ビジネスパーソンインタビュー
「幸せな結婚って、こういうものちゃいますかねえ」
「籍入れたとき、月給2万やったんです」小籔千豊が語る“結婚に踏み切れない人の特徴”
新R25編集部
結婚を夢見る人は多くいますが…いざ結婚を決断するとなると、そう簡単にはできないもの。
心の準備ができていなかったり、もっと仕事を頑張りたかったり…なんだか結婚に踏み切れずにいるカップルが、今日もどこかでモヤモヤしてるはず。
そこで今回は、自身も結婚に至るまで9年間お付き合いされていたという小籔千豊さんに「結婚に踏み切れない理由」を分析してもらうことに。
ちなみに小籔さん、結婚に踏み切れないカップルが7日間の海外旅行に行き、旅の終わりに結婚するか別れるかを決める結婚リアリティーショー『さよならプロポーズ』シリーズ(AbemaTV)でMCを務め、数多くの「結婚に踏み切れない若者たち」を見てきたお方。
いったいどんな結婚観を語ってくれるのか…!?
〈聞き手=サノトモキ〉
【小籔千豊(こやぶ・かずとよ)】1973年、大阪府生まれ。吉本新喜劇座長。吉本新喜劇入団後、レイザーラモンと3人でお笑いユニット「ビッグポルノ」結成。2008年よりお笑いと音楽を融合させた野外フェス「コヤブソニック」を開催。吉本新喜劇の広告塔として東京でタレントとしても活動。2015年から女性ファッション誌史上初めて、芸人として3誌同時の専属モデルを約3年半にわたり務めた
「僕は無職になったとき、改めてプロポーズしました」
サノ
小籔さんって、ご自身も結婚されるまでけっこうかかってらっしゃるんですよね?
小籔さん
はい。嫁はんとは18のとき…高校卒業してすぐ出会って付き合いまして、9年付き合ってようやく結婚しました。
サノ
9年…けっこう長い期間ですけど、どうして結婚に踏み切れなかったんですか?
小籔さん
やっぱり「責任感」ですよね。
小籔さん
「結婚=一生食わしていく」という考えだったので、そのイメージが見えるだけのお金の余裕があったほうがいいなと思ってて。
このしょうもない仕事を選んでしまったことで、子どもが「習い事したい」「Wiiほしい」言うたときに応えられへんかったり、嫁はんに生活費で頭抱えさせたりするのがイヤだったから、ある程度安定するまではと思ってたんですよ
だから、付き合って1、2年くらいのときに「ギャラがあと10万上がったら結婚するで」って伝えてたんですけど、2万、5万って感じでちょっとずつ上がってくうちに9年くらい引っ張って。
サノ
なるほど…
小籔さん
で、大卒の初任給くらいはもらえるようになって、いよいよプラス10万いくぞってなった27歳のとき、一緒に漫才やってた相方に「辞めたい」って言われたんですよ。
恋人との約束を9年引っ張った挙句、僕は職を失ってしまったんです。
なんと…
小籔さん
で、僕は無職になって、改めてプロポーズをしました。
サノ
なんでそんな人生どん底のタイミングで!?
小籔さん
僕は昔から、「お笑いの世界で成功する」「幸せな家庭を持つ」の2つが同じくらい大切な夢だったんです。
でもそのとき、お笑いの夢を諦めれば、嫁はんとの夢だけなら今すぐ叶えられると思って、「安定した普通の仕事に就くから、結婚しよう」と改めて伝えたんです。
3月にコンビ解散したんですけど、4月にはもう伝えてましたね。
サノ
お金を理由に9年結婚を引っ張って、無職になって1カ月でプロポーズ。
人生って何が起こるかわからないな…
「貧乏でも、もっと早く結婚しておけばよかったかも」
サノ
でも、無職の状態で結婚なんて、怖くなかったんですか?
それこそ責任なんて…
小籔さん
僕、ファミレスで解散を告げられた帰り道に、速攻コンビニ寄って「DODA(現パーソルキャリアの転職情報誌)」とか「とらばーゆ(リクルートが発行していた求人情報誌)」読んで、自分がどんな仕事に就けそうか調べたんですよ。
この年齢で一度も就職したことのない僕が就ける仕事はいったいどれだけあって、どれくらい稼げるのか、結婚すると手当が出る会社とか、住宅手当が出る会社とかガンガン調べていって。
普通しばらく立ち直れなさそうなのに…すごすぎる
小籔さん
で、いろいろ調べた結果、当時の僕の第一志望はカプコンのシナリオライターやったんです。
サノ
小籔さんがあの大手ゲームメーカーに!?
小籔さん
今はどうか知らんですけど、当時は「とにかく面白い発想をデキる人」を募集してるって書いてあったんですよ。「あっここは学歴不問なんや」と。
しかも、面白い発想なら、単独イベントのネタとか全部自分で考えてるとか、芸人として経験値があるから、普通の大学生には勝てるんちゃうかと思って。
とにかく、本気で普通の会社に就職することを考えてたんです。
サノ
奥さんと幸せになるための覚悟ですね…
小籔さん
でも結局まわりの芸人たちに「お前は絶対売れる」って止めてもらって、歳とっても現役で舞台立てる吉本新喜劇なら安定した生活送れると思って入るんですけど…
入ったばかりでいきなり活躍できるわけもなく、僕、そっからが人生で一番貧乏だったんですよ。
結婚してから、給料が付き合ってたころの10分の1くらいに下がった。
小籔さん
それもあって、僕らの結婚記念日は10月25日の給料日なんです。
嫁はんに「結婚記念日いつにする?」と言ったら、「いつでもええけど、この先どんだけ貧乏でも給料日やったら金あるやろ。そしたら一緒に飯食えるやん?」と言われて。
サノ
泣ける…めちゃくちゃ素敵な奥様だ…
小籔さん
でも10月25日に、一緒に区役所行ったあとATM行ってポポポン、ポンって押して出てきたのが「2万」。
籍入れたとき俺、月給2万やったんです。9年、「お金」を理由に結婚を引っ張ってきたのに。
「でもね…」
小籔さん
今思うと、アホやったんかもわかんないですね。
貧乏でも、もっと早く結婚しとけばよかったかもしれない。
サノ
どうしてですか?
小籔さん
たしかに、貧乏なときに結婚して辛いこと、いっぱいありました。
嫁はんにも、嫁はんの親戚にも悪いし、「食わせていく」と思ってたからこそ男としても恥ずかしかったし、情けなかったです。
でも、僕らはやっぱり今でも、「2万」を下回らん限り不幸せじゃないんですよ。
小籔さん
僕らには今でも、「言うても、もともと2万やったしな」っていうのがある。
僕はテレビとかで「死ぬほど金持ちですよ」って言うんですけど、それはダウンタウンさんとか、はたまた一般の方とかと比べて言ってるんじゃなくて。
「結婚して、一人目の子どもが生まれたときでもアルバイトしまくってたあのときの自分たち」からしたら、僕らは今めちゃめちゃ金持ちなんです。
サノ
一番ダメな時期を一緒に過ごしたからこそ、より幸せを共有できる夫婦になったんですね…
経済力とか含め「うだつが上がらないとき」って結婚しちゃいけない気がしちゃうけど、逆にいいこともあるんだな…
「“中継ぎ投手”みたいな付き合い方してんちゃうぞ」
サノ
でも、18歳で「この人と結婚したい」と思うのってけっこう早いというか、「他にももっといいパートナーがいるんじゃないか?」とか思った瞬間ってなかったんでしょうか…?
小籔さん
一切ないです。
僕は小さいころから早く大人になりたかったし、お父さんになりたかったんですよね。
長テーブルに子どもたちが座って、嫁はんがごはん運んできて、僕がちょっと遅れていってごはんが始まる。で、新聞読みながら「ちゃんと勉強してんのか」って子どもに聞く…みたいな家庭になりたいって思ってたんですよ。
「ちゃんと勉強してんのか」を再現する小籔さん
小籔さん
そんなだから僕、付き合うときは常に結婚を見据えてのお付き合いだったんです。
女の子を見るときは、小姑ばりの目線やったんですよ。
サノ
小姑ばりというと?
小籔さん
まわりのヤツはみんな、女の子見ても「あの子かわいい」くらいのことしか言わない。
でも僕は、店員さんにちゃんと頭下げるか、友達にはやさしいか、金銭感覚はどうなのか、面白いと思う感覚は近いか、母の日、父の日にちゃんと恩返ししてるか…急に声デカくなれへんか、サラダ取り分けてるときに「私やってます!」感出してへんか、子どもが来たときに「ああんキャワウィ~~」になってないか!!!
…みたいに、自分と価値観が合うかを確かめるチェック項目がめっちゃあったんです。
絶対、そのへんの小姑では及ばない面倒くささだと思う
小籔さん
でも、今の嫁はんは出会って1年も経たへんうちにそのチェックリストがどんどん埋まっていったんで、「おお…!」と思って。この人がいいなと。
サノ
すごい…
そこまで先を見通して恋人と付き合ってる人、あんまりいない気がします。
小籔さん
いや逆に、結婚見据えてないのに付き合うって…「それもうただの“中継ぎ投手”やん?」って思います。
都合のいいセフレ、もしくはファッション。きれいな彼女を連れて歩きたい、男前な彼氏をインスタに上げたい。自分のために付き合ってるだけ。
お互いそれならいいかもしれないですけど、そういう相手に濁されて振り回されてる感じなら、自分がどれだけ結婚したくても、自分から身を引いたほうがいいときもあると思いますよ。
小籔千豊の結婚観…“結婚とは、「相手のため」のミルフィーユ”
サノ
『さよなら、プロポーズ』でも、数々の「結婚に踏み切れないカップル」を見てきた小籔さんですけど…
ずばり「結婚に踏み切れない人」ってどんな人だと思いますか?
小籔さん
相手より自分が大事な人。
それだけじゃないですか?
小籔さん
こんなん、男前の俳優が言うたほうがええと思うんやけど、「嫁はんと子どものためやったら腹切れまっせ」と思ってたら、いつでも結婚できるんですよ。
ようは自分のことより「相手のために」を優先できるかです。これは男に限った話じゃなくて、女性もそうやと思います。
たとえば、吉本新喜劇の座長になって僕が真っ先にやったことって、「生命保険に入る」なんですよ。
サノ
へええ…!
小籔さん
そこでようやく、「ああよかった、これで家族は大丈夫だ」って思いました。
それで嫁はんに「生命保険入ったからもし俺が死んでも生命保険入るから安心せい。俺がこんな仕事してたら不安やろ、子ども大きなったとき貧乏やったら最悪やろ、お笑いで食われへんようになったら違う仕事やるけど、それでも食われへんくなったら安心してくれ。南の島行って証拠のVTR撮りながら飛び降りるから」みたいな長文LINE送ったらですね…
「死になや」という4文字だけ返ってきました。
「死になや」は、「死んじゃダメだよ」ってことです。キュン
小籔さん
まあこれは極端な例ですけど…
「今は仕事に打ち込みたいから」みたいな言い訳する人も多いですけど、少なくとも僕は、家族食わすためだったらいつでも今の仕事もやめるし、自分のすべてのエゴを取り払って、何やってでも家族のためだけに生きていく覚悟を持ってます。それは結婚したいと思ったときからずっと同じです。
「結婚かあ…」とか言うてる人って、口ではそれっぽい言い訳してるかもわからんけど、なんだかんだまだ相手より自分のことが大事なんだと思いますよ。
サノ
ああ…これは真理かもしれん…
小籔さん
気持ちはわかるんですよ。一家の大黒柱になるプレッシャーだってめっちゃくちゃわかりますし、女性にもいろんな種類の迷いや不安があると思います。それこそ『さよならプロポーズ』観ててもよくわかります。
でも、そんななかでも「相手のために」と思える人と結ばれるのが、結婚ちゃいますか。
小籔さん
僕は嫁はんのために仕事を頑張りたいと思ってる、嫁はんはそんな僕のためにおいしい食事作ってくれる、ありがとうな、また仕事頑張ろう、と思う。
「相手のために」「相手のために」「相手のために」…幸せな結婚って、そういうことのミルフィーユじゃないですか?
どうなんすかねえ、理想ばっかり言うてるんですかねえ。
いえ、ご家族への本気の愛が伝わる素敵なお話でした…ありがとうございました!
幸せな結婚とは、“「相手のために」のミルフィーユ”。
小籔さんの結婚観は、一見古風に感じるところもあるかもしれませんが、そこには時代が変わっても色あせない教訓が確かにあった気がします。
この記事が、今結婚に踏み切れずモヤモヤしている誰かが、自分の幸せに向かって一歩前に進むきっかけになったりしたらいいな。
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美(@hiromi_ike)〉
そんな小籔さんがMCを務める『さよならプロポーズ』シリーズがこちら!
■AbemaTV『さよならプロポーズ シーズン2』
初回放送日時:2020年3月28日(土)よる10時~
2年、3年と付き合いながらもなかなか結婚に踏み切れない「とある理由」がある2組のカップルが行くメキシコ7日間の旅。旅の終わりでは、究極の決断「“結婚”か“別れ”」を決めなければなりません。
そう、これは「恋人としていく最後の旅」。今回登場するのは、俳優の夢を諦めきれないリュウイチ(30歳/俳優・フリーデザイナー)と先々のことを考えるとそろそろ年齢の限界がきていると感じているユカリ(32歳/会社員)と、彼女との結婚を切に願うユウくん(27歳/飲食業・モデル)と家事を一生したくないため結婚に踏み切れずにいるミドリ(27歳/会社員)の2組のカップル。
この恋人たちが最後に出す答えは、結婚か? 別れか?
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