ビジネスパーソンインタビュー
自分のフタは、自分で開けろ
「結局、縁の下に逃げたのは自分なんです」ジャンポケ太田が語る“縁の下の力持ち”の戦い方
新R25編集部
チームには欠かせない存在なのに、なかなかスポットライトを浴びることのない「縁の下の力持ち」。
今回お届けするのは、そんな「縁の下」タイプの活躍や葛藤にスポットライトを当てる企画です。
え、絶対いい記事になるじゃんこれ…と思いながら取材をお願いしたのが…
人気お笑いトリオ・ジャングルポケットのリーダー、太田さん。
ジャングルポケットは「キングオブコント」の決勝に3度出場したこともある実力派。そのすべてのネタを書いているのが太田さんなのですが、テレビではなにかとキャラの濃い相方ふたり(斉藤さん、おたけさん)の影に埋もれ、「じゃないほう芸人」のような扱いに…。
今回はそんな太田さんに、普段言えない「縁の下のホンネ」を思いっきり語っていただこうと思っていたのですが…
太田さん、最高の形で企画をひっくり返してくれました。めっちゃくちゃかっこよかった。
〈聞き手=サノトモキ〉
【ジャングルポケット・太田博久(おおた・ひろひさ)】お笑いトリオ、ジャングルポケットのリーダー。自身の書いたネタでトリオを三度「キングオブコント」の決勝に導く
サノ
今日は太田さんに、「俺たちだってこんなに頑張ってんだ!」と、「縁の下」で溜め込んできた本音をぶっちゃけていただきたいんですけど…
太田さん
「俺たちだってこんなに頑張ってんだ」か、そうですよね…
なんだか含みのある言い方をする太田さん
サノ
そう言いたくなるとき、ありますよね?
太田さん
いや、もちろん僕も、「俺だってこんだけやってんだぞ」と思うことはありますよ。
自分がネタ書いてることを褒めてもらいたい気持ちだってめちゃくちゃあるし、YouTube用の動画を撮るってなったときに、撮影場所の下見とか、スタジオ代を全部一人でチェックしてるときとか、「これやってる俺エラくね?」って思ってます。
相方たちと揉めたりしたときなんかは、とくに言ってやりたくなる。
「でも…」
太田さん
でも、本当は自分でもどっかでわかってるんですよ。
自分から、スポットライトの当たらない「縁の下」に逃げ込んだだけだってこと。
スポットの当たらないポジションが楽だから、自分で「縁の下」に潜り込んだだけ
サノ
「縁の下」に逃げ込んだのは自分…?
どういうことですか?
太田さん
僕、もともとは完全に“ギャガー”で、自分が真ん中で目立ってたいタイプだったんです。
NSCに入ってからも一発ギャグ大会で優勝とかしてたし、おたけとコンビ組むときに斉藤が「入れてくれ」って来たんですけど、ボケでいたかったからはじめは拒否したくらいで(笑)。
意外すぎる
太田さん
3人になってからも、斉藤とおたけは普通のシャツなのに俺だけタンクトップみたいな、俺が一番ぶっ飛んだキャラでやってたんですね。
でも、「斉藤慎二」というモンスターを見て、僕は「こいつと同じラインで張り合っても勝てない」と思ったんです。
斉藤のウケ具合は、当時から無双状態だった。ホントに、人を笑わせるためだけに開発された特殊マシーンみたいで。
サノ
斉藤さんやっぱ昔からすごかったんだな…
太田さん
悔しさもあったけど、「俺はとんでもないやつらと組めたんだ」って気持ちが勝って。
そこから、ネタを書いて「縁の下」的なポジションになっていくんですけど…
結局僕は、ギャガーとしてあいつらと並ぶ自信がなくて、自分から「縁の下」という逃げ場所に潜り込んだだけなんですよ。
太田さん
ライブとかロケで進行役みたいな「ちゃんとしたキャラ」をやるのも、勝手に自分が買って出てるだけ。
“そういう役回りも必要だから…”とか言い訳してるんですけど、「じゃあそれ誰に言われたの?」って考えると、べつに誰にも言われてないんですよ。
スポットの当たらないポジションが楽だから、自分で勝手に縁の下に行ってるだけなんです。
サノ
これ、真理や…
太田さん
まずはそれを認めなくちゃいけないと思ってて。自分にスポットが当たらないことを人のせいにしてたらダメだなって。
そうじゃなくて、どうすれば縁の下にスポットが当たるかを考えていくしかない。
縁の下で努力をつづけるには、「種目」の違いに気づくことが大切
太田さん
実際、「縁の下」出身で今めちゃくちゃスポットライト浴びてる人だっていっぱいいると思うんですよ。
それこそオードリーの若林さんとか博多華丸・大吉の大吉さんは、もともと「じゃないほう芸人」とか呼ばれてたし。
でも気づいたら今はブレーンというか、テレビでバンバンMCとかしてスポットライトを浴びてるじゃないですか。
サノ
たしかに。
太田さん
あの人たちを見ててすごいなと思うのは、「やめなかったこと」なんですよね。
面白いと言われながらやめていく人だってたくさんいるのに、スポットを当ててもらえないなかでも腐らなかったこと。
サノ
その状況で頑張り続けるのがしんどいから、みんな愚痴を言いたくなっちゃうわけですもんね。
どうすればお二人のように縁の下で努力を続けられるんでしょうか?
太田さん
やっぱり、他人と自分が同じレースで戦ってると思うから劣等感を感じちゃうと思うんですよね。
でも、本当はそもそも、やってる「種目」が違うんですよ。
太田さん
それこそ会社でも、考えるのは得意だけど、人前でプレゼンしたり、飲み会で先輩たちを盛り上げたりする「目立つ種目」はあんまり得意じゃない…みたいな人ってけっこういると思うんです。
でも、それってそもそも負けてないんですよ。
自分は自分のレースで戦ってればいいんです。
サノ
水泳(競技)にも「100m自由形」「400m平泳ぎ」とかいろいろ種目がある、みたいな。
たしかに同じ会社でも「営業」とか「事務」って種目が違うし、なんなら「営業」のなかにもいろんな種目がある気がするな。
太田さん
スポットライトを浴びる「目立つ種目」が得意な人もいるし、地味な種目だけどメダルを獲れる選手だっている。
負け惜しみなのかもしれないけど、僕も「斉藤よりウケなかった」って考えるのはあんまりしないようにしてます。
お笑い芸人って競技は同じかもしれないけど、そのなかでの種目が違う。
悔しさを完全に失ったら終わりですけど、そもそも違う種目で戦ってんだって感覚も大事だと思うんですね。
サノ
注目浴びてる競技に嫉妬する前に、まず自分の種目で結果を出せと。
「誰もフタを開けてくれないなら、自分で開くしかない」
太田さん
でも、ただ「続ける」だけじゃ足りないんですよ。
太田さん
よく、「努力は絶対誰かが見てくれてる」みたいなこと言うじゃないですか。
僕もあれ昔はめっちゃ信じてたんですけど、最近ちょっと思うことがあって。
サノ
なんでしょう?
太田さん
たしかに僕も、近しい人に見てもらえてる感覚はあったんですよ。
たとえばうちの奥さんも、「いますぐ日の目を見なくても、ネタを書いてきた積み重ねがあれば、万が一表に出る仕事がなくなっても、書く仕事があるから大丈夫」って言ってくれたりするんですね。
サノ
くっ…眩しすぎる。
太田さん
「キングオブコントのネタだってお前が書いてんだから」って言ってくれる先輩方もいたし、そういう言葉に励ましてもらうことはめっちゃあったんです。
だから僕も、もっと美談になる予定だったんですよ。
「ジャンポケって面白いけど、じつはあのネタ全部太田が書いてんですよ」って誰が言ってくれて、陰の努力が報われる日が来ると思ってた。
でも、わざわざ表で「じつは太田ってこんなにすごいんです!」ってアピールまでしてくれる人は、いつまで待っても現れないんです
太田さん
やっぱり、人ってそんなに他人に興味がないんですよ。
だから俺は、自分から言うようにしました。
「ジャンポケのネタは、全部俺が書いてます」って。
そうしたら、それまで「ま、まあお前はネタ書いて頑張ってるもんな…」みたいなイジりにくそうにしてた先輩たちが、「自分で書いてる書いてる言うなよ!」ってイジってくれるようになって。
サノ
スポットが当たらないことを自分からぶっちゃけたことで、スポットが当たるようになったと。
でも、頑張ってるアピールって、ちょっと…
太田さん
ダサい?(笑)
そりゃ本当は、誰かがフタを開けたら「お前すげえ頑張ってんじゃん!」ってなるのが美談だと思いますよ。
でも、誰もフタ開けてくれないなら、自分で開くしかないよなと僕は思います。
太田さん
努力って、「続ける」だけでも、「見てもらってる」だけでも不十分なんです。
自分が何をしてるのかは、結局最後は自分がアピールしないといけない。
ダサいと思われることもあるだろうけど、何も言わないでいるよりは、仕事につながることも増えるはずなので。
サノ
「フタを開けてもらえないなら、自分で開くしかない」。
この言葉、知ってるか知らないかでちょっと人生変わる気がする…。
「あいつら二人の胸ぐらをつかんで、『どうだ!!!』と言うのがモチベーションだった」
太田さん
でも結局…僕がずっと頑張ってやってるのは、あの二人に認められたくてやってるのかもしれないなって、ちょっと思いますね。
太田さん
たしかに僕はネタを書いてますけど、それも「テレビで絶対に結果を出す斉藤」と、「空振りもするけどホームランが打てるおたけ」という二人のモンスターと対等でいつづけるために書いてるところがあって。
もともと僕、ネタなんて全然書けなかったんですよ。
サノ
そうなんですか?
太田さん
そもそも僕がネタを書き始めたのは、3人のなかで考えるのが得意だったみたいな話じゃなくて。
斉藤が売れて忙しくなったときに、「準備する時間がないから単独ライブはやめにしよう」って話が出て、僕はそれが嫌で、「じゃあ今回から全部俺がネタ書くから、単独だけはつづけよう」って言って、ちょっとずつ武器にしていったんです。
太田さん
キングオブコントで優勝することを生き甲斐にしてた時期も、優勝したステージでバーンって紙吹雪が舞ってるなか、あいつら二人の胸ぐらをつかんで「どうだ!!!」って言うのがずっと俺のモチベーションだったんですよ。
「お前の書くものってすごいよな」「お前のおかげで優勝できたわ」って、他の誰よりもあの二人に言わせるためにやってました。
今はそこまで強く思ってないですけど(笑)、でもどっかで、認めさせたいっていう気持ちはあるかもしれないですね。
サノ
今日はありがとうございました。
想像してた内容とは全然違ったんですけど、背中を押される「縁の下の力持ち」がたくさんいると思います…!
太田さん
もちろん、「縁の下の力持ち」であることをポジティブに捉えてる人はいいと思うんですよ。
でも、「あいつばっかチヤホヤされやがって」ってグチグチ言ってるくらいなら、「縁の下ぶち抜いて舞台に上がるか」「縁の下にスポットライトを当てさせるか」、どっちか選ぶしかないよなってことです。
まだ自信持って「諦めなければ絶対スポット当たるから大丈夫だよ」って言い切れないのが恥ずかしいんですけど…僕がそれを体現して第一人者になって、いつか「縁の下の自己啓発本」を出したいと思います!
たった1時間の取材でも、斉藤さん、おたけさんへのリスペクトが言葉の節々ににじんでいました。かっこよかった!
取材中とにかく感じたのが、斉藤さん、おたけさんに対するリスペクト。
テレビで「俺がネタ全部書いてるのに、全然注目されないんすよ!」と言っている太田さんを観て、「俺だってホントはすごいのに…!」というイライラがあるのかなと思っていたのですが、めちゃくちゃ現実主義の努力家でした。
腐らず負けを認めて、諦めずチャンスをうかがって虎視眈々と準備をする。なんというか…
かっこよかった~~!
〈取材・文=サノトモキ(@mlby_sns)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
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