ビジネスパーソンインタビュー
本明秀文著『SHOELIFE(シューライフ)「400億円」のスニーカーショップを作った男』より
スニーカーは情報戦だ。段ボール箱の扱いまで注意する「アトモス」成功の秘訣3選
新R25編集部
年商200億円を超えるスニーカーショップ「アトモス」。
原宿の2.7坪の土地で、1996年に原点となる並行輸入屋「チャプター」を創業してから、この26年間で、市場で大きな成長を遂げています。
新宿や原宿・渋谷などに店を構えており、お店のロゴマークを見たことがある人も多いかもしれません。
今回は、その創業社長である本明秀文さんの著書『SHOELIFE(シューライフ)「400億円」のスニーカーショップを作った男』より、ビジネスの成功の秘訣について一部抜粋。
ビジネスにおける本明さんの徹底ぶりは、驚きの連続でした…。
この記事はこんな人におすすめ(読了目安:5分)
・アトモスについて知りたい人
・スニーカーマニアの方
・成功したい経営者
成功の秘訣① 尋常ではないほどのコストカット
商売の良し悪しを左右するのは、売り上げを最大にして、それ以外のところで利益を出せるか出せないかである。
究極の商売は、“いかにお金を外に出さないか”で決まる。
僕はどこでコストを抑えられるかを創業以来、考え続けている。
例えば当時、雑誌に通販広告を出すには、ページの3分の1ほどのスペースに小さなスニーカーの写真と値段を載せる、通称「3分の1広告」が45万円だった。
チャプターもそこに広告を出していた。
だけど、編集部が欲しいスニーカーを日本で一番早く手に入れ、誌面に掲載してもらう方が、広告を出すよりもはるかに大きな効果があった。
通関も業者に3万円くらいで頼まず自分で手続きすれば、手数料は1万円で済む。
貨物輸送も近鉄エクスプレスが一番安かったし、地域によっては郵便局の方が安くなった。
僕は、何が高くて安くて、どう違うのかを徹底的に調べていた。
差額を節約ではなく、儲けと考えるべきだと思っていた。
その積み重ねを意識しないと商売を続けていくのは難しいのに、そこまで細かい会社はあまりないように思う。
税関から荷物を原宿に運ぶとき、一度に入ってくる量が増えすぎて、ワンボックスカーに積み込めなくなると、千駄ヶ谷の事務所兼倉庫まで荷物を運んでくれるトラックを現地で探した。
空港に荷物を運んできたトラックのおっちゃんたちに駐車場で「帰りの便ある?」と聞いて「ないよ」と言われれば、「じゃあ千駄ヶ谷に1万円で荷物を運んでくれない?」と交渉する。
荷物の量にもよるが、だいたい1万~1万5000円で運んでくれる。
航空会社に頼むと2万5000円はかかっていたので、一回あたり少なくとも1万円、週3~4回荷が届いていたから、合計で月に最低12万円くらい“儲けていた”計算になる。
千駄ヶ谷にトラックが着くと僕と三上で荷下ろしして倉庫に入れる。
成功の秘訣② 段ボール箱の処分方法に気を配る
当時の原宿には、チャプターよりも先にブルースという並行輸入のスニーカーショップがあって、僕はいつもブルースの売れ行きをチェックしていた。
チャプターにない商品が並んでいることもあって、ベンチマークするにはうってつけだった。
ある日ブルースの店先に、「PHL(フィラデルフィアの略称)」のステッカーが貼られた段ボール箱が捨ててあった。
のぞき込むと、そこに「サムソン」というスニーカーショップの名前が書いてあるのが見えた。
サムソンは、その地域で7~8店舗を構える有名なチェーンストアだ。
次の買い付けのときに、サムソンに寄ってみると、たまたま店番をしていたのが、後にビジネスパートナーとなるジョン・リーだった。
最初に店を訪れたときは、ナイキのアウトドアラインであるナイキACGのジャケットと「イエローグラデ」を3足だけ買った。
そのときに連絡先を交換して、帰国後も「いいスニーカーがあったら回してくれよ。このモデルがあったら取りに行くから」みたいな内容を、毎日ファックスで送っていた。
当時のサムソンは、ブルース以外にも日本人バイヤーを数人、客として抱えていたらしい。
何度か行くうちに、僕はサムソンで、毎回150~200足を買うようになった。
ジョンが「毎回アメリカに来るのも面倒だろうから、俺に金を預けておけよ」と言うので、「だったら俺の仕事を手伝ってくれよ。一緒に商売をやろう」と誘うと、ジョンは「OK」と言って、すんなり義父の会社を辞めてしまった。
ただ、すぐに預けられるほどの金を持ち合わせていなかったので、結局、「しばらくは金ができたら口座にデポジットしておくよ」という流れでお互い納得した。
それ以来、アメリカの買い付けをジョンに手伝ってもらうことにした。
ジョンは、自宅のガレージを倉庫にして、新たにスタッフも雇った。
僕が日本にいるときは、ジョンがアメリカ中から集めたスニーカーを日本に送ってくれる。
その結果、僕の渡米回数も年間6回ほどと、少しだけ楽になり、自分で買い付けるよりも確実に、そして、はるかに多くの物量を確保できるようになった。
僕たちは、捨ててあった段ボール箱の一件もあり、情報漏洩には人一倍気を遣っていた。
仕入れルートが同業者にバレると致命的だからだ。
海外から空輸されてきた荷物には、必ずAWB(航空貨物運送状)が貼り付けてある。
そこには荷物番号が書いてあり、この情報さえあれば、税関で調べてもらうことができる。
調べられて、荷送人と荷受人が分かれば、仕入れ先が特定される恐れがある。
だから、捨てるときには、この情報を絶対にすべて剝がして、段ボール箱の使い回しも一切しない。
うっかり貼り付けたまま捨ててしまった社員がいたら、僕の雷が落ちる。
届いた荷物を送るときは、面倒でも何も記載していない段ボール箱にすべて入れ替えて送っていた。
それは、メーカーから卸してもらうことになった今でも徹底している。
メーカーからの段ボール箱には商品名やサイズ、品番が書いてあるので、何を何足仕入れたかが予想できてしまうのだ。
情報は、それぐらい慎重に扱っている。
成功の秘訣③ ストックルームとトイレの写真を送らせる
デジタル化が進み、世の中がインターネット通販に重きを置くようになってから特に、「店舗の役割とは何か?」ということが問われている。
スニーカーも、多くのアパレルブランドと同じく、商品構造はピラミッド型になっている。
トップは限定品や数が少ないもの。
ボトムは数が多くて安いもの。
この2種類はインターネットでも売れるけど、その中間の商品が売れない。
数が少ない限定品だけだと、そもそも売り上げが立たないから、安いものを大量に売ることになる。
すると、価格競争に巻き込まれるから、最終的にシェアを取るために、もっと還元率を上げて、もっと値下げする蟻地獄にはまる。
だけど店頭であれば、逆に価値相応の商品が接客を通して売れる。
いわば「スニーカーの伝道師」であるショップスタッフの熱っぽい接客があれば、たとえナイキのオンラインショップで余っている商品も、アトモスの店頭なら売れる可能性は高くなる。
僕は、ストックルームと路面店のトイレが綺麗かどうかを確認するため、毎日営業前に各店長に写真を送ってもらっている。
メンズサイズの場合、25.5㎝から30.0㎝までのハーフ刻み。
同じ箱に入っているし中身が見えないから、常にストックルームをきちんと整頓しておかないと時間ばかり食ってしまう。
だから在庫を覚えて、お客さんの足を見た瞬間に、その人のサイズをすぐに予想できないといけない。
「27㎝はありますか?」と聞かれたときに、在庫を把握しているか。
モデルによってもサイズ感が違うから、場合によっては、0.5㎝前後のサイズを薦める判断も必要だ。
仕事として、その知識を育てるには、時間がかかることだけど、苦労して身に付けた知識によって説得力が増し、ただのスニーカー好きとはまったく異なるものになる。
チャプターではフランチャイズだった店舗を、スポラボとアトモスで直営店にしたのは、この店舗の役割が会社としてより一層重要になってきたからでもある。
400億円企業の成功の軌跡
「atmos(アトモス)」創業社長による初の著書である同書。
サラリーマン時代にフリーマーケットで販売していたことに始まり、「チャプター」の開業、テクストトレーディングカンパニーの設立、「アトモス」の開業など様々なことを成し遂げてきた本明さん。
その成功の軌跡を知ることができます。
スニーカー好きはもちろん、ビジネスパーソンのみなさんにもささる一冊になること間違いなし!
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