「この仕事続けてていいのかな」と不安を感じる人へ…
「コンプレックスや不安を感じるなんて、傲慢っすよ」R-指定が語る“不安との付き合い方”
新R25編集部
武道館でのワンマンライブ公演を予定するほど、人気となったラッパー・R-指定さん。
ラップバトルの全国大会「UMB」では史上初の3連覇を成し遂げ、TV番組『フリースタイルダンジョン』では、歴戦のチャレンジャーたちを撃破。数々の修羅場を乗り越えてきました。
大きな重圧のなかで戦い、結果を残してきた彼に、「不安に打ち勝つにはどうしたらいいのか?」と話を伺おうとしたものの…
R-指定さんが口にしたのは「方法とかは特にないっすね。むしろ、ずっと不安とセットやから『不安に打ち勝つ』と考えたことない」という答え。
不安と共存しながらもステージに立ち続けられるのはなぜなのか。彼自身の「不安との向き合い方」について聞きました。
〈聞き手=いぬいはやと〉
【R-指定(あーるしてい)】1991年生まれ、大阪府堺市出身のラッパー。中学時代にラップと出会い、高校2年生でバトルやライブ活動を開始する。ラップバトルの全国大会「UMB GRAND CHAMPIONSHIP(通称:UMB)」で全国3連覇を成し遂げ、TV番組『フリースタイルダンジョン』に初代モンスター・2代目ラスボスとして出演し、フリースタイルバトルブームを牽引。現在はDJ松永とのHIPHOPユニット「Creepy Nuts」のMCとして活動中
R-指定が最近気付いたこと。「不安を感じるって、傲慢じゃないですか?」
いぬい
R-指定さんってバトルもめちゃくちゃ強いし、ライブアーティストとしては武道館公演を発表したじゃないですか。そうして勝ち上がっていくR-指定さんに、「不安への打ち勝ち方」を伺いたくて。
R-指定さん
いやいや、俺は不安に勝てたこと、ないっすね。
早速この不安げな表情
いぬい
あれだけバトルで勝ちまくっても不安には勝てない…?
じゃあ「不安に打ち勝つ!」とまでいかなくても、「不安との向き合い方」みたいなのはないですか?
R-指定さん
「不安と向き合う」って、そもそも根がポジティブな人の発想じゃないですか?
自分は常に不安なんで、そうきかれても何かあるかなあ…
Rさん、こんなにネガティブなんや…!
いぬい
(やばい、何も聞けずにインタビューが終わってしまう…)
R-指定さん
あっ、でも最近わかったことがひとつあって。
いぬい
おお! それはなんですか?
R-指定さん
不安を感じることって、めちゃくちゃ傲慢なことやなって気が付いたんです。
いぬい
不安が、傲慢?? どういうことですか?
R-指定さん
「盛り上がらんかったらどうしよう」って考える人って、つまり心のどこかに「俺が出てったら盛り上がって当たり前」って気持ちがあるってことでしょ。
それって、めっちゃ偉そうじゃないですか?(笑)
いぬい
なるほど! 不安な人ほど、実は隠れた自信家?
R-指定さん
それに気付くまで俺、自分のことを“謙虚な人間や”とまで思ってたんですよ。
だからビックリしましたね。「お前みたいな人間が『失敗したらどうしよう』なんて…、失敗しないとでも思ってたんか?」って。
いぬい
たしかに傲慢に聞こえる…。「当然、自分はできる」って思ってるからこそ、「できなかったらどうしよう」って不安があるんですね。
R-指定さん
そう。だから不安との向き合い方の第一歩としては、「自分を高く見積もってることを認める、偉そうな自分を認める」ってことからじゃないですか。
「アイツになりたい」というコンプレックス感情も疑ったほうがいい
いぬい
「不安=傲慢」という考え方には、どうやって気付いたんですか?
R-指定さん
あるとき元カノから、「あんた、王様になってるで」って言われて。それがショックで、言葉の意味をめっちゃ考えましたね。そしたらいろいろと気付くことがあって。
いぬい
(韻踏合組合・HIDADDYさんとのバトルでイジられてた「彼女」のことかな…?)
ファンにプライベートを知られまくるのも、MCバトル経験者の悲しい宿命
R-指定さん
昔の自分なら、「俺が王様」みたいな感覚はありえなかったんですよ。勉強もスポーツも苦手だったから、同世代で得意そうにこなしてるヤツらを見て「俺は何もできない」ってコンプレックスを持ち続けてた。
自分の至らなさを歌った「使えない奴ら」って曲まで作ったりして。
R-指定さん
これも共感してほしくて書いた、とかじゃなくて基本的に全部自分の話なんですよね。自分の話をしたら、たまたまその卑屈さに共感してくれる人がいたみたいな。
いぬい
たしかに、めっちゃ卑屈ですね。
R-指定さん
でも、元カノにそう言われてからは、“コンプレックス”を歌にするのすらもめちゃくちゃ傲慢な話やなと気付いたんです。
ラッパーって普通は「俺はこんなに勝ち続けてる。だから俺を認めろ」ってボースティングする(自分を大きく見せる)んですけど。
俺は「何もできてない」ってさらしながら、「でも俺を認めろ」って歌ってたわけなんで(笑)。
「ダメな自分を肯定されて当然みたいな。まじで偉そうっすよね(笑)」
いぬい
めちゃくちゃ傲慢だ!(笑)
でも、ネガティブなときほど「自分を認めてほしい」って思う感情はすごく共感できます。
R-指定さん
たぶん、それって誰にでもある感情なんですよね。「俺なんか脇役ですから」って言ってる人でも、「脇役界の中では王様」という気持ちがどこかにあるはず。
いぬい
人気ラッパーになった今では、R-指定さんの心情は変わりましたか? 今でも、まわりに比べてコンプレックスを感じることはある?
R-指定さん
成功してるようなヤツを見て、うらやましいと思うことはありますよ。
ただ、「いや待てよ。もしなれるとしても、ホンマにアイツになりたいんか?」って考えられるようになりましたね。
いぬい
自分のコンプレックスに疑いを持つということですか?
R-指定さん
はい。結局そのうらやましさも、他人の持つ環境とか持ち物に憧れたり嫉妬したりしてるだけやったんやなって。
別の人間になりたいかって言うと、実はそうでもなかった。結局、自分のことが一番好きって気付けたんです。
この変化は、これから出す曲にも表れていくんじゃないかなと思いますね。
自分を赤ちゃんだと思って、「いい意味で勘違い」したらいい
いぬい
そもそも人が卑屈になっちゃうのって、どうしてなんでしょうね。
R-指定さん
それも最近よく考えるんですけど…、赤ちゃんのままでいられなくなったからですよね。
赤ちゃん…
R-指定さん
社会とか人と接する前の赤ちゃんのころって、間違いなくのびのびしてたよなと思うんです。
自分より足が速いとか、絵がうまいとか頭がいいって人と出会って比べたことで、自分が伸ばしてた羽をどんどん削られていった。
いぬい
人と比べて、自分の劣っているところに気付いてしまう。
R-指定さん
そう。人と比べる前はいい意味で勘違いしたままやった。
全部がポジティブ思考というか、どんな可能性も残ってたと思うんですよね。たとえば勘違いしたままスポーツを続けてたら、もしかしたらモノすごい変化球の投げ方とか発明できてたかもしれない(笑)。
だから、シカトするとこはシカトしてもよかったのかも。
R-指定さん
そもそも、マイク持って人前に立つ時点でかなり“勘違いしてる”ようなもんですからね。そんなヤツが謙虚な人間なわけがない。
それにも気づけたから、これからはもう一回「赤ちゃん」に戻ろうと思って。
いぬい
赤ちゃんに戻る?
R-指定さん
まだ可能性が閉ざされてなかったころの気持ちに戻って、「俺はなんでもできる!」って勘違いして。いろいろ挑戦しようと思ってるんですよ。
バラエティに出させてもらったりとか、ラジオ(※)をやらせてもらってるのもそういう挑戦のつもりで。
※『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO) 』(ニッポン放送)
生まれたときに戻って、なんにでも挑戦する…。Rさんのイメージをくつがえすポジティブ思考にたどりついている
「俺らみたいなヤツには、調子のる暇ないくらい“下積み”が続いたほうがいい」
いぬい
ちょっと脱線するんですが、僕はR-指定さんの言葉ですごく印象に残ってるバース(歌詞)があって。
R-指定さん
なんですか?
いぬい
UMBの3連覇が決まった直後、2014年大会のウイニングラップで「歩道橋でバカみたいにラップやり続けたが間違いじゃなかった」って言ってて。
「あー!」
R-指定さん
言いましたね!
いぬい
R-指定さんがバトルで有名になる前、ずっと大阪の歩道橋で仲間とラップしてたじゃないですか。そういう時間がようやく肯定されたんだなって想像すると、グッときてしまって…
自分も「好きなことを続けていたら報われるかもしれない」と、背中を押してもらえた気持ちでした。
R-指定さん
あれは俺も「感動的なストーリーやな」と思って吐いたバースでした。
でも…、あれだけ大見得切ったあと、ライブをやってみたらお客さんが全然入らなくて。ガラガラやったんですよ。
いぬい
え、そうなんですか!?
R-指定さん
本当に映画みたいにきれいに切り取るなら、「UMB」を3連覇して終わりとか、でかいライブハウスでのワンマンライブを埋めて終わり、でいいと思うんですよね。
でも実際はそうじゃなくて、人生はそこからが長い。
「3連覇しても、もう1回下積みから始まるんやな…!」と。
いぬい
それってしんどくなかったですか? 「俺、ラップで食っていけんのかな…」みたいな不安とか。
R-指定さん
いや、「別に金にならんくてもええか」と思って始めたから、ラップが生業になってる状況がそもそも奇跡みたいなもんなんですよ。先輩たちも、ラップだけで食えてる人なんてほとんどいなかったし。
実際、俺は人生下積みばっかりで。ラップをはじめてからこの13~14年で4回は下積み時代を経験してます。
いぬい
下積みを4回!?
R-指定さん
高校でラップ始めたとき、はじめてクルー(グループ)を組んだとき、優勝していざ活躍するぞってなったとき、「梅田サイファー」(※)のクルーと本格的に活動しはじめた最近。
いいタイミングで「これは1からスタートやな」と思うような経験ができてる。
俺らみたいな“ネガティブとか言って本当は傲慢なヤツ”には、調子のる暇もないぐらいしんどいほうがちょうどいいんじゃないですかね?(笑)。
※R-指定も活動した路上ラップ集団。近年東京公演をするなど精力的に活動中
いぬい
なんかR-指定さん、卑屈で不安で…って言ってるわりに、ラップに関しては明るいですよね。
R-指定さん
それはもう、ラップが好きやからですね。
もし「モテたいから」とか「自分が認められたいから」って理由でやってたら精神的に続かなかったでしょうね。「こんなに頑張ってるのになんで…」って思ってたかも。
いぬい
映画じゃないからストーリーはこれからも続いていくとのことですが…
長い長い「これから先」で、やりたいことはありますか?
R-指定さん
正直に話すと、何も目標がないんですよね。
レコード会社のえらい人に「それで? これからどうなっていきたいの?」とか聞かれても何も答えられないんですよ。
いぬい
たしかに、「目標は?」とか聞かれても、大きな目標を持ててないR25世代は多そうです。
R-指定さん
それでもいいと思いますけどね。俺も結局「ラップを続けたい」としか考えてないだけやから。
でも、ほんまに場当たり的に生きてきた人間ですけど、ラップを続けているうちに自分の傲慢さに気付いたし、だからこそ本当の意味で「自分が一番」と思えるようになった。
20代後半から30代にさしかかって人生のこれからを考えたい…って人に俺から何か言うなんてそれこそ傲慢やと思うんですけど。
俺の場合は「ラップが好き」っていうブレないものが見つかったから、苦手なことを認められたんかなと思いますね。
「常に不安と一緒にいる」と語りながらも、ラップを続けることに関しては一抹の迷いも見せなかったR-指定さん。
好きだから続いてるだけ…と謙遜しながらも、その道のりには「不安でいることの傲慢さに気付く」「他人と比べることをやめ、自分の可能性を広げてみる」など、自分のことを見つめる姿勢がありました。
R-指定さんがラップと出会い好きになったように、「これはやり続けよう」と腹をくくれるものを見つけ、自分を認められるようになれば、曖昧につきまとう不安の正体がわかるのかもしれません。
〈取材・文=いぬいはやと(@inuiiii_)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=池田博美〉
Creepy Nuts 11月12日「One Man Tour 2020-2021(仮)」@日本武道館
Creepy Nuts 最新配信曲「オトナ」
日本一のラッパー・R-指定と、世界一のターンテーブリスト・DJ松永による1MC1DJのHIP HOPユニットCreepy Nuts。
音楽活動はもちろんのこと、バラエティー番組、ラジオなど活動の幅を爆発的に広げている二人が手掛けた注目の最新楽曲が「オトナ」。「四苦八苦」をテーマに、緻密に構築された韻を絡めたリリックと、中毒性の高いトラックが絶妙に絡み合い、Creepy Nutsらしさあふれる楽曲に仕上がっている。
R-指定さんが出演する『フリースタイルダンジョン』『ハイスクールダンジョン』もチェック!
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