田端信太郎著『部下を育ててはいけない』より

「こんなマネージャーは失格」田端信太郎が提示する、3つのダメなマネジメント例

仕事
NTTデータ、リクルート、ライブドア、LINE、ZOZOなど名だたる大手企業を渡り歩いてきた田端信太郎さんの新著『部下を育ててはいけない』。

田端さんは同書のなかで「これからのリーダーは、“部下を育てる”というこれまで正しいと信じられてきた価値観から、真逆に転換しなければならない」と、強く主張しています。

ただ、部下を育てずにパフォーマンスを発揮させるマネジメントとは、一体どのようなものなのでしょうか…?

これからの時代に成果を上げるマネジメントの指南書である同書より、田端さんが考える「一目置かれるリーダーの鉄則」を抜粋してお届けします。

失格マネージャーの特徴① 自分が手を動かす

マネジメントとは管理することではない

英語で一般的に「Manage」というと、「あちらを立てればこちらが立たずの状況を何とかやりくりする」という意味になる。

「管理職」というと、部下の仕事ぶりや仕事の進み方を「管理」して、「監督」するというイメージになりがちだが、「仕事において直面する困難(ボトルネック)を何とかして乗り越える」のが本来のマネジメントなのだ。

そうした中では、「目の前に現れた困難を乗り越えるための動き方を決定する」ことが大切になる。

マネージャーに就任するのは、平社員時代に仕事ができて、評価されてきた人物だ。

 そんな「できる」人から見れば、当然部下の仕事のやり方に不満があるし、「自分がやった方が早いし、うまくいく」などとつい考えてしまいがちだ。

ここで忘れてはならないのが、「マネージャーは人に仕事をしてもらうことが仕事」という鉄則である。

たとえば、喫茶店でトースト、ゆで卵、コーヒーを組み合わせたモーニングセットを提供するケースで、お客をうまくさばくことができなくて売り上げも利益も伸びないという問題があったとしよう。

こうした時、店のマネージャーはどのように対応すべきだろうか?

管理型のマネージャーならウェイターの動き方をストップウォッチ片手にチェックして、「歩くのが遅い。もっと速く歩きなさい」と指導するかもしれないし、自分の腕に覚えのあるマネージャーなら、部下に仕事を振らず、「俺がやる」となるかもしれない。

しかし、こうした状況でマネージャーがすべき仕事はそうではない。

「客がさばけない」 という問題のボトルネックは何なのかを考えるのだ。

たとえばパンを焼くのに時間がかかっているとしたら、「トースターをもう1台購入しよう」という提案をする。

卵をゆでるのに時間がかかっているとすれば、「あらかじめ、ゆでてある卵を仕入れたらどうだ」というアイデアを出す。

従業員は、目の前の仕事に追われていると、どうしても「もっと頑張らなきゃ」と思いがちで、マネージャーも彼らに「もっと頑張れ」と鼓舞しがちである。

 しかし、ここで「頑張れ」としか伝えられない人は単なる「応援団」であって、「マネージャー」ではない

マネージャーがすべきことは目の前にある課題の解決策を考え、部下が仕事をしやすいようにその前提となる環境を変えるための意思決定を行い、 資源を調達し、部下がただがむしゃらにやらなくても効率的に結果を出せる仕組みをつくることなのだ。

失格マネージャーの特徴② 優先順位をはっきりと示さない

リーダーに必要なのは、具体的な仕事の現場における選択肢の中で何が第一で、何が第二なのかという優先順位をはっきりと示すことだ。

永遠に正しい普遍的な正解などない。

当面かつ個別具体的でいいから、何を選ぶべきかを明言すべきだ。

たとえば、営業チームに、

① 新規客開拓の売り上げが上がっていない

② 一度受注できた顧客の顧客満足度が低くリピート受注ができていない

というダメダメな状況があり、マネージャーが部下から「新規と既存のどちらを頑張ればいいんですか? どちらが大事なんですか?」と質問されたとしよう。

そこで、「どちらも大事だから、両方頑張れ」と答えるようではマネージャー失格だ

企業の工場などに行くと「品質第一」「安全第一」といった「第一」だらけの標語が掲げられているが、その企業にとっては「品質」や「安全」と並んで「売り上げ」も 「利益」も「第一」のはずで、こんな風に「すべて均等に第一」にしてしまうと、かえって全部中途半端になりがちだ。

ビジネスの現場では短期の売り上げと長期の利益、社内の負荷と社外の満足、人材育成と業績達成のような、どれも大切だけれども相反する要素が混在している。

だからこそリーダーは「選択肢の中で、今この状況ではどれが大事かをはっきり決める」ことが大切なのである。

失格マネージャーの特徴③ 「ガス抜き」の重要性を理解していない

上司が部下に対して「あなたに関心を持っているよ、あなたのことをわかっているよ」とわかりやすく示すことによって、チームの覇気は高まり、ひいては生産性も高まる。

たとえば、上司が部下の話を聞く時の姿勢について次のように言う人がいる。

「部下の話を聞く時は手を止めて、部下の方へ体を向けて聞け。すぐに話を聞く時間がないのなら、いつなら話を聞けるかをその場で約束しろ」

上司が仕事をしているところに部下が「ちょっとご相談が」とやってくる。

忙しい上司はつい「後にしてくれ」と言ったり、パソコンに向かう手を止めずに話を聞いたりすることになる。

すると部下はこう思うはずだ。

「忙しいのはわかるけど、もうちょっと真剣に話を聞いてほしい」

もちろん、いざ話を聞いてみるとどうでもいい内容だったり、何を言いたいのかわからなかったりすることもある。

それでも、部下としっかりと向き合って話を聞くという 「ポーズをとる」ことによって、部下は「ちゃんと話を聞いてもらった」と満足することになるのだ。 

この通りに実行するかどうかはともかく、「あなたの話をちゃんと聞いているよ」というポーズは常に明確に見せた方がいい。

誤解を恐れず言えば、上司の仕事の7割はポーズだし、言ってしまえば、ポーズをとることの大半は、ガス抜きが目的である。

ガス抜きというのは、たとえば営業部隊を裏で支えるバックオフィスの人たちを集めてのお疲れさま会などがいい例だ。

人間が組織で仕事をしていれば、必ず不平不満という名のガスが噴出することになる。

こうした不平不満を放置したり、無理に抑え込もうとしたりすると、ガスはみるみる充満していき、いつか爆発してしまう。

問題というのは小さいうちに対処すれば何とかなるが、大きくなってからでは手の打ちようがない。

不平不満をゼロにできるかというと、それは無理だ。

ただ、ガスが充満して爆発しないようにこまめに換気をしたり、扇風機を回したりして、「悪い空気」を少しでも薄めていく工夫が必要になる。

そして仕事は、結局は人間同士がやることであり、人間同士が集まって働けば不平や不満といった「ガス」が溜まらないはずがないのである。

そのためにリーダーは部下の話を聞くとか、お疲れさま会をやるといったかたちで、 ポーズを示したり、ガス抜きをしたりすることで、可能な限りいい雰囲気で仕事ができるよう環境を整備することが大切だというのが私の考え方だ。

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部下を育ててはいけない

部下を育ててはいけない

これまでいくつもの企業で、新規事業の立ち上げやマネジメントに携わってきた田端さん。

同書には、実体験を通して身につけた「部下を通して圧倒的な成果を上げる方法」が、驚愕のエピソードとともにまとめられています。

部下とのコミュニケーションをうまく図りながら、常に「最善の選択」を迫られて悩む上司にとって、田端さんの言葉は解決のヒントになるはずです。

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