ビジネスパーソンインタビュー
「20代、自分に選択権なんてなかった」
「自分の国籍の国に住むって、どれだけ恵まれてるか」DEAN FUJIOKAが語る“環境適応力”
新R25編集部
香港、台湾、中国、インドネシアなどアジア各国・地域を股にかけ、日本でも「逆輸入俳優」として役者・アーティストとしてマルチな活躍を見せるDEAN FUJIOKAさん。
2020年、世界がコロナ禍に飲み込まれると、DEANさんは予定していたアジアツアーの中止を決断。すぐさまプランを引き直し、年内に初のストリーミングライブ「Live Streaming 2020 “Plan B”」を実現させています。
今回はどうすればDEANさんのように、「状況の変化に対応する力」を手に入れられるのか。教えてもらいました。
〈聞き手=サノトモキ〉
【DEAN FUJIOKA】俳優、アーティスト。福島県生まれ。2004年に香港でモデルの活動をスタート。映画「八月の物語」(05)の主演に抜擢され、俳優デビュー。2006年に台北へ拠点を移しドラマ・映画・TVCFに出演。2009年には音楽制作の拠点をジャカルタに置き、2011年から日本での活動も開始。2015年以降は東京を拠点に、アジアの縦軸で活動中
DEANさん
おお、すごく無機質な空間…(笑)。
サノ
すみません、ここしか白壁がなく…
背景がないぶん、DEANさんだけを見つめて取材しますね。
DEANさん
ハハハ! 僕だけを見て?(笑)
ものはいいようだ! 頑張る気になった!(笑)
とは言ってみたものの、かっこよすぎて余計に緊張しました
香港から台湾、台湾からインドネシアへ…「環境に適応すること」の連続だった20代
サノ
今日は「状況の変化に対応する力」について教えてほしいなと。
中止を決断したアジアツアー、相当気合いを入れて準備していた大仕事ですよね。なぜ柔軟に切り替えることができたのでしょうか?
DEANさん
僕は20代のころ、「環境に適応する」ってことを嫌というほどやってきてるんですよね。
個人は環境の変化に太刀打ちできない。ゆえに、適応するしかない。
香港、台湾、インドネシア…アジア諸国・地域でキャリアを積んだ僕は、20代でそう叩き込まれてるんですよ。
DEANさんはもともとアジアでキャリアをスタートさせています
DEANさん
僕のキャリアは、9.11の影響でそれまでいたアメリカに住み続けられなくなったところから始まりました。次、どうするか考えながらアジアを旅していた20代前半、香港でモデルとしてスカウトしていただいたんですが…
向こうでの僕は圧倒的に「よそ者」。
「やりたい」と言ったって、就労ビザが取得できなければそもそも滞在することもできない。働き手としての価値を証明できなければ、「そこにいること」すら許されないわけです。
サノ
か、過酷すぎる…!
DEANさん
しかもそんな逆境のなか、母国語でない社会で現地の人々に分け入って居場所を作っていかなくちゃいけない。
「自分はこうしたい、ああしたい」なんて言ってる場合じゃない。「その環境で求められる人」にならなきゃ、自分の居場所をキープできない。
「自分に選択権なんてないんだ」と思い知らされながら、必死に環境に適応しつづけました。
DEANさん
さらにいうと、世界を見ていると、どんな国も民族も消滅する可能性があることを実感するんですよね。
民族の存在、言語が完全に消えてしまったりとか、紛争とか。今どれだけの力を持っていても、そういう例は過去にもたくさんあるわけで。
サノ
そうなんですね…
DEANさん
だから、日本で仕事をするようになってめちゃくちゃやりやすいわけですよ。そもそも住んでもいい。仕事してもいい。選挙権もある、メンバーとして認められてる。なんでもできるわけです。
「自分が国籍を持ってる国がある」ということがどれだけ楽であるか、恵まれているかということをすごく実感してる。
そんな世界で過ごしてきたから、「環境は常に変化する」というのは僕にとっては当たり前の感覚なんですよね。
今回のコロナ禍で比較的柔軟に対応できたのも、「環境に自分を適応させる」という行為自体が僕にとってある種の日常だったからかもしれません。
「環境に適応すること」と「自分のやりたいこと」は両立可能
サノ
お話を聞いていると、環境に適応するためには「自分のやりたいこと」を諦めなきゃいけないようにも聞こえるのですが…
「環境に適応すること」と「自分のやりたいこと」ってトレードオフなんでしょうか?
DEANさん
いや、トレードオフではありません。
むしろ、その2つを両立させる「社会との接点を作る力」を手に入れることこそが、すべての働き手にとって非常に重要だと思います。
どちらかだけでは、幸せに働くことはできないので。
DEANさん
まず、自分がどれだけ「やりたい」と思うことでも、社会に「いらない」と言われれば社会的な居場所は見つからないですよね。
サノ
はい。
DEANさん
生きていくうえでは、社会の一員にならざるを得ない。これは世界共通のルール。
若い人たちには少し酷かもしれないけど、僕らは、ある意味では「社会の歯車」になることを受け入れなくちゃ生きていけないんですよね。
ぐっ…受け入れたくねえ…
DEANさん
かといって、人に求められるまま、まったく情熱を持てない「ただの歯車」状態で仕事をすれば、人はいつか破綻してしまいます。
そこで必要なのが、「社会との接点を作る力」。
社会の「やってもらいたい」という思惑と、自分の「やりたい」という気持ちをミートさせる力です。
サノ
ミートさせる…
いったいどうすればいいんですか?
DEANさん
「求められたこと」に対して、「なぜやるのか」の答えを必ず用意してみてください。
求められた仕事に、自分が納得のいく“動機”を作ることを習慣化するんです。
DEANさん
たとえば僕、仲間から「ファンクラブを立ち上げよう」というアイデアが挙がったとき、正直しっくりこなかったんですよ。
一方通行のコミュニティを作ることに、何の意味があるんだろうと。
でも、家族のような相互扶助の、双方向の関係性を作れたら、やる価値があると思えたんです。
サノ
双方向のファンクラブ…具体的にどんなことをするんですか?
DEANさん
たとえば、たまたま自分の誕生日がファンクラブ立ち上げの日だったので、もし祝っていただけるなら余ってる保存食を寄付していただけませんかと募ったんです。
僕がエンターテインメントをみなさんに届ける。みなさんが僕を応援してくれる。
その行為によって世界で食料を必要としている方々に食料を届けられたら、すごく意義があるなと思って。結果、フードバンクに約1.5トンの食糧を集めることができました。
サノ
へええ!
どんな仕事でも、「求められること」を自分のものにできるまで「なぜやるか」を考えているのか…
DEANさん
もちろん、接点が見つけられなければやらなくていいと思うし、やってみてやっぱりやめるのもいいと思います。
何事も「ベータ版」でいいわけですよ。ダメだったら変えればいい。
でも、まずは「求められたこと」に「主体的な意義」を見つけてみる。これを毎回できているかどうかで、仕事への納得感は大きく変わってくると思います。
PlanBの数が自分のセーフティーネットになる
サノ
DEANさんが状況の変化に対応できる理由、よくわかりました。
まずは「やりたいこと」ばかりじゃなく、「求められること」を受け入れて頑張っていこうと思います…!
DEANさん
人生って、意外なかたちで「過去の自分」に救われるものなんですよ。
コロナになって露出する仕事がなくなっても、僕はすごく忙しく動いていたんですね。企画書書いたり、歌詞を書いたり、絵本を作ったり。
DEANさんは4月、自身初の絵本『ふぁむばむ』を発売。どこまで多彩なんだ…
DEANさん
それも、全部自分が「やりたい」と思ってはじめたことばかりじゃないんです。求められてやってみたことがいっぱいある。
若いころって主体的な「やりたいこと」に盲目的になってしまったりするけど、まだ見てない世界にも自分の「好き」とか「得意」って意外といっぱいあるんです。
自分も、決して俳優になろうと思って香港に行ったわけじゃなかったですしね。
サノ
なるほど。
DEANさん
それこそ、日本以外でお世話になった国や地域で仕事をつづけられてる部分もたくさんありますから。
一つの通貨の価値が暴落したとしても、まだこっちが生きてる。この産業が消えても、こっちが生きてる。そういう救われ方をしてきたんですよね。
何が自分を助けてくれるかわかんないんですよ。だから、「求められたこと」に応えていろんなPlan Bを走らせておくことが大事。
PlanB?
DEANさん
世の中のダイナミックな変化なんて、一個人には予想しきれない。世の中がどう転ぶかわからないからこそ、一つのコミュニティだけに自分の人生を張り続けることって危ういんです。
だから、「やりたいこと=Plan A」だけに全体重乗っけるんじゃなくて、「求められたこと=Plan B」を走らせておくといい。
そうやって走らせた無数のPlan Bの網目が、セーフティネットになっていつか自分の命を救うかもしれないので。
サノ
そうか…そう思うとムダな仕事なんてない気がしてきた。
めっちゃ勉強になりました。ありがとうございました!
DEANさん
こちらこそ楽しかったです! 記事、楽しみにしてますね。
DEAN FUJIOKAさん初の絵本『ふぁむばむ』が絶賛発売中!
DEAN FUJIOKAさん初の絵本『ふぁむばむ』が4月9日に発売!
ふぁむばむ(FamBam)とは、“Family Always Means Backing Any Member”の略称。「いつ、どこにいても、家族のように、お互い支え合える仲間」という意味を込めた、DEANさんのファンクラブの名称でもあります。
絵本の内容は、静かに人間たちを見守る、モンスターたちの物語。ウルトラかいじゅう絵本シリーズなどを手掛けてきた人気イラストレーター・ヒカリンが絵を担当し、書籍の収入の一部は国際NGOセーブ・ザ・チルドレンに寄付されます。
「理解し合い、愛し合うことの大切さを実感するためには、他者との共感、他者への感化が必要不可欠です。この絵本が、双方向に働くイマジネーションの力を育むきっかけに繋がりますように」というDEANさんの願いが込められた珠玉の一冊。
気になった方はぜひチェックしてみてください!
ビジネスパーソンインタビュー
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