北野唯我著『これからの生き方。』より

生き方を変えるには「違いに気づく力」が必要。当たり前に疑問を持つ“感性の磨き方”

キャリア
働き方や生き方が大きく変わった2020年。

人と気軽に会えなくなったことで自分の時間が増え、「今のままのキャリアでいいのだろうか」と見つめなおす人が増えました。

作家でワンキャリア取締役の北野唯我さんの新著『これからの生き方。自分はこのままでいいのか?と問い直すときに読む本』では、現代人が陥りやすい、働き方人間関係などの「悩み」を解決するヒントを、漫画とテキストの両方で示しています。

これからの時代に必要な働き方、生き方の本質とは一体何か?

同書より、北野さんが語るヒントを抜粋してお届けします。

孤独になる時間を許す

今、私たちが問われているのは「これからの生き方」です。

過去ではなく、これからどういう生き方を選択するか。

私は常日頃から、人がもし「何者かになりたい」「どこかの領域で一目置かれる人物になりたい」「誰かを真に支えられる人になりたい」そう思うならば、人生のどこかで孤独になる時間を許す必要があると思っています。

他の人と違うこと、自分の信じた道を行くこと、過去ではなくこれからの生き方を決めること、悩みながら決断すること、これを選ぶとき、誰もが孤独になるもの、不安になるものです。

なぜなら、過去と決別する必要があるからです。あるいは、自分の弱さと向き合わなければならないからです。

その孤独になる時間を支えてくれるのは、他人でも友人でもなく、やはり自分。

自分が感じていることを信じられるかどうかだと思っています。

それこそが「生き方」であり、論理では完全には証明することはできないものなのです。

そもそも、他人に説明する必要なんてない。自分が本当に親しいと思える仲間や、家族にだけ、じんわりと伝わればいい。

それが生き方であるのだと、私は思います。

「感性」を磨こう

私は若い頃、生き方にたくさん悩んできました。

なぜ生きているのか。なぜ勉強するのか。なぜ自分はもっと裕福な家庭に生まれなかったのか。なぜもっとカッコよく生まれなかったのか。なぜ自分には才能がないのか。

そんな凡庸でダサいテーマから、「死」についてまで、ありとあらゆるテーマについて悩み、そして苦しんできました。

そう悩むのは、間違いなく、「自分の感性」に理由があったのだと思います。

感性とは何か。それは「違いに気づく力」であると私は思います。

皆が、Aというが本当はA′ではないか」と疑問を持つこと。言い換えれば、当たり前のことに疑問を持つ力が感性だと、ここでは定義します。

私は幼い頃から、一種の病気だと思うほど感性が鋭い子でした。このような感性を持つすべての人は、若い頃、たくさん悩んできたはずです。

この本は、そんな「感性を磨くための本」です。

私はこの本を通じて、「感性はやがてあなたを救う武器になるよ!」と大声で伝えたい。

感性はいずれ自分の武器になるからです。

当たり前に疑問を持つ「感性」の磨き方

ではどうやって、感性を磨くのか。

それは、いろいろな人の考えや、話、体験を通じながら、自分と他者の「差分」に気づいていくことです。
・自分と他人は、何が、どう、違うのか。

・若い頃の自分と今の自分は、何が変わらなくて何が変わったのか?

・今の自分は1年前の自分とは、何が、どう、変わったのか?

・この意見にはなぜ賛成できて、あの意見にはなぜ賛成できないのか?

出典 『これからの生き方。』

主観的に体験したことを、客観的に分析する、この繰り返しです。

この繰り返しこそが、感性を磨くものです。

やりたいことを実現できる人、キャリアで成功できる人というのは、まず自分のことをよく知っています。

自分自身の強い面と弱い面の両方とたくさん向き合ってきた分だけ、自分が一番心地よい状態、一番得意な戦い方を理解しているものなのです。

感性を磨くメリット

感性を磨くことは、熱中するものが見つかる確率を高めることにもつながります。

私たちは普段、繰り返しの中に生きていて、一方通行の時間を生きています。

若い頃は、卒業式や入学式、肉体の変化など、自然に生活していても、「自分が変わるタイミング」を見直す強制的な機会や、ある種の儀式もありました。

しかし、大人になると、その機会は激減していくものです。

その中で、自分で自分の生き方を問うタイミングを、意図的に作る必要が出てきます。

その際に、自分が何に熱中できるのか、大事なものを見つけられるかどうかは、情報量以上に、「自分の感性がつかめるかどうか」が重要になります。

感性とは、自分に必要な情報を見つけるための「アンテナ」のようなものなのです。

自分で生きていくための知恵を持っているか

世の中には、「ブックスマート」と「ストリートスマート」という言葉があります。

前者はその名前の通り、頭がいい、勉強ができる、という意味です。

一方で、ストリートスマートとは、「自分で生きていくための知恵を持っている」という意味です。

座学で学べることは、たしかに大事です。

ですが、人生の後半になればなるほど、キャリアを積めば積むほど、ストリートスマート、つまり自分の人生をよりよく生きるための知恵を持っているか自分の足で立ち、そして自分の頭で考え、生きる術を考えてきたか、それが問われるフェーズに入るものだと私は思います。

反対に、ブックスマートだけを追い求め、わかりやすい成果、わかりやすい結果、わかり
やすい肩書き、そういうものだけを求めてきた人は、30歳を超えたあたりから自分の限界にも気づき始めるものです。

それは他人がどうというより、自分自身が内心では気づいているものだったりします。

当然、これは会社の大小、職種は関係ありません。

大きな会社でも、小さな会社でも、フリーランスでも、自分の生き方を持って、魅力的に働く人もいますが、その逆もいます。

どこにいるか、何をしているか、何歳なのか、国籍などは全く関係ない話です。

関係あるのは、「これからの生き方」を考え続け、「自分がどうありたいか」を持っているかどうか。その一点のみでしょう。

本当に自分がやりたいこと、したいこと、それを探すこと。

新しい何かを学ぼうとすること、それは確かに大変な作業です。途方もない作業です。

もちろん、こういったことを365日いつも考えることは非現実的でしょうが、この本を手に取るということは、少しでも違和感を感じている、まだこの先の人生で何かをしたい、何かを学びたい、変えたい、と思って手に取っているはずです。

そうであれば、今からでも変われるはず、と私は思うのです。

必要なのは、時間効率なんて無視してでもやりたいと思えることを、たった一つでも人生に見つけることです。

柔軟に、いまを生きる

これからの生き方。 自分はこのままでいいのか? 問い直すときに読む本

これからの生き方。 自分はこのままでいいのか? 問い直すときに読む本

北野さんは書籍の「はじめに」で、幼少時代に阪神淡路大震災に遭ったことを回想しつつ、「日常は一瞬でなくなる」と語っています。

現在、人々はこれまでの常識を変えざるを得ない状況にあります。

ひとつのことに固執してはこれから生き残れない時代において、同書は能動的な変化の重要性を訴えているようにも思えます。

ぜひ、あなた自身の視点で「これからの生き方」を考えるきっかけにしてみてください。