ビジネスパーソンインタビュー
「コネクテッドTV」はマーケティングにどう活かす?
“にしたんクリニック”のCMでお馴染み・エクスコムグローバル西村社長が感動したコネクテッドTV配信「インクリー」とは?
新R25編集部
企業のマーケティング活動において重要な「テレビCM」ですが、昨今ではテレビ離れやネット広告の台頭によりその真価が問われています。
そんななか、2022年に誕生したのが業界初となる“コネクテッドTV特化型”の広告配信サービス「インクリー」。
これから企業は、「テレビ」や「コネクテッドTV」をどのように活用していくべきなのでしょうか?
そこで今回は「企業価値を高めるための“テレビCM”戦略」をテーマにインクリーを扱う株式会社AJA代表・野屋敷 健太(のやしき・けんた)さんと「にしたんクリニック」「イモトのWiFi」などユニークなCMでおなじみのエクスコムグローバル株式会社 代表取締役社長の西村誠司さんの対談を実施。
実は西村さん、以前から「インクリー」という言葉は気になっていたそうで…
CMの目的は「聞いたことある」の母数を増やすこと
西村さん
タクシーCMで「インクリー」よく見てますよ。
正直何をやっている会社かはわからないんですけど、「インクリー!」って言ってる女の子は誰なんだろう?ってずっと気になっちゃって(笑)。
野屋敷さん
ありがとうございます(笑)。
西村さん
CMの戦略を考えるうえでは、こういう“引っ掛かり”がすごく大事ですよね。
「AIDMA(※)」と言われてますが、僕は基本「Attention」つまり知名度をあげることにほぼ全ての予算を使ってます。
むしろ「ほか何にお金をかける必要がある?」くらい重要なポイントだと思ってます。
(※)アイドマとは、Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)の頭文字を取ったもので、消費者の購買行動プロセスを説明する代表的モデルの1つ。
西村さん
その時に意識しているのが、商品の説明や価値の訴求を捨てること。
CMのつくりかたも、とにかく名前を知ってもらうことだけを目的に“ワンメッセージ”にしています。
野屋敷さん
たしかに、最近流れているにしたんクリニックのCMも、何をやっている会社かはまったくわからないですけど、サスペンス劇場であることは一瞬でわかりますもんね。
西村さん
「にしたんクリニック」という名前さえ知ってもらえたら、あとはネットで検索したり、ふとした瞬間に思い出したりすると思うんです。
野屋敷さん
ちなみに、認知度をより高めるためにクリエイティブ面で意識されてることはあるんですか?
西村さん
“音”ですね。耳から入る情報って目から入るものより、感情をダイレクトに揺さぶる効果があるので。
人は、“まったく知らない”ものには興味を持たないですが、“聞いたことあるけどよくわからない”ものは気になっちゃうんですよ。
西村さん
だから、「知る人ぞ知る」みたいなものはまったく意味がなくて「どこかで聞いたことがある」という印象こそがブランドだと思うんです。
野屋敷さん
なるほど。
西村さん
実際、この対談をお受けしたのもを元々CMで「インクリー」という言葉を知っていて、信頼感があったからですし。
その意味でも、先に認知度をあげておくという僕の仮説は間違ってなかったなと(笑)。
たしかに
“地上波”と“OTT”のコンテンツ視聴体験は、並列になっている
野屋敷さん
簡単にご紹介させていただくと、「インクリー」とはコネクテッドTVでABEMAのようなOTT(※)を観ているときに流れるCMの枠を、広告主に提供するサービスです。
(※)OTT…Over The Top(オーバー・ザ・トップ)の略。インターネット上にある音声・動画などのコンテンツやサービスのこと。マネタイズモデルは、ABEMAなどの「スポンサー広告」か、Netflixなどの「ユーザー課金」に分かれている
西村さん
実は僕、コネクテッドTVの定義がよくわかってないんですよね…(笑)。
野屋敷さん
コネクテッドTVはインターネット回線に接続されたテレビ端末のことです。
リモコンに「YouTube」「ABEMA」などのボタンが入ってるスマートテレビが一般的ですね。
西村さん
あ、じゃあうちで使ってるのもコネクテッドTVだ。
コネクテッドTVって、地上波のチューナーがないテレビだけだと勝手に勘違いしてました。
となると、今はもうほぼすべてのテレビがコネクテッドTVと言ってもいいんじゃないですか?
野屋敷さん
コネクテッドTVを使ってる人はざっくり3000〜4000万人ほどで、今後よりインフラ化が進むと思ってます。
実際にコロナ禍以降、PC以上にコネクテッドTVの視聴ユーザーが増えているというデータもありますね。
野屋敷さん
急激なユーザー数の増加を見ていると、「地上波でニュースやドラマを見る」ことと「動画配信サービスでコンテンツを見る」ことがすでに並列の関係になってると思うんです。
西村さん
僕も自宅のテレビでは、地上波よりも動画配信サービスを見ることが多いかもしれません。
あと、地上波は「たまたまつけていたから見る」という行動が多いけど、ABEMAのコンテンツは能動的に見にいくことが多い気がします。
野屋敷さん
まさしく、コネクテッドTVでOTTを見るときって「ながら視聴」があまりないんですよね。
そういう意味で没入感があるので、広告でもしっかり視聴してもらえることがポイントだと思います。
西村さん
前に「Tver」でCMを流したことがあるんですけど、その時Twitterで「にしたんクリニックのCMがウザい」という声があがって(笑)。
でも「ウザいということはちゃんと見てくれてるんだ」と思って、OTTでCMを流すことの価値を実感したんですよね。
西村さん
それを、インクリーを使って大画面で流せるんだったら、正直やらない理由はないんじゃないですか?
野屋敷さん
ありがとうございます(笑)。
コネクテッドTVの普及によってリーチ規模が拡大していること、能動的な視聴態度によって質の高い配信ができる点は認知度向上にも大きく貢献できると思っています。
「テレビ」という概念が広がる前提でのCMプランニングが鍵に
西村さん
ユーザーからすると、家のテレビで地上波を見ているときにCMが流れるか、OTTを見ているときに流れるかなんて、体験としてはほぼ変わらないですよね。
野屋敷さん
だからこそ、地上波でCMを放映されている企業さんのなかには「地上波でもOTTでも過剰にCMを放映しすぎてしまう」ことを気にされる時があります。
野屋敷さん
そこでインクリーでは国内大手メーカーと提携して、テレビの視聴データを活用しながらOTTと地上波との出し分けができる「インクリー.TV」というサービスの提供も始めました。
西村さん
え、そんなことできるんですか!?
ちなみに地上波での視聴の志向を分析しながら、インクリーでOTTの各局に出し分けすることも可能なんですか?
野屋敷さん
はい。性別、年代、エリアなどでターゲティングしていくことも可能です。
西村さん
え〜それいいじゃん。いいよね?
思わず現場にいたマーケティング部長に話しかける西村さん
西村さん
地上波の場合、誰にどのくらいCMが当たったかというログは計測できなくて当たり前だと思っていたので。
それがデータベース化されて活用していけるのはすごく効率がいいですよね。…ちょっと僕の勉強が足りなかったです(笑)。
野屋敷さん
アメリカでは今、テレビCMよりもOTTの広告市場が圧倒的に大きいんですが、日本ではまだまだ広がりきってないという課題があります。
ただ一方で、大手動画配信サービスが広告付きプランを始めるようになるなど、コネクテッドTVでの配信先メディアは今後もさらに拡大していくと感じてます。
西村さん
そうなると、認知度向上目的のマーケティング手法として“自宅のテレビ”というデバイスのなかで、どれだけ高い広告効果を出せるかどうかが一つの鍵になりそうですね。
西村さん
僕たちは「テレビCM」を認知度アップの最重要施策と捉えていましたが、そもそも「テレビ」という概念が広がりつつあることを前提にプランニングしていくべきだなと思いました。
野屋敷さん
僕たちとしては、これまでテレビCMで難しかった効果計測や出し分けなどをプロダクトの力を通してしっかり可視化することで、広告主さんにとってより価値ある広告媒体にしていきたいと思ってます。
西村さん
そう考えると「インクリー」はとてつもなく大きな可能性のあるサービスなんじゃないですかね。
今日はいいことが聞けてよかったです。これでまた、うちの広告費が上がっちゃいますよ(笑)。
地上波とデジタルとの垣根が融解されていく時代。
“広告”という分野においても、テクノロジーが進化したからこそ「企業」「ユーザー」双方にとってベストな形を見つけやすくなるのかもしれません。
取材後に何度も「もっと知られた方がいいんじゃない?」と語っていた西村社長。「コネクテッドTV」が日本のインフラになる日まで、これからもインクリーの挑戦は続きます。
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