ビジパの悩みインサイト
「ビジネス書は時間の無駄」社会人になる大学生にPIVOT佐々木紀彦さんが教えてくれた“教養がつく情報収集習慣”とは
新R25編集部
「複雑なはずのビジパの悩みを、単純化して取材していた」「本質的じゃない悩みをでっちあげていた」
という反省のうえ、「個人のリアルな悩みにひもづいた取材」を改めてしていくことを方針とした新R25編集部。
今回は、新R25編集部インターン・りんたろうの「情報収集しても、活用できない」という悩み。
PIVOT株式会社・代表取締役社長CEOの佐々木紀彦さんに相談したら、ビジネス本は読まなくていいって…一体どういうこと?
情報収集のモヤモヤ「血肉になっている気がしない」
りんたろう
僕2〜3年前から、毎日報道番組を見るようにしているんです。
社会人になる前の時間があるうちに、情報収集の習慣を身につけたくて。
でも習慣はついてきたけど、集めた情報を使えていないという悩みが…
渡辺
入れたものと、出し先とのサイズが合ってないみたいな?
りんたろう
はい。特にビジネスメディアは“点”の情報が多くて。
コミュニケーション術、経営の○○、会議運営のコツ…僕にはまだ使う場面がないんですよね。
森久保
それがゆえに、血肉になっていない感覚がある、ってことか。
僕も学生時代からビジネスメディアをよく見てたけど、情報を“コンテンツ”として消化してるだけで「結局、何にもなってないな」と入社2~3年目で気づいた記憶がある…
りんたろう
まさに、僕もコンテンツ的に面白い情報しか取らなくなってきちゃって。
いわゆる一次情報のような、“面白くはないけど重要な情報”を摂取できなくなっている感覚があるんです。
渡辺
若い頃ってあるよね、そういうモヤモヤ。
でも情報って、すぐ使うっていうだけで摂取するものでもないから、それは仕方がないことのような気がするけどなぁ。
りんたろう
情報収集に“目的”がないんですよね。その情報が役に立つのか立たないのかわからないまま、ヒマだからただ入れてる感じ。
社会人になって忙しくなったとき、このままだと続かないなと思って。
「情報収集をどう習慣づければいいのか」と、「情報を集めるスタンス」を知りたいです。
森久保
…教養があふれる人っているじゃないですか。
この前取材したReHacQの高橋弘樹さんは、李白とか杜甫の詩の引用とか…
渡辺
あれはもう、幼少期に形成された習慣によって出てきてる興味だから、根っこが違う気がする。
りんたろう
僕は小説や歴史書をめっちゃ読んできたタイプじゃなくて、読書習慣が後天的なんです。
でも、教養あるって思われたいじゃないですか。
「あの人がこう言ってたんだけど」みたいに、話せる引き出しが欲しい。
渡辺
わかる。全部がつながって言葉になってくるからね。
情報収集に費やす時間が限られるなかで、自分にとっての“最適な情報収集”に関する指針があるといいよね。
そんな悩めるインターン・りんたろうが教示を受けに行ったのは、PIVOT株式会社の代表取締役社長CEO佐々木紀彦さん。
ビジネスと学びに特化したメディアを立ち上げた、まさに“情報を昇華する”プロ。
そんな佐々木さんの、教養を深めるための極意とは?
【佐々木紀彦(ささき・のりひこ)】PIVOT株式会社代表取締役社長CEO。東洋経済オンライン編集長、NewsPicks初代編集長などを歴任。東洋経済新報社時代には休職し、スタンフォード大学大学院に入学/修了。著書に『起業のすすめ さよなら、サラリーマン』(文藝春秋)など
教養とビジネスパーソンとしての成功は、必ずしもイコールじゃない
りんたろう
僕は教養のあるビジネスパーソンになりたくて…課題が3つあると思っているんです。
りんたろうの考える課題
「どんな情報をどうとればいいのかわからない」
「情報収集習慣を維持できるかわからない」
「情報を処理して、地肉にしていく」
佐々木さん
なるほど。
まず、りんたろうさんが思う“教養のあるビジネスパーソン”のイメージって、たとえばどなたですか?
りんたろう
ReHacQの高橋弘樹さんとか…
佐々木さん
高橋さん、“知の巨人”ですね。
なぜこういう質問をするかというと、教養とビジネスパーソンとしての成功って、必ずしもイコールじゃないからです。
りんたろう
たしかに…
僕は“ビジネスだけで成功したい”というより、文化人的な方向でも豊かになっていきたい、という気持ちが強いのかもしれないです。
佐々木さん
わかりました。単にビジネスで成功するだけじゃなくて、人生を豊かにして、いい人生を送るために情報収集をしたいということですね。
りんたろう
そうです…! まさにそれです!
■教養を高めるための情報収集術で、大切な「3つ」のこと
りんたろう
まず、ひとつ目の課題「どういう情報を取っていくべきか」について、お聞きしたいです。
佐々木さん
教養を高める方法は、ライフネット生命保険の創始者である出口治明さんによると、「読書」「旅」「人」の3つしかないのだとか。
りんたろうさんは学生時代、留学してたんですよね?
りんたろう
はい、高校と大学で1年ずつ。
佐々木さん
留学は「旅」の延長。すばらしいことだと思いますよ。
それと、いろんな「人」と会うこと。友人、仕事、恋愛、いろいろなところで出会う人から学ぶ。
誰でも簡単に情報を取れるようになればなるほど、教養で人間性を高めて、魅力的な人になるというのは、人生を生きるうえでも、ビジネスのうえでも重要になっていきます。
早くも結論なんですけれども、教養のためには「読書」「旅」「人」という3つに尽きるんじゃないでしょうか。
りんたろう
「旅」「人」は方向性が見えてきたのですが、僕「読書」には課題を感じているんです。
PIVOTや新R25など新しい形のビジネスメディアが登場して、新聞やテレビがあって、本あって、と、膨大な“情報の数”かあるわけで…
それだけ膨大なものを、どうピックアップしてインプットすればいいのか、わかんなくなっちゃって。
とりあえず面白そうな本を読んでいるんですけど、身になってる感じがしないんです。
佐々木さん
それ、すごくいい問いですね。
実は私も大学時代、「なんか面白そう」という本を1000冊ぐらい読みまくってたんですよ。
でも今振り返ると、すごく効率が悪かった。
学びのある本、定評のある本って、もう決まってるわけです。
体系立ててそういう本を読んで、自分の血肉にしていくことが大事なんですよ。
りんたろう
体系立てて。
佐々木さん
サッカーでも同じじゃないですか?
しっかり基礎ができるようになってから応用プレーをすれば上達するけど、基礎という土台もまだなのに、かっこいいからという理由でオーバーヘッドのような派手なことばかりやってても、足腰が鍛えられないですよね。
りんたろう
そうですね。
佐々木さん
だから特に若いうちは足腰を鍛えるような読書が必要。
そのためには、アカデミックに確立されたものを読むのが一番です。
自分の興味があるカテゴリーで、定評がある本をしっかり読んでおく。根本を押さえることが大事です。
枝葉の話ばっかりのビジネス書を読んでも、“根”がないから、読んだ情報もパラパラとどっか行っちゃう。
佐々木さん
そういう意味では、大学っていい場所なんですよ。
経済学ならこの人、政治学ならこの人の本とか、体系立っている。
日本の大学は、そうした本を読ませる切迫感がないけど、りんたろうさんはイギリスへ留学して、読書の仕方や本の選び方が変わりませんでしたか?
りんたろう
言われてみれば、僕は政治哲学専攻なんですけど、イギリスでひたすら名著を読まされる授業がありました。
読まなきゃ議論についていけないというプレッシャーがありつつ、アウトプットもしなきゃいけなくて…めちゃくちゃ鍛えられた実感はありますね。
佐々木さん
それが教養であり、いちばん大事なことなんですよ。体系立てられた法則や基礎の課程をちゃんとやっておかないと、根ができない。
私も28~30歳でスタンフォード大学院に行ったとき、基礎の原著を読まされて、自分の知識や思っていたことは軽薄だったなと思うわけですが…
それを痛感させられる機会が日本にないのは、もったいないですよね。
ビジネスで“基本”となる教養は…会計と簿記?
りんたろう
僕がこれから社会人になるにあたって活かせるもの、ビジネスや経営、編集といった分野って、ピックアップするのが難しいのですが…
佐々木さん
ビジネスは、本から学ぶことってすごく少ないと思います。
もっと実学的な、ビジネスの場合は会計や簿記…わかります?
りんたろう
全然わからないです。
佐々木さん
会計・簿記に関する知識を叩き込むのも、まさしく実学じゃないですか。
社員であれ経営者であれ、一番のビジネスの基礎なので、やった方がいいと思う。
渋沢栄一が「論語と算盤」って言うぐらいですから、広い意味ではこれも教養ですよ。
りんたろう
その視点、まったくなかったです。
佐々木さんも取り組んだんですか?
佐々木さん
私ね、学生時代にアメリカの公認会計士試験を受けたんですよ。
りんたろう
えー!
佐々木さん
時間のある学生のうちに勉強しておこうと思って。
結局自分は会計士に向いてないと思って、その道には進まなかったんですけど、1年ぐらい勉強して、試験には合格しました。
今はほとんど忘れましたけど、経済記者やったり、経営者やってたり…当時、体系的に学んだことが自分のなかに根付いています。
りんたろう
そっか、じゃあまさに、会計の勉強が足腰を鍛えたみたいな部分が…
佐々木さん
ありますね。
会計を理解していると、投資したい企業のPLとかBSとかを読んで分析できるじゃないですか。
りんたろう
あぁ! そういうの、見られるようになりたい。
佐々木さん
ね、便利でしょ?
りんたろうさんは政治哲学専攻とのことですが、哲学はまさしく教養の柱。
すぐに役立つことはなくても、絶対に心の中に残っていて、自分がどう生きるかという大事な意思決定をする機会が訪れたとき、影響を与えていくと思いますよ。
りんたろう
よかった。
あとは…編集業務をするなら、大編集者みたいな方の書籍を読むのがいいんですかね?
佐々木さん
いや、大編集者とかは読まなくてもいい(笑)。
自分の興味を徹底的に深めることがいちばん血肉になり、教養になるものです。
そういう意味では、「教養」って人によって定義が違っていいんですよ。政治哲学、スポーツ、アニメ、漫画…その人に合うものを楽しく学ばないと教養にもならないので。
「ビジネストレンド」を追うための読書は時間の無駄
佐々木さん
今って、本を読むのが難しい時代だと思うんですよね。
私は携帯がなかった時代に受験勉強をしたのですが、本当に集中してやってたなって。
だから今、携帯とかSNSとか、誘惑があふれるなかで勉強してる若い人はすごいなと。
そう考えると、ひとりで本をじっくり読む習慣を身につけることが、教養への近道かもしれないですね。
りんたろう
僕も小学生時代は“本の虫”だったんですけど、中学に入ってスマホを持って、部活も始まったら、もう完全に本を読めなくなっちゃって。
大学3年生のころから意識して本を読み始めたんですけど、時間をつくるのが大変でした。
佐々木さんは、どうやって読書の時間を取っているんですか?
佐々木さん
以前ほどは取れなくなって、30代までの“貯金”で生きているので、危機感はあります。毎日のように業界最前線の人や専門家に会うことで、いろんな刺激は受けているのですが…
本のいいところって、“死者との対話”できることだと思っていて。
りんたろう
死者との対話?
佐々木さん
死んでる人と“語れる”のって、すごいことだと思うんです。現代の人とばかり話していると、視野が狭くなる。
でも本は、過去の偉人とかと対話するわけじゃないですか。
渋沢栄一や福沢諭吉と対話をする時間は豊かで、現代の人とSNSで話すのとは違いますよね。
りんたろう
まったく違いますね。
それこそ、僕は最近、現代のビジネス書ばっかり読んじゃってて…
佐々木さん
20代に関していえば、ビジネス書は最低限、ほぼいらないと思います。
基礎を学べる教科書的なものはいいけど、“今こんなトレンドが~”とかは時間の無駄。
りんたろう
ええー!? マジですか。
佐々木さん
だって別に、血肉にならないじゃないですか。それよりも足腰を鍛えるようなものを読んだほうがいい。
あと、学問が好きな人は大学院に行ったほうがいいですね。
りんたろう
実際、佐々木さんは就職してから海外の大学院に行ったんですよね?
佐々木さん
そうです。本当に、行ってよかったことしかない。
20代は知的にも伸びるときなので、りんたろうさんのように学びが好きな方は、海外の大学院、オススメです。人生が全然変わると思いますよ。
なんで海外がいいかっていうと、ヒマだから。東京は情報がいっぱいあって、集中しにくい街なんですよね。海外は本当にヒマだから、自然に学ぶことも増えますよ。
海外が難しければ、もちろん国内でもいい。
りんたろう
たしかに留学している間めっちゃヒマで、インプットする時間がすごく充実していたのを思い出しました。
大学院、行きたくなってきた…
■教養を身につける近道は“ひとりになる習慣”
佐々木さん
読書習慣とほぼイコールなんですが、大事なのは“ひとりになる習慣”です。
ひとりでも心地いいと感じられる習慣をつけた人は強く、教養を身につける近道にもなる。
ひとりでいられない人は、常にSNSを見たり、誰かとつるんだりしちゃう。人とつるんでる間って、人間あんまり考えないんですよ。
りんたろう
佐々木さんも、ひとり時間を確保しているんですか?
佐々木さん
私はひとりの時間が大好きなんです。
昔はバックパックで旅行をしていたこともありますし、今はひとりで散歩するのも好きですね。
ひとりになる習慣は、若いうちに身につけた方がいい。そうじゃないと、いろんなものに流されちゃうから。
日本、特に東京は人を流していく力がめちゃくちゃ強いから。
りんたろう
濁流ですよね。
佐々木さん
波にのまれるか、波に乗れるか。
ひとりの時間をつくって達観しながら物事を見られるかどうかが、波を乗りこなせる人間をつくるんだと思います。
りんたろう
僕もひとりの時間が大好きなんですけど、最近「ひとりの時間、多すぎじゃない?」とよく言われて…
でも、これまでの自分の生き方に、ちょっと自信が出ました。
佐々木さん
閉じこもらない方がいいと思うけど、社会人になってからも心地よくひとりでいる時間を確保するということですね。
ひとりの時間があるからこそ、人との時間をさらに楽しめるようになるし。
りんたろう
深いです…
佐々木さん
そっちのほうが人生は豊かになりますよ。友達は最小限でいいと思います。
いろんなところに飛びまわりながら、ひとりの時間も持ち、自分の知恵を溜めていけばいいんじゃないですかね。
インプットした情報を「血肉」にするためには
りんたろう
読書・旅・人…インプットは、なんとなく道筋が見えてきました。
そのうえで、インプットしたものをどう処理していくか、という課題もあって。
僕は毎朝、報道番組を見るんですが、たとえばウクライナの戦争のニュースがあったときに、自分のなかでどう咀嚼したらいいかわからないんです…
佐々木さん
ニュースって、何のために見てます?
りんたろう
目的はあまりなくて…シンプルに世の中で今、何が起こってるかを知っておきたいという気持ちが強いです。
佐々木さん
大事なのは、その後のステップです。
ニュースを見て興味を持ったとき、「何でこの戦争が起きているんだろう?」という背景と、「戦争に関する学術的な議論の状況」とか…
今起きているニュースと、もっと深堀りする方向とを“行き来”したら、同じニュースの見え方も変わってくる。
この“行き来”がないままだと「こういうファクトがあった」で終わり。それの繰り返しになってしまうんです。
りんたろう
まさに今、そうなってるかも。
それこそ留学中は情報を見て、論文を読んで、専門家のインタビューを読んで…ってやって、パッと目の前が開けたような、世界情勢を“理解できた”感覚があったんです。
でも今ちょっと忙しくなって、そっちの時間がなくなってた。
佐々木さん
りんたろうさんの場合、その“行き来”自体を仕事にしちゃってもいいかもしれないですね、新R25で番組にするとか。
PIVOTも深堀りを意識して、ストレートニュースの背景を解説するような仕組みです。たとえば日産とホンダはなぜ統合を目指すのか、自動車業界では今どんな変化が起きているのか、とか。
ニュースを材料に分析していくと、見え方が変わるじゃないですか。仕事でも自分の生活のなかでもそういうことをやっていくと、どんどん知識が深まっていく。
りんたろう
ニュースをきっかけに深掘ることで、自分の血肉にしていく。そして発信していく、ということなんですね。
教養を身につければ、ビジネスにもつながっていく
りんたろう
今、「教養」と「ビジネス」の情報の集め方という2つの話がありましたが…
ビジネス的な情報収集に集中すると、人生的な豊かさは欠けるんじゃないかと常々思ってまして。
佐々木さん
いい問いですね!(2回目)
私は分けないほうがいいと思います。人間そんな器用に分けられないんじゃないかなと。
仕事に関係のない情報収集もバンバンやって、融合していくほうがいい。
たとえば『週刊文春』で、藤田晋社長が連載しているじゃないですか。藤田さんって、映画の審査員をしてるんですよね。
あれだけ激務の藤田さんですが、ヒマさえあれば映画を見てるらしいんです。
(写真キャプ)社長の連載、ちゃんと読みます…
佐々木さん
映画も教養としてすばらしいもの。観ている間は没頭して、主人公の気持ちになるじゃないですか。
そうしたら、いろんな人の気持ちがわかっていきますよね。
さらに、映画というコンテンツの知恵や感情って、藤田さんにとってはABEMAなどでのコンテンツビジネスにつながりますよね。
りんたろう
なるほど。
佐々木さん
そうやって、(仕事と自分の興味を)つなげたりもできるということ。
むしろ、そうなる道を探すべきだし、意識しなくてもつながることが出てくるかもしれない。
ただし、変に意識して「つながらないからやめよう」と考えるんじゃなくて、衝動的に動けばいいんじゃないかな。
私もサッカーが趣味でずっと調べていたんですけど、今、仕事のコンテンツにもなってますし。
りんたろう
そうですよね。
あれこれ考えず、衝動の赴くままに情報を取りつつ、とはいえビジネス的な情報収集もちゃんとする、ハイブリッド型がいいんですかね。
佐々木さん
そうです。
結局ビジネスって、人じゃないですか。その人の魅力や人脈でビジネスが決まっていくわけで…
そして、教養があるかどうかも、その人の魅力。
だから教養を身につければ、自然とビジネスにつながると思いますよ。
りんたろう
なるほど。
佐々木さん
あと、教養があっていろんな人の気持ちがわかるからこそ、組織をうまくマネジメントできる人になれるかもしれない。
イーロン・マスクみたいにぶっ飛んだ人は別にして、普通の人は教養で人間性を高めたら、いいビジネスパーソンになりますよ。
特に年齢を重ねて40〜50代になってくると、新しい知識や体力ではなく、それまで蓄積した教養=人間性の勝負になっていくので。
だって、40代でビジネス書ばっかり読みまくってる上司とか、イヤじゃないですか?(笑)
りんたろう
イヤですね(笑)。
佐々木さん
俯瞰的にいろんなものを考えられる、教養がある人のほうが、ついていきたくなりますよね。
自分ならではの「柱」を立て、浮かんだ「問い」を深める
佐々木さん
「教養」を言い換えるなら、「柱」。
たとえばスティーブ・ジョブズは若いころ、かなり「文学」に触れていて、大学では「カリグラフィー」という文字のデザインを学んで、その後「コンピューター」にハマっていて。
3つの柱をつなげた先に、Appleという会社がある。つまり、3つぐらい柱があると、そこからその人の個性が生まれてくる。
りんたろうさんが好きだという「サッカー」も、柱のひとつになると思いますよ。
焦らずに20代、30代を積み重ねていけば、その先に新たな創造や、豊かな人生が見えてくるんじゃないですかね。
りんたろう
「柱を立てる」って、すごく腑に落ちた気がします。
まずは気が向くところに潜って、そこから深掘ることを意識して、情報収集をしてみます。
佐々木さん
そうですね。好き嫌いを研ぎ澄ませていくと、圧倒的な強みになると思うので。
りんたろう
あとは簿記を…
佐々木さん
こういうことって、全部早いほうがいいんですよ。
仮に100年生きるとして、簿記を22歳で学べば、その後78年活かせるわけじゃないですか。
40歳で学ぶと60年しか活かせない。早めにやったほうが、複利がどんどん効きますよね。
りんたろう
筋トレと一緒なんですかね。若いうちにやっておくといい…
佐々木さん
筋トレはよくわかんないです(笑)。けど、その意味では健康習慣は大事だと思います。
特に40代以上に差が出ますね。生きていることと、コンディションがいいということは別ですから。
アメリカは大学内にフィットネスの施設があって、みんな走りながら教科書読んでますよ。その光景、日本の大学にはないですよね。
りんたろう
ないですね。イギリスもジム人口がめっちゃ多くて、半分ぐらい女性でした。この違い、何なんですかね?
佐々木さん
あ、今のような問いを深めていくのもすごくいいと思いますよ。
りんたろう
そうか! こういう問いを大事にしたらいいんですかね。
佐々木さん
そうそう、問いを深める。そのために調べていく。これがいちばんいい学びだし、教養になりますよね。
問いが浮かぶこと自体がすばらしいんです。生成AIでも問いを立てるのは無理なんじゃないかと言われているので、これから価値は増すんじゃないでしょうか。
りんたろう
編集者としても、テーマを作るきっかけにもなりそう。しっかり考えていきたいです。
なんだか社会人になる前・なった後の過ごし方が見えてきました。佐々木さんがいる場所へ行けるように頑張ります!
佐々木さん
将来有望そうだから、りんたろうさんは。
ぜひまたサッカー談義でもしましょう。
情報は、収集するだけにとどまらず、深堀って咀嚼して、初めて血肉になるんですね。
そして、大学院に行くという選択肢。
社会人になっても、ビジネス一辺倒ではない“教養”を身につける努力を続けたいと思います!
〈取材=渡邊倫太郎/編集=天野俊吉/編集=鳥山可南子〉
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