ビジネスパーソンインタビュー

ニッチで成功を目指すのは、事業家として失格。孫正義が次世代に向けて語った「市場感覚」

『孫正義 リーダーのための意思決定の極意』より

ニッチで成功を目指すのは、事業家として失格。孫正義が次世代に向けて語った「市場感覚」

新R25編集部

2020/04/23

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新型コロナウイルスの感染拡大にともなって、多くの企業がリモートワークに切り替わりました。

若手ビジネスパーソンのなかには「この期間に何かしたほうがいいのだろうか」という不安になっている人もいるでしょう。

そんな不安を払拭するべく、新R25では特集「先駆者のシゴトの極意」をお届け。

最前線で活躍する先駆者たちの著書より、どの時代でも通用する、若手ビジネスパーソンが大切にすべき仕事の心構えをご紹介します!

今回ご紹介するのは、『孫正義 リーダーのための意思決定の極意』。

ソフトバンクグループの創業者である孫正義さんが、後継者を育成するための学校「ソフトバンクアカデミア」でおこなった特別講義をまとめた一冊です。

真のリーダーになるための心構え、在り方とは一体何なのか?

孫さんの哲学を凝縮した同書から、リーダーの本質が分かるメッセージをお届けします!

すき間市場で成功を目指すのは、事業家として失格

僕がまだ子どもの頃、造船業の世界に有名な経営者がいました。

斜陽だった造船業界で、徹底的なコストダウンの手法でいくつもの会社を再建して、再建王と呼ばれた方です。

彼をモデルにした小説がいくつもありますし、ドラマにもなった。

その方を僕の親父が盛んに褒めていた。難しい再建を徹底的に工夫してやり遂げた、だから偉い、と。

僕はまだ中学生だったと思いますが、親父に「お父さんが尊敬しているそのおじさんは、俺は尊敬できない」と、はっきり言いました。

その人は経営者として失格だと思う、と。その考えはいまも変わっていません。

もし僕がその立場にいたら、造船業で培った製造する力マネージする力営業力、そういう基礎力を使って造船以外をやる

あるいは日本でやらずに、そのノウハウを持っていって中国やロシア、インドの賃金でやる。それならまだ話はわかる。

いち早く方向性を読んで、流れを読んで、それなのに逆流する、それはもう事業家として、経営者として失格。

時代の流れの先を読んで、半歩先、一歩先、三歩先に仕掛けて待つ。これならいい。

川で泳いだことがありますか? 流れに逆らって泳ぐとどうなるか。

流れに乗るとどれだけ速く泳げるか、どれだけ楽か。

答えはシンプルです。物事を難しく考えちゃいけない。

だから、たとえばデジタル情報産業の中でどのOSを選ぶか、これはものすごく重要なんです。

情報産業を選んだから流れには乗っている、というだけではダメなんです。

たとえばかつて、あるメーカーが自社製品のOSにCP/Mを選択した。

CP/M
…8ビットPCにおいてもっとも普及したOS。

16ビット移行期にCP/M3.0を選ぶメーカーと、CP/Mをモデルに開発された
MS-DOS
を選ぶメーカーに分かれたが、前者はほとんど普及しなかった。

僕は当時のメーカー担当役員にはっきりと言ったんです。

どうしてMS-DOSを選ばないのか、と。

一時的に、ある部分が半年分くらい優れているといったところで、重箱の隅で勝ってもまったく意味がない。

大きな流れを無視して、一時的に優れているに過ぎない枝葉を挙げて、こっちのほうが優れているのだと言いたがる、そんなへそ曲がりな人が必ずいます。

へそ曲がりはたいてい事業家には向いていない

王道とはオーソドックスに、一番大きな流れのところでチャンピオンになることです。

ニッチで成功を目指すのは、事業家として失格

小さくても、いずれメインストリームになれる市場を狙え

コンサルタントの人たちはよく「ニッチ戦略を採れ」と言いますね。

ベンチャーの会社が成功するためにはニッチを選ぶべきなんだ、と。

ソフトバンクについても、ニッチの産業を選んだからうまくいったんだ、ラッキーだったと言う人がよくいました。

そういう人は間違っている。

俺はニッチの産業を選んだことは一度もない。すき間だから、そこでやればチャンスがあると思ったことは一瞬たりともない。

いまはすき間のように小さくても、5年後、10年後、30年後にその産業、そのセグメントが主流になる。そこを常に選んできた。

のちに一番大きな本流になる傍流。一番大きなマスマーケットになる市場。

そこを早い段階で、まだ小さいうちに選んだということです。

10年経っても30年経ってもすき間でしかないところを選んではいけない。一時的にすき間で成功しても、それは一時的な成功でしかない。

そういう浮き草を追うような者は事業家ではない。

ただの流行りの追っかけ屋、早とちり屋でしかない。

あるいは、将来本流になるところで戦う自信がなくて、すき間を選んだ。

それは事業家とはいえない。将来の大きな成功など望めない。

どのOSを選ぶか、あるいは通信事業ならば、どの通信方式を選ぶか。

一時的にそのマーケットが早く拡大するからといって、絶対にメインストリームになれないような規格を選んではいけない。

瞬間的にはマーケットシェアを取ってブランドイメージが上がったとしても、それは悲しいばかりの失敗、永遠にニッチなんですよ。

そういう戦略上の失敗をしてはいけない。

沈みゆくもの、枝葉になってしまうものを選んではいけない。

のちにメインストリームになるものを選ばなければいけない。

安く買える、組みやすい、だからその相手と組んだというのでは、自社をニッチの枝葉に追いやる危険性がある。

いまは小さくても後々にメインになる、あるいは自分がひっくり返して断トツにできる、メインストリームになれるという自信があるときはいいよ。

負け癖がついていたボーダフォン・ジャパンが、このままでは沈みゆくという状況でも、ひっくり返してナンバーワンになる、最後は絶対一番になるという自信があって、腹をくくって買収した。

でも、安いから買う、組みやすいから組む。それではいかんということです。

孫さん流・ビジネス哲学が満載!リーダーの在り方を見つめ直せる一冊

孫正義 リーダーのための意思決定の極意』は、第一部・第二部構成となっています。

第一部では提示される二つの選択肢から、孫さんがどのように日々選択をしているのか、リーダーとしての意思決定のプロセスが学べる内容です。

第二部では、意思決定のプロセスにはどのような背景があるのか、孫さん流の哲学である「孫の二乗の兵法」が記載されています。

同書を読んで、リーダーとは一体何か、ビジネスマンとしての在り方を見つめ直しましょう!

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