ビジネスパーソンインタビュー
「秋元先生に“面倒くさい女になれ”って言われたんです」
「目標やロールモデルは決めなくていい」小嶋陽菜×SHE代表が語る“女性のキャリアの切り拓き方”
新R25編集部
女性の社会進出が推進される一方、ライフイベントなどを考えると、「出産後に今の仕事に戻れるかわからない」「スキルを身につけないと不安」など、キャリアについて悩みを抱えている人は多いのではないでしょうか?
そんななか、アイドル卒業後に新しいキャリアを切り拓いているのが、「こじはる」の愛称でおなじみの小嶋陽菜さん。
AKB48卒業から2年後、アパレルブランド「Her lip to」を立ち上げ、企画、マネジメントからマーケティング戦略まで自ら手がけ、まさに自らキャリアの可能性を広げてきた実践者です。
今回は、「女性のためのキャリアスクール」であるSHElikesとのコラボ企画として、SHE株式会社CEO・福田恵里さんと小嶋さんに「女性のキャリアの切り拓き方」をテーマにお話しいただきます。
「意識高い系になったの?」と言われたけど…自分の軸は変わっていない
福田さん
小嶋さんってHer lip toの企画やPR、会社の経営管理までご自身でやられていますよね。
タレントさんとしては、“ブランドコラボ”や“プロデュース”という関わり方もあったと思うんですが、どうして自分で0から立ち上げたんですか?
小嶋さん
自分のアセット(資産)になるかたちでやりたいと思ったんです。
これまでも、洋服のプロデュースはさせてもらったことがあるんですけど、ブランドさんがつくってくれたサンプルにアドバイスして、「完売しました」と連絡をもらって、「あ、そうなんだ…」みたいな…
小嶋さん
それも楽しかったんですけど、根本から考えているわけではないので、自分の資産にはなっていない感覚だったんです。
福田さん
なるほど…
それって会社員にも言えますね。私は社会人3年目で独立してSHEを立ち上げたんですが、会社の肩書きがなくなったとき「自分は市場で価値があるのか」…とても不安でした。
小嶋さん
そうですよね。アイドルも、卒業したあとってキャリアの選択肢が狭いんです。
だからこそ私は、「自分自身の価値」を試したり、活かしたりできる道を探したいと思ったんですよ。
福田さん
すごいなあ…
最初から「こういう事業をやろう」というビジョンがあったんですか?
小嶋さん
最初は「ファンの方とコミュニケーションが取れる場」としてクローズドなコミュニティを立ち上げようとしていたんです。
そのときは「意識高い系になったの?」って言われましたけど…
小嶋さん
でも、「ファンの方とのつながり」っていう自分の資産を活かそうとしただけなんですよね。これまでの延長線上で挑戦している感覚。
そのなかで、自分の好きなお洋服について発信しようとHer lip toをつくったのが、ブランド立ち上げのはじまりでした。
だから、Her lip toもアイドル時代も「ファンの方を喜ばせたい」という目的は変わらないんです。
「ビジネスに関する知識は、Twitterが教えてくれました」
小嶋さん
今はマネジメントやブランディングに携わりながら、リピート率や消化率について考えたり、アパレルはこんなに利益率が低いのかと悩んだり…
目的は同じだけど、やっていることはアイドル時代と全然違って、面白いです。
福田さん
ビジネスに関する知識はどうやって勉強されたんですか?
小嶋さん
だいたいTwitterから学びました。
いろんな経営者の方をフォローしていると、タイムラインを見るだけで情報が入ってくる。考え方を教えてもらうことも多いし。Twitterさえあれば、なんかとかなるなって(笑)。
福田さん
たしかに、私もTwitterから学ぶことは多いかも…(笑)。みなさん注目しているニュースをつぶやいているので、“これを押さえておくべきなんだな”という感覚がわかるようになってきますよね。
小嶋さんはどんなアカウントをチェックしてるんですか?
小嶋さん
気持ちの面で助けられることが多いのは…サイバーエージェント社長の藤田晋さん。
福田さん
ああ、藤田さん!
小嶋さん
…のbotです。
名言botでした。本人もフォローしてあげてください
やりたいことは決めなくてもいい。だからこそ、何者にでもなれる
福田さん
小嶋さんは目標を決めてステップを歩んでいく“山登り型”というより、“川下り型”のキャリアですよね。
目の前にある仕事に熱狂して取り込むうちに、自分にできることが増えていって、それを活用しながらまた次の道を開いていくイメージです。
小嶋さん
たしかにそうかも…。私は、目標やロールモデルは決めないほうがいいと思ってるんです。
だからこそ何者にでもなれるし、そのほうが自分も楽しいんですよね。
福田さん
SHEも、「SHE is NO ONE 私たちを定義するものなんて何もないからこそ、何ものにでもなれる」というコーポレートメッセージを掲げていて、そんな生き方をサポートするためにSHElikes(シーライクス)というキャリアスクールを運営しているんです。
福田さん
月額1万4800円で、ウェブデザインやマーケティング、ライティングや動画編集などのPC1台で働けるようなスキルを中心に、およそ20種類のクリエイティブレッスンが受け放題になります。
小嶋さん
スキルを学ぶスクールと聞くと、自分の専門分野を決めて受けに行くイメージだったんですが、ひとつにしぼらずいろいろ学べるんですね!
福田さん
SHElikesに来る人も、学びたいものを明確に決めているより、「海外で働きたい」「出産後も在宅で働きたい」という人生のありたい姿(being)が先行して、それを達成するための手段を模索したいという方が多いんです。
小嶋さん
なるほど。
Her lip toもアパレルブランドを作りたかったわけでなく、“ファンの方とつながれる場”をつくりたかったからはじめたことなんです。これも、ありたい姿になるための手段だったのかも。
福田さん
自分のやりたいことや好きなことって“そもそもわからない”という方が大半だと思うんですよ。
講座以外にも、挫折しないための仕組みとして、月に1回、目標設定やそれに向けたアクションを仲間と話し合うライフコーチングや、実際の案件を経験してもらう機会も提供しながら、“人生のありたい姿”をよりシャープにしていくサポートをしています。
小嶋さん
以前、峯岸みなみちゃんが「何かやりたいけど、どうすればいいのかわからない」と言っていて…同じように悩んでいる女性が結構いるんじゃないかなと思ってたんです。
SHElikes、みぃちゃんに紹介したいな(笑)。
福田さん
ぜひ! お願いします(笑)。
アイドルだからって特別じゃない。みんな悩みがあるんですね
「ある言葉」で、挑戦することのハードルが下がっていった
小嶋さん
私も、もともとはやりたいことがあっても言えなくて、諦めるタイプの性格だったんですよ。
福田さん
意外です。発信や挑戦ができるようになったのは、なにかきっかけがあったんですか?
小嶋さん
25歳のころ、秋元先生に言われたんです。
「面倒くさい女になりなさい」って。
面倒くさい…?
小嶋さん
「意見を聞いてもらえるのは、自分の意見を主張する『面倒な人』。自分を主張しないと、どんどん後回しにされる人になっちゃうよ」って意味だったんです。
この言葉が、本当に響いたんですよ。
福田さん
すごくいい言葉ですね。
小嶋さん
たしかに当時の私は、誰にも相談せずに自分でどうにかするのが当たり前だと思ってました。
それからは、自分のやりたいことをまわりに言うようになりました。言ったからには結果を出したいので行動も変わるし、自分のビジョンも明確になっていく。
それを繰り返していたら、挑戦することへのハードルが下がっていったんですよね。
小嶋さん
Her lip toも、大きく資金調達してはじめるのではなく、ECからやって、失敗しても何かに活かせたらいいなくらいの気持ちでスタートしたんです。
初動は小さくていいから、自分の気持ちを後回しにせず、まずは行動してみるって大事ですよね。
福田さん
SHElikesでは、「“私なんか”とは言わない」「自分の夢を否定しない」ということを約束事にしています。
「未経験でデザインを学ぶなんて笑われる」「30代で新しいことを始めるには遅い」とか、無意識的なキャリアのバイアスにとらわれている方ってすごく多いと思うんです。
小嶋さん
「私なんか…」って気持ちになっちゃうのは、めっちゃわかるなあ。
福田さん
発信すると、自分自身をいい意味でマインドコントロールができるようになりますよね。
外では恥ずかしくて言えない人も、SHElikesなら自分のやりたいことを胸を張って発信できるという場であれたらいいなと思っています。
スキルを学ぶ場ではなく、キャリアに迷える女性の拠り所でありたい
小嶋さん
あと、やりたいことを実現するには環境を変えてしまうのがいいと思うんです。
小嶋さん
AKB48にいたときから、ファッションの仕事がしたいと思ったらファッション関係の人と会うようにしたり、自分ごとやりたい環境に身を置くようにしてきました。
今だと、同世代の経営者でもある鶴岡さん(BASE株式会社 代表取締役社長)にいろいろ相談してますね。
福田さん
自分が本当に変わるところまで、やりたいことに対するモチベーションを維持できるのって、やっぱりまわりの人の存在や、コミュニティの力も大きいと思うんですよね。
SHElikesは、メンバー同士の勉強会や交流会も盛んに行っていて、かなり熱狂度の高いコミュニティになっています。Twitterで「#シーライクス」と検索すると月に4000件もの投稿がされていて、自分の学んでいることを発信したり、そこから共に頑張る仲間を見つけています。
単にスキルを習得して終わりではなく、様々な価値観に触れることで、その人の人生や固定概念も変革させる場所でありたいと私達は思ってるんです。
福田さん
コミュニティ内でいろんな女性と接するとわかるんですが、キャリアの歩み方って人それぞれオリジナルなものなんです。
これまでも、キャビンアテンダントだった方がウェブデザイナーにキャリアチェンジされたり、2児の母でウェブ未経験の方が某有名メディアのSNSマーケターに転職したり…
いろんなキャリアの女性と話すことがモチベーションにつながるし、自分の目指す姿を決める手助けになるんですよね。
小嶋さん
だからスキルを習得するスクールなのに、コミュニティまであるんですね。
福田さん
今日、小嶋さんが「ロールモデルを決めない」とおっしゃっていたことが印象的でした。
目標は固定するのではなく、ほかの人のキャリアから取り入れたり、自分ができることを活かしてカスタマイズしたりしながら、理想の人生をプランニングしていくのが令和のキャリアの歩み方だと、改めて思いましたね。
小嶋さん
私もお話ししながら「自分のキャリアはSHElikesの考え方と似てるな〜」と思ってました。
キレイに言語化していただいて、ありがとうございます(笑)。
小嶋さん
SHElikesを知って、スキルを身につけるサービスの固定観念がくつがえされました。
お話ししてて、自分のキャリアについてもっと相談したくなっちゃいましたし…、すべてを預けたくなるような広い心を持った代表のサービスって、すばらしいですね。
福田さん
今の発言は録音して、毎朝聞きます(笑)。
SHElikesが単にスキルを提供する場としてではなく、多くのキャリアに迷える女性たちの拠り所になれたらいいなと思っています。
これまでの人生で経験してきたこと、自分が好きなこと、得意なこと。私たちはみんなそれぞれ違うはずなのに、キャリアについて考え出すと、型にあてはめた“正解”を求めがち。
SHEのウェブサイトには「私たちは一つの人生しか生きられないし、信じたようにしかそれを生きられない。」というメッセージが記載されています。
正解を問うより自分らしいキャリアを見つける大切さを、信じた道を突き進む2人の女性が改めて教えてくれた気がしました。
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〈取材・文=宮内麻希(@haribo1126)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=中澤真央(@_maonakazawa_)〉
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