ビジネスパーソンインタビュー

「未来につむぐ里山SDGs」異業種同士が手を取り合うことで生まれた、新たな共創の仕組みとは?

日本だけでなく、世界のモデルにもなり得るビジョン

「未来につむぐ里山SDGs」異業種同士が手を取り合うことで生まれた、新たな共創の仕組みとは?

新R25編集部

Sponsored by 日経電子版

2023/07/26

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働き方が多様化している昨今。「副業に関心がある」「本業以外で自分のキャリアやアイデアを試したい」と考えるビジネスパーソンも多いのではないでしょうか?

そんな方に向けて日経電子版が新たな“探究の場”を提供するべく開始したのが「Xplorer(エクスプローラー)」プロジェクトです。

プロジェクト第1期のテーマは「地方創生」

全国各地の地方自治体や団体から、今取り組みたい「リアルな課題」を提供いただき、本プロジェクトの参加者がその解決策を探ります。

今回は、イベント第6回目となる「未来につむぐ里山SDGs」についてのパネルディスカッションの様子をお届けします。

(左から)つむぐ、つづる理事 佐藤氏/ネスレ日本 瀧井氏/神戸市役所 濱住氏/司会の安藤氏/日経 清水氏

“競争”から“共創”へ。競合メーカー同士の間に自治体が立つことで生まれる、リサイクルの輪

神戸市役所東京事務所 都市プロモーション係長の濱住さんに、なぜ神戸市が「未来につむぐ里山SDGsプロジェクト」に取り組むのか説明していただきました

濱住さん

地方自治体を取り巻く環境ですと、SDGs達成に向け手を取り合ってともに行動していこうというなかで、人口獲得のために競争しあっている現状は矛盾しているようにも思えます。

SDGsを語るのなら人口ばかりを追い求めるのではなく、自治体同士が手を取り合って、いいものはシェアし、取り組みをスケールしていく。そんな関係を築くことが重要なのではと思います。

濱住さん

では、ステークホルダーのみなさまとの関係性はどうあるべきか。たとえば神戸市では、シャンプーや洗剤の詰め替えパックを消費者のみなさまから集めて、水平リサイクルの実現に向け取り組みを進めています。

でも一社だけではできないので、日用品メーカー、小売事業者、リサイクラーなど、さまざまな方と手を取り合う必要がありました。

特に、日用品メーカー同士はライバル関係になるので、同じ考えを持っていたとしても手を取り合うことが難しい状況でした。そこで、神戸市が両者の間に立って働きかけた結果、リサイクルの輪を築くことができました。

安藤さん

なるほど。連携を進めることに、自治体の役割があるんですね。

濱住さん

SDGs推進に向け、ともに行動をしていくフェーズにおいて、競争関係や種の壁を取り除く役目を果たし、競争から共創するために、自治体が動いていくべきではないかなと考えています。

未来につむぐ里山SDGs≒生物多様性の保全

濱住さん

未来につなぐ里山SDGsは生物多様性の保全をしっかりおこなっていこうという取り組みです。なぜ今、生物多様性の保全かというと、SDGsのウェディングケーキモデルを見ておわかりになるとおり、陸や海の豊かさは環境や生態系にかかわるものが、我々の生活や経済を支えています。

その環境や生態系を支える多様な生物は、まさしくSDGsの根幹であると言えますが、この損失が著しく進んでいる状況です。

人類含む多様な生物が生命を支え合う関係性。自然環境とポジティブな相互関係を結ぶというネイチャーポジティブの概念がグローバルで議論されるようになってきました。

濱住さん

里山と田園を生活の舞台としてきた日本では、人の営みがあって、里山と田園に多くの生物が息づき、多様性が育まれてきたように思えます。ところが、社会や生活様式の変化で、バランスが崩れてしまいます。

たとえばですが、生活のために里山の木を切るとその切り株から新芽が出てきます。野うさぎは、かつては里山の代表的な動物でしたが、生活様式が変わり木を切る人がいなくなると、その新芽を食していた野うさぎもいなくなってしまいます。

そして、野うさぎを捕食していた希少な鷲や鷹にも芋づる式に影響がでます。人の手が里山に入らなくなったことでこのような生物への影響がいたるところで起こっています。

安藤さん

ありのままの状態を保全するというよりは、人の手を入れながら適切に管理することが重要なんですね。

濱住さん

そうですね。多様な生物が生命を支え合う関係性を維持していくため、昔の生活に戻るというのは難しいですが、現代にあった里山と生物多様性の保全をみんなで考えていく必要があります。

そのため、神戸市では「KOBE里山SDGs戦略」を策定し取り組みを進めていますが、どのように共感と共創のアクションを生み出していくかが重要なポイントになっています。

ネスレ日本が仕掛ける環境負荷を軽減させる“パッケージの紙化とアップサイクル”

ネスレ日本 マーケティング&コミュニケーションズ本部、一般社団法人アップサイクル 事務局長も務める瀧井さん

瀧井さん

ネスレはスイスに本社がある食品会社で、「食の力で生活の質を高めよう」という目的を掲げています。

具体的には、プラスチックの使用量を削減することを目的に、容器やパッケージの紙化をすすめています。

しかし、製造過程で印字のズレなどが発生し、成形ロスも発生していることも事実です。お手元に届いた後も古紙回収でなくゴミ箱に捨てられてしまい、家庭から排出された紙のリサイクル率は2%と、牛乳パックの40%と比較しても極端に低いです。

パッケージが紙化されたキットカット

瀧井さん

衣類は天然繊維ならコットン、化学繊維ならポリエステルがありますが、天然繊維なら環境に優しいのかというと、必ずしもそうではないんです。

大量の水や農薬を使用しないといけないので、実際は色々な負荷がかかっています。そこでネスレと日清紡グループさんで環境面で連携できることがあるのではと考え、アップサイクルの取り組みをスタートさせました。

たとえば、ネスレの工場から出た紙や、使用し終わった紙をアップサイクルする取り組みです。こちらがそうですね。

「丈夫そうな、普通の糸ですね」

瀧井さん

もともと日本は和紙が盛んで、麻や綿の入手が難しい時代には、和紙を細く切って、テープ状にしたものにノリをかけて、編んだり織ったりして服をつくっていました。

ネスレは自社の紙製パッケージを再生紙化し、その再生紙から糸を作ろうと日清紡さんと取り組みをおこなっています。アップサイクルをした紙の糸で衣服を作り、コーヒーを抽出した後の残渣で染色し、活用する取り組みをスタートさせました。

ネスレ日本と神戸市との連携から動き出す共創“未来につむぐ里山”

瀧井さん

ネスレ日本として、神戸市役所の濱住さんにこのお話をしたところ、興味を持っていただきまして。

濱住さん

当時僕は神戸の環境局にいたのですが、東京に異動になったので「東京でやりませんか?」と無茶ぶりをしました(笑)。

了承いただけたので、東京圏の紙資源を2カ月間かけて110キロ集めました。集めたものを子供服にして、神戸市内の児童養護施設に届けるとお伝えしたところ、多くの方に協力していただけましたね。

紙の糸でできた子供服

安藤さん

紙でできているとは思わないですね。さらっとしていてとても軽いので夏によさそうです。

瀧井さん

そうですね。紙でできているので、綿やコットンと比較しても肌触りもよく、涼しく着用できます。

これらの紙糸の衣服は資源から縫製まで、すべて国内でおこなっているので、手間暇かかったアイテムとなっています。

こういう取り組みを持続し続けていきたいと考え、一般社団法人アップサイクルを立ち上げました。

紙の糸によってつむぐ「里山の未来」、生み出す「共感と共創」

瀧井さん

「持続可能な社会に向けて手を取り合っていこう」という想いに賛同してくれた、団体や個人の方の技術を用いながら、紙の糸を作る「TSUMUGI」という、アップサイクルするプロジェクトもスタートしました。

安藤さん

「TSUMUGI」というプロジェクトを具体的に説明していただいてもいいですか?

瀧井さん

紙糸「TSUMUGI」は、強度を出すために木材も混ぜて作られています。この木材には、神戸市さんと連携して、市内の里山などの未利用の間伐材を用い、使い終わって回収した紙資源とともに紙糸を作ります。この糸を使用して、アップサイクルに入っていただく企業さんと物作りをし、世の中に商品として出します。

その売り上げから新しい間伐材を購入して、アップサイクルを持続可能にしていこう、同時に間伐と植樹のサイクルも持続可能なものにしていこうというプロジェクトです。

安藤さん

「TSUMUGI」というプロジェクトは、これからみなさんもかかわっていくプロジェクトになっていくということでしょうか。

濱住さん

そうですね。適切に森林の間引きをおこなう間伐は、地表に太陽光を注ぎ下草を育て、生物が住まう環境を整える点から、里山と生物多様性保全に非常に重要でマストな取り組みです。

この間伐で発生する未利用の木材を、紙糸にアップサイクルして、皆様に身近な生活レベルで使う繊維製品にして届け、里山と生物多様性保全の大切さを伝え、未来につむぐ共感と共創を生み出すことができないかと考えました。

そこで、これから紙糸「TSUMUGI」を使った繊維製品を販売するECサイトもオープンするので、実際に製品化する繊維商品をみんなで考え、販売するというプロジェクトを立ち上げます。

アップサイクルによって生まれた業種を超えた連携に、みなさまに加わっていただき、大きな共感と共創の輪を生み出していきたいです。

市場がないからこそ、サステナブルにはビジネスチャンスがある

安藤さん

佐藤さんも小田原で里山の保全をおこなっているということですが、お話を伺っていかがでしたか?

佐藤さん

里山は、人が整備し続けないと保全できない場所だと思っています。

こういったさまざまな取り組みで認知度を少しでも広げていければ、次の世代にもつなげていけるかなと考えています。

安藤さん

ありがとうございます。瀧井さんはいかがですか?

瀧井さん

一般社団法人アップサイクルが一番大切にしていることは「想い」です。

みなさんの想いを少しでも形にして、輪を一緒に広げていきたいと考えているので、プロジェクトへのご参加をお待ちしています。

安藤さん

ありがとうございます。いろんな垣根を越えて、神戸だけでなく、世界のモデルになるようなビジョンが見えました。

本プロジェクトの参加者が解決策を探る「地方創生」をテーマにした連載企画でしたが、いかがでしたでしょうか?

「自分の力を本業以外で試したい」「スキルアップのきっかけにしたい」という方はぜひ、「Xplorer」に参加して、実務を通してビジネスパーソンとしての力をつけてみませんか?

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