ビジネスパーソンインタビュー
田端信太朗著『ブランド人になれ!』より
150円のラーメンを300円で売れる人が「ブランド人」になれるワケ
新R25編集部
終身雇用制度のほころびが見えはじめ、「個の時代」という言葉がかなり浸透してきました。
定年まで約30年も時間があるR25世代は、会社の一員としてではなく、個人として社会へと向き合う必要があります。
ただ、一会社員である自分がどうやって、社会と向き合う力・考え方を得るのか。
新R25が2月にお届けする特集「自己プロデューサーに学べ!」では、自己プロデュースに成功した先輩たちの書籍から、自分の武器を見つけるヒントになる考えをお届けします。
今回取り扱うのは、NTTデータからキャリアをスタートさせ、リクルート、ライブドア、LINE、ZOZOなど数多くの有名企業を渡り歩いてきた田端信太郎さんの著書『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』。
2019年にZOZOを離れたあとも複数社の外部顧問として活躍を続ける田端さんは、どのようにしてサラリーマンからブランド人への進化したのか。
同書より、サラリーマンとしての個性を磨くためのヒントとなる部分を抜粋してご紹介します。
ブランド人になるには「お客様を喜ばせること」
ブランド人への階段を登り始めようとしている君たちに、まず考えてほしいことがある。
「仕事とは何なのか」
昼メシどきにそこらのラーメン店に入ると、どう考えても700円の値打ちなんてない、カップラーメン以下の味しかしない、まずい1杯に出くわしてガッカリすることがある。
ラーメン店のオヤジは朝から早起きして汗水たらしてスープを仕込んでいるのだろうが、彼が作るラーメンは客に満足を与えない。
それどころか「二度とこの店には来るものか」と憤りさえかき立てる。
客をがっかりさせるようなクソまずいラーメンしか作れない、ラーメン店のオヤジは、果たして「仕事をしている」と言えるのだろうか。
シンプルにまとめるならば、仕事のあるべき姿は「お客様に喜びを与えること」「他人の役に立つこと」だ。
よく「汗水たらして働いている人になんて無礼なことを言うのか」「どれだけつらくて苦しいか考えてみろ」と文句を言う人がいる。
はっきり言おう。汗水だとか、つらいだとか、苦しいだとかそれ自体には一切価値はない。
一言で言えば、「お客様を喜ばせること」、それだけがブランド人の仕事だ。
どんなに苦労したって汗や血や涙を流したって、誰も喜んでいなければ仕事でも何でもない。真夏の炎天下に、土だらけになってスコップで穴を掘り、またそれを埋める。
額には大いに汗が流れるだろう。この汗水に意味はあるか?ないに決まっている。
その仕事に感謝してくれるお客様がいないからだ。「働く」という漢字は「人偏+動く」と書く。
君の仕事によって君のお客様が喜びに打ち震え、人の心を動かして初めて、君の仕事が世の中に価値を生み出したことになる。
君の仕事の本当のお客様は誰なのか?他人や社会とどのような関わりをもっているのか。どうすれば、君の仕事がお客様とその集合体としての社会を盛りたてることができるのか。大義や志はそこにあるか?
夜寝る前に、「今日1日の自分の仕事は、誰を喜ばせたのか?誰の役に立ったのか?誰から感謝されたのか?」まずはそこから考え始めてみてほしいのだ。
150円のラーメンを300円で売るには?
では、「どうすれば人は喜んでくれるのだろうか」。
ブランド人たるもの、極めてシンプルにして本質をついたこのポイントを、朝起きた瞬間から夜寝るまで常に考え続けなければならない。
たとえば、iPhoneの新製品を誰よりも早く手に入れたいがために、銀座のアップルストアの前で1週間も2週間も徹夜の座りこみを続けるクレイジー・ガイがいる。
そんなクレイジー・ガイのために、魔法瓶に詰めたお茶やコーヒーをもっていったらどうなるか。
1杯100円の値段をつけて座りこみの列を練り歩けば、それなりの数が売れると思う。
真冬のさなかに熱湯とカップラーメンをセットで出前すれば、原価150円のラーメンが300円で売れるかもしれない。
汗水たらしてまずいラーメンを仕込むことが仕事なのではない。
「どうすれば人が喜んでくれるだろう」と知恵をめぐらせ、相手の立場に立って想像力を働かせれば、喜びのリターンに応じて君の仕事の価値は上がっていくのだ。
ブランド人たるもの、「カネを稼ぐ」という自分本位の目的など捨て、「他人の幸せ」を考えなければならないのだ。
それができたときにカネは勝手についてくる。
マーケット力を養うには「シズル感」を意識せよ
マーケットが何を求めているか、大衆が何を求めているかを察知できない人間に、ブランド人の資格はない。
ブランド人とは「人々の心のひだに分け入るように豊かな想像力を発揮できる人」の異名でもある。
モノでもサービスでも、スマートフォンで遊ぶゲームやアプリにしても、マーケットを介して売買される。
売る人と買う人の双方がいて初めて、市場での商売は成立する。
農家のオジサンが畑で野菜や果実を収穫した時点では、いくらの値打ちがあるのかは判然としない。
オジサンにとっては湯水のように取れる作物だから、近所の人にタダでおすそ分けしてしまったりする。
その作物を都会の真ん中まで運んでいくと、途端に価値が増す。原価50円の野菜や果実が、200円や300円、500円や1000円で売れるのだ。
なぜ原価の何倍もの値段で、モノが売れるのだろう。
生産者にとってはさほど貨幣価値がない品物であっても、それが欲しいユーザーにとってはカネを払う価値があるからに他ならない。
こうした市場原理を利用して、昔から人々は貿易に精を出し、大きな富を生み出してきた。
パソコンの画面を見ながら株式の売買やFXをやっていると、「市場の向こうには生身のユーザーがいる」という当たり前の事実を忘却してしまったりする。
なぜ市場で株価が動くのか。それは株式を売る者がいて、同時に買う者もいるからだ。
株式を手放す者は「この銘柄にはもはやたいした価値はない」と見限って売りさばく。かたや買うほうは「しめしめ。この株は近い将来確実に値段が上がる」と期待している。
なぜ、自分が売ろうとしているものを買おうとしている人がいるのか。具体的に相手の心理を思い描けるほど、想像力をめぐらせる必要がある。
どこかのステーキ店の社長だったか、「ステーキを売るな。シズル(ジュージューと焼ける音)を売れ」と叫んだ者がいる。
肉汁がジュワーッと蒸発してあたりに充満する。よく冷えた生ビールが、シュワーッと音を立てながら泡の蓋を作る。
そのシズル感が、マーケットの需要をビンビンと刺激する。
うなぎ店が煙をうちわで扇ぐのと一緒だ!
人々が求めるものは何かを鋭敏に想像し、需要を刺激する情報を発信できる者がマーケットで勝利する。
どこかのシンクタンクが「ワールドカップへの日本出場による経済効果は××億円」なんて試算しているが、あのようなデータは、所詮もっともらしくあとづけした理屈でしかない。
人間の感情は、頭でっかちな理屈なんかよりもはるかに優先する。マーケットを机上のデータで分析して良しとするだけでは、ブランド人失格だ。
他者と向き合い、人間の欲望を徹底的に想像せよ。生身の一人ひとりの人間とガチンコで向き合う。この当たり前の姿勢なくして、マーケットの動きを予想することなどできるはずもない。
マーケットとは、現実社会の森羅万象を映し出す鏡なのだ。
財務指標や株価や、小売りのPOSデータといった数値だけを見て現場を見ない人間は、長期的には必ず道を踏み外す。
ブランド人たるもの、生身の他者に興味を持て!向き合え!心のヒダをかき分けろ、そして現実社会を生きる人間の生臭い欲望を肯定し、共感しろ。
家族は究極の他者。市場の複雑さを学べる場
意識の高いガッついたビジネスパーソンは、とかく24時間仕事のことで頭がいっぱいになりすぎて、プライベートな用事を後回しにしがちだ。
せっかく結婚して子どもをもうけても、家族を顧みず仕事に打ちこむせいで、家庭が崩壊してしまう残念なケースもある。
結婚して一つ屋根の下で誰かと暮らす。これはものすごい賭けだ。
血がつながっていない「究極の他者」と寝食を共にする。最も身近にいる他人こそ、妻であり夫だ。
子どももまた、最も身近にいる「究極の他者」だ。小さな子どもには「忖度」というものがまったくない。まったく予測不能な動きをし、大人の気持ちを顧みず好き勝手に振る舞う。
言いたいことを口にし、気に入らないことがあれば泣きわめく。
「どれほど仕事をがんばっても妻に感謝されない。むしろ溝が深くなっている」「どれほど心を込めて食事を作っても息子が食べない。お菓子ばっかり食べる」こんな理不尽は日常茶飯事だ。
家族という「究極の他者」とのつきあいに比べれば、ビジネスははるかにシンプルだ。
ビジネスの世界では、がんばったらがんばっただけ成果が出るが、家族とのつきあいにおいては、いくらがんばってもまるで成果が出ないどころか、それが裏目にも出る。
トラブルの連続だ。だからおもしろい。そして、それこそがリアルだ。
マーケティングリサーチに基づいて、広告代理店やコンサル会社が作ってくる提案に、生身の人間のリアルな感情は反映されていない。所詮、あとづけの理屈にすぎない。
家族をもつことによって「人生は人間が思うほど単純ではない」「人の感情はコンピュータでプログラミングできるほどシンプルではない」と肌身に染みて実感し、学ぶことにこそ人間としての成長がある。
人間の複雑性を理解してこそ、誰もが欲しかったのに世の中に存在しなかった斬新な商品やサービスを生み出せるのだ。
個人として名が知れるビジネスマンになれ!働くエネルギーをもらえる1冊
一歩抜きん出た仕事を成し遂げたい。行き先は険しいかもしれないけれど、興奮するような仕事人生にチャレンジしたい。
『ブランド人になれ! 会社の奴隷解放宣言』は、そんな人々の背中を力強く押してくれる一冊です。
田端さんの言葉を胸に、ブランド人への一歩を踏み出してみませんか?
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