ビジネスパーソンインタビュー
森永 康平著『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』より
国民1人の借金=約1000万は本当?早くから知っておくべき「国債」「消費増税」の本質
新R25編集部
「将来のお金についてなんとなく不安を感じているけど、何から手をつけたらいいのかわからない」…そう思う方もいるのではないでしょうか?
知らなきゃマズイのはわかっているけど、インプットを後回しにしてしまいがちな「お金の知識」を、スッキリ理解しておきたいですよね。
そこで今回は、経済アナリストで金融教育の会社(株式会社マネネ)も経営する森永康平さんの新著『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』から、お金の基本や新常識について抜粋してお届けします。
電子マネーの普及など「お金の常識」が変わりつつある現代において、正しい金融リテラシーを身につけておきましょう!
「国の借金」が増えている=資産が増えている人もいる
日本の財政状態は悪く、日本国民1人あたりの借金は1000万円近くあり、それを解消するためには消費増税を含む増税が必要だといわれます。
ただ、なぜ「国の借金」が「国民の借金」になるのでしょうか?
誰かに負債が発生した場合は、その他の誰かは資産を得るはずです。
では、この場合、資産を得た人は誰なのでしょうか?
ここで、ちょっと会計の話をします。
お金の流れを簿記の知識をもとに記帳していく場合、必ず次のルールに従って仕訳をしていきます。
誰も教えてくれないお金と経済のしくみ
たとえば、AさんがBさんから100円を借りてきた場合、借入金という負債が100円増えるので右側(貸方)に100円が記入されますが、一方で口座にお金が振り込まれて預金という資産も100円増えるので、左側(借方)にも100円が記入されます。
「預金100円/借入金100円」
借りた側(Aさん)はこのように仕訳をしますが、これをBさん、つまり貸す側から見れば、貸し出したことで将来返済される貸付金という資産が発生し、一方で預金という資産が減りますから次のように仕訳をすることができます。
「貸付金100円/預金100円」
急に簿記の話をしてどうしたんだ?
と思われるかもしれませんが、このような複式簿記(貸方と借方に分けてお金の取引を記録するやり方)という会計の考え方にもとづけば、誰かに資産が発生したら、どこかで負債が発生しているはずという当然のことに気付くのです。
それでは、「国の借金が」と国の負債の話をするのであれば、その一方で誰かの資産の話も出ないとおかしいと思いませんか?
簿記の話をされてもわからないという方のために、もう少しかみ砕くならば、AさんがBさんから100円でアメを買ったら、Aさんはお財布から100円が減りますが、Bさんはお財布に100円が増えるとなります。
こちらのほうが理解しやすいかもしれませんね。
「日本の国債」を持っているのは誰?
それでは、もう一度考えてみましょう。
「日本の国の借金が1212兆4680億円。総人口が1億2333万人なので、国民1人あたり約983万円の借金を抱えている」というのは計算は合っていますが、表現として正しいのでしょうか?
国の借金は国債の発行残高を指すことが多いのですが、発行できたということは誰かが買ってくれたということです。
つまり、国債を買っている人が誰だかわかれば、これまで湧いてきた疑問を解消することができるかもしれません。
それでは、ここでクイズです。
誰も教えてくれないお金と経済のしくみ2020年9月末時点における国債などの発行残高のうち、日本銀行が保有している比率は何%ぐらいでしょうか?
①約10%
②約25%
③約45%
クイズの答えは③の約45%。
誰も教えてくれないお金と経済のしくみ
日本政府は日本銀行の株式の55%を保有しており、事実上、政府は日本銀行の親会社ということになります。
連結決算の考え方からすれば、日本銀行の保有する国債(資産)は親会社(政府)の資産として考えられます。
では改めて、資産を得た人は誰なのか?
答えは、「民間に資産が発生した」ということになります。
「国民に資産が発生する」という人もいるのですが、正確には国民ではなく民間ですのでお気を付けください。
たとえば、国債を発行して「橋」を作った場合、建築会社や資材会社に国からお金が払われ、そこから従業員にも給料が払われます。
「橋」という資産もできあがりますが、これは国が借金をした(国債を発行した)結果、民間(企業や国民)に資産が発生したことになります。
つまり、国に負債が発生し、民間に資産が発生したのです。
もっと分かりやすい例もあります。
昨年、国が国債を発行して1人10万円の定額給付金を配りましたが、まさに国に負債が発生すると同時に、民間に資産が発生したことになります。
「国債を発行しすぎるとハイパーインフレが起こる」のは本当?
2020年度当初予算の国の一般会計歳入102.7兆円は、税収と公債金(借金)で構成されています。
歳出全体の約3分の2は税収でカバーできていますが、残りの約3分の1は公債金(借金)によって賄われています。
それなら税率を引き上げずに国の借金、つまり国債で賄えばいいじゃないかと思う方もいるかもしれません。
ただ、
「この借金の返済には将来世代の税収等が充てられることになるため、将来世代へ負担を先送りすることになる」
という反対意見や、
「国が国債を発行しすぎるとお金の価値、つまり我が国の場合は円の価値が暴落し、ハイパーインフレ(急激な物価上昇)が起こる」
という反対意見が必ず出てきます。
このように反論されてしまうと、将来世代にツケを残したくないし、ハイパーインフレが起きて経済がボロボロになるのも怖いから、やっぱり消費増税は仕方ないとなってしまうわけです。
この昔からある反対意見が本当に正しいのかを見ていきましょう。
コロナ禍で国債発行が急増しても、日本円は暴落しなかった
2020年は新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による景気悪化に対応すべく、日本政府は過去最多の国債を発行しました。
税収を上回る歳出を「ワニの口が開いている」という表現をすることが多いのですが、図を見ると2020年は国債発行が急増してアゴが外れて口が裂けてしまったことがわかります。
誰も教えてくれないお金と経済のしくみ
それでは、日本円は暴落したのでしょうか?
日本ではハイパーインフレが起きてしまったのでしょうか?
少なくとも、2020年末時点では、4年ぶりの円高水準で1ドル=103円台でしたし、消費者物価指数は前年同月比でマイナスを続けており、ハイパーインフレどころかデフレへの再突入を懸念したほうがいい状態です。
その他にも常識だと思われていたけれど、よく考えてみるとおかしくないか?と思うことが、お金の世界では多く存在します。
このように常識だと思っていたことや習ってきたことも、冷静に考えてみると、なぜそれが常識として扱われてきたのかがわからなくなってきます。
だからこそ、多くの人がお金の正しい知識や教養を身につけなければいけない、私はそう思っています。
自分なりの「お金の常識」を身につけよう
すべての人がお金と一切関わらずに生きていくことはできないのに、“お金にネガティブなイメージ”を持つ人が多い日本で、「金融教育を普及させたい」という思いから株式会社マネネを創業したという森永さん。
森永さんは「自分自身のお金の常識を持てるようになるには、様々な視点から『お金』について考える必要がある」と言います。
身の回りのことから国家レベルのことまで、「正しいお金の知識」が網羅的に書かれている『誰も教えてくれないお金と経済のしくみ』を読んで最新のお金の知識や教養を学び、自分なりのお金の常識を持ちませんか?
ビジネスパーソンインタビュー
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