

メンタルの不調は、誰にでも起きてしまうことです。

不調とは無縁に見える人でも、ある日突然参ってしまうことがある。僕が務めている会社でも、そういった例が見受けられます。

実は心の不調は、肉体的に疲れているときにこそ起こりやすいと考えられます。

以前、自衛隊のリーダーをやっていた方から聞いた話なんですが、自衛官のようにものすごく鍛え抜いている人でも、突然心がポキっと折れてしまうことがあるようなんです。

それはいわゆる「精神的なストレス」ではなく「肉体的な疲れ」からくる場合が多い、とおっしゃっていました。

「肉体的な疲れ」と「精神的なストレス」はあまり関係ないと考えている人も多いですが、そんなことはありません。

肉体的な疲れは、溜まれば溜まるほど、心にも大きなダメージを与えます

ジョギングや筋トレのような健康的な疲れはもちろん、ずっと仕事に追われていたり、会議や出張であちこち飛び回ったりすることで起こる疲れはなおさらです。

にもかかわらず、「ストレス」に比べて「疲れ」を軽く受けとめている人がほとんど

ちょっと疲れているだけだから大丈夫だろう」と甘くみてしまうと、心の方が取り返しのつかないくらい弱ってしまうこともあるのです。

「ちょっと疲れたなあ」と感じるのは、心身のケアが必要だというサインと捉えましょう。

動けなくなる前に、誰かに「SOS」をだそう

僕自身も、仕事で充実した時間を過ごしているときほど、言いしれない不安に襲われることが増えます。特に、朝起きたときが厄介なんですよね。

「○○さんに連絡し忘れてないだろうか」「あの案件のタスクを何か見落としてないだろうか」とあれこれ考えて、果ては「昨晩のツイートが炎上してないだろうか」と心配になったり(笑)。

いろんなことがちょっとずつ引っかかって、頭の中がモヤモヤして、不安が消えない。

そんなとき僕は、カミさん相手に「最近、なんかずっとモヤモヤするんだよね」とぼやくようにしています。

心の中に潜む不安をなるべく溜めこまず、自分の言葉で言語化することが大切だと考えているからです。

そうすることで解決策が見つかることもありますし、仮に見つからなかったとしても、誰かと気持ちを共有するだけで気が楽になったりするものです。

「ちょっと疲れたなあ」と思ったら、本当に疲れ果てて動けなくなってしまう前に、なんらかの方法でまわりにSOSを出してみましょう

近くに頼れる人がいない場合は、SNSでもなんでもいい。とにかく「助けてくれ」と口に出すことが大切です。

弱っている自分を人に見せるのはよくない」「自分よりも大変な人がたくさんいるのに、このくらいで弱音を吐けない」と考えてしまうのもわかります。

僕自身も、弱音を吐くのはすごく苦手ですから。

でも、疲れというのは、誰かと比較するものではありません。そんなところで意地を張って、結果的に倒れてしまうほうがよっぽど考えものです。

社会人として組織や会社単位で動く場合はなおさら。

自分の限界が近いという“警告”を出しておくことで、仕事に穴が空いたり、取引先に迷惑をかけたりするような「最悪の事態」を避けられることもあるでしょう。

そして、いざとなったら「プロ」を遠慮なく頼ることをおすすめします。

つまり、心療内科に行ったり、カウンセリングを受けたりしてみましょう。

相手は心のプロですので、自分やまわりの人だけでは思いもよらなかったアドバイス解決策を得られることもあります。

また、彼らは“聞く”ことにも非常に長けています。話を聞いてもらうだけでも心の重荷がスッと軽くなり、遠慮なく弱音を吐ける存在になるはずです。

ただ、疲れ果ててから医者やカウンセラーを探すのは非常に大変ですし、弱った自分を認めることに抵抗を感じる人も多いいるかもしれません。

できれば気力があるうちに、頼れるプロがどこにいるのかアタリをつけておきましょう

「ここに心療内科があるんだ」「カウンセリングはこうやって予約を取るんだ」くらいのことは知っておいても損はないはずですよ。

「否定語」には言霊が宿る

不安を吐きだす場合、できる限り「否定語」を使わないようにすることが大切です。

言霊”という単語が表すとおり、否定語や強い言葉は、自分に跳ね返ってきてしまうことがよくあります。

否定するような言葉を使ったことで、自分でも無意識のうちにその言葉を体現してしまい、事態がもっと悪い方向に転がることもある。

自分で吐いた言葉が、心の足枷になってしまうことも考えられますよね。

否定語を使う前に「他の言い方がないかどうか」を考えてみましょう。

たとえば「これが嫌だ」ではなく「こうなるといいな」と言ってみる。「忙しい」を「充実している」と言いかえてみる。

結果的には同じことだとしても、言い方を変えるだけで、心理状態もずいぶん変わるんじゃないかなと思います。

心身を壊してまで、やるべき仕事なんてない

先ほどお伝えしたとおり、心の不調は誰にでも起こりえます。

これだけ高度な情報社会ですし、SNSでも見えないところからとんでもない悪口が飛んできたりする。

そんな世の中、疲れて当たり前なんですよね

疲れること、弱ってしまうことは、恥ずかしいことでも特別なことでもありません。それに、身体を壊してまでやらなきゃいけない仕事なんて、世の中にそうそうありません

自分の心の声に耳を傾けて、「やばい」と思ったら遠慮なくSOSを発信する。最終的にはしっかり睡眠時間を確保して、ぐっすり寝る。

そんな当たり前のことが、当たり前にできるようになりたいものですね。

「ポンコツ界一のデキる男」が、悩めるあなたに手を差し伸べる

澤円の深夜の福音ラジオ』では、ほかにも澤さん流の「仕事への向き合い方」や「生きにくさを解消する方法」など、幅広いエピソードを公開中。

その華麗な肩書とはうらはらに、実は飛行機の予約を3回連続で取り間違えるほどの“ポンコツキャラ”であることも明かしている澤さん。

そんな澤さんから贈られる、親身で愛のあるアドバイスはまさに“福音”です。

やさしく心に響く語り口を聴いているうちに、いつしかホッと力が抜けるはず。

ちょっと疲れたときや、このままでいいのかな?と悩んだとき。人生を豊かに彩る“福音”に耳を傾けてみませんか?
〈撮影=渡辺健太郎(@kentaro_w1230)〉