ビジネスパーソンインタビュー

上にいけないのは努力の問題じゃない。田端信太郎にサラリーマンの“レバレッジ活用術”を聞いた

個人の信頼と会社の信頼、どっちをとる?

上にいけないのは努力の問題じゃない。田端信太郎にサラリーマンの“レバレッジ活用術”を聞いた

新R25編集部

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2020/02/18

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記事提供:インベスタイムズ

スーパーサラリーマン・田端信太郎さんに“レバレッジの極意”を聞くインタビューの第2弾。

前回「レバレッジは価値中立のツールである」と、“レバレッジの本質”を説いてくれた田端さん。

本質はわかったけど、どうやってレバレッジを使ったらいいんだろう? 具体的に何をやったらいいんだろう? 田端さんに聞くと…。

当たり前のことを当たり前にやるだけですよ

ド直球のド正論が返ってきました。はたして田端さんの発言の真意とはいったい?

リクルート、ライブドア、LINE、ZOZOと、数多くの有名企業を渡り歩き、さまざまなプロジェクトを管理監督者の立場として経験した田端さんだからこそ語れる“レバレッジ活用術”に迫ります!

【田端信太郎(たばた・しんたろう)】1975年石川県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げる。2005年にライブドア入社、livedoorニュースを統括。その後、転職を重ね、多数のメディア事業に携わる。Twitterのフォロワーは20万人を超える。著書に『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』(NewsPicks Book) 、『MEDIA MAKERSー社会が動く「影響力」の正体』(宣伝会議)

会社に属することだってレバレッジ

ライター・水嶋

スーパーサラリーマンと呼ばれる田端さんに、仕事で使えるレバレッジがあればぜひ教えていただきたいのですが…

田端さん

僕にとって会社に勤めるということが実はレバレッジなんですよ。

これは意外な答えが返ってきたぞ…

ライター・水嶋

え? レバレッジ活用にはリスクもあると思うのですが、会社勤めは、その逆のイメージがありますけど。

田端さん

会社勤めだって意に沿わない仕事を押し付けられるかもしれない、転勤があるかもしれないし、変な上司がきてパワハラされるかもしれないし、リスクなんていっぱいあるじゃないですか。

ライター・水嶋

それもそうか…

では、どんなレバレッジがかかるんですか。

田端さん

僕がギタリストだとしたら、会社はギターアンプであり、ステージなんですよ

別に一人で駅前のストリートミュージシャンやっていてもいいけど、それよりは、会社が用意してくれるステージで演奏して、でかいギターアンプを鳴らした方が、よりたくさんの人に聞いてもらいやすいよねと。

会社はステージだと思え!

ライター・水嶋

自分の仕事をより多くの人に届けられるのは、会社というレバレッジを活用しているからこそというわけですね。

田端さん

でも、そこにステージ監督がでてきて、「うちはロックじゃなくてハワイアンをやりたいんだ。そのうるさいギターやめてくれる?」と言われるんだったら、そこは音楽性の不一致で、「じゃあ僕、お呼びじゃないんで」と言って去ればいい

それは別にどっちが悪いわけでもないですよ。

ライター・水嶋

割り切った関係にも感じてしまいますが…

田端さんがリクルート時代に手がけたR25(※)の立ち上げも、そういう考えを持っていたからこそ出来たことなんでしょうか。

※リクルートが発行していたフリーマガジン。2004年創刊。キャッチフレーズは「オトコを刺激する情報マガジン」

田端さん

そうそう。

だって自分のお金では絶対にできないですよ。

あの伝説のフリーマガジンも「レバレッジ」だった!

田端さん

いやらしい言い方すると、レバレッジとは、他人のお金と時間をうまく使うことだと言えるんですよ。

ライター・水嶋

ビジネスの場面では避けて通れない話ですね。

田端さん

ただ、R25の立ち上げ時、当時の上長に言われたんですけど…

「田端、おまえのポケットマネーがこのプロジェクトに投資されるとしてもおまえこれできるか、やるか」と。

「もちろんです」と答えた。

じゃあお前のご両親の老後資金がここに投資されるとしたらどうなんだ」と言われて。

両親の顔を思い浮かべると…

ライター・水嶋

それは痛いところをつきますね…

田端さん

その瞬間、さすがに言葉に詰まりました(笑)。こんなハイリスクな案件はさすがにだめだと。

他人のお金と時間をうまく使えるからって、悪ノリすると、それはタダ乗り

ただのサラリーマン根性なんだってことを、諭されたんです。

R25は悪ノリにならず、無事に世に出ました

ライター・水嶋

利用することばかりを考えてもいけないということですね。

田端さん

今のは雇われている側が会社を利用するという話ですが、経営する側が悪ノリすると、いわゆるモラルハザードとか、ガバナンスがきいていないという話になるんです。

ライター・水嶋

ああ、大企業の偉い人が不祥事を起こしたとか、謝罪に追い込まれたとか、結構ニュースで見る気がします。

田端さん

それは、レバレッジの使い方を誤った結果

レバレッジをかけすぎて、テコの側がもう擦り切れちゃうというね。

ライター・水嶋

片方が一方的に利用しすぎると問題が起こると。

田端さん

道具と違って会社が面白いのは、人間と人間がやっているということ。

物理的なテコでは、棒切れが意思を持つことはないですけど、人間は違いますから。

利用する、されるの関係で、一方が利用しまくっていると、されている方から「いい加減にしろお前」って言われる。

それはやっぱりほどほどにWIN-WINで、相互に利益がないと続かないですよね

WIN-WINの関係が大事

信用こそ最大のレバレッジ。当たり前のことを当たり前にやれ!

ライター・水嶋

でも、タダ乗り上等な人も出てきそうです。」

過去のインタビューで、接待の経費を落とす人間=フリーライダー(タダ乗りする人)というお話をされていましたが、これはまさに、会社というレバレッジを自分のためだけに使ってしまっている例ですよね。

田端さん

そういうことを僕がなぜしないようにしているかというと、信用”こそ最大のレバレッジだと思っているからなんです。

信用こそ最大のレバレッジ!

ライター・水嶋

信用…

確かに、信用がない人にお金や時間をかけたいとは思わないですね

田端さん

そう。

だから、例えば僕が妻と外食したのを接待交際費で落としたとして、それは別に5000円か1万円の問題かもしれないですよ。

でも、それで信用が失われることの方が僕からしたらよっぽど恐ろしいわけです。

ライター・水嶋

得られるものに対して、失われるものの価値の方が大きすぎますね。

田端さん

そういうところに関しては、管理監督者として、めちゃくちゃ慎重です。

こう見えて。経費に限らず、部下へのパワハラ、セクハラといった問題とかもそうですけど。そこでリスクを取る気は全然ないんですよ。

Twitterでは炎上したりもするんですけど(笑)

あまり炎上を気にされてない様子…

ライター・水嶋

Twitterでの炎上は気にしないんですか?(笑)

田端さん

インターネット上で、会ったこともない人から批判されるのは全然OKなんですよ。

Twitterはあくまで個人的なオピニオンを発信しているだけだから

…だけど、会社の先輩や後輩、クライアントとか、直接の知り合いに顔出し実名で批判されたらグサッときますね。

ビジネスパーソンとしての信用が傷つくということだから。

匿名の批判は気にしない

ライター・水嶋

信用を守る、あるいは築くにはどうすればいいでしょう。

田端さん

当たり前のことを当たり前にやるだけですよ。

言ったことは守る、嘘をつかない。

なんとド直球のド正論…!

ライター・水嶋

言われると当たり前のことですが、実際にやるのは意外と難しいことかもしれません。

よかれと思ってつい嘘をついてしまう、なんてことが身に覚えがある人は僕も含めて多いはず…

田端さん

これ僕のささやかな自慢なんですけど、講演やセミナーを数百回か数千回ぐらいやっていて、穴を開けたことがないんです。

ぎっくり腰になったときにも、行ったことありますもん。

ライター・水嶋

信用を積み重ねるためには、実直であることが大事というわけですね。

田端さん

最低限これは守ってくれる人だと思われることに、ものすごいレバレッジがかかるんですよ。

信用を得ることがレバレッジ活用の第一歩

ライター・水嶋

レバレッジ活用は、社会人としての基本的なことからすでに始まっているんですね。

田端さん

初歩的なことのようで、実は一番難しい

信用を積み重ねるには年単位の時間がかかるけど、失うときは一瞬ですから。

ライター・水嶋

信用を問われる、試される場面は誰しもが経験しますよね。仕事で大きいミスをしたときとか…

田端さん

特に僕は管理職や役員としての立場上、そういう場面で選択を迫られるわけですよ。道徳の授業みたいに。

何か大きい問題が内部で発覚したときにクライアントに報告にいくか、しれっと問題の対処だけ済ませるか。

ライター・水嶋

胃が痛くなる話ですね…。

それはどっちが正解かというと…

「知った瞬間から正しいと思うことをやる」

田端さん

直ちに謝罪に行くことです。それが僕にとって保身になるんですよ。

「これはまずいから伏せろ」と現場に伝えて、ずっと隠しきれるならそれでいいかもしれないけど、絶対なんてことはないじゃないですか。

一番ローリスクなのは、知った瞬間から正しいと思うことをやることです。

ライター・水嶋

でも、なかなか勇気がいりませんか?

そのせいで評価が下がったり、あるいは仕事を失ったりする可能性も…

田端さん

極論、クビになってもいいと思いますよ。

それでクビになったとしても、また拾ってくれる人もいます

逆に、何か不正が発覚して「それを握りつぶせ」と言ったなんて知られたらアウトですよ。

ライター・水嶋

信用を軽視する方が問題だと。

とはいえ最近は、企業の不正が問題になることも多いですよね。

田端さん

個人の信用より会社の信用の方が大事だと思っちゃったんでしょうね。

僕からすると、一個人としての信用の方が会社の信用より大事ですから。

守るべきは会社の信用? 個人の信用?

ライター・水嶋

会社と個人の関係も変わりつつありますもんね。

終身雇用は限界だという話もありますし。

田端さん

雇用が流動化している現代社会では、個人としてサバイブしていく上で、当たり前の気構えだと思うんですよ。

こんな悪事の片棒担ぐぐらいなら辞めるということ。そんな人がたくさんいる会社の方が結果的に悪事は起こらないから、健全だと思うんですけどね。

掲載できない修羅場の話もありました…

レバレッジを使わないならお好きにどうぞ?

ライター・水嶋

レバレッジは、リスクを恐れない人ほど有利なのかと思っていました。

でも、信用を築くということであれば、誰もが同じスタートラインに立てそうです。

田端さん

別にみんながやる必要ないと思いますけどね。

あれ、じゃあ今までの話は…

ライター・水嶋

え!?

田端さん

人それぞれの人生なので、飛行機に乗りたくないと言っている人はそりゃどうぞご自由にと

それで別にいいじゃないですか。

飛行機に乗る便利さとか、海外旅行は楽しいですよって思いもあるけど、どうしても嫌だって人を無理やり連れていこうとまでは全然思わない。

ライター・水嶋

意外です。

田端さんならケツを叩いて急き立てるぐらいのことはするかと…

田端さん

逆に世の中の人が全て僕ぐらいレバレッジを意識するようになると、僕が相対的な優位を失うんで(笑)

計算の上だった…

ライター・水嶋

なるほど…(笑)。

自分の部下に対してはどうですか?

田端さん

それは言いますね。

僕の周りもレバレッジを使ってくれないと、ネットワーク効果が働かないんで

ライター・水嶋

ネットワーク効果…?

田端さん

例えばいまだに社内の連絡手段が電話やFAX中心の会社Aと、LINEやSlackなどのメッセンジャーアプリ中心の会社Bがあったとします。

社員の能力に差がなく、同じ頭数が揃っているA、Bの会社が競合したら、意思疎通を効率よくできるBの会社の方が勝ちますよね。

ライター・水嶋

なるほど。

確かにビジネスシーンでは自分が使うだけではなく、周りを巻き込んでいかないと効果がないですね。

田端さん

今の世の中、格差がどんどん開いていますけど、僕に言わせたら、個人の能力の差はそんなにない

レバレッジを有効に使う企業や人がどんどん格差の上に行っているということ。

その場に停滞し続けるのはレバレッジがうまく使えていないせいなんですよ。

能力ではなく、レバレッジの差

ライター・水嶋

能力に差がないというのは意外な感じがします。

田端さん

人間の身体的な能力の差って、せいぜい2、3倍ぐらいですよ。

頭脳労働ではもう少し差があるかもしれないけど、それでもそこまで大きな差にはならない。

ライター・水嶋

言われてみればそうかもしれないです。

田端さん

でも、レバレッジのかかり方が高くなると、その差が一気に開いていく

未開社会で人間が狩猟採集やっていたときより、今の方がよくも悪くも格差が開いているというのは、レバレッジをうまく活用できるかどうかの差なんですよ。

ライター・水嶋

人間の能力が進化したというより、レバレッジが進化しているという…

田端さん

上に行けないというのは、努力が足りないんじゃなくて、そもそもレバレッジの使い方がわかってない

努力だけじゃ差は埋まらない…

ライター・水嶋

前回、レバレッジを使うことは抜け駆けじゃないかという話題がありましたけど、努力が報われるためにはむしろ積極的にレバレッジを使った方がいいということですね。

田端さん

自分の家族や部下、この記事を読んでいただいている人にも、レバレッジを使った方が有利なんだと意識を変えた方が、ハッピーに生きられるはずということは伝えたいです。

レバレッジ使おうよ、みんな

最も基本的でありながら、最も難しいレバレッジは「信用」。

数多くの企業を渡り歩き、ビジネス経験豊富な田端さんが実践するレバレッジ活用術は、リスク上等の精神で勝負しまくれ!ということばかりではなく、意外にも、実直に信用を得ることから始まるというシンプルなものでした。

次回はいよいよインタビュー最終回。私たちが明日からレバレッジを使いこなすために必要な“レバレッジの心構え”を田端さんに伝授してもらいます!

次回 「時間価値と人生の経営マインドを意識すべし」田端信太郎が伝授する“レバレッジの心構え”を田端さんに伝授してもらいます!

・当記事に掲載の情報は、すべて執筆者および取材対象者の個人的見解であり、大和投資信託の見解を示すものではありません。

ライター・水嶋洋大

株式会社ケイ・ライターズクラブ所属。編集者兼ライターとしてビジネス関連の媒体制作に多数携わる。

老後資産に必要な2000万円を貯めるべく、フィーリング重視の個人投資を始めたばかり。塩漬けになりつつある株の様子をチェックするのが日課。失った時間は戻らなくとも、失ったお金は取り戻せると信じている。

https://www.kwc.co.jp/

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